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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第四章 運命編
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80話「死と希望の香り」

メリークリスマス! (遅い上にその要素ゼロ)

「……あのね、來くん。ぐすっ……信じたく、無いと思うけど――――お父さん、死んじゃった」


 わかっていた結果であった。予測出来ていた結果だった。……だからこそ、何も出来ない自分が嫌に思える。自分の傷は治せても、他人の傷は治せない。


 ()()する事しか出来ない自分では、何も守れないのだろうか。……そして、それ以上に父の死が、恩人の死が哀しかった。


「お兄ちゃん……ぐすっ……お父さんが……寂しいよ……」


 琉愛が、來貴へ抱きつく。涙が來貴の服についているが、來貴は気にしていない。來貴は琉愛を慰めつつ、チラッと蓮也の方を見る。目は閉じているが、その表情は何処か安らいでいるようだった。


 ――來貴は顔を俯かせ、歯を強く噛む。溢れ出そうとしている嗚咽を、必死にかみ殺しているのだ。……だが、微かに漏れ出た嗚咽と同時に、目から涙が零れる。それ以上溢れないように、拳を強く握り蓋をする。


 ……そして落ち着いた琉愛は來貴から離れ、暗い顔をしながら凜の元へ行く。里奈は、ナースコールを使い看護師を呼ぶ。


 ――数分後、看護師が来た。里奈が事情を話すと、数秒間の黙祷の後テキパキと機械を外し蓮也をベッドごと連れて行った。


 それを見届けた後、來貴たちは家へと帰る。


 ――里奈の車に來貴、凜、琉愛が乗り込み、里奈が運転をする。帰っている途中に会話は無く、ただただ暗い雰囲気のまま帰宅した。


 里奈が車を駐め、家の中に入った後……全員、自分の部屋に籠もった。一人一人が、蓮也の死を嘆いていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



(――俺は、どうしたらよかったのだろうか)


 頭ではわかっている。親父の死は、防げないものだった。……そもそも、俺は日本にすらいなかったのだ。防ぎようがなかった。……だが、それは言い訳にはならない。そして、心がそれを認めない。


 ただ――その場にいなかっただけなのだから。


 ……今回の戦争で、自分がまだまだ非力だという事がわかった。あのとき、武器も一回の攻防で完全に破壊され、本気でないとは言え圧倒された。


 人である事さえ捨てて、強さを得ようとしても……結局、人は死んでいく。大切な人を守れない。……もう、何度目だ? 何をしても……強くなろうとして。


(どうすれば……もっと強くなれるんだ? いや……なんで、大切な人がこうも死んでいくんだ?)


 ――考えても、答えは浮かばない。そして、そのまま一日が過ぎていった。


 次の日、俺は早くに起きた。服を準備し、朝食を食べた後に着替える。歯磨きをしてから、何も持たずに家を出る。


 ……そして、歩いてその場所へと向かう。いつもは走って行くが、今回は違う。ただただ、歩いて行った。その結果、いつもは数分で行ける距離が十数分かかった。


 いつものようにオリケルスの家についた俺は、特訓を始めた。


 手に魔力を集め、一振りの刀を生み出す。今回は、二刀流ではなく一刀流でする。


 ――刀を振って感触を確認し、刀を振る。相手は、あの時に対峙したジーレスト・オヴェイロンだ。脳内で像を生み出し、応戦する。


 刀の一閃。……躱されたため、続けざまに刺突。……槍で防がれ、そこから雷が伝達される。魔力の壁で防ぎ、それから黒銀を放出。躱される。後ろに下がり、勢いを付けて刀を振る。槍で防がれ、鍔迫り合いが発生する。


 覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を使用し、槍を押し切ろうとしたが、瞬時に背後に回られ刺突。なんとか防げたが、体勢が整っていない。刀が弾かれて、身体が無防備になっている。


 ジーレストは、再び槍を突き出し刺突を繰り出す。


 ――そこで、俺は止めた。この先が、想像できたからだ。……再び、俺はジーレストの像と戦い始めた――――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 凜は、蓮也の死にかなりのショックを受けていた。……それは、そうだろう。自分の実親なのだ。……勉強も戦闘も、集中できなくなっている。部屋から出ず、中に引きこもっている。


 そのため、朝食は既に立ち直っている里奈が作っていた。……だが、一番ダメージが大きいのは里奈だ。隣にいた時間が、一番多かったから。だが、だからこそ前を向かねばならぬのだ。()()()()()限り……時間を戻すこと、そして歴史を改変する事は出来ない。


