収監生活はかなり退屈
豪華な監獄で過ごすようになって2週間、本当に一度も外に出しては貰えなかった。
窓を開けようにも開けられず、部屋の扉の外は前室があり、誰かが必ず警備しているようだ。
食事は運ばれて来るのだが、必ず2人の侍女さんがチームになって部屋に入ってくる。
掃除やベッドメイクなども3人以上で作業をし、時々私の方をチラチラ見ている。
そして何より辛いのは、全く会話してもらえないのだ。
話しかけてもほぼ無視で、業務的な事しか返事をして頂けないのである。
囚人生活って、皆こんな感じなの?
私にも人権有るんですけど・・・泣。
最初の3日こそジークさんは気にかけてくれていたが、その後は放置プレイ。
ここ1週間は会っていない。
私、このまま誰とも話も出来ずに一生をここで過ごすのでしょうか・・・涙。
机には高く積み上げられた魔導書。
暇なら読んでおけと、ジークさんが置いていったものだ。
半分くらいは読んだが、難しい言葉ばかりが出てきてからは意味が分からず挫折した。
せめて恋愛小説とかにしてくれていれば、もう少し時間を潰せるのに。
うあああー!
会話も無い、やる事も無い、変化が無い、無い無いだらけで死ぬーっ!
この部屋からどうにか脱出出来ないだろうか?
爆撃魔法で吹っ飛ばせるかも知れないが、絶対ジークさんに捕まってそのままあの世行きのような気がする。
ベッドの上で頭を抱えて突っ伏していると、手の甲に柔らかいものが触れた。
うん?
顔を上げると、何とクロが居るではないか!
「クローっ!会いたかったよーっ!」
「にゃー!」
おお、そうか、クロも私に会いたかったんだな。
愛いやつじゃ!
しきりにゴロゴロと喉を鳴らすクロを撫でまくる。
私、この触れ合いに飢えていたんだわ。
もふもふ最高です。
あれ?
でも、何でここに居るの、クロちゃん?
うっ!
またしても、左眼の奥にチリチリ感が・・・。
「連れてきてやったぞ。お前が腐っていると思ってな」
いつの間にやら、部屋にジークさんが立っていた。
本当に、この人は神出鬼没だ。
「淑女の部屋に許可無く入るのは紳士の振る舞いではありませんよ?」
「何処に淑女が居るんだ?」
「目の前に」
「ほう?淑女の嗜みの一つ、詩でも披露してもらおうか?」
ちっ。
私が作文が嫌いな事を何故知っているのか。
「学園に入る歳だと言うのに、ここに囚われて教育の機会も頂けないんですよ?どうやって詩を作れと?」
ジークさんは少し黙って私を見た後、口を開いた。
「ならば、教育を受けさせてやろう」
え?
本当に?
学園に通わせて貰えるの?
「もちろん此処でだ」
喜んだ顔から一転、私のガッカリした顔を見てジークさんは至極ご満悦だ。
「明日から早速、教師をつけてやる。腐っている暇はないぞ?クロ、こいつがサボらぬよう、よく見張っておけ」
笑いながら部屋を出て行った腹黒美人の背中を見て思う。
もう一度必ず、あの顔面に腐り玉を投げつけてやる!!