来世で
私には、恋愛経験が無い。
人と付き合ったことなんてないし、キスをしたことも、手を繋いだこともない。
だから、勘違いした
「好き」「付き合いたい」「愛してる」
どれも言われたことがなかったから、キスは好きな人としかしないと信じていたから、そう言われてキスをされて両思いだと思ってしまった。
他の人とキスをしているところを見て泣いた私を笑ったあの人の言葉はまだ忘れられない。
「遊びなのに、馬鹿だなぁ」
耳を塞いでも聞こえてくる。
そんな馬鹿な私を認めてもらいたくて、友達に話したら「少し優しくされただけで勘違いしたのは自分じゃん」と笑われた。
恋愛経験が無いから比べようがなくて、私が間違ってるとしか思えなくて泣くしかなかった。
あの人に触られた所は全部気持ち悪くて、触られた所を見る度に吐いた。
ぐちゃぐちゃの部屋と姿見にうつる吐いたものが髪や口元についている自分を見て、心も体も何もかもが汚れた気がして死ぬしかないと思った。
だから、最後だけは似合わないって笑われた可愛い服を着て、髪を可愛く結んで、精一杯おめかしをして死のう。
そう考えたら重たい体は軽くなって、簡単にお風呂場に行けた。
汚れを洗い流して、大切な日専用のシャンプーとリンスを取って髪を洗う。
可愛い匂いでいっぱいになって、酸っぱい匂いは消えた。
お風呂から出て、可愛い服を着て、髪を可愛く結ぶ。
「かわいい、私って、すごく可愛いね」
初めて自分に可愛いって言えた。
そう言える自分も、可愛い格好をしてる自分も何もかもが可愛くて、自然と口角が上がって、スキップをしながら家を出る。
屋上に行くと、制服を着た女の子が座っていた。
私と一緒で、死のうとしてるのかな。
話しかけたいけど変な人だって思われたら嫌だな…、そう思いながら隣に座ると
「お姉さんも、飛び降りようと思ってます?」
話しかけられた。
「うん、そうだよ、あと敬語じゃなくて大丈夫」
目合ってるし、ちゃんと私に話しかけてるよね。
「わかった、そういえば私も飛び降りようと思ってるんだけどね、お姉さん可愛いし、可愛い服着てるから私も可愛い服着てくればよかったな〜って思った」
可愛いって、初めて言われた。
「ありがとう、私ので良ければ君も着てみる?」
嬉しすぎて変なこと言っちゃったな、
「え!今日初めて会ったのに良いの?」
「いつもなら嫌だけど、死ぬ時くらい可愛い服着たいのは分かるから、特別にね」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます…あ、手繋ごうよ、お姉さん」
「うん、繋ごうか」
そう言って、私から手を繋いで家に向かう。
家に入ると、散らかった部屋のことを思い出した。
「あ、部屋片付けてないから着替えるの、ここで大丈夫?」
そう言って女の子が頷いたのを確認して、クローゼットから服を持ってくる。
「私のと色違いの一着しか無かったんだけど、着る?嫌なら大丈夫だけ「着る!」じゃあ外で待ってるね、着れたら出ておいで「ありがとう、お姉さん」」
服を渡して、「ありがとう」という言葉にニヤケながら、外で待つ。
「着れたよ〜」
数分して、ドアが開いた。
「可愛い、すっごく似合ってる「お姉さんもね」」
あぁ、居心地がいいなぁ。
「じゃあ、行こうか」
笑顔でそう言うと、今度は女の子の方から手を繋いできた。
「私、可愛い服着たら似合わないって笑われるから可愛い服着れなかったの、でも、今ならそいつらに私はどんな服着ても可愛いし、かっこいいから似合ってるんだよって言える」
屋上に向かってる途中、女の子がそう言った。
「私も、似合わないって笑われるから着れなかった、でも今の私は、いや、私達は、いつでも最高に可愛くてかっこいいから私も笑ってきた奴にそう言えるよ」
ぐちゃぐちゃでまとまらない言葉、それでも伝えられてるからいいや。
屋上について、意味も無く女の子と唇を合わせた。
唇を合わせて、沢山写真を撮った。
それをロック画面にして、アイコンにして。
沢山写真を撮って、充電が無くなったあと、また唇を合わせた。
今のキスは、意味が無いわけじゃない。
照れてまともに話せなくなるから、意味を口には出せないけど。
「…来世でも、二人で可愛いを楽しもうね」
この子は、私が照れるようなことを簡単に口に出す。
でも、耳は真っ赤。
「私以外の子と楽しまないでね」
照れ隠しにそう言ってみると、「お姉さん以外とは可愛いを楽しめないよ」と返ってきた。
手を繋いで、ふたりで笑いながら、飛び降りる。
きっと、生きる選択肢はあった。
でも私は、来世でこの子と運命みたいに出会いたい。
来世で、幸せになりたい。




