第46話【優しき四天王、剣の秘密】
ベヘラーティアにてイージスは夜中に散歩の途中、 アメニの襲撃を受けた。
「……」
必死に攻撃するアメニの斬撃をイージスは黙って受け流し続けた。
するとアメニは怒り出した。
「どうして攻撃してこない! ! 私を馬鹿にしてるの! ! ? 」
「……」
「今日の昼だってそう、 あなたは私を本気で相手にしようとしなかった! 何故! 何故私と本気で戦おうとしない! ! 」
アメニは涙を流しながら怒鳴った。
するとイージスはアメニの短剣を剣で弾き、 アメニの動きを止めた。
「……早く殺して」
「……それは無理だ」
イージスの答えにアメニはまた怒った。
「どうして私に情けを掛けようとするの! そんなに私が哀れ! ? 」
すると今度はイージスが怒鳴った。
「君は優しいからだよ! ! ! 」
その声にアメニは少し怯えた。
イージスは構わず話す。
「俺が昼間君と会ってから分かってた、 君は本気で人を殺そうとしたことがないって……」
「はぁ……? 何を根拠に……」
「君がラムに化けている時に話した夢、 あれは本当だろ? 」
イージスの質問にアメニは黙り込んだ。
……やっぱりな……嘘の目をしていなかったからな……
するとイージスはアメニに向けていた刃を降ろした。
「……君の涙に嘘は無かった……」
アメニは話した。
「……私は……魔王様を裏切って……居場所も失った……元より、 私の側には誰もいなかった……それが嫌になって……もういっそ死にたかった……でももし死ぬならあなたに殺して欲しかった……」
そしてアメニは再び怒鳴った。
「でもあなたは私を殺そうとしてくれない!! ……何故……私を苦しめようとするの……! 」
アメニは目に涙を浮かべながら言った。
それに対してイージスは答えた。
「……俺は……優しい君を殺すなんてできない……あの荷車を襲撃した時だって君はあの人達を殺すまではしなかった……それが君が優しさの証拠……君は……」
イージスは少し息を置いて言った。
「……寂しかったんだろ? 」
そう言うとイージスはアメニを優しく抱きしめた。
アメニは少し驚いたが何もしなかった。
そしてアメニは泣き出した。
「うぁぁぁぁ……! ! ! 」
「居場所が欲しかったんだな……一人が怖かったんだな……」
彼女はもう四天王じゃない……普通の女の子だ……ただ側にいてくれる誰かを探している……寂しがりの女の子だ……
イージスはアメニの頭を撫でると
「……俺達が君の居場所だ。 だから……もうそんな寂しそうな顔をするな」
「……うん……ありがとう……イージス……様……」
アメニは人生で初めて自分の居場所を見つけた。そう感じた……
するとアメニはイージスに寄り掛かるように倒れた。
「うおぉ……! 」
……安心して眠っちまったんだな……
イージスは眠ってしまったアメニを背負い、 宿へ戻ろうとした。
するとイージスの前方からザヴァラムともう一人、 謎の少女が向かってきた。
「イージス様、 終わったのですか? 」
「あぁ、 まぁな……っで、 その人は誰? 」
何か暑そうな色合いしてるな……まさかこの人……
イージスの予想通り、 少女はザヴァラムの知り合いのサラマンダーだった。
「へぇ、 あんたがザムっちの主ねぇ……確かに、 私なんか相手にもならない位強いね」
サラマンダーは笑いながら言った。
……ザムっちって……JKかよ……
するとサラマンダーはイージスに一言
「でもあんた……まだまだ未熟だねぇ……ま、 伝説の剣士に会って勉強してくるといいよ。 そんじゃ、 私はこれで」
そう言うとサラマンダーは火山へ帰っていった。
……一体何をしに来たんだよ……顔を見たかっただけか?
