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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第四章 運命編
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67話「空白」

 ――俺は校長室を出てから、一年生の玄関へ向かって歩き出した。少し早足で歩きつつ、俺は頭の中で今回の戦争の準備の予定を立てる。


(武器……は、今改造中だが、もうすぐで終わる。それで行く。防刃防弾の服……は、要らない。いや、必要無い)


 そもそも準備するものが少なかったので、一瞬で終わった。丁度そこで、後ろから声が響いた。


「結月君!」


 後ろを振り返ってみると、瑠璃がいた。瑠璃は俺の隣に立ち、こう聞いてきた。


「一緒に帰ってもいいかな? 聞きたいことがあるんだよ」

「……構わない」


 今日は、特に何も無い。予定が無いので、瑠璃の申し出を受け入れた――――。




 ――――そして、帰り道。俺は、瑠璃から質問をされた。


「結月君、君はなんでこの戦争に参加したの?」


 ……その質問を聞いた時、俺は自分の顔が強張るのがわかった。だがすぐに戻し、質問の答えを口にする。


 それは、あっているかもしれない。それは、違うかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。いつか必ず、アルヴァダ帝国を()()


「……俺が俺であるためだ」


 ――その答えを聞いた瑠璃は、頭にハテナマークを浮かべながらも、それ以上は何も聞かなかった。……いや、聞かないで居てくれた、が正しいのだろうか。


 ……それでいい。……何も、聞くな。


 ――そして、そのまま何の会話も無く、俺と瑠璃は別れた。俺は家に帰り、自分の部屋に戻っている。


 自分の部屋に戻った俺は、早速戦争に向けての準備を始めた。俺が使っている銃剣の最終調整だ。これは、オリケルスの使っていた武器を溶かして組み込んでいる。


 ……その作業に時間がとても掛かったせいで、まだ終わっていない。夏休み中に来た何個かの依頼は、全て拳で敵を殺した。……いちいち万物具現化の眼リアライゼーション・アイで再現するのは面倒なので、早く完成させたい。


(後は……形を合わせるだけだな。振りながら合わせよう)


 しばらく形を固め続けた後、残るは形の調整のみとなった。一番振りやすい形に調整する。


 まずは、能力で周りに音が漏れないようにする。そして、床にマットを再現する。……これでよし。早速始めよう――――。




 ――――そうして、数時間。


(……これだな。かなり形状が変わったが、まぁ慣れるだろう)


 銃身は前より少し伸び、持ち手を少し曲げた。そして、素材を変えた。能力でそれらを組み込み、完成させた。色は面倒なので変えていないが、それ以外の部分はほぼ全て変えた。


 魔力刃の部分は、若干刀身を縦と横に伸ばした。そして、魔力刃に金属の芯を組み込んだ。これにより、魔力刃はより強固となった。


 とりあえずは改造が終わったので、バッグの中に仕舞っておこうと思う。と言うわけで俺はバッグを手に取り、その中に銃剣を入れる。……一瞬入らないかと思ったが、ちゃんと入って安心した。もうすることは無いので、寝ようと思う。


 そして、俺はマットを消して能力を解除し、ベッドに入り眠りについた。


 ――次の日。


 ……早朝四時、俺は珍しく早く起きていた。早く起きた俺は、家から出て家の屋根の上にいた。屋根の上で特に何かするわけでも無く、ただ立っていた。吹く風を身体全体で受けながら、目を閉じる。


 ――浮かんでくるのは、あの時の記憶。忌まわしき、あの時の記憶。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「――――ねぇ、來貴」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ……そこで、俺の記憶は途絶えた。そこから先は、覚えていない。


「おーい、來くん! 何してるの?」


 下から凜姉の声が聞こえてきて、俺は屋根の上に座る。すると凜姉は、屋根の上に跳んで来た。そして、俺の隣に座る。その事に驚きつつも、俺は平常心を保つ。


「こんな早くに起きてるなんて珍しいね。……しかも、屋根の上にいるなんて。……何か、学校であった?」


 何も無かった……と、言えば、嘘になる。昨日、俺はアルヴァダ帝国との戦争に参加することとなった。勿論、一人ででは無い。……そして、それは一週間後。いや、今日言うと後六日か。凜姉に言う時間は、まだ沢山ある。


