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妖術師ふたたび

真っ暗な空間を後ろ向きに引っ張られながらイヤイヤ移動している、そんな私を側から見た人はきっと滑稽だと笑うに違いない。

人形よろしく動かず項垂れていると背後が明るくなり、穴から放り出されるように開けた場所にお尻から着地した。


うが。

痛いんですけど・・・泣。


お尻は何処かの地面にあるらしく、掌に雑草が触れた。

周りを見れば森の中のようで、昼間の筈なのに日の光が遮られ翳っている。

動物もいるのだろうが皆静かで、まるでこれから起こる何かに息を潜めているようだ。


これは良くない感じだ・・・。


そう思った瞬間、頭上から凄まじい殺気を感じ反射的に後ろに飛び退いた。


「ちっ!」


舌打ちと共に茶色の塊が地上に落ちてきた。

と、同時にズバッという斬撃音がして、目の前にあった古木が斜めに切られ横倒れになった。

倒れた木の脇に着地した茶色の塊は、何時ぞやの夜会で見た妖術師だった。

茶色のフードを深く被り、そこに顔があるのかさえ分からない。

分かるのは、全身から放たれている漲る殺気だけだ。

右手に長い鉤爪を持ち、黒い靄のように揺らぐ闘気を纏っている。


ひーっ!!

怖い怖い怖いー泣!


すかさず距離を取ろうと後ずさるが、次の瞬間、鉤爪が眼前に迫ってきていた。

あまりの恐怖に、逆に神経が研ぎ澄まされた私は、勢い良く屈むと同時に相手の下に滑り込み腹に肘鉄をお見舞いしてやった。

間髪入れず左掌に魔力を集中させ、光の爆撃弾を豪速球で妖術師の顔面に投げつけた。

爆発音がして妖術師の頭に命中し、フードを被ったまま受け身も取らず相手は仰向けに倒れた。

フードごと黒焦げになった妖術師は、数秒しても起き上がってこない。


大丈夫かな?倒したかな?


そう思って近づいた瞬間、がばっと起き上がった妖術師の手が私の頭を鷲掴みにした。


『面白い。お前、光魔法も使えるのか』


私の頭を掴んだ手は、そのまま私を宙吊りにした。

爪が頭皮に食い込んでめちゃくちゃ痛いっ!

左手に魔力を募らせようとした途端、妖術師の右鉤爪が私の左掌を切り裂いた。


痛ったーーーい!!!


頭からも手からも温かい血が流れて気持ちが悪い。

ヒロインはここで退場なのか?

次第に頭に突き刺さった爪と切られた左手の感覚が無くなってきた。

焦点が合わず気が遠くなってきた私を、妖術師は愉快そうに笑った。


『お前如きを葬るのに全てを賭けるとは、あの方も大きく出られたものだ』


あの方?

誰?

あの馬鹿皇子の事か?


『美味そうな眼だな。俺に寄越せ』


妖術師はそう言うと、右手の鉤爪を私の顔目掛けて振り上げた。


まだだ。

まだ死ねない!


『ルナ、僕を呼んで』


クロの声が頭に響く。

ーークロ、助けて!!


次の瞬間、ジークさんから借りた左薬指の指輪から激しい光が溢れ出し、光の核から咆哮と共に大きな黒豹が飛び出してきた。

迷うこと無く妖術師に襲いかかると、その頭に齧り付きメキメキと嫌な音を立てて首を噛み切ってしまった。 

私の頭に食い込んでいた力が無くなり、宙吊りだった身体が地に落ちる。

黒豹は、千切った頭をそのままゴキリゴキリと聞いたことも無い音を立てて噛み砕きながら味わっている。


ぎゃー!!

一難去ってまた一難?!

妖術師の次は馬鹿デカい黒豹か!

乙女にこんな境遇ないんじゃ無いのか?

ホントにここ乙女ゲー?!


このまま気絶したいと固まっていると、間の抜けたクロの声が聞こえた。


『やっぱり妖術師の頭は美味しいねー!』


?!

唖然と凝視していると、食事を終えた黒豹は青い目を細めてグルグルと喉を鳴らした。


『ご馳走様でしたー。久し振りに楽しめたよ!』


黒豹は舌舐めずりしながら私に向かって歩いてきた。

地べたに力無く座り込む私の顔を大きな舌で舐め上げると、黒豹は満足そうに言った。


『だから大丈夫って言ったでしょう?』

「・・・えっとお、クロちゃん・・・?」

『にゃーん!』


にゃんじゃ無い!

君は猫では無いだろう!


『ルナが無事で良かったよ。寄り道してご馳走にもありつけたし、今度こそご主人さまの元に行こうね!』


もしや、好物の妖術師を食べたいが為に、私は囮にされたのか?

上機嫌のクロの後ろを歩きながら、腹黒主人には腹黒ペットが付き物なのかと私はまたしても背筋を寒くするのだった。


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