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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第五章 大罪編
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閑話「結月來貴のバレンタイン」

過去の話です。思いついてから一日で仕上げました。

 ――それは、來貴が中学二年生だった時の事。


 自分の部屋にいた來貴は、突然の訪問者に困惑していた。今日は2月14日であり、時刻は午前9時。休日であるため、來貴は自分の部屋でゆっくりしていたのだ。


「――來くん、今日は何の日か知ってる?」


 いたずらに、來貴へ向かって問いかける凜。來貴の部屋に訪れたのは、凜だった。凜は、ニコニコした顔で來貴の方を見ていて、手を後ろに組んでいる。


 來貴は、記憶力がとても高い。先程の質問の答えだが、聞かれたときからわかっていた。去年もこういうことがあったため、忘れることは無かった。來貴は、凜の方を向かずに答える。


「……バレンタインデーだろ」


 來貴がそう言うと、凜は「正解っ、だからちょっと来て」と言い、來貴の方へ来て手を引っ張った。來貴は何をするかを大体悟ったが、口に出さずただ凜についていく。凜は來貴と手を繋いで階段を降り、一階へ行く。そして、リビングの中へと入っていった。


 リビングへ入った後、凜はソファに來貴を待たせる。そして――――。


「來くん、目閉じてて」

「……わかった」


 ――――凜にそう言われ、目を閉じる來貴。凜は歩いてキッチンの方へ行き、何かを取り出す。それを後ろに隠し、來貴の所へ戻る。……そして、凜は來貴に言う。


「……來くん、目開けて良いよ」


 言われたとおり、來貴は目を開ける。まず最初に目にしたのは、ピンク色の箱に、赤色のリボンに包まれているもの。……そして次に目にしたのは、それを差し出している凜。


「はいこれ、バレンタインチョコ」


 無言で、來貴はそのチョコを受け取る。心の中で、來貴は「またか」と呟いた。毎年、凜は來貴にバレンタインチョコを渡している。別に來貴は嫌なわけでは無いが、凜は他にも渡せる相手がいるだろうと思っている。


 義理とは言え、姉から貰ったバレンタインチョコをどうしようか來貴は考えていると、凜から声が掛かった。


「それ……ここで食べて?」


 大好きな姉の頼みである。來貴は勿論頷き、凜の言う通りにする。上の蓋を外し、來貴は中身を見る。蓋の裏には、大きく「LOVE」と書かれている。……本命チョコだと言うことは、來貴はすぐにわかった。……いや、わかっていた。


(相変わらずだな……)


 毎年、凜は來貴にバレンタインチョコを渡している。……それも、本命のものを。だから、このチョコが本命であるのはすぐにわかった。相変わらずのブラコンぶりである。その箱の中に入っていたチョコは、チョコトリュフが六個。


 かなり香ばしい香りが、周囲に漂う。來貴の鼻も、その香りを嗅いでいた。かなり良い香りであり、やはり美味しいのだと來貴は思う。


 來貴はその内の一つを手に取り、口に含む。思っていた通り、美味しい……と、來貴は思う。凜はお菓子作りも上手なため、チョコを作るくらいはお手のものなのである。……主にそれは、來貴のために上手くなったものだが。


 数回噛んだ後、胃の中へと飲み込む。その直後、凜が來貴に問いかける。


「どう……? おいしい……? これ、來くんのために作ったんだよ」


 恐る恐る、と言った感じである。自分の作ったチョコに自信はあるが、それでも自分以外に味見をした人がいないため、少しの不安があるのだ。そんな凜に、來貴は答えを言う。


「ん……おいしい。ありがとう、凜姉」


 來貴は、その一言を言う。來貴の返答に、凜は喜ぶ。


「――ありがとう、來くん! 大好き!」


 そう言って凜は來貴の隣に座り、肩に顔を乗せる。すぐに抱きつきたかったが、折角作ったチョコに当たる可能性があるためこのような形にしたのだ。そして、笑顔で來貴が自分の作ったチョコを食べる様子を見ていた。


「他のはどうなの?」


 他のチョコも口にした來貴に、凜はそう聞く。


「……おいしい。後、そうされると少し食べづらいんだけど」


 來貴はそう言っているが、食べること自体にあまり支障は無い。凜の位置は、來貴の左側。來貴は左手で箱を持って、右手で食べている。余程左肩を動かさない限りは、凜がいてもいなくても変わらないだろう。


 しかし、そこが問題では無い。問題なのは、凜の頭が肩に乗っていることだ。凜の髪が自身の視界に入ってくる他、凜の手が來貴の太腿の上に置かれているのも一つの要因である。……要は、気が散るのだ。


