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2話 悲しい現実

 そこは、いかにも中世ヨーロッパといった風情の町だった。


  塀はとても高く、分厚そうで、門番が中に入る人一人一人に検問?のようなことをしていた。並んでいる人はみんな、ザ、異世界!ぽい服装の冒険者か、商人らしき人ばかりで。


 裕哉は後ろからかなりの視線を浴びていた。理由はなんとなく想像がつく。

 スーツだからだ。


 転送されて最初に身の回りの物を確認したが、この世界の物とおぼしき硬貨が何枚か入った袋がポケットに入っていた。お金をくれるんなら、服も替えてくれと思ったが、無い物ねだりをしてもしょうがない。そんなことを考えているうちに、順番が回ってきた。

 しかし、俺は特に身分証明書のような物は持っていないが、と考えていた時、


 「お、兄ちゃん、ひょっとして異世界からやってきたのかい?出身国と名前をいえれば、通してあげるよ。」


 と、門番の男が言った。

 どうやら、過去に転生した人たちは、後輩が最初でつまずかないようにあらかじめ考えていたらしい。お言葉に甘えて、通してもらうことにした。

 背後の視線がいくらか納得したような雰囲気に感じたのは、とりあえず無視して。


 門番の男は、ありがたいことに部下に言って、町の中心部にあるという冒険者ギルドまで案内してくれた。

 中に入って改めて感じたが、町の規模に違わず、とても活気があって、賑やかだった。人も多かった。


 「それじゃあ、ここが冒険者ギルドだ。ここで冒険者登録をしたり、依頼を受けたりできる。何か困ったことがあったら、受付のエリーナさんに相談するといい。あの人は物知りだし、あの人自身、Aランクの元冒険者だったからな。それじゃ、頑張れよ!」


 門番はそう言って道を戻っていった。


 冒険者ギルドは周囲の建物よりずっと大きく、豪華な建物だった。

 ここに来る途中で来た話では、冒険者には階級があり、F,E,D,C,B,B+,A,A+,S,S+の10段階に分かれている。冒険者は自分のランクより上の依頼は受けられず、同じランクの冒険者5人でランクが1つ上の依頼を受けることができる。

 ランクを上げるには、定期的に依頼を受け、評価を上げるか、各ギルドで月に1度行われる進級テストに合格する必要がある。筆記と実技があり、実技はギルドに常駐している試験官が担当する。

 不合格になるまで連続で試験を受けられるので、非常に楽だ。


 「こんにちは!冒険者登録の方ですか?こちらへどうぞ。」


 中にいた人の視線が突き刺さる中、俺は受付カウンターの横にある小さく区切られたパーテーションのに入っていった。


 「はじめまして。私はこのギルドで受付案内を担当しております、エリーナと申します。これから、どうぞよろしくお願いいたします。」


 この人がエリーナさんか。俺と年はそう変わらないが、なぜ冒険者を辞めてしまったのだろう。

 などと疑念を抱きながらも、


 「はじめまして。俺の名前は小林裕哉です。こちらこそ、よろしくお願いします。」


 普通通りに挨拶をした。


 「その名前、やはり転生者の方でしたか。どれほどの能力値なのか、とても楽しみです。」


 エリーナは実に楽しそうな顔をして、


 「それでは、こちらの石版に手をかざして下さい。これからあなたの能力値を計らせていただきます。」


 と言った。


 石版にはコードが繋がれていて、上を向いたライトがついていた。

 裕哉は何が起こるのか怪しみながらも手をかざした。

 次の瞬間、ライトが光ったかと思うと、まるでグラフィックのような立体的な表が空間に映し出された。


 小林裕哉 Lv1


 HP 1000/1000   MP 500/500

 STR 200              スキル欄

 VIT 100    

 INT 250              

 AGE 200

 DEX 300


 予想以上に具体的な数字だったので、驚いた裕哉だったが、何しろ基準がわからないので何ともいえずにいると、


「な、なんでこんな...。」


 と言いかけて固まっているエリーナさんと目が合った。


[ええーっと、何かまずいことでも...。」


 急に心配になってきたので聞いてみると。

 裕哉はエリーナの次の言葉に唖然とした。


 まず、能力値の全体的な数値が他の転生者と比べてかなり低いらしい。みんな俺の7~10倍はあるそうだ。いくらなんでも低すぎないか、俺。泣きたくなってきた。それでも一般冒険者よりは高いのだが。

 次に、スキルがないこと。大抵、1つか2つはそれぞれのスキルをもってやってくるらしい。

 最後に、精霊がついていないこと。上位精霊か中位精霊を誰しも宿していて、非常に強力らしい。


 つまり、こういうことだ。


 俺は能力に恵まれず、スキルも無く、あまつさえ精霊の加護も無い「雑魚」らしい。

 てか、天界の爺さんはすごいスキルがあるとか言ってたけど、結局なんだったんだ?スキル欄には何も無かったけど。


 「でもでも、この世界の人々よりずっと強いですから、きっと大丈夫ですよ!」


 明るく言ってくれるエリーナさんだったが、その表情には陰りが見える。


 「ですよね!きっとなんとかなります。」


 少し気になったが、一通りの話は終わったので取りあえず宿に行くことにした。

 ギルドからもらった金額だと、1週間は寝泊まりできるみたいなので、飯を食べて、取りあえず寝た。


 そして翌朝。

 依頼をこなさないと冒険者は生活できない。

 まずは簡単な依頼からやっていこうかな、などと思いながらギルドにいくと、


 「あ、裕哉さん、おはようございます。」


 と言いながら小柄な人影が駆けてきた。


 「おはようございます、エリーナさん。何かありましたか?俺はこれから依頼を受けようと」


 「すいません、今日は依頼は受けられません。」


 「え、何でですか?」

 

 訝しむ俺に、エリーナさんはこう告げた。


 「裕哉さん、あなたにはこれから命がけの試練をクリアしていただきます。」

  


 





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