第54話【哀しき雪の夜】
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数年前……
フメラの姉、 へランデ・ミフェルダはトルムティアから離れたとある町にて仕事をしていた。
その日は積もるほどに雪が降る夜だった。
「ずばり犯人はあなたです! 」
「くそっ……! 」
この日もへランデはいつものように事件を解決していた。
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「いやはや、 素晴らしい仕事ぶりでしたぞへランデ殿! 」
「いえ、 私は能力に頼ってるだけなので……」
「何をご謙遜を、 その能力は代々ミフェルダ家の人間にしかできない技ですぞ」
依頼者とそんな話をしながらへランデは帰りの馬車に乗り込んだ。
「それではこれで」
そして馬車はトルムティアを目指し走り出した。
「今日もお疲れ様です、 へランデさん」
「あぁ、 フロン君か……わざわざ来なくても良かったのに……」
フロンが馬車でへランデを待っていたのだ。
「何を言いますか、 僕はへランデさんの助手ですよ? 貴方の側でサポートをするのが仕事です! 」
「はぁ……」
へランデはため息を着きながら窓の外を見つめた。
(……こんな仕事辞めたいんだけどなぁ……どうせならハラハラドキドキするような冒険をしてみたいんだよねぇ……)
へランデは自分の仕事に不満を持っていた。
自分のやりたい事も決められずにこの探偵という仕事をやらされていたのだ。
「どうかしたんですか? へランデさん、 元気がありませんが……? 」
フロンは心配そうにへランデの顔を覗き込む。
「何でもないさ……心配してくれてありがとう」
フロンはへランデの事を誰よりも尊敬し、 慕っていた。
そんなフロンにへランデは気に入っていた。
へランデとフロンは昔、 トルムティアの中央広場にてフロンが演奏披露をしているところで出会い、 フロンから彼女の助手を志願したのだ。
いわゆる一目惚れである。
「……フロン君……私は君の事が好きだよ……」
しばらくお互い黙り込んでいると窓の外を眺めながらへランデが言った。
「え……? 」
すると馬車が森の中で突然止まった。
「……来たようだね」
「な、 何が……! 」
馬車の外からは男の声が聞こえた。
馬車の中では声が良く聞こえず、 何を言っているのかは分からなかった。
「フロン君……君はここで隠れていて……」
そう言うとへランデは一人で馬車の外へ出て行った。
「え……へランデさん! 」
フロンは慌ててへランデの後を追おうと馬車から出ようとした、 しかし扉はへランデのかけた魔法で開かなくなっていた。
(まさかへランデさん……この事態を分かって……! )
すると馬車の外からへランデの声と男の声がぼそぼそとだが聞こえてきた。
しばらく何かを話しているようだったが突然声が聞こえなくった。
そして……
『ザクッ……』
外から刃物で何かを刺す音が聞こえ、 辺りが静寂に包まれた。
「まさか……そんな……! 」
フロンは嫌な予感をしながらも扉に手を掛けると扉はすんなりと開いた。
外にあったのは……
「……! へランデさん! ! 」
血まみれになりながら倒れているへランデの姿があった。
フロンはへランデの側に駆け寄り、 へランデの身体を起こすように抱きかかえた。
首元に触れるとまだ温もりを感じる。
「へランデさん……へランデさん! 」
「……フロン……君……」
「大丈夫です、 必ず助けます! 」
するとフロンは雪から氷の鳥を作り出し、 救助要請を書いた紙を持たせ、 トルムティアへ飛ばした。
「すぐにでも助けが来ます……! しっかり……」
へランデはフロンの手を握った。
「これで……いいんだよ……これで……」
「何を言っているんです、 貴女がいなくなったら誰がこれからの事件を解決していくのですか! 」
それを聞いたへランデはふっと微笑み……
「大丈夫……フメラがやってくれるさ……」
と言った。
「フメラって……妹の……」
「そうさ……あの子なら……優秀な名探偵になれるさ……」
「でも……僕は……」
フロンは涙を溢し、 言葉を詰まらせるとへランデはフロンの顔に手を添えた。