「……ん? やだよ」


 凜は來貴から少しも離れず、來貴がチョコを食べる様子を見る。來貴は、もういいかと心の中で諦めをつける。いくらやっても、凜は離れないだろうから。それに、引っ付かれても嫌な訳では無いから。


 ――そうして十数分後、來貴は凜が作ったチョコを全て食べ終わった。全てがかなりのおいしさで、來貴は何故自分にこんなに渡すのかが気になっていた。自分の事が好きなのはわかる。ダイレクトに言われれば、気付くだろう。……どう言う意味かは、別として。


 ……それに、自身には柚那がいる。自身の全てを、受け入れてくれた女の子が。


 今、凜は部屋にいる。何をしているのかは知らないが、勉強でもしているのだろう。


 ……そんなこんなで來貴は、琉愛と一緒に居る。部屋に戻っていて銃剣の整備をしていたところで、琉愛が部屋にやってきたのだ。丁度終わったため、來貴は琉愛に何をしに来たのか聞いていた。


「琉愛、何しに来たんだ?」

「えっと……あの、お兄ちゃん、ちょっと来てくれないかな?」

「……わかったよ」


 來貴は琉愛に着いていき、一階のリビングへと来た。中へ入った後、來貴は琉愛に、目を閉じるよう指示された。その場で立って待っていると、琉愛から「目……開けて良いよ?」と言われたため、來貴は目を開ける。


「お兄ちゃん……これ、バレンタインチョコ」


 琉愛から渡されたチョコを、來貴は受け取る。それは、青色の箱に白色のリボンが巻かれている可愛らしいものだった。


 ――そして、リボンには丸い文字で「LOVE」と書かれている。愛海はまだ小学六年生なので、文字が少し拙いのだ、ちなみに、これも本命である。……姉妹揃ってブラコンであるため、毎年こうやってバレンタインチョコを渡してくるのだ。


 しかし、來貴も鬱陶しいとは思っていないので、感謝して受け取っているが。


「お兄ちゃん……それ、今食べてくれない?」


 可愛い妹の頼みである。來貴は勿論頷き、琉愛の言う通りにする。箱の蓋を開け、中身を見る。中には、琉愛が作ったチョコが入っている。凜に手伝って貰い、不格好ながらも完成させた、チョコクッキーが六個。


 少し不格好だが、琉愛の確かな努力が感じられた。そして一つを取り、口に含む。数回噛んだ後に、胃の中へと飲み込んだ。


「……どう、かな? 美味しい?」


 琉愛が、不安げに問いかける。琉愛は凜とは違い、あまり料理やお菓子作りが得意では無い。出来ないわけでは無いが、それでも凜より劣る。だからこそ、凜に手伝ってもらっていたのだ。


 そして來貴は、そう言う事を全て排除した上で言う。


「……おいしいよ、琉愛」


 ――凜と琉愛を、比べるのは野暮であるから。だからこそ、來貴はただそれを言った。他の事は、付け加えず。


「……ホント? ――ありがとう、お兄ちゃん!」


 琉愛はそう言い、來貴に抱きつく。この頃の來貴の身長は約170cm、琉愛は約140cm。身長差はかなりあったため、琉愛が抱きついていてもあまり食べるのに支障は無かった。強いて言うならば、箱をかなり上に上げないと琉愛の頭に箱が当たることだろう。


 琉愛は、來貴の邪魔にならないように腕を覆わないように抱きついている。離そうとすると、琉愛が泣き出すかもしれないため、そのまま來貴は食べ進める。


「お兄ちゃん、他のはどう?」


 來貴に抱きつきながら、琉愛は問いかける。味がいいのは一つだけだった……と言う事が無いように。


「ああ、おいしいよ」


 來貴から帰ってきた答えに、琉愛は安堵する。……そして、來貴がチョコクッキーを全て食べ終わるまで抱きついていた。


 ――そうして、現在の時刻は午後3時20分。來貴は、出かける準備をしていた。午後4時に指定した場所へ来るよう、呼び出しを食らっているためだ。


 その時間までに、來貴はその場所へと行かねばならない。時間に余裕はあるが、念のため少し急いで準備をしていた。服を着替え、小さいバッグを持つ。その中に財布やらスマホやらを入れて、準備完了。


 出る前に一言、「いってきます」と告げて、家を出る。そして歩いて行く。時間に余裕があるためだ。走っていってもいいが、少し前くらいにつくのがいいと來貴は思っている。そのため、時間調整のため歩いている。


 ――指定された場所は、誰も居ない山の奥地。來貴がいつも特訓をしている山の、そのまた奥の場所だ。柚那に実戦指導をしていたところ、行ってみたいという理由で柚那が來貴を連れて奥に行ったところ、見つけた場所だ。


