一変した僕の生活
母が死んだ。
父が死んだ。
姉が死んだ。
兄が死んだ。
いや、死んだという言い方はおかしいな。そう、僕が殺したのだから。僕は毎日毎日虐げられてきた。母からは罵声を受け、父からは暴力を受け、姉と兄からは卑下され嘲笑される毎日だった。
僕の家系は魔力にとても恵まれてて魔力属性は普通の人は1つだけだけど、僕の家は2つ持つのが普通だった。特に炎属性を持つ確率が高く母は炎と回復、父は炎と風、姉は炎と氷、兄は炎と水を持っていた。
みんなが強い魔力で2つの属性を持つ中で僕は生まれた。先に生まれた姉もとても魔力があったにもかかわらず、それを圧倒的に上回る魔力を兄は持って生まれた。だから3番目に生まれる僕はもっと凄いのではないのかと期待されて生まれてきた。
だが、生まれた僕は出来損ないだった。魔力もなければ、属性も一つもない。もし父が貴族ではなければ、僕は奴隷行きだった。幸い僕は奴隷にはならなかったが、父はプライドが高く出来損ないの僕を誰にも見せないように暮らすことを決めた。
やはり魔力や属性に恵まれている貴族の父は、よく舞踏会に誘われていた。そして母もお茶会によく誘われていた。姉や兄は、母や父に連れて行ってもらい友人をたくさんつくったりしていた。だが僕は一度も連れて行ってもらえなかった。
出来損ないの僕は毎日「この家の恥だ」と言われてきた。ご飯は残飯しか食べさせてもらえないし、服も古着ばかりで、掃除や洗濯もさせられてきた。母は僕が少しでもミスをすると
「魔力がない上にこんな簡単なものもできないのね。」
「お前を生んだ私の身にもなってちょうだい。何も持って生まれなかったお前を見た時にどんなに羞恥心を覚えたか。」
そんなことを言われた。父は酒に酔ったり、仕事がうまくいかなかったりすると僕に暴力を振るった。お腹も殴られたし、頭も殴られた。もちろん蹴られたりもしたし、思いっきり魔法で攻撃された。時には兄も便乗して魔法を打ってきた。ひどく体が痛んだことを覚えている。火傷の痕も痣も今も残っている。
僕は魔力がないからせめてと言われて早くから勉強させられてきた。算術と魔法学は得意だった。でもどうしても歴史が覚えられなくていつも同じ場所で間違えてばかりだった。勉強は姉と兄が見てくれていた。算術や魔法学で僕が間違えると魔法で攻撃してきたり、僕のことを卑下してきた。
「勉強もできないなんてほんとお前は生きてる価値がないんだな。」
「こんな簡単な計算もわからないなんてお前は出来損ないどころじゃないわね。」
そんな言葉を浴び続けた。いつもは僕が間違えたらそういうことをしてきたのに、少し前からは間違えなくても何かといちゃもんをつけて僕に魔法攻撃をしてきた。解く時間が遅いとか、字が汚いとかそんなふうに言われた。
そして一向に覚えられない歴史の勉強ではもっと酷かった。僕が全く覚えられないから、姉がとてつもない提案を兄にして兄はそれを承諾した。その内容は
「痛みを与えればきっと覚えるわよ。私が出来損ないのお前のために魔力を消費してあげるの。感謝なさい。」
そう言って姉は氷でできた小さい刃を大量に作った。僕が覚えられずに間違えるたびにその刃が飛んできて僕のことを浅く切った。姉がきれいにしてあげろと言ったせいで、兄が僕の切り傷に水をかけた。それを何回も続けられ、氷で傷つけられた挙句、水でびしょ濡れになった僕はもちろん覚えられるわけなく翌日体調を崩した。
体調を崩した僕のことなんて誰も気にしてくれなくて、なんならうつされたくないと言って病気で震える僕を外へ放り投げた。それが昨日のことだった。寒い寒い冬のことで、魔法で温まるなんてことは出来なくて。その上姉が氷で冷やして凍える僕を嘲笑い、上から兄が水をかけて。僕は寒さで凍死しそうだった。必死で寒さに震える足を動かして、家の門にたどり着いた。