その手は雪のように冷たく自らの血で濡れていた。
「……本当にごめんよ……君の想いに答えてやれなくて……」
「……へランデ……さん……」
そして最後にへランデはフロンに言った。
「フロン君……これからは……自分のしたいように生きるといい……もう私に構わなくていい……」
その言葉を最後にへランデは力尽きた。
「へランデさん……」
フロンはへランデの亡骸をそっと地面に寝かせた。
「僕は……必ず貴女を取り戻してみせる……! 」
フロンはへランデの亡骸に向かってそう言うと同時にエンタルテの兵士が駆け付けた。
するとフロンは何を思ったか兵士達から逃げるように去っていった。
(例え悪党になろうと……僕は貴女を取り戻してみせる! )
フロンは心にそう誓った……
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「こうして私は怪盗Fとして盗みを働くようになったのです……」
……なるほど……多分誰かが雇った殺し屋に殺されたんだろうな……
フロンの話を聞き、 真実を知ったフメラは嘆き悲しんだ。
「そんな……お姉ちゃん……」
『……』
一同が沈黙していると突然部屋に何者かが入ってきた。
「おやおや、 どうやら遂に捕まえたようですな……」
「……あんたは……! 」
入ってきたのはイージス達が街に来たばかりの時に出会った謎の少女? だった。
「貴様、 どこから! 」
ディランテが怒鳴る。
「まぁまぁ落ち着きなさいなディランテ殿……久しぶりの再会なのですぞ? 」
「……え? 」
すると謎の少女? は突然背が伸び、 纏っていたローブも脱いだ。
……マジか!
「貴女は……! 」
その正体は死んだ筈のへランデだったのだ。
「元気のようで何よりだ、 フロン君」
「どうして……だって……」
全く状況を呑み込めない一同にへランデは事の顛末を話した。
「ふふふ、 それはだねぇ……」
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あの時、 フロンが立ち去った後……
兵士達はへランデの元に駆け寄った。
すると……
「ふぅ、 どうやら上手くいったようだね……」
へランデが突然起き上がったのだ。
「うわぁぁ! へランデさん! ? 」
「傷口も確認しないとは……まだまだだねぇフロン君は……うぅさむっ! 」
実はこれは全てへランデが計画していた芝居だったのだ。
へランデは自分を死んだことにし、 仕事から逃れようと思っていたのだ。
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「そして兵士達には口止めしてもらって、 私は見た目を変えて冒険者になったという訳さ……」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇ! ! ! ! ! 』
ウッソだろおいおい……! 完全に騙されたよ……
「そうか、 だからあの時の時間軸だけ見れないように……! 」
「ご名答、 我が妹ながら中々理解が早いじゃないかぁ」
するとフロンは全身の力が抜けたように言った。
「……良かった……生きてて……」
「……今まですまなかったね……私なんかのために……」
「いいんです……貴女が生きてさえいてくれれば……」
フロンとへランデが話しているとフメラがへランデの元に歩み寄った。
そしてフメラはへランデの胸に頭を当てるように寄り掛かった。
「おぉ、 久しぶりの再会で感極まってしまったかな? 」
へランデがそう言った次の瞬間、 フメラはへランデの腹に強烈なパンチをお見舞いした。
「ぐほぉあ! ? 」
思わずへランデはしゃがみ込むとフメラはへランデを抱き締めた。
「お姉ちゃんのバカバカバカ! ! ! どれだけ寂しかったか! ! 」
フメラは泣き叫びながら怒鳴った。
「……本当にごめんよ……辛い思いさせて……こんな身勝手な姉のためにありがとう……」
へランデはフメラをそっと撫でた。
(……まさかの急展開過ぎて訳わからん……)
イージス達がそう思っているとへランデは立ち上がり……
「今回はとんだ迷惑を掛けて申し訳無かった! 」
とイージス達に深々と謝罪した。
「いや、 まぁいいんだけどさ……」