 ……琉愛も、部屋の中に籠もっている。朝食を食べるために出てきたきり、ずっと部屋の中。勉強もしているが、どうも集中できていない。そして、ベッドに戻り眠り始めた。


 三人とも……そして來貴も、心に深い傷を負ったままそれぞれ行動している。……だが、それも一つの答えだ。その答えが良いか悪いかは、別として。


 ――12時頃、凜は部屋から出た。お手洗いへと行くためだ。そこで來貴の部屋の前を通ったが、來貴がいないことに気付いた。何処かへ行っているのだろうと思い、お手洗いを済ませる。


 部屋へ戻った後、來貴にメールを送る。その内容は、「なるべく早く帰ってきてね」というもの。そして数分後、メールが返ってきた。内容は簡素で、「わかった」という一言のみ。


(いつも通りの來くんだ……私も、こんな調子じゃダメだよね。お姉ちゃんなんだから)


 そのメールを見て、凜は來貴らしいと思いつつ、勉強をする。……いつも通りの來貴とのメールのやり取りで、少しだけいつもの調子に戻ったのだ。


 そして始まった勉強は、先程より少しだけ集中できた。


 ――琉愛は、ベッドの中でうずくまっている。今日、蓮也が帰ってきているはずだった。だが、蓮也はもう……一生、帰ってこない。逝ってしまったのだ。その事はわかっていても、初めて大切な人を失ったため、対処法がわからない。


 凜とてそれは同じだが、姉であるため琉愛より早く立ち直れた。……琉愛も、このままじゃいけないとは思っている。だが、納得できない。何故、こうも人が死ぬのか。人は簡単に死ぬ。……だからこそ、蓮也は死んだのだろう。


(……嫌だな……もう、お父さんに会えないの。あまり会えなかったから、今日こそ会えるって、思ったのに……もう一生……)


 そこまで考え、琉愛は考えるのを止めた。それ以上は、耐えられないから。非情な現実から、より目を背けたくなってしまうから。


 ――突然、琉愛の部屋の扉がノックされた。……琉愛は、凜だと思い「どうぞ」と言う。


「……琉愛、大丈夫……じゃなさそうだけど。しばらく、一緒にいてあげるから」


 入って来たのは、里奈だった。琉愛は凜だと予想していたので、その正体に驚いていた。琉愛は、寝転んだ状態から起き上がり、ベッドの上に座る。……里奈は、琉愛の隣に座った。


 琉愛の方に向くと、優しい目を向ける。そして、琉愛の頭に手を乗せた。キョトンとしている琉愛を見ながら、優しく語り出す。


「琉愛、お父さんが死んじゃったのは……私も、凜も、來貴も、そしてあなたも辛いはず。……でもね、お父さんはもう戻ってこない。……ここは、琉愛もわかっているところよね?」

「……うん」


 顔を俯かせ、琉愛はそう返事をする。里奈は、琉愛の頭に手を乗せたまま語り続ける。


「……私も凜も來貴も、お父さんの死を乗り越えてる……とは言いがたいけど、前は向けてる。さっき凜の部屋に行ったけど、凜はいつもの調子だったよ。來貴は……家にいないけど、大丈夫そうだった。……すぐに、とは言わない。少しずつで良いから。私も、凜も、來貴もいる。……辛いなら、皆の所に行けばいいから」


 ――そして、里奈は琉愛の部屋を出て行った。部屋に残った琉愛は、自分の頬を叩いた。静かに、ペチンという音が響き渡る。


(お母さんの言うとおり、今のままじゃダメだよね。……うん、大丈夫。辛いけど、お兄ちゃんたちがいるって思えば楽になれる)


 琉愛は、中断していた勉強を再開した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――來貴は、かなり疲労していた。幾度のシュミレーションで、全力でジーレストの像と戦っていたのだ。その試行回数は、もう百を超えている。何度か魔力切れも起こし、その時には少し休憩して魔力を回復させた。


 そして魔力が回復した後は、基礎的な動きの向上。能力は使用せず、今まで以上の速度と強さを生み出さなければならない。覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)以外の能力を使えない可能性もある。……前回が、そうだった。一対一で、他に誰もいなければ全ての能力を使い全ての力を発揮出来る。


 ――だが、それはプライドだ。普通でありたいという幼いプライドで、來貴は人前で覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)以外の能力を使わない。昔、言われた言葉から本当の力すらも隠す。


