65話「闇穿つ闇」
――軍事機関。彼の組織は、世界の闇を穿つ組織である。……それは、国同士の戦いにまでも干渉する。
日本の軍事機関は、政府と繋がっている。国の予算を使うことが出来て、都合の悪い情報はもみ消す事が出来る。……個人情報の操作も、可能である。それにより、ある者たちの情報は得られないように操作されてある。
……今日も、軍事機関は闇を葬っていく――――。
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軍事育成機関高校。この学校は今、夏休みにある。……だが、教員である軍人たちは休みでは無い。休みは一週間ほどあったが、それはもう終わっていた。
――軍事育成機関高校の教員で、一年一組の担任である如月刀華は。
(……もうすぐで終わりそう……だけど、この後に依頼が残ってる……)
自身に課せられた仕事を思い出し、心の中で溜息をついていた。刀華が今やっている仕事は、今後の授業に関わる仕事。これが意外と面倒で、刀華が溜息をついた理由の一つ。そして、終わった後の依頼は、武器の密輸が行われているとの情報があったので、それの確認。
教員の軍人にも、普通に軍事機関から依頼が来る。よっぽどの理由が無い限り断る訳にはいかないので、行くしか無い。
この仕組みは簡単。軍事機関の司令部――軍事機関の最高の権限を持つ部署が、所属している各軍人に依頼という名の仕事が来る。依頼が来た軍人は、それをこなして報告をする。……これが、軍事機関の仕組み。
……これも、刀華が溜息をついた理由の一つ。
そうして数分後、仕事を終えた刀華は武器を持ち、白色の車に乗り込む。そして、依頼の場へと赴くため車を走らせた。
……依頼の場へと着くのには少し時間が掛かるため、刀華はある生徒の事を考えていた。
(來貴君……あの子、気になるんだよね……隠してる事が多いから。一回聞いてみたけど、何も言わなかったし)
――來貴の事だ。來貴は、多くの事を隠している。能力の事然り、悪魔になった事然り。その全てを、誰にも言わずに抱えている。
刀華は勿論その事を知らないが、何かあったのか気になっている。……一回、急激に身長が伸びて見た目が変わった時。その時も、ただの成長期では無い……と、自分の中で思っている。
(……どうなんだろう……)
教師として気になっていたが、依頼の場所へと着いたので、一旦思考を中断する。
そして、刀華は車を近くの見えない場所に駐める。その後、武器を持って密輸があるであろう場所を探す。
耳を傾け、音がしている場所を探す。密輸がされているなら、交渉のための話し声が聞こえるはずだと刀華は思ったからだ。……だが、音は聞こえない。聞こえてくるのは、風の音のみ。刀華の長い髪を、風が揺らす。
「――これからもご贔屓に」
(……! 今の……)
風が、声を運んできた。その声とその方向を、刀華は聞き逃さなかった。気配を消し、その場所に向けて走る。
走ること数十秒、その場所へと着いた。
密輸が行われて居るであろう場所は……入り組んだ道の、見えづらい場所だった。
「……これで全部か」
「はい、これで全てでございます」
そして、何か話し込んでいる様子が聞こえた。……刀華は、刀を抜く。次に、刀剣操作を発動させながら……突撃する。
「……なんだ!?」
「がッ……刀が、独りでに……!?」
そう驚く最中、二人の話していた者と、後ろに控えていた護衛に模擬刀が襲いかかる。……そして数十秒後、その全員が気絶した。
刀華の、刀剣操作は、刀剣を操る能力。その本質は『剣創』。能力で魔力の剣を創造し、操る。これこそが、この能力の本質である。……だが、刀華の能力では、大きな剣を創ることや、空を埋め尽くすほどは創ることが出来ない。……それでも、この者たちを抑えるのには十分だったが。
刀華は、気絶した者たちを刀で拘束しつつ、電話で軍用車を呼ぶ。そして車が来るまで、再び來貴の事を考える。
(……來貴君は、凄まじいほどの才能を持っている……今までで、あんな生徒は見たことは無い。……けど、だからこそ。向き合っていかないと、いけない。來貴君が抱えている何かに)
刀華が、そんな決意を心の中でしたとき。
「――お待たせしました、如月様。では、この者たちを、あそこの車に持って行きます」
