1話 人生終了のお知らせ
ーどうしてこうなった。
彼は一人、そう嘆いていた。
天井、床、壁の全てが真っ白で、そこにあるのは向かい合った椅子と一つの机、それに向かって椅子の奥にあるドア。これも白く、壁とほとんど見分けがつかない。彼の座る向かい側には黒いスーツを着こなした初老の男性がいる。俺の服装も、さっきまでは安物のスーツを着ていたはずが、今は白い和服を着ていた。
一体、これはどういう状況なのだろうか。最も、服装を見た時点で大体の想像はつくが。
「えーっと、ここは一体どちらで」
「ここは、死後の世界でございます。ご愁傷様です。」
「やっぱりそうなるかー。俺死んだ覚えがないんですが。」
「報告書によりますと、帰宅途中に気絶し、そのまま亡くなったとのことです。」
やってくれたな、社長。俺はそう独りごちた。俺、小林裕哉の勤めていたていた会社は、所謂ブラック企業というやつで、毎日が終電にギリギリ間に合うかどうかといったような生活が当たり前だった。
今思えば、あんな生活をしていたら、過労死するのも当然か。もっと違う生き方あったよなー。
「で、これから俺はどうなるんですか?」
「二つの選択肢があります。一つはこのまま成仏し、天国でのんびり暮らすこと。もう一つは今とは異なる世界へと転生し新たな生活をすることです。選択は自由です。」
転生という現代社会では絶対あり得ない状況に、裕哉は思いのほか早く順応した。というのも、彼もアニメやゲームをこよなく愛する、世間で言うところの「オタク」という人種であったからである。
老人のほうも慣れているのか、特に気にした様子もなく、
「それでは、どちらにするか決まりましたか?」
老人の問いに裕哉は、
「もちろん、転生に決まってますよ。」
これもまた、老人は無表情のまま、
「それでは、転生の手続きをいたします。なお、2度目以降の転生は認められておりませんので、ご承知おき下さい。」
と言い、前世での生活や趣味、特技などさまざまな質問が飛んできた。そして1時間ほどたち(時計がないのでわからないが)、長い長い質問もやんだ。老人は質問内容をまとめた紙を手に取り、
「それでは、少々お待ち下さい。」
などといい、裕哉の目の前からすうっと消えていった。かと思えば、数秒後には目の前の椅子に座っていて、思わず跳び上がりそうになった。
「手続きが完了いたしましたので、これより異世界へ転送いたしますが。」
ん?なにかあるのだろうか。
「ここからは、私個人の話となりますが、異世界へ渡った者のうち、約9割の者は1年以内に死亡しております。異世界に転生したからといって、必ずしも成功するわけではないことを忘れないでください。」
「あ、ありがとうございます。でも、なぜそんなことを。」
「あなたの獲得したスキルは使い方次第ではとても強くなりますが、誤った使い方をすれば、ほとんど意味をなさないものです。あなたならば、新たな世界を生き抜き、残りの1割となるかもしれない。老いぼれなりに、そう思ったまでです。」
「そうだったんですか。貴重なご意見、ありがとうございます。」
老人はそれ以上何も語らず(スキルについても教えてくれなかった),大きな魔方陣の中へ俺を押しやった。
「それでは、新たな世界での成功をお祈りしております。」
そして、俺の視界が光に包まれた。
気がつくと、俺はうっそうと木々が生い茂る森の中にいた。遠目に見える塔のてっぺんらしき建物を見つけ、そっちに町があると考えた裕哉は異世界での第一歩を踏み出したのだった。
はじめまして。期間は決めてませんが、定期的に投稿したいと思います。コメントお待ちしてます。




