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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第四章 運命編
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64話「皆と海へ」

 三重に行ってから三日経った、ある夜のこと。俺は、凜姉にメールで部屋に呼び出されていた。何のことなのかは、知らない。お土産のことだろうか? ……いや、無いか。凜姉がそんなこと言う人じゃないからな。


  そんなことを考えつつ、俺は凜姉の部屋のドアをノックする。


「入って~」


 ……凜姉からの気が抜けるような返事が聞こえたので、俺はドアを開けて部屋に入る。


 すると、凜姉はスマホを持って何かをしていた。俺の方からはよく見えなかったため、何をしていたからはわからない。そして、スマホをズボンのポケットに入れて俺の方に向かってきた。


「來くん、今度海に行かない? 皆と一緒にさ」


 凜姉がそう言いながら、スマホの画面を見せてくる。……そこには、凜姉のメール帳があった。そして、俺と違い百々海先輩や瞬華先輩などが登録されていた。……その数、約三十人。多いのかどうかは知らないが、