そしてザヴァラムはアメニを見た。
「……戦っていたのはそいつだったんですね」
「あぁ、 だがもう仲間だ……」
「そうですか……」
ザヴァラムはそれ以上は何も言わなかった。
そしてイージス達は宿へ戻った。
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翌朝、 イージス達は予定通り自由行動することにした。
ミーナとヒューゴは街で買い物をしに行き、 ザヴァラムはサラマンダーと話せなかった事を話しに行くと火口へ向かった。
イージスとアメニはと言うと……
「……あの……」
「ん~~何だ~~? 」
宿の部屋でイージスはアメニの猫耳を触っていた。
見てからずっと触ってみたかったんだ……予想通りめちゃくちゃモフモフしてるわぁ……
イージスはモフラーだった。
「……そんなに触られると……恥ずかしいんですが……///」
「おっと、 ごめんごめん。 つい触り過ぎた」
この世界に来てからモフモフしたものは触ってなかったからなぁ……久々に癒されたぁ……
「ありがとうなわざわざ」
「いえ、 イージス様のお役になれたなら……///」
かわいい……耳がピコピコしとる……
「……散歩でもするか」
「はい……」
そしてイージスとアメニは宿から出ていった。
……とりあえずアメニと和解できたのは良かった……でもなぁ……アメニを守護者にする訳にはいかないしなぁ……戦いを好まないタイプの娘だし……
「……なぁアメニ、 君はこれからどうしたいんだ? 」
散歩をしながらイージスは聞いた。
「これから……ですか……何せ戦闘はもう嫌ですからね……」
アメニは自分に正直になったな。
まぁそうだなぁ……獣人族って何が得意なんだろうな……
「アメニは何か特技とか無いのか? 」
「獣人族は基本農業が得意としています。私はその中でも村一番で植物に詳しいと評判だったらしいです」
まさかの農業! 普通狩りが得意とかじゃないのかよ……でも農業かぁ……
イージスはメゾロクスの農産物を考えた。
……うーん……農業は間に合ってるからなぁ……とりあえず冒険者仲間にして一緒に旅をするか……
「……アメニ、 一緒に旅をしないか? 」
「えっ、 でも戦闘は……」
「戦闘は俺達に任せていいよ、 それに君を放って旅はできないしね」
「イージス様……」
そしてアメニはイージス達と一緒に旅をすることにした。
「さて、 街で遊ぶとしようか! 」
「はい! 」
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しばらく街を観光していたイージスとアメニはあるものを見つけた。
「ん? あの建物は……」
「カジノですね」
カジノかぁ……ってかこの世界にもカジノってあるんだな。
するとアメニはイージスの手を引いた。
「イージス様、 カジノやりましょうよ! 」
「えぇっ! ? カジノなんてやったことなんて無いんだが……」
「いいから行きましょう! 」
イージスはアメニに言われるがままカジノの建物へ入っていった。
……入ったはいいが……カジノってこんな昼間でもやってるのかよ……
そう思いながらイージスは辺りを見渡した。
「……へぇ、 スロットマシンもあるんだな」
「魔道具と同じ仕組みですよ」
イージスは初めて見る魔道具に興味を持ちながらカジノで遊んだ。
……………
一方、 サラマンダーと話に行ったザヴァラムは……
「──でさぁ、 火の精霊達に私はこう言ったわけ……『その火口、 カルデラだけど…』ってね」
「アッハッハッハ! サラマンダーの話は相変わらず面白いなぁ! 」
二人は笑い話で盛り上がっていた。
するとしばらく笑いあっていたザヴァラムとサラマンダーは突然沈黙し、 真剣な話をし始めた。
「……それで……ザムっち、 話はそれだけではないでしょう? 」
サラマンダーは灼熱の岩の上に座り、 片膝に頬杖を着いた。
「えぇ……あなた、 あの剣について何か知ってる事を隠してるでしょ……」
ザヴァラムはサラマンダーを睨み付けるように言った。
