牢屋と姫と交渉
目の前に現れたのは俺が脅した姫様だった。あの姫様か……。身構えて損したな……。
「ちょっと! なんですかその残念そうな顔は! 私は姫様ですよ! って、今はそれよりも尋問が優先ですよね。質問ですが貴方は何処の差し金ですか? 少なくとも人間なので他国なのは確かなようですが」
姫様は怒ったかと思えばスッと無表情になって鉄格子越しに聞いてくる。
そもそもここに連れて来るまでに俺の持ち物やおそらくあるだろう鑑定系スキルで調べるモノは調べてる筈だと思うが……。
『別に聞かなくても鑑定のスキルとかで調べれば早い話だろ?』
「あっ……」
姫様はその手があったわ。みたいな顔をして手を口に当てている。
え? まじでこの姫様頭大丈夫なの? 逆になんでこの人を尋問する人に選んだの? バカなの?アホなの? 死ぬの?
「死にはしませんよ! それと姫である私を侮辱しすぎです! 貴方、私が姫なの分かってますか?」
姫様は怒って頬を膨らませプリプリしてる。俺らの世界で実際に頬膨らまて怒るやつ滅多にいないからな。レアモノを見ている気分だ。
う〜ん、それと思考を読むスキルでも使ってるのか? それなら喋る手間省けるし、そのまま思考を読んでおけポンコツ姫。
「私の扱い雑じゃないですか!? それにポンコツ姫って……あーもう! 話が進まないので質問しますよ。まず貴方は何者かです。」
何者か……って言われたら多分鑑定とかでバレるし、勇者であると正直に伝えておこうかな。
「勇者……様? いえ、騙されませんよ! 勇者様たちは数刻前にシュセキボ……でしたっけ?それが転移した時に無くなったとかで、先生って人が慌てて再点呼してこちらの紙に書き直してますので」
姫様は自身満々に胸を張りながら理由を述べている。
先生……俺のこと完全に忘れてるよな。そうだよなクラスの集合写真で俺のこと忘れて撮るぐらいだからな……。クラスメイトも同様だろうな……。
「その……集合シャシンというのはよく分かりませんが、大変……だったんですね」
いや、掘り起こさないでくれ。ある意味黒歴史だから。それと鑑定すれば俺が勇者だと分かる筈だぞ。
「ちょっと待って下さね。貴方が嘘を付いてないのはスキルで分かるのですが、念入りにこの魔道具で確認しますので」
そう言って姫様は手の平を上に向けるとその上に手の平サイズの水晶玉が出てきた。多分俺と同じ空間魔法で出し入れしたんだろう。
てか、嘘見抜くスキルあるならさっきの疑われたの何? アレのせいで俺黒歴史掘り返す羽目になったんだよ?
「いや、それは……その……忘れてただけというか…ごめんなさい」
うん、やっぱコイツはポンコツ姫だわ。
「だーかーら、私はポンコツじゃないですー! それと鑑定の結果が出ましたよ。え〜と……あ勇者様ですね。なら牢屋から出ていいですよ」
そう言いながら姫様は牢屋の鍵を開けて待機している。
え〜とこの手錠と足枷は外してくれないの?
「えっ? 貴方空間魔法でそれ外す事ができるでしょう? そうでなければ、もう少し緊張したり、脱出の手立てを探すために周りを見たりするはずです。貴方はちっとも脱出する為の思考、行動を取らないのはそれしかありません」
あっ、ポンコツ姫とか言ってスイマセン。とても有能です賢いです天才です。
「そうです、そうです。フフフ。もっと褒めなさい。そうすれば貴方に良い待遇をしてあげても……あれ?」
チャキッと音がして姫様は首元にナイフを当てられてる事に気がつく。
姫様が褒められて、上を見上げて喜んでる間に俺は空間魔法で手錠とかを外してナイフを取り出し素速く姫様の近くに移動して首にナイフを当ててるのである。
『喜べ。これからポンコツ姫からチョロ姫に昇格だ』
「いやいや、何が昇格ですか! ほぼ意味合い変わってないじゃないですか! 後、なんでまた私ナイフ当てられてるんですか?」
元気だな〜この姫様。ナイフより先に名前のツッコミとはツッコミの才能があるのでは?
「あっ! 貴方のせいでツッコミのスキルが手に入れる羽目に……考えて見てくださいよ! 姫のステータスにツッコミのスキルがある姿を。地味に恥ずかしいと思いません!?」
『あ〜なんか分かる気がするが俺には関係ないんでとりあえず俺からの質問答えやがれ』
「なんか丁寧になったり荒くなったりと口調がコロコロ変わるのは……目を瞑れって事ですね分かりましたから鳩尾にナイフの柄を食い込ませないで下さい。普通に割と痛いので」
俺は鳩尾に食い込ませてたナイフを空間魔法でしまい、質問する。
『ひとまず金を幾らか寄越せ。それとこの国には奴隷とかいたりするのかも答えろ』
「奴隷……ですか? 居るにはいますがそのお金で買うつもりですか?」
『そのつもりだ。俺は暗殺者だ。極力俺の存在を知ってる奴は少ないのが好都合だ。それに俺の手伝いをする者は裏切らない保証がある奴がいいからな』
「確かに奴隷は隷属魔法で主の命令は絶対ですし、手伝いには最適です。それと貴方の事を知ってるのは私だけですよ。仕事から逃げた先に見つけた、昼寝をしてる貴方をコッソリ攫ったので」
え? あのゴミ捨て場に姫様来てたの? しかも仕事から逃げる為って……。
『まぁ、一先ず俺はお前の為に暗躍するから金寄越せって事だな簡単にまとめると』
「凄い響きの悪い内容ですね。けど了解しました。お金は奴隷二人分位がいいですかね。それと貴方レベルが1のなので冒険者になってレベル上げをするのをオススメしますよ」
『お、冒険者があるって事はギルドがあるのか?』
「はい! それに名前は偽名で大丈夫ですし、クラスメイトの人たちはこの城の訓練所でレベル上げをするので遭遇する事も無いはずです。あるとしたら休憩がてら街を周る時に……って感じですね」
街で偶然出会うのは……仕方ないとしよう。これ程俺にとって良い条件なんだし、早速準備してもらおう。
『それじゃあ頼むぞ姫様』
「ハイ! では夜まで待って下さい。そのほうが見つからないので」
『了解した。それじゃあここで待ってればいいのか?』
「ここはもう使われない牢屋なので見張りも無いのでいいですよ」
『それじゃあ俺はここで寝てるわ。窓無いから時間分からないし』
「では夜になったらまた。ちなみに今は夕方に差し掛かる手前ぐらいなのですぐまた来ますよ」
そう言って姫様は通路を歩いて行った。俺はそれを見ながらそういやここは何処だと見渡したら見覚えのある扉を見つけた。
それは俺がこの世界に召喚された部屋だった。
あれ? あの時は牢屋とかは見かけなかったはずだが……それに周りには他に牢屋みたいなのは無いしこの牢屋は魔法で造ったのか?
まぁ今は関係ないしまだ眠たいから寝るか。
そして俺は石の冷たさを肌に感じながら眠りについた。
学校と塾のテストがあるため2週間投稿がありません。読者の皆様ご了承下さいませ。