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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第四章 運命編
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70話「いつかの因縁」

 ――俺は奥にあった建物を超え、森林を抜け出す手前まで来た。そして、そこに『いた』。


「やっと来たんだ。待ちくたびれたよ」


 そいつは、近くの岩に座っていた。軍服のようなものを来ており、懐に刀を差している。髪は白で、瞳は両眼とも緑。……一目で、普通では無いとわかった。そして、そいつは立ち上がって岩から降りる。その後、俺の目の前に来た。


「僕の名前はローレ・イノセント。アルヴァダ帝国の精鋭部隊・聖邪闘鋭隊(カオスエージェント)に所属している者さ」


 ――そいつは、自己紹介をした。大げさな身振り手振りを加えつつ。そして、そいつは自己紹介が終わった後、周囲を歩き回った。


 丁度俺の数メートル先まで来たところ、そいつは俺の方を向く。その表情には、不気味な笑みが浮かんでいた。何をするつもりなのだろうか……俺が警戒していると、そいつがおもむろにしゃべり出した。


「あぁ、そうだ。君に、言っておきたいことがあったんだ」


 ……俺に、言っておきたいこと。何なのだろうか。少なくとも、俺とこいつに関わりは無い。だから、何も思いつかない。何を言い出すか、予想が付かない。


「君と戦ったレノルドという女性の兵士は、アルヴァダ帝国の者だ。造人尖兵軍(マスプロソルジャー)に、所属している。この戦争にも、何人か参戦しているよ。まぁ、聖邪闘鋭隊(カオスエージェント)は僕だけなんだけど」


 ……と言うことは、それ以外の銃を持った兵はただの雑兵と言うことか。それにしては、数が多いな。その造人尖兵軍(マスプロソルジャー)とかいう軍があるならば、雑兵はいらないと思うが。……なら、その造人尖兵軍(マスプロソルジャー)の数は少ないのかもしれない。


 階級としては造人尖兵軍(マスプロソルジャー)より聖邪闘鋭隊(カオスエージェント)の方が上だろう。そいつはレノルドを呼び捨てにしている。このアルヴァダ帝国は序列に関しては厳しいからな。


 ……それなら、雑兵がいる理由は? ……いや、考えるまでも無いか。


 数の確保。それが、雑兵がいる理由だろう。雑兵にも、比較的強い者はいる。その者は、階級が上がり造人尖兵軍(マスプロソルジャー)に所属していく。そして雑兵が補充される。雑兵は、ただの軍人。銃と魔力の使い方しか教えられてないように思えた。


 ……ならば、階級が上がるごとに戦術に幅が広がる。レノルドが大剣や炎を使っていたように、上の者は銃や魔力以外を使ってくる可能性があるな。


(――腑に落ちない。言いたいことはそれだけか? それならば、言う必要性は無いと感じる)


 先程の情報は、ただ俺に――敵に情報を渡しているのと同じだ。それならば、渡さない方がいい。俺が考えていると、そいつが再び喋り出す。


「――今の一言だけで、何か察したようだね。……まぁ、それは良いか。君はここで消えるんだし。……さてと、もう一つ、言うことがある」


 そいつは俺に真剣な表情を向けた。……だがそれは、段々と不気味な笑みに変わっていって――――。


「――――――――――――」


 ――――その言葉を聞いたとき……俺は無意識に銃剣を抜き、そいつに向かって振り下ろしていた。頭に血が上っているのがわかる。このまま戦うのもマズいとわかっている。


 だが、気に食わない。先程の発言が本当かどうかはどうでも良い。"それ"を穢す事が、気に食わないのだ。


 こいつは、絶対に殺す。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 來貴は覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)時間支配(クロノ・ルーラー)殺戮機械(キラー・マシン)を同時に使い、自身を強化しながら時間を止め、魔力刃に殺戮機械(キラー・マシン)を使う。


