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白昼夢?

「ジークさんの謝罪」後のルナ視点に戻ります。

ようやくベッドから起き上がれるようになったのは、それから5日後のことだった。

鏡で顔を見れば血の気も無く灰色の顔に頬もこけて、どこから見ても立派なお化けだ。

これ、夜中にシーツ巻いて歩いたら幽霊と勘違いされそう。

脱出案その1だな。

私が心配なのか、クロは何処に行くにも私の後を着いて来た。

眠る時もいつも一緒。

本当に優しい子だ。

家庭教師の先生方の授業もしばらく休み、ベッドの上で復習のために教科書を広げては居眠りする日々だった。

それでも少しずつ動けるようになり、大好きな肉料理も食べられるようになってきた。

そんな私を不憫に思ってくれたのか、今まで冷たかった侍女さんたちが少し優しくしてくれるようになった。

身体を起こせなかった私を何かと気遣ってくれて、食事や入浴の介助もしてくれた。

一番嬉しかったのは、テラスへの扉を開けてくれるようになった事だ。

日中、日差しの温かい時はテラスに出してくれて、日光浴させてくれるのだ。

この歳で全介助だが、いつまたあの監禁生活に戻るとも限らない。

当面、体調不良を続けて同情を買っておこう。



あれからジークさんが訪ねて来ることはなかった。

時間が経ち、身体が回復してくるほどに怒りがふつふつと湧き上がってくる。

部屋に入ってきた瞬間に、顔面パンチを繰り出しそうだ。

考えるとイライラしてくるので、あの腹黒人非人のことは考えないように心の中でその存在を抹消してやることにした。


そうしてひとり優雅な監禁ライフを取り戻しつつあったある日の昼下がり、テラスでお茶菓子を楽しみながら本を読んでいた時の事だった。

急に左眼の奥が疼きだして、何かの映像が飛び込んで来たのだ。

何だ、これ?

誰がが誰かと争っている?

声は聞こえてこない。

茶色のフードを被った男?が黒いローブを着た老人を剣で斬りつけている。

老人は倒れ、フードの男は老人の背後にあった祭壇から宝物でも入っていそうな箱を乱暴に開け、中から白い大きな牙のようなものを取り出した。

それを懐に仕舞うと、男は倒れた老人に何かを言って踵を返した。


「何てことをっ?!」


私は咄嗟に怒鳴ってしまった。

すると男は突然振り返り、驚愕の目でこちらを見た。

え?

聞こえてるの?

見えてるの?

だが、男とは視線が交わらない。

どうやら、こちらが見えてはいないらしい。

男は茶髪で、フードを被ってはいるが髪は長いらしく横で縛っていた。

見たことのない顔だが若くてなかなか整っている。

左の口元にあるホクロが印象的だった。

男は何かを言って、その場を離れていった。

そこで左眼の映像が目の前のテラスに変わった。

気付くと椅子から落ちて、テラスの床に手をついて座り込んでいた。

全身怠くて汗だくだ。

クロがしきりに私の周りをウロウロしながら鳴いている。

慌てて侍女さんたちがやって来て、私をベッドまで連れていってくれた。


何だったんだろう?

見た事ない人たちだった・・・?

あれ?

あの黒いローブ、あの神殿みたいなところに居た人たちの物に似ている?

あの時はフードも被っていたから、同じ物かは分からないけれど・・・。


私がベッドの上で考えていると左眼の奥がチリチリし出し、次の瞬間、部屋の扉が勢いよく開いた。


「大丈夫か?!」


険しい顔をしたジークさんが息を切らして入って来た。

うっ!

まずい、殴りかかりそうだ。

反射的に左手を握り込んでしまった。

私の顰め面と左の握り拳に何かを察したのか、扉から一歩入ったところでジークさんは止まった。

こらこら、そんな所に居たんじゃ殴りかかれないじゃあないの。

目線で早く近寄れと促す。

ジークさんはゆっくりと私に近付いて来た。

彼の眼から視線を逸らさずジッと睨みつける。

私が飛びかかれないギリギリの間合いまで来ると、ジークさんはお得意の溜息を吐いた。

溜息吐きたいのはこっちの方だよ。


「何があった?」


何がだと?

それはこっちの台詞だ。


「それを話すべきは貴方です」


感情的になるな。

彼に付け入る隙を与えるな。

冷静に、冷徹に聞こえるように。

私は本能的に悟った。

ジークさんは私の何かを利用したがっている、だからこんな面倒な状況でも私を気にかけているのだ。

ならば主導権は私にある。

そろそろ洗いざらい喋ってもらおうじゃないの。

利用されてやるかどうかはそれからだ。


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