敗北者
「へいへいへーい席だホームルームにつけー」
もやしみたいな体型の先生が変なことを言って教卓をリズミカルに叩く。
「先生、昨日もそれ言いました。いい加減にやめてください」
「誰かが面白いツッコミしてくれるまで先生これやめるつもりないからな」
生徒の一人が辛辣にそう言っても先生は鋼の心でそう言い返す。
面白いツッコミをお待ちのようだけど誰も乗らない。そもそも先生のネタが面白くないし。
「よーし全員いるな。先生お前らが学校に休まず来てくれて嬉しいぞ」
「先生、この前欠席者が増えると色々と面倒くさいって文句言ってましたよね?」
「先生そんなひどいこと言うように見えるか?見えないな。じゃあ先生からのお話だが───」
先生の話が右耳から左耳に通り抜ける。はぁ、蛇穴くん。なんで私の告白を罰ゲームだなんて言うんだろう。
「めんどくさいめんどくさいめんどくさい!あのねぇ!私は好きな人に好きって思いを伝えたいだけなの!罰ゲームでここまでする女の子いますか!?」
「い、いないと思います……」
ビシィッ!と人差し指で蛇穴くんを指すとたじろぎながらそう答える。
「そう!いない!つまり私は本気!アイラブユー!どぅーゆーあんだすたん!?」
「発音がひどすぎる……」
細かいこと気にしないの蛇穴くん。
そして実賀田ァ!次はオメーだっ!
「お前はなんなんだおまえい!人の弁当食うわ蛇穴くんには私が血の涙流したくなるくらい親しげだわ!」
くぅー、と涙を拭うフリをしながら実賀田に人差し指をビシィッ!と指す。
「言うてみろい!おまんと蛇穴くんの関係を!」
もうなに弁かもわかんないけど勢い任せにそう喋ってた。
さぁ実賀田ぁ……お前の答えを聞こうじゃないかぁ……!
「俺と蛇穴は親友だぞ!」
そうガハハと笑いながら蛇穴くんの肩を抱く。
そして照れながら顔を赤くして俯く蛇穴くんを見て私は、私は。
「ちっきしょぉぉぉぉ!」
なにかに敗北を感じながら、どこかの一発芸人みたいにそう叫んでいた。