 そして、止まっているローレに一撃の刃を――――。


「怖いねぇ。時間を止めて殺そうだなんて」


 ――――だが、ローレは停止世界の中で動いていて、眩い白の光りを纏った腕に受け止められた。


 ……來貴は少し動揺したが、すぐに平常心を保つ。そう言う能力の持ち主なのだろうと推測し、時間停止を解除する。これ以上時間を停止しても意味ないと思ったからだ。


 世界に色が戻ると同時に、來貴が持つ銃剣の刃が黒く輝く。死黒暴滅(ブラック・デストロイ)の黒波によるものだ。禍々しい"黒"が、刃だけで無く來貴の腕も包んでいく。


(……ここまで黒波を出すのは初めてだが、大丈夫だろう。今は、こいつを殺す事が優先だ)


 更に、黒が來貴を包む。その様子を見て、ローレも自身を白で包み、懐の剣を抜いた。


 ――そして、二人は一瞬の内にして近づく。禍々しい黒と、穢れ無き白がぶつかり合う。勝ったのは、穢れ無き白。


 禍々しい黒は穢れ無き白に浄化され、全て消えてしまう。そして、穢れ無き白は來貴の腕をも侵食した。それは皮膚や血液を焦がし、來貴の腕の骨が露出する。それを確認した瞬間、來貴は距離を取り、より強い"黒"で"白"を掻き消す。


(……なんだ、アレ。死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を、掻き消した……? それに、俺の腕まで……)


 來貴はアレが何なのか考えようとしたが――。


「ッ……」


 ――腕が痛む。アレは、熱を持っていた。その熱で、皮膚と血液が溶け、骨が露出した。骨は溶けていないが、出血はしている。……このままだと、マズい。そう悟った來貴は、悪魔化(デーヴィス)を発動する。


 発動した瞬間、來貴の背に二対の黒い翼が現れ、眼球が黒く染まる。額に紋様が浮かび上がり、そして、腕が一瞬にして完治した。


「……悪魔の力……禍々しいね。だけど、僕には関係無い……!」


 ローレはそう呟き、剣に"白"を纏わせながら來貴に肉薄する。來貴は、ローレから距離を取るため空に飛び上がった。ローレも、來貴を追って空に跳び上がる。


(あの白、対策法は無いものか……先程より出力が上がっているように見える。……だが、それはこちらも同じ事。それに、今はこいつを殺す事で頭が埋まっている……!)


 下から向かってくるローレは、左から横薙ぎに剣を振るおうとしているのが予測出来た。來貴は少し飛び上がり、再び死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を発動する。今回のものは、前とは比較にならないほど黒は禍々しく、少しだけ銀色が混じっていた。


 そして、銃剣と腕と翼に"黒銀"を纏わせ、ローレの"白"を迎え撃つ。悪魔化(デーヴィス)により力を底上げされた黒と、ローレの白では、黒の方が強かった。


 黒の斬撃を食らい、ローレは地面に叩きつけられる。それだけでは終わらず、來貴はローレが叩きつけられた場所を割り出し、そこに黒い槍を打ち込む。この一連の攻撃で、土煙が舞い、クレーターが誕生した。


 それによりローレの姿は見えないが、來貴は終わったと考えた。……だが、妙な気配がしたため、少し離れた場所へ降りた。


「……いくら僕が悪魔の力に有利と言えど、僕以上の力で打ち込められたら負けるか……フフッ、さすがだね」


 ローレは來貴に聞こえる声で呟きつつ、立ち上がる。土煙が晴れ、來貴はローレの姿が確認出来た。だが、その姿は來貴にとって予想外のものだった。


(……何だそれは。白い翼に、白い紋様。それでは、まるで――)


 來貴が心の中で驚いていると、ローレは喋り出す。


「アハッ、驚いちゃった? さすがの君でも予想外だったみたいだね。……君も察していると思うし、説明するよ。これは、天使の力。名は天使化(エーゼル)。まぁ簡単に言うと、悪魔で言う悪魔化(デーヴィス)だ。わかりやすいだろう? さて、僕はお喋りが好きだから話が長くなっちゃうけど……そろそろ終わらせよう」