するとサラマンダーはため息を着き、 話し始めた。
「まぁ知ってるには知ってるけど……アレを見るのは久しぶりだからねぇ……でも力が錆び付いてるのは分かったよ……」
「……すなわち、 まだあの剣の力を引き出せていないということか……まさかガイン様がかつて探していた剣というのは……」
ザヴァラムは考えた。
するとサラマンダーは言った。
「私なんかよりもっとあの剣について詳しい事を知ってる人なら知ってるよ」
「その人物は? 」
「……かつて……ダイヤ様の左腕と呼ばれた伝説の剣士……クローロ……」
その名前を聞いたザヴァラムは驚愕した。
「その方は……! ガムールの……」
「フフッ、 私から言えるヒントはそこまで……さっ、話の続きでもしようよ! 」
ザヴァラムしばらく考える様子を見せたが諦めたようにサラマンダーと話をすることにした。
……………
その頃、 ミーナとヒューゴは……
「わぁ~~……」
あちこちの武具店を見て回っていた。
「おい、 見ろよこの槍! オリハルコンで出来てる槍だぜ! 」
「凄いキラキラしてて綺麗! 」
すると武具店の店主が話しかけてきた。
「どうだ、 いい出来だろ! 」
「おう、 どれも凄い出来だよおやじ! 」
ヒューゴと店主は波長が合っているようだ。
すると店主はある話をし出した。
「でもこんなにいい素材を使っても、 覇剣には敵わないがね」
「覇剣? 」
「この街に昔から伝わる伝説の剣のことさ、 正式な名前は無いみたいだが俺達鍛冶屋の間では覇剣って呼んでる……何せどんな硬い金属でも紙切れみたいに斬れるらしいぜ」
それを聞いたミーナとヒューゴは顔を合わせた。
二人の頭の中で真っ先に思い浮かんだのはイージスの背中の剣だった。
「その話もっと詳しく! 」
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その夜……
「イージスさんイージスさん、 聞いてください! ! 」
「イージス様、 ご報告がございます」
な……何だ何だ……帰ってきたと思ったら騒がしいな……
宿の食堂でイージス達は話していた。
するとザヴァラム達はイージスとアメニの周りに置かれた金貨の山を見た。
「……イージス様……その金貨は……」
「あぁ……ちょっと臨時収入があって……」
まさか確率操作のスキルまであるなんて思いもしなかったからなぁ……当たり確率上げまくってカジノで稼ぎ過ぎた……ギャンブル中毒者の気持ちが少し分かった気がする……
イージスは何気無い顔で金貨を収納魔法でしまった。
「さて、 報告って? 」
「はい、 実は……」
ザヴァラムとミーナ達はそれぞれ聞いた話をイージスに話した。
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「……ふんふん……なるほどなるほど……」
この剣が変形するとか全然そんな感じしてないが……それより驚きなのがまさか伝説の剣士が母さんの仲間でガムールの相棒だったことだよな……
「ヴェル・ハザードの戦いでガムールの戦闘の時にしていた話をちらっと聞いていたが……まさか母さんの知り合いの相棒だったとはなぁ……ガムールは魔族らしいし……クローロもその種族だから寿命が長いと見たが……」
問題は東の海の果てにいるその剣士がクローロかってことだよな……まぁ確定っちゃあ確定だよな……
イージスが考え込んでいると……
「イージス様? どうなさいましたか? 」
心配そうにアメニはイージスの顔を覗き込んだ。
「あぁいや、 考えても仕方ないよな……さぁ! 明日はいよいよ東の海に向けて出発だ。 早く寝ようか」
『はい! 』
そしてイージス達は部屋に戻った。
……明日はいよいよ東の海かぁ……さぁて、 魔の海と呼ばれる領域は……一体どんなものかな?
……………
その頃、 東の果ての島にて……
「……西から風を感じる……あの時と同じ風だ……」
ローブを身に纏った謎の男は木造の小さな小屋の中で何かを感じた。
「……ダイヤ様の風だ……」
続く……