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城に参ります

 戦争を止めるには、マレクに謁見する必要がある。

 どうやって謁見を取り付けるか一同悩んで、最終的にジェラルドがエリアスの代理人として城へと向かうことになった。


 そして一時間もしないうちに戻ってきたジェラルドは、翌日に謁見が決まったと告げたのだ。


「我々が戦争を止めに来たと気付いているのか? 油断させて、捕らえるつもりだろうか?」

「それはないと思います。マレク王子とダニエラ様は、毎晩遅くまでご友人方と一緒に乱痴気騒ぎをしていますから」


 マレクが何を考えているのか分からないが、ともかくアリシア達がすることは一つだ。




 翌朝、アリシアとエリアス、そしてマリーは馬車へと乗り込む。


「後はよろしく頼む」

「お任せください」

「エリアス様、マリー。アリシアお嬢様を頼みましたよ」

「はい!」


 見送るジェラルドとティアに手を振り、三人は城へと向かう。

 驚くほど町は静けさに包まれている。

 門の前に来ると馬車から降りるよう衛兵に言われ、三人は大人しく従う。


「よくぞお戻りくださいました」

「え?」

「王子を説得するために戻られたのですよね? あの方の愚行には皆参っています」

「どうか正しき道を歩むよう、諭してください」


(……私、これからマレク王子を罰するために会いに行くんだけど……)


 まだ僅かな希望に縋ってる兵士達には悪いが、バイガル国自体が周辺国から見限られているのだ。

 それを説明する時間はないし、謁見が終われば自ずと国民はバイガルがどういう状況か知ることになる。


「悪事に荷担していなければ、罰は下らない」

「そうなのね。ならよかった」


 ほっとしたアリシアは、案内に出てきた侍従長に挨拶をして彼の後に続く。


「どうぞ、こちらです……アリシア様、その……」

「どうかしたの?」

「この扉の先は謁見の間……アリシア様が倒れられた部屋ですので……」


 どうやら侍従長は、アリシアがまたショックを受けてしまわないか気遣っているようだ。

 心遣いに感謝しつつ、アリシアはにこりと笑う。


「安心してください。私その時の事、全く憶えていませんから」

「という訳だ。気遣い感謝する」


 エリアスが扉の前に立つと、控えていた従者が扉を開けた。


(嘘でしょ)


 玉座へと真っ直ぐに敷かれた絨毯の両側に、大勢の貴族が居並んでいた。人数からして、バイガルのほぼ全ての爵位持ちは招集されたのだろう。

 そして正面の玉座に座るマレクの両側と背後には、重装備の兵士が控えている。


「よく来たな、アリシア。歓迎するよ。ロワイエ国の王子とやらも、田舎からご苦労」


 アリシアは礼儀としてカーテシーの礼をすると、堂々とマレクに向かって歩き出す。


(見事に分かれてるわね)


 絨毯を挟んで片側の貴族達はアリシアに侮蔑の眼差しを向け、クスクスと笑っている。中には通り過ぎる瞬間に小声で「負け犬」「ブスは王子に相応しくない」などと、聞くに堪えない言葉を投げつけてくる者もいた。


 もう片側の貴族はささやかだが、アリシアとエリアスに目礼し敬意を示してくれる。


「国が一丸となっているのかと思っていたが、予想と違ったな」

「ええ。ところでエリアス、まだ魔術は使わないでくださいね。下らない言葉に耳を傾ける必要はありませんから」


 隣を歩くエリアスにも当然悪口は聞こえており、彼がかなり苛立っているのが分かる。


「分かっているよ」


(不安だから釘を刺したんですけど)

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