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アルツィードのパートナー ②

「は?パートナーをやめたい?」

「そう!」


シスツィーアに「パートナーがいる」と言った翌日


アルツィードは教室で女生徒に「パートナーやめる!」と、ぷりぷりと怒りながら言われていた。


「それは、いいが・・・・・・」

「良いんだ!やっぱり!」


アルツィードが困惑しながらも了承すると、なぜだか女生徒は余計に怒って


それに、女生徒の後ろにいる他の騎士科の女生徒も、なんだかアルツィードを睨みつけている。


(なんだ・・・・・・?)


クラス中の女生徒を敵に回すようなことを、した覚えはない。


けれど、目を吊り上げている女生徒たちは、確実にアルツィードを目の敵にしていて


「だいたい最初から他に本命がいるなら、さっさと申し込んでおけば良かったのよ!」


「どうせ、わたしのことなんて「パートナーがいないよりは」って、その程度だったんでしょ!」


「悔しいー!わたしだって、申し込んでくれる他の男だっているんだからね!」


「なにより、二股掛けるとか・・・・・・・あんな可愛い子・・・・・・どうせ可愛げなんてないわよ」


最後の一言はぼそぼそと小声だったけれど、そんなことを矢継ぎ早に言われて、アルツィードは情けないことに口を挟むことも出来ず


ほかの数少ない騎士科の女生徒たちも「そうよ!そうよ!」と援護しながら、ひそひそとアルツィードを睨みつけて、言葉を交わし合っているし、目の前にいるアルツィードのパートナー(予定)だった女生徒は怒りのあまりか、目がさらに吊り上がって肩も震えていて


(だから、なんでだ?)


理由が分からなくて首を傾げるしかないが、経験上、この状態の女生徒たちに何を言っても余計に怒りを煽ることになる。


「なぁ、いったい何があったんだ?」

「キアルさま!」


さすがに見かねたキアルが仲裁に入ると、女生徒たちは少し気まずそうに視線を交わし合うが、その場から逃げることはなく


「アルがなんかしたんだよな?」

「そうです!」

「待ってくれ、いったい何を」

「とぼける気!?」


よく見れば女生徒は涙目になっていて、アルツィードはさすがにたじろぐ


「昨日、他の科の女に抱きつかれてたじゃない!」

「は!?」

「え!?アル!?そんな相手いたのかよ!?」


女生徒の発言に、クラス中の視線がアルツィードに集まる。


それまでも視線を集めてはいたが「いったい何やらかしたんだよ」という、少し同情のこもった視線から


「はっ!?ほかに女がいながら、パートナーに別のやつ誘ったのかよ!?」というものに変化している。



騎士科では圧倒的に男性が多く女性が少ないために、香夜祭でパートナーがいない男子生徒は多い。


だから、幸運にもクラスメイトがパートナーになってくれたのに、他の科にも仲の良い女生徒がいて抱きつかれていたなんて、「二股をかけるなんて最低だな」と言う軽い軽蔑が入り混じった視線が、アルツィードに注がれることになったのだ。


「おりません!って、そんなことしてない!見間違いだろ!?」

「見間違えてない!昨日、校門のところで、友だちと見たんだから!」

「昨日・・・・・・・・あ!」


昨日シスツィーアに「パートナーができた」と言ったときのことだと思い当たる


(たしかに校門近くだった・・・・・・・他に誰もいなかったはず・・・・・・・)