やって来たのは、スーツを着込んだ軍人。複数人で、刀華が拘束した者たちを連れて行った。そして、何事も無かったかのように去って行った。刀華はそれを見届けた後、自身の車に乗って軍事機関本部へと車を走らせた――――。
――――そして、軍事機関本部へと着いた。刀華は、本部の駐車場に車を駐める。その後、軍事機関の本部への自動ドアをくぐり抜けた。
刀華は、一階の奥にあるエレベーターに乗り、最上階へのボタンを押す。しばらくして、音が鳴りエレベーターが動き始める。……その間、刀華は張り詰めた空気を出していた。
そして、エレベーターが止まり、扉が開く。最上階は、床が全てレッドカーペットであり、一部の者にしか出入りを許されない。刀華は出入りを許されている者の一人であるため、最上階へ入ることが出来る。
レッドカーペットを歩き、刀華は三つある部屋の左側の部屋の扉をノックする。
コンコンと二回ノックし、数秒した後「入れ」との声が掛かった。刀華は、「失礼します」と言ってから部屋に入る。
「……如月か。依頼の報告なら、電話でもいいのだが」
その部屋は、最奥に一つの机と椅子。そこに、一人の男が座している。そして、その前に机と椅子。最奥のものも含め、全てにパソコンなどのものが沢山乗っている。刀華が居る場所は、最奥の前の前――つまり扉の前だ。
「……はい、神藤さん。依頼は完了いたしました。……ですが、今回は聞きたいことがありましたので、ここに参りました」
最奥に座る者の名は、神藤桂。軍事機関最強の男である。
「……言ってみろ」
桂は、ぞんだいな態度で言い放つ。だが、刀華は気にせず言う。
「……結月來貴についての事です」
――そして、刀華の言葉を聞いた桂の眉が、少し上がる。刀華は気付いていない。
「あいつは、才能溢れる奴だ。だが、抱えることが多く、それを一人で為せる力があるため一人で抱え込みやすい。……俺が言えることはこれだけだな。これで満足か?」
刀華は、桂の言葉に違和感を覚えた。何か知っていることは無いかと聞きに来たが、まさかここまで知っているとは思わなかったからだ。自分が知らないことも沢山知っていた。
「――ありがとうございました。失礼しました」
最後にそう言い、刀華は部屋を出た。もう軍事機関本部に用は無いので、今から家へ帰る。もう仕事は全て終わったからだ。やっと家に帰れる……と刀華は思いつつも、桂の事が引っかかっていた。
今回、刀華が桂の元へ来た目的は、依頼の報告と來貴についての情報収集。軍事機関最強の部隊を束ねる者にして、軍事機関の情報を網羅している桂なら、何か知っているだろうと思い切って聞いてみた結果。
やけに親しい言い方であり、そうであると確信しているような言い方だった。……それが、刀華には引っかかっているのだ。
引っかかりつつも、一旦考えることを止めた刀華。先に家に帰り、それから考えることにした。
最上階からエレベーターで一階まで降り、駐車場へ止めていた車に乗り込む。そして、車を家に向かって走らせた。
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刀華が去り、桂一人となった部屋で、桂は考え事をしていた。
(……まさか、それを聞いてくるとは思わなかったな……)
聞いてくることは、何パターンか桂は予想していた。だが、その悉くが外れ、爆弾が降ってきた。……予想外だったが、答えられる範囲で大体は答えられた。
……この事について、桂はよく知っているからだ。
「――――いつか……楽しみだな」
最後に桂はそう呟き、部屋を出て行った。
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――そして、刀華は家に帰ってきた。車を家の前に駐め、家の鍵を開けて家の中に入る。
「ただいま~」
刀華は一人暮らしだが、家に猫を飼っている。今、刀華が帰ってきたのを察知してやってきたのだ。
「ニタ~、迎えに来てくれたの~?」
この猫の名前は、ニタ。センスの無い名前だが、刀華もそれは自覚している。そして、刀華はニタを抱き上げ、リビングへと足を運ぶ。
リビングへと入った後、ソファに座ってゴロゴロする刀華。ニタを撫でてしばらくくつろいでいた。
数分経った後、刀華はニタをソファの上に置いて立ち上がる。そして、風呂場へと向かっていった――――。