 ――そう言う傍ら、ローレはこう思っていた。


(……それに、こうしないと回復が追いつかない。幸運にも、あの子は僕の話に興味があるようだしね)


 ローレは、先程の來貴の攻撃で大きく身体を損傷していた。大体は白で取り繕っているが、完全には直っていない。……これが示すのは、才能の差だろうか。それとも、技量の差だろうか。


 そして、ローレは手を広げ、おもむろに語り始めた。來貴は有益な情報が得られるかも知れないと思い、警戒を続けつつ話を聞く。


「僕の能力は、腐敗の聖痕(ディケイ・スティグマ)。邪悪を聖する能力だ。……どんな能力か、自分で考えて貰って。そして、停止時間の中で動けた訳だけど……まぁ、君の知らないことだ。僕は自分の力を誇示するのは好きだけど、余計なことを言うのは嫌いでね。話はこれで終わりだよ」


 ローレの話を聞き終わったと同時に、來貴はローレに銃弾を撃ち込む。撃ち込む数は、入っている全弾――26発。來貴が撃った銃弾には、全て死黒暴滅(ブラック・デストロイ)の黒銀と殺戮機械(キラー・マシン)の滅殺を込めている。


 ……故に、当たれば死。ローレが白で防ごうとしても、それを黒銀で貫いて滅殺する。それが、この銃弾だ。


 ローレは、天使の翼で風圧と魔力を出し、銃弾をはね除ける。そして剣に白の聖痕を付与し、來貴に剣閃を放つ。だが、來貴の黒い斬撃により堕とされた。ローレはそれを予測済みで、腐敗の聖痕(ディケイ・スティグマ)を発動させ、來貴に接近する。


 來貴はそれに反応し、死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を発動させて迎え撃つ。持っている銃剣に黒銀を纏わせ、更に上から地獄門(ヘル・ゲート)の地獄の炎を加える。それを見たローレも、剣に纏わせている白き聖痕に、生み出した氷を纏わせる。


 ――()()なる黒銀の炎と、()()なる白き氷がぶつかり合い、辺りに衝撃波が発生する。それは周辺の木をなぎ倒し、地面をひび割れさせる。


 だが二人はそれに目もくれず、持っている得物に"力"を込め続ける。それは、魔力だったり、能力だったり。


 ……そして、邪悪なる黒銀の炎が聖純なる白き氷に打ち勝ち、ローレの身体に深く傷を付けた。ローレは大きく吹っ飛び、森林の中の木にぶつかった。再生できないように、地獄の炎がローレに絡みついているため、ダメージは大きい。


 來貴はローレを追い、森林の中に入っていく。周辺の木はなぎ倒されていたため、場所の特定は容易だった。そして、來貴がローレを視認した瞬間。ローレの身体を白が多い、身体を癒やす。地獄の炎は既に消えていて、傷は全て治っている。……だが、ローレの魔力は残り少なかった。


(やはり厳しいか……! 僕の能力では、あの子に有利なハズなのに……)


 腐敗の聖痕(ディケイ・スティグマ)の本質は、『破邪』。邪悪を滅する事こそが、この能力の本質なのである。……それ故、邪悪を()()()という名が付けられた。


 ――なのに、來貴の邪悪に打ち勝つことが出来ない。……出来たのは、最初の攻防のみ。それは、來貴が冷静で無かったからだ。それ以降は、まるで刃が立っていない。來貴はダメージを負ったことで、冷静となったのだ。


 ローレは心の中で焦りを覚えつつも、表には出さずに笑みを浮かべる。焦りを出しても、來貴には勝てないと、ローレはわかっていたからだ。


(……フッ、これも才能の差か。……憎らしいよ。僕の方が先に生まれたはずなのに、僕の方が経験を積んだはずなのに。僕の方が努力をしたはずなのに。……いや、今更これを言うのは野暮か)