「ほら!思い当たる節あるんじゃない!」


それ見たことかと、女生徒はここぞとばかりに勢いづいて


「アル、誰のことだよ」

「・・・・・・・・妹です」


女生徒の怒りが再発し、キアルがアルツィードに身体を寄せてひそひそと尋ねる。


「は?なんで抱きつかれてんだ?」

「抱きつかれてはいないのですが・・・・・・・」


女生徒に背を向けて、ぼぞぼそと昨日シスツィーアに腕を掴まれて、そのときに距離が近かったと簡単に話す。


「それに昼休みだって、ずっとどこかに行ってるし!せっかくダンスの練習してあげようと思ったのに!」

「ひるやすみ・・・・・・」

「それも、もしかして」

「はい。シールスもいますが・・・・・・・・」


女生徒の視線を痛いほど感じながら、アルツィードとキアルは何とも言えない視線を交わし、どうしたものかと頭を悩ませる。


「話すのが一番早くないかー?」

「妹が嫌がるんですよ。その、第二王子殿下に迷惑かけたくないと」

「ああ、まあ、そりゃあなぁ」


生徒会のなかでも、シスツィーアとアルツィードも実の兄妹だとは公表していない。


話すことは簡単だが、黙っていた方が余計な面倒を起こさずに済むこともあるからだ。


しかし、この場合は下手に誤魔化すと余計に拗れそう


「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


情けない顔でお互いを見つめるアルツィードとキアル。


けれど、この場を上手く治めるようなスキルはアルツィードにはない。


縋るようなアルツィードの視線に、キアルは肩を落として


「・・・・・・・・仕方ない」


ぼそっとキアルは呟くと、女生徒に身体を向ける。


「あのさー」

「なんでしょうか」


さすがに睨むことはしないけれど、同じクラスで3年間過ごしてきた気安さもあって、女生徒は肩を怒らせたままだ。


「抱きついた子って、これくらいの背丈の子だよな?」

「そうですね」


キアルがシスツィーアの身長を手で示すと、女生徒も頷く。


「その子、アランの・・・・・・俺の従弟で第二王子の側近の子なんだよな」

「「「え!?」」」


暗がりで髪の色は分からず、顔も見えなかったのだろう。


他の女生徒たちも驚いた顔をしている。


「で、多分だけど、その子が・・・・・・まあ、距離が近かったのは、もともとアルツィードとも知り合いだからで」

「どうやって知り合ったんですか?」


成り行きを見守っていた他の男子生徒が、興味津々と言ったように手を挙げる。


「女性と気軽に知り合うような性格じゃないですよね、アルは」

「あー。中等科が一緒だったんだよ。な?」

「はい」


「アルツィードが女生徒と親しくなれるのなら自分だって!」という気持ちが透けて見えていることに、アルツィードは「悪かったな」と不貞腐れながらも、嘘ではないからキアルの話に合わせて頷く。


「それで、なんで抱きつかれてるんですか?」

「そもそも、抱きつかれたのか?」

「いえ。さすがにそんなことはありません」


腕にしがみ付かれるような格好にはなったが、抱きつかれてはいないのだからと、きっぱりと否定する。


「だよなぁ。彼女もだけど、アルも誰かに気軽に抱きつかれるような性格じゃないだろ?」

「それは・・・・・・・たしかに・・・・・・・」

「でも!見たんです!」


納得しかけた男子生徒とは対照的に、まだまだ納得のいかない女生徒たち。


さすがのキアルも誤魔化せないかと諦めかけるが、はたっと閃いて


「・・・・・・・・オレが頼んだ」

「は!?」

「だからー、彼女はアランの側近って知られてるから香夜祭でダンス踊れないと困るし、かと言ってオレがダンスの相手するわけにもいかなくてさー。アルとは知り合いだから、ダンスの練習相手頼んだんだよ。昨日もそれを見たんじゃないかー?」

「あんな場所で、ダンスの練習ですか?」

「まあ、場所は・・・・・・・・」


どうにか話を続けろ!と、キアルがアルツィードに視線を向ける。


「・・・・・・・・・パートナー」

「は?」

「・・・・・・昨日、つぃー・・・・・・・彼女から、「ダンスのパートナーは?」と聞かれて、「いる」と答えたら、驚いて転びそうになって、それで腕を掴まれた」

「ああ!彼女、運動神経悪いしなぁ」


なんとかひねり出したアルツィードに、ここぞとばかりにキアルが頷く。


「え?ダンスのパートナーいるって、話してなかったの!?」


それはそれで不愉快なのか、女生徒はまだ三白眼でアルツィードを睨んで


「いや・・・・・練習頼まれたときは、まだいなかったから」

「そうなんだよ!ごめんなー。オレもさすがにパートナーいるなら頼まなかったんだけど。まぁ、オレからの頼みだから、アルも断れなかったんだろうけどさー」


ポンとアルツィードの肩に手を置いて、キアルが話を続けて


「彼女もパートナーいる人に練習相手頼んだって、きっと罪悪感感じてるだろうし、オレに免じて今回は許してくれ!な?」

「・・・・・・・わかりました」


キアルにそう言われて、女生徒はしぶしぶ頷いて


そうして、なんとかその場がおさまったのだが・・・・・・・・・







数日後







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