 そこは幻想的な景色が特徴で、來貴と柚那のお気に入りの場所である。


 その場所に、來貴は午後3時45分についた。まだ昼頃だが、その景色は幽玄としている。柚那はまだ来ていない。……恐らく、午後4時丁度になったら来るのだろう。


 ……それまで來貴は、草むらの上に座って待つことにした。


「――お待たせ、來貴。……少し待った?」


 時刻は午後4時。柚那は、その場所へと来た。柚那は、可愛らしい白色のバッグを肩に提げていて、少し息を切らしている。


 そしてその言葉に、來貴はこう返す。


「……いや、さっき来たところだ」

「……そっか」


 柚那ははにかみつつ、來貴の隣に座る。手と手を重ねて、持っていたバッグからあるものを取り出す。


「來貴、バレンタインチョコだよ! 既に凜さんと琉愛ちゃんから貰ってると思うけど……ね?」

「ありがとう、柚那」


 ――來貴は、最愛の彼女からのバレンタインチョコを受け取る。赤色の箱に、黄色のリボンがしてあるものだ。そして、そのリボンには「大好き!」と書かれている。來貴は口元が緩みながらも、蓋を開けて中身を見る。


 中に入っていたチョコは、柚那の手作りであるチョコレートマカロンが八つ。どれもこれも、かなり凝って作られている。


「……ねぇ、それ、ここで食べて?」


 來貴の頬に手を当てながら、囁くように言う。当然、來貴は柚那の言う通りにする。マカロンを一つ取ろうとしたが、何故か柚那に遮られる。突然の事に困惑したが、柚那がマカロンを一つ取った。


 そして、來貴の口元へと運んだのだ。柚那は「はい、あーん」と言っている。意図はわかったため、來貴は無言でそれを食べる。


「どう? おいしい?」


 いたずらっ子のような笑みを浮かべて、柚那は聞く。その答えは、当然――――。


「……ああ、おいしいよ」


 ――――おいしい、の一言である。実際にとても美味しかったが、來貴は柚那が作ったものは全部美味しいと言うことにしているのだ。


 ……それから、來貴は柚那にマカロンを食べさせられ続けた。一個食べる度に、來貴は柚那に「おいしい?」と聞かれて、その度に「おいしいよ」と返した。何回も同じ会話を繰り返しているが、來貴は鬱陶しいとは思わない。寧ろ、その様子を愛おしく感じた。


 ――やがて、來貴は全てのチョコレートマカロンを食べさせられた。……結論から言うと、全ておいしかった。柚那は強くないが、勉強も家事も出来るのだ。お菓子作りは、かなり練習したため物になっている。


 ……それから、來貴は柚那と他愛も会話をし続けた。例えば――。


「そう言えば、凜さんと琉愛ちゃんから貰ったバレンタインチョコはどうだったの?」


 ――凜と琉愛の事など。凜と琉愛がブラコンなのは、柚那も知っている。しかし、柚那は全然気にしていない。二人はかなり優しく、そして可愛いからだ。


「……なんで貰ったって言っていないのに、貰ったって事になっているんだ?」

「だってそうでしょ? 凜さんも琉愛ちゃんも、來貴の事好きだし」

「……まぁ、貰ったけど」

 

 凜と琉愛に、柚那は何回か会ったことがある。それに、來貴から凜と琉愛の話を何回も聞いている。だから、凜と琉愛の性格は大体わかっているのだ。


「……その二人以外から、バレンタインチョコは貰ってない?」


 そう言った柚那の目は、少し冷えたものだった。


「貰ってないが……凜姉と琉愛ならいいのか?」


 來貴の言葉に柚那は安堵する。凜と琉愛からのものならば、來貴に渡されても柚那はいいのだ。義理とは言え家族ではあるし、何よりもその二人の事が好きだから。


「……うん。二人とも、いい人だし、可愛いから大好きなの。凜さんも琉愛ちゃんの事も、來貴は大切なんでしょ?」

「……まあ」

「凜さんと琉愛ちゃんもブラコンだけど、來貴もシスコンだね」


 返す言葉も無く、來貴は柚那の方から目を逸らす。しかし、柚那に「こっち向いて」と言われたため、そちらの方を向く。


 柚那は、來貴と目を合わせようとする。來貴もそれを読み取り、柚那と目を合わせる。……そして、柚那は來貴の方になだれ込んだ。そして、來貴と目を合わせて聞こえるように呟く。


「――そういう所含めて、大好きだよ……來貴」

「――ああ、俺もだ……大好きだ、柚那」


 ――帰り道、二人は手を繋いで帰って行った。

次は本編を投稿します。

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