 ……名を隠すだけで、能力の加減はあまりしていないが。


 時刻は現在13時。來貴は昼飯を食べていないので、そろそろお腹が空いてきた。來貴は帰ろうかなと思ったが、自分は今汗だくの状態だ。服も濡れていて、このままだと風邪を引く可能性が出て、帰った後凜に何をしていたのか問い詰められる。


 洗濯も凜がしているので、その時に来ていた服が汗だくだとマズいのだ。來貴はオリケルスの家に入り服を脱いだ。來貴は自分の身体を見下ろす。身体は引き締まっており、出ている所は何処もない。同時に、傷がかなりついていた。


 ――そして家の中にある籠に全て入れ、シャワーで汗を流す。流し終えた後は、タオルを再現し身体を拭く。


 身体についている水滴を全て拭き取った後、タオルを消す。……汗で濡れている服をそのまま着るわけにはいかないので、洗濯機とその他もろもろを再現する。そして、洗濯機の中に着ていた服を入れる。その間、全裸は困るので適当な服を再現して着る。


 ――数分後、服の洗濯が終わった。洗濯機の中から服を取りだし、洗濯機とその他もろもろを消す。今着ている服を脱ぎ、取り出した服を着る。先程まで着ている服は消し、オリケルスの家から出た。


 今回は、歩きではなく走って帰る。歩きだと結構かかるため、14時を回るかもしれないからだ。


 数分で帰路を駆け、家の前へと着いた。現在の時刻は13時半。來貴は玄関の扉を開け、家の中へと入った。


「……ただいま」

「おかえり、來貴」


 來貴が家に帰った後、里奈が來貴を出迎えた。


「……で、何処に行って何をしてたの? 來貴」


 そして、來貴に問い詰める。……來貴は少し目を閉じた後、質問に答えた。


「……山に行って、鍛えてた」

「……そう」


 投げかけた問いの答えに、里奈は淡泊に言う。……だが、その声の中に安堵と心配が含まれていた。そして、來貴はリビングへと行った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「――そうだ。一つ、聞きたいことがあるんだけど」


 リビングと廊下の境界線で足を止め、俺は母さんの方を向く。……そして、母さんはその質問を繰り出してきた。


「……今、心の中はどうなってる?」


 ――その問いは、恐らく親父の死についてだろう。あの死を経て、気持ちや心がどうなっているか。……それが、母さんの聞きたいことだろう。


「……大丈夫だ。絶望していない」

「なら……大丈夫ね。昼食は冷蔵庫の中にあるから」


 そう言って、母さんは二階への階段を昇っていった。その様子を尻目に、俺はリビングへと入っていった。


(……そうだ。心は、絶望していない。だからこそ、希望を持たねばならない。……俺には、やることがあるから)


 心の中で決意を確認しつつ、冷蔵庫から俺の昼食を取り出す。その昼食はラッピングされていて、そのラップに張り紙がされている。


 内容を見るに、どうやら凜姉からのようだ。それには、こう書かれている。


『レンジでチンしてから食べてね! 食べ終わったら食器洗って。凜より』


 俺はその張り紙を剥がし、レンジの中に入れてチンする。時間は適当に、1分と設定。


 一分経った後、レンジの中から昼食を取り出す。


「……いただきます」


 ――そして、昼食を食べ始めた。味はかなり美味しく、食べやすい。……さすがと言える程の料理だった。


 別に急ぐ事も無いので、ゆっくり味わいながら食べる。味をよく感じることが出来て、凜姉の料理の上手さがよくわかる。


 ――十数分経った後、凜姉が作った昼食を食べ終わった。食器を台所に持って行き、皿洗いを始める。あの張り紙に、食器を洗えと書いてあったからだ。


 まぁ、これぐらいならすぐ出来るので構わない。


 洗剤のついたスポンジを手に取り、せっせと皿を洗う。数分で皿洗いを終え、スポンジを元あった場所に置く。そして手を洗ってから、リビングを出て自分の部屋へ向かった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――軍事機関本部、最上階。その階の三つある部屋の、左の部屋。……その中では、七人が椅子に座って仕事をしている。


 ……が、最奥に座す男――神藤桂は、ある事を思い出していた。


(……成長、したな)


 心の中でそう呟いた後、再び仕事に取り掛かった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

運命編はこれと幕間一つで終わりです。

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