――――風呂場で刀華は身体を流しつつ、感じた違和感についてと、來貴の事を考えていた。……だが、情報が無くてよくわからない。
……刀華は、そこから何の答えも浮かばず、一日が過ぎた。
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――ある国の最奥。その場所は、闇が全てを支配している。
「……あやつはもうすぐで卒業か……だが、それまでには間に合う。……大丈夫だ。目的は達成できる……!」
――男は、そう呟きながら不気味に嗤う。……そして、いつの間にか近くに来ていた男の言葉を聞き、宵闇に消えていった。
そうして、その場には誰も居なくなる――――。
――――またある国の、大きな現代風の建物の中。独りの男が、自身が見ているパソコンに来た報告に薄ら笑いを浮かべていた。
「そろそろ頃合いですね……彼に伝えて、流すとしましょう」
男はパソコンを慣れた手つきで操作してあるアカウントを開き、そこにメールを送りつける。
そうして待つこと数分、そのアカウントからメールが帰ってきた。その内容は、「かしこまりました」の一言。
男は心の中で楽しみだと呟きながら、パソコンをシャットダウンして別の部屋へ行った。そして、別の部屋についた後、男は窓際に立つ。そして、眼前に広がる民衆たちと建造物を見る。
「この国も、随分発展してきましたねぇ……そんなことはどうでもいいのですが。とりあえずは、私自身の力が衰えないよう、特訓でもしましょうか」
男は独り言を呟きながら、もう一度民衆たちを見下しながら部屋を出て行った――――。
――――日本の軍事機関の、最上階にある中央の部屋。その部屋の中にいる一人の男は、ポケットからスマホを取り出し、少しだけいじってからポケットに戻した。
「……そろそろ、か。そろそろ、派遣させる時か。日程を組まないとな」
そう呟き、男はパソコンを開いて予定を書き始めた。その予定は徹底されており、隙間が一切無い。ものの数分で全ての予定を書き終わり、男はパソコンを閉じ、部屋を出て隣の部屋へと行った。
「失礼する。桂、そろそろだ。調整しておいてくれ」
「わかりました。やっておきます」
「では、失礼した」
男は桂と少しだけ会話をして、部屋を出て行った。そして男は、中央の部屋へ戻っていった――――。
――――そして、先程の内容を伝えられた桂は。
「……さて、誰を行かせるか……まぁ、あらかた決まっているが、整理しておこう」
机の上のパソコンを開き、いろいろと書き込んでいく。その内容は、先程伝えられたことに関係している。
そうして数分で書き終わり、桂はパソコンを閉じた。その後、桂は部屋を出た。
(……帰るか。仕事はもう終わっていたし、今日は依頼は来ていない。……後で来るかも知れないが、その時はその時だ)
エレベーターへと乗り込みながら、そう考える桂。軍事機関から来る依頼は、必ず遂行しなければならない。という暗黙の了解が軍事機関の中にはあるからだ。だがまぁ、体調が優れないときやスランプにあるなどの特別な事情があれば断れるため、あまり苦に考えている者は居ない。
桂は軍事機関本部を出て、駐車場にある自分の車に乗り込む。そして、自分の家に向けて走らせた――――。
――――そうして約数十分、桂は自宅へ着いた。家の前の門を開け、中に入る。すると、門は自動的に閉まっていった。桂はそれを見届けるまでも無く、駐車場へと車を駐める。
そして、車から降りて家の中へと入っていった。
現在の時刻は2時。真夜中である。桂はとても忙しいため、こんな時間に帰ってくることはザラであり、この時間には妻も息子も寝ている。
ちなみに、桂には同い年の妻と15歳と13歳の息子がいる。だが、最近は忙しいため家に居てもあまり会えない。……しかし、今回は仕事を処理し終えたため会えそうだと、桂はそう思いつつ自分の部屋へと行った。
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そして、刀華はまた学校へと足を運ぶ。今日も今日とて、仕事である。
「……これは」
早速仕事に取り掛かった刀華は、思わず驚きの声を上げた。声は押し殺したため、周りの教員たちには聞こえていない。
刀華は、顔を引き締めて仕事に取り掛かった。