そうして僕は重たい扉を開けた。そこにはやっぱり姉と兄がいて姉が氷で僕の体を拘束して氷の刃で僕の体を傷つけ、兄が冷たい水を思い切り僕に向かって放った。不思議ともう寒さや痛さは感じなかった。その時僕は悟った。もう死ぬのだと。昨日の傷からも絶えず出血し、風邪で弱る体に追い打ちをかけるように寒さを与えられた。
魔法で自分の身を守るなんて出来ない僕は弱いから。出来損ないだから。死んでしまうのだと思った。不意に僕を縛っていた氷が溶けていった。氷の短剣を持った姉と炎で作った剣を持った兄は、僕に少しずつ近づいてきた。姉と兄は僕の耳元で
「さようなら出来損ない。もうお前の勉強に付き合うのが疲れたのよ。お父様もお前を隠すのが困難になってきたから殺してしまっていいと言われたの。だからあなたの病気を利用させてもらうわ。」
「お前は最後までぼろぼろでかわいそうだな。仕方ないから俺がお前の首を跳ねてやろう。光栄なことだ。感謝しろ、出来損ない。」
最後まで2人から出来損ないと言われた。誰にも愛されなくて、虐げられて思うようになんて生きられなかったこの人生。振り返れば、僕は散々な目に遭ってきた。そう思うと無性に腹が立つ。いつも痛みと一緒に寝てきたこの体は元々は傷ひとつない健康体だった。
それが母、父、特に姉と兄によって傷だらけにさせられた。沸々と怒りが募ってきた。最後だからかわからないけれど、死ぬ前に謎の勇気が湧いてきた。気づけば僕は2人に向かって右手を上げていた。でも病気の僕の動きなんて驚くほど遅くて容易く抑えられた。僕の手首を掴んだ姉を振り解こうと無意識に左手で姉のことを掴んだ。
すると突然姉が消えた。本当に突然姉の姿が消えてしまった。ふと姉が立っていた足元を見るとそこには姉のドレスと灰が散らばっていた。兄は目を見開いて、動きを止めた。でもすぐに僕を殺そうと炎の剣を振り下ろした。それは僕にはとても遅く見えた。比喩ではなく本当に遅く見えた。
僕は姉と同じように兄に触れた。すると兄もパッと消えて、足元には兄の服と灰が広がっていた。ふと自分の両手を見ると、その手は赤く染まっていた。灰になって消えてしまった姉と兄の血だろうか。不思議と恐怖感も湧かなければ、悲しみも湧かなかった。どうかしてしまったのだろうか、僕。
そんな疑問を覚えつつ、奥にある母と父の部屋に向かう。その扉を開ければ案の定母と父がいた。今までノックもなしにこの部屋に入ってきたことのない僕を見て、2人は驚いていた。そして僕はまず母に近づいた。満面の笑みで近づいてくる僕に恐怖心を抱いたのかわからないけれど母は咄嗟に僕に平手打ちをしようとした。でもそれはとてもとても遅くて僕はサラリと交わした。驚いた母は
「気持ち悪い出来損ない!」
と言った。そんな母に僕はそっと触れた。そして母は姉と兄と同じように灰になった。それを見ていた父に僕は歩みを進める。父は次は自分の番だと気づいたのか必死に僕に向かって
「今までのことは悪かった!!お前の望むものはなんでもやるから今すぐ止まれ!俺に近づくなぁ!」
と叫んだ。もちろん僕はそんなことで歩みを止めるような人間じゃない。腰を抜かした父に僕はそっと触れて
「さようなら。」
といった。それと同時に父の体は消えみんなと同じように灰になった。母、父、姉、兄の衣服だけが残って驚くほどこの屋敷は静かだった。不意に僕の耳に澄んだ声が聞こえた。
ースキル 暗殺者を獲得ー
ー属性 殺人を獲得ー
という不気味な2つの単語が聞こえた。僕は咄嗟に周りを見るがそこには誰もいなくて前を向くと。そこにはカラスが一羽、父が使っていた机に止まっていた。
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