 ローレは、静かに目を閉じる。……そして、大気中の魔素を集めて魔力の回復を促す。僅かな時間だが、來貴が接近するまでに間に合った。


 周囲に光りを放ち、來貴の足を一瞬だけ止める。その一瞬で、ローレは眼を開き剣を振るう。


「――白き聖光(ホワイト・シャイニー)!」


 ローレが持つ技の中で、最速のもの。それを、動けないでいる來貴に放つ。狙うのは、頭、首、心臓、足の四つ。ローレはこれで死なない場合を想定している。故に、対処しやすいように足を削ぐつもりなのだ。


 ……來貴は銃剣を翳し、技を放つ。


「――黒き斬痕(ブラック・スカー)


 ……既に、その技は放たれている。ローレが放った技は容易く弾かれ、再び斬撃が翔ける。


(……へっ?)


 速すぎたために、ローレは技の認識が出来なかった。傷は天使化(エーゼル)の力で治っていく。……だが、精神的な傷は治らない。


 ……ローレの中の最悪のパターンで、死なない場合が実現された。來貴には、掠り傷しかついていない。……その掠り傷も、一瞬の内にして悪魔化(デーヴィス)の力で治っていく。


 ローレは魔力が殆ど残っておらず、身体の疲労も激しい。対して來貴は、魔力が半分以上残っていて、疲労も少しほどしか無い。……ローレに、勝ち目など無かった。


(――そろそろ終わりそうだな。見たところ、もう魔力が残っていないだろう。……ようやく、殺せるな)


「……地獄武装(ヘルズウェポン)灼熱淵獄剣(インフェルノ)


 來貴は銃剣を構え、能力を発動し技を放つ準備に入る。來貴の額に汗がしたたり、熱がローレにも伝わっている。最強の地獄の熱波を内包した刃は、途轍もない熱を持っているのだ。


 そして、そこに手加減というものは無く、完全にローレを消滅させる気でいた。


「……まだだッ、まだ、終わらせないよッ!!」


 それに呼応するかのように、ローレも最後の気力を振り絞る。ローレが放つのは、自身の中で最強の技。


 ――一瞬だった。來貴とローレが、技の準備を終えたのは。


黒銀爆覇灼熱斬ブラックアウトバーニングレイ!!」


 來貴が放つのは、黒銀冷死凍柩斬ブラックアウトフローズンレイの炎版。凍柩霊獄剣(コキュートス)灼熱淵獄剣(インフェルノ)に変わったのみ。……それ以外は、変わっていない。……ただ、前とは比にならない程火力が上がっているが。


腐敗なる聖痕の軌跡ディケイ・スティグマ・オブ・ロード!!」


 かたやローレが放つのは、自身の能力である腐敗の聖痕(ディケイ・スティグマ)を最大限に使った技。技術を使って出した氷などは、來貴の炎で溶かされると思ったため出さなかった。……それ故、自身の能力を信じ、白い聖なる光りの剣閃を放つ。


 ローレの方が、能力の相性的には有利だ。だが、來貴はそれを力でねじ伏せてくる。


 ――一方では黒銀色の爆風と炎が広がり、森林が燃えていく。もう一方では全てが腐敗し、その道が聖なる白い剣閃の軌跡となる。……やがて、それらはぶつかり合う。


 勝ったのは來貴だ。互いの全力の技に、最初は拮抗していたが、最初のみ。來貴が段々と力を込めていく度に、ローレが押されていく。……やがてローレが押し負け、來貴の勝利となったのだ。


 ――目の前に迫る黒銀色の灼熱に、ローレは目を閉じる。


 直後に爆音が鳴り響き、土煙が舞い衝撃波が発生する。その中心にローレ・イノセントの姿は無い。文字通りの、消滅である。


(――これで終わりだね。結構、いいものが見れたよ。……でも、これは理不尽すぎやしないかい?)


 ……ローレが最期に思い感じたのは、満足感と理不尽だった。

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