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火を纏う剣て、格好いいですよね


「呪文はこれら魔方陣を言葉に変化させたもの。適性があれば心の中で呪文を唱えるだけで、術は発動します。しかし、なければマリーさんのように、マッチという媒体を使ってやっと火が灯る程度なのです」

「ヨゼフ先生、私は一行読み終わらないうちにあれだけの炎が出たというのは……」


 いくら適性があるといっても、異常だとアリシアは思ったのだ。


「それは魔力量に関係しております。ラサ皇国の血筋と伺っていましたので、媒体は木の枝にしたのですが……ここまでとは」

「まさか師匠が見誤るなんてな。俺も別の意味で驚いたよ」


 笑いながらエリアスが肩をすくめる。


「ではその、私は魔術を使おうとした場合……先程のような事になってしまうのでしょうか」


 それでは勉強どころではない。不安そうに唇を噛むアリシアに、ヨゼフは安心させるように優しく微笑む。


「いいえ、最初は魔力を抑える特殊な腕輪を身に付けて頂いて、基本的な術式を勉強します。魔力量を自己制御することに慣れれば、腕輪なしでも自在に魔術を扱えるようになりますよ」

「よかった」


 アリシアはほっと胸をなで下ろす。


「ただアリシア様は全ての属性に適性があり魔力量も強大。ですので、魔術を使用する際に、バランスを考えなくてはなりません」

「それは俺の得意分野だ。所謂「魔術のセンス」ってやつさ」


 自信満々に胸を張るエリアスに、ヨゼフは困り顔をしながらも頷いた。どうやらエリアスは、この王室付魔術師も認める程の力があるようだ。


「基礎の習得が終わったら、約束通り魔術を教えるよ。アリシアは召喚に拘ってるけど、こういうのも興味あるんじゃないのか?」


 言うなりエリアスが立ち上がると、腰に吊していた剣を手にして宙にかざす。すると剣は炎を纏い朱色に輝く。


「わあ!」


 思わず歓声を上げるアリシアの横で、マリーは先程の火柱を思い出したのか蒼白になっていた。


「エリアス様、マリーさんが怯えていらっしゃるのでほどほどに」

「ああ、すまない」


 すぐに炎は消えて、エリアスは剣を鞘に戻す。


「感覚さえ掴めば、アリシアでもすぐ使えるようになる」

「そんな物騒なもの、お嬢様に教えないでください!」


 怒り心頭といった様子のマリーを余所に、アリシアは目を輝かせてエリアスの剣を見つめていた。


(ドラゴンの召喚も素敵ですけど、炎を纏う剣も使ってみたいわ)


 ふと、アリシアの頭に疑問が浮かぶ。

 炎を纏った剣は、見た目からして素晴らしかった。式典で用いれば、目立つに違いない。

 国の威信を重んじるバイガル王が、何故こういった魔術を使わないのか不思議に思ったのだ。


 バイガル王本人が魔術を使えなくても、騎士に訓練させれば良いだけのこと。


 魔術適性は誰にでもあるのだから、一人くらいは火の適性者が騎士団にいてもおかしくはない。

 なのにアリシアは、見た記憶が全く無かった。


(私が忘れてしまっているだけ? でも、戴冠式に出席した記憶はあるわ)


 現在の王、つまり元婚約者の父が王位を継ぐ儀式は、幼い頃にアリシアも父と共に列席した。

 隣に座っていただろう父と元婚約者の姿も顔もやっぱり忘れたままだけど、式典自体は記憶にある。


 それはバイガル国の威信をかけた、豪華で立派なものだった。王侯貴族はきらびやかなドレスと宝石で着飾り、騎士達は眩しいくらいに磨き上げられた鎧を纏って王を護衛していた。

 周辺国から招かれた賓客達が、口々にバイガル国の財力を褒めそやし驚いていたと記憶している。


「こんな素晴らしい魔術を、何故バイガル国は手放したのでしょうか」


 別にバイガル国だけが、魔術を手放したのではない。むしろロワイエやラサのように、魔術国家として成り立っている国が少ないのだ。


「良い点に気付きましたな」


 にこりと、ヨゼフが微笑む。


「いまお二人が火の魔術を使用した結果が、答えでございます」

「……ええと、マリーと同じく適性が無かったのですね」


 だがそれだけでは説明が付かない。

 国民全員が火の適性が無いというのもおかしな話だ。それに火の適性の無いマリーだって、呪文を唱えればマッチに火を灯すことはできた。



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