「そのお詫びと言っちゃなんですが、 あなたのその剣の能力を開放してあげますね! 」
「え、 マジ! ? 」
まさかの発言にイージスはまた驚く。
そんなこともできるのかよ……へランデさんすげぇな……
「でもどうやって……? 」
ミーナが聞くとへランデは自慢げな顔をして
「私は物の持つ記憶、 時間を辿って元あった能力を蘇らせることができるのだよ! 」
なるほど……それでいつも証拠を掴んでいたりしていたのか……
「では早速剣を見せてもらおうかな? 」
「あ、 この剣は俺以外の人には持てないようになってるんだよ……」
「ならそこの机に置いてもらえるだけでいいよ」
イージスはへランデの言われた通りに机の上に背中の剣を置いた。
するとへランデはフメラの手を握り。
「この仕事は私だけじゃ不可能だ、 フメラ……お願いできるかい? 」
「! ! ……うん! 」
そして二人は剣の前に立ち、 詠唱を始めた。
『世界の理よ……今こそ我らの問いに答え……その「時」の記憶を読み解きたまえ……』
詠唱が終わると同時に二人の足元から時計の模様をした魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣からは無数の光の玉が出現し、 へランデとフメラの周囲を飛び回った。
しばらくすると魔法陣は消え、 光の玉も消えた。
「……さぁ、 これでもう使えるはずだよ」
「マジで? 」
イージスは試しに剣を手に取り、 鑑定してみた。
(鑑定の結果、 剣に新たな能力が追加されていることが確認されました。 スキル、 武器変形を獲得しました)
武器変形? どんなスキルなんだ?
イージスは試しにスキルを使ってみた。
するとイージスの剣は変形し、 盾の形状に変化した。
「おぉ……それが……伝説は本当だった」
ディランテは感動していた。
「これはすげぇ……どんな形にでもなれるにたいだな……」
「さぁ、 ここでの目的は果たしただろう」
そう言うとへランデはイージスに近付き、 耳元で囁いた。
「必ず倒すんだよ? ……偽りの神ってやつをさ……」
「! ? 」
まさか……この剣の記憶から……
へランデはイージスが何かを聞く間も与えず、 フメラの元へ戻った。
「さぁて、 事件は解決したんだ、 私たちは先に帰らせてもらうよ」
「え、 ちょっ……待ってよお姉ちゃん! 」
そしてへランデとフメラはそそくさとその場を立ち去ってしまった。
……へランデさん……一体この剣から何を見たんだ……?
「……ま、 まぁこれで俺達の目的は達成ということだし、 早く次の目的を果たそうぜ! 」
「……そうだな」
そしてイージス達はディランテに別れを告げ、 城を後にした。
その後フロンはと言うと当然窃盗で捕まったが、 へランデの計らいですぐにでも出所できるそうだ。
出所した暁には再びへランデの助手として仕事をしたいと本人は言っていた。
ただ少し違うのは……今度はフメラも一緒であるということ。
…………
事件解決後、 探偵事務所にて……
「お姉ちゃん……イージスさんにあの事を伝えなくて本当に良かったの? 」
フメラが気まずそうに尋ねた。
それに対してへランデはコーヒーを飲みながら答えた。
「いいのさ……あれは無数にある運命の内一つでしかない……彼自身がどうするかで……彼の大切な仲間がどうなるか……それは大きく変わるのさ」
へランデはコーヒーをテーブルに置き、 フメラに言った。
「私は確定していない未来は伝えないのさ……」
「……」
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翌日……
イージス達はトルムティアを後にし、 次は勇者に剣を渡すべく探す旅に出ようとしていた。
しかしいざ旅に出ようとした時、 ザヴァラムがイージスを止めた。
「……イージス様、 どうしてもお話したい事があるのです……一度メゾロクスへ戻って頂けませんか? 」
「ん? どうした急に……」
ザヴァラムがそんなこと言うなんて……きっと大事なことなんだろうな……
「分かった、 休息がてらメゾロクスに戻ろうか」
『はい! 』
そしてイージス達は一度メゾロクスへ戻った。
「……」
ザヴァラムは少し不安そうな顔をしていた。
続く……