 ……言ってもいいことなのだろうか。恐らく、言っていいことなのだろう。凜姉は、俺と同じ高校に通っている先輩だ。


「……戦争に、参加することになった」


 俺が吐き出した言葉を聞いた凜姉は、途端に真剣な顔になった。そして、こう聞いてくる。


「……そうなんだ。何処と戦うの?」


 そう聞いてきた凜姉の方を向き、俺はその答えを口にする。


「……アルヴァダ帝国」


 その名前を聞いた凜姉は、口元に手を添えた。


「……大丈夫なの、來くん」


 ――凜姉は、俺にそう聞いてくれた。……だが、俺の答えはもう決まっている。


「……ああ、大丈夫だ。……六日後、アルヴァダ帝国に行く。凜姉は、何かあるのか?」


 凜姉にも何か来たのでは無いかと思い、俺はそう聞いてみる。しかし返ってきた答えは、「何も来てないよ」だった。……よかった、凜姉に知られることは無いようだ。


 そう思いながら、俺は屋根の上に立ち上がる。それを見た凜姉も、立ち上がった。俺と凜姉は屋根の上から飛び降り、家の中に戻っていった。


 家の中に戻った後は、朝食を作る凜姉を手伝った。そして、出来上がった朝食を凜姉と俺と琉愛の三人で食べた。昼食を食べた後は、準備をして学校へ行く。今日も、凜姉に一緒に行こうと言われたので一緒に行く。


 そして今は、学校へ行っている途中だ。


「……ねぇ、來くん」


 ――凜姉が、俺の服の裾を掴む。それを確認して、俺は凜姉の方を向いた。


「……どうした?」


 後ろを向くことで見えた凜姉の顔には、涙が浮かんでいるように見えた。……だが、俺はそれを言うことは出来なかった。だから、俺は黙ったまま凜姉の方を向く。


 そして、凜姉の話に耳を傾ける。


「……本当に、大丈夫なの? アルヴァダ帝国は……強い。今回の戦争で国の存続が決定するわけじゃないと思うけど、大きな影響はあると思う。……それに、來くんは――んっ」


 ――凜姉がその言葉を言いかけたとき、俺は手で凜姉の口を塞いだ。凜姉は、顔を赤くして固まっている。そんな凜姉に俺は言った。


「――それ以上は、言うな」


 それだけ言ってから手を離し、俺は学校へ向かった――――。




 ――――そして学校に着き、凜姉と分かれて教室へ向かう。


 やがて教室に着き、誰も居ない教室の中に入る。その後、自分の席へと行った。しばらく自分の席で暇していると、教室の扉がガラガラと音を立てて開いた。


「おはようございます、來貴君」


 入って来たのは、文奈だった。後ろに黎と雫も居る。そうして教室に入って来た文奈たちは、早速俺の所に来た。……何をしに来たのだろうか。恐らくは、昨日のことだろうが。


 昨日、何があったのか。それが気になるのだろう。


「來貴。昨日、何かあったの?」


 早速、黎がそう聞いてくる。


「それ、私も気になります」


 追従して、文奈も聞いてきた。雫は無言だが、こちらの会話に注目している。……そして、俺は口を開く。


「……校長から話があった。そこで、俺は戦争に参加することになった」


 俺がそういった瞬間、三人の顔色が変わった。……その後三人は話し合い、少し時間が経った後文奈が代表してこう聞いてきた。


「……何故、戦争に参加することになったんですか?」

「知らん」


 深刻そうな顔で聞いてきた文奈に対し、俺はあっけらかんとそう答える。その返答を受け取った文奈と他二人は、呆れた顔をしている。……だが、本当に知らないので仕方ないだろう。まぁ、俺より早く来ていた瑠璃ならば知っているかもしれないが。


「……あっけらかんと言うんですね。何処の国と戦うのかは知りませんが、死ぬかもしれないんですよ?」


 ――死ぬかもしれない、ね。そんなことは無い。俺は、負けない。それ故、死ぬことは無い。


 ……文奈たちは心配そうだな。ここは一つ、言っておくか。


「俺が死ぬことは無い。……だから、まぁ……安心しろ」


 俺がそう言ったとき、文奈は口に微笑を浮かべた。黎と雫は、そんな俺たちの様子を見守っている。


「……はい、わかりました。來貴君の無事を信じて待っています」


 そうして、日は流れ――――。




 ――――六日後。……ここは、一週間後と言った方がいいのだろうか。


 ともかく、今日が戦争の日だ。……アルヴァダ帝国と、激突するときだ。俺は今、先に朝食を作って食べて、学校へ向かおうとしている。集合時間が六時半なので、さっさと出ないと間に合わないのだ。この時間、珍しく凜姉が寝ていたため、自分で朝食を作った。


 凜姉と琉愛の分は作り置きしてあるため、問題は無い。


 そう思い、家を出ようとしたとき――。


「……あれ? お兄ちゃん、今日は出るの早いね。……あ、そっか。今日が、戦争の日だったね」


 ――琉愛が、やってきた。琉愛は、今起きたかのような感じである。戦争のことについては、凜姉から伝えてもらったので、その事は琉愛も知っている。……知らされたとき、琉愛が涙目で部屋に入って抱きついてきたが。


 ……とりあえず挨拶だけして出ようと思ったが、琉愛が腕を掴んできた。


「……どうした? 琉愛」


 琉愛は顔を俯かせていて、どんな顔をしているのかよく見えない。……だが、微かに伝わる震えで、何かを恐れているのがわかった。


「……大丈夫だよね、お兄ちゃん。死なないよね?」


 琉愛がバッと顔を上げながら、俺にそう聞く。その目尻には、涙が浮かんでいる。……俺は琉愛の頭を撫でながら、耳元で囁く。


「……あぁ、大丈夫だ。俺は死なない。怪我は……するかもしれないが」


 琉愛の顔から涙は消えている。……もう大丈夫そうだな。


「じゃあ、俺は行ってくる」


 そう言いながら、俺は玄関から家を出る。後ろからは、琉愛の「いってらっしゃい」と言う声が聞こえた――――。




 ――――そして、学校に着いた。玄関先にいた校長に連れて行かれ、一階にある駐車場に一番近い教室に連れて行かれた。その教室の中には、俺以外に誰も居なかった。校長から「全員が来るまで待っていて下さい」と言われ、その教室で待つ。


 校長は教室から出て行き、何処かへ行った。


 ――その後、続々とあの時校長室にいたメンバーが来ていく。やがて数十分経った頃、全てのメンバーが集まった。


「では今から、車へ乗り込むので着いてきて下さい」


 校長の言葉に、この教室にいた面々は校長について行く。早朝の学校の廊下を歩き、各自靴を取りに行ってから再び集合する。


 そして、また校長について行った先は――。


「駐車場に着きましたので、あの車に乗り込みます。運転は、私がします」


 ――駐車場、だった。そこには教師たちの車があるが、一つだけ大きな車がある。……恐らく、港まで行くための車だろう。


 ……そして、全員が車へと乗り込み、校長が車を走らせる。


「では、行きますよ?」


 そうして、出発した――――。




 ――――数時間経った後、神奈川の港に着いた。港に着いた後、俺たちは車から出た後校長から最後の一言を掛けられていた。


「皆さん、これは軍事機関から出された正式な依頼です。……必ず、達成させて帰ってきて下さい」


 そう言って、校長は乗ってきた車に乗って戻っていった。それを見送ってから俺たちは港の中に入っていく。そして、戦争に参加する軍人に連れられ、ある潜水艦の前に来た。


(デカいな……何人入るんだ? 二万人相当入りそうだが……こんな人数で行くのか)


 その中には、かなりの人の気配がした。……恐らく、かなり人が居るのだろう。何人居るかは知らないが、最低でも一万人以上は居る気がする。


「入って下さい。この潜水艦で、アルヴァダ帝国へと向かいます」


 この超大型の潜水艦を操縦する軍人にそう言われ、俺たちはその潜水艦に入る。


 アルヴァダ帝国に着くまで二日かかるらしいので、それまで割り当てられた部屋で寛いでいて良いと言うことだ。


 ――と言うわけで、俺は自分の部屋で寛いでいた。一人一つ部屋があるようで、結構広い。……とりあえずは、来たるときまで待つか。


 ……そう思っていたが、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。


「……どうぞ」

「失礼する」


 入って来たのは、怜次先生だった。……何をしに来たのだろうか。


「……來貴。この潜水艦デカいな」


 ……怜次先生はそんな軽口を言いつつ、俺の隣に来る。


「……そんな軽口は良い」


 俺がそう言うと、怜次先生は変な表情になった。だが、すぐに戻った。


「……來貴。今は敬称は不要だ。それよりも、聞きたいことがある。――お前は、この戦争をどう見る?」


 この戦争を、どう見るか。……艦長だったらしいあの軍人に聞いてみたところ、この潜水艦に乗っている軍人は約二万八千人相当。その内の三分の一が非戦闘員。……大してアルヴァダ帝国は、かなりの戦力を持つ。十万は超えるだろう。


「……不利、だな。この戦争で軍事機関は滅亡しないだろうが、それでも大きな影響は受ける。……死人は出さないようにしたいところだが」


 俺がそう言った後、怜次はフッと笑う。


「それは……あまりにも厳しいんじゃ無いか?」

「……だろうな」


 ――それから少し世間話をしてから、怜次は自分の部屋に戻っていった。


 ……今回の戦争は、厳しくなるだろう。……俺も人前で死黒暴滅(ブラック・デストロイ)地獄門(ヘル・ゲート)万物具現化の眼リアライゼーション・アイを解放しなければならなくなるのだろうか。


 そんな思いを胸に秘めつつ、俺は戦争の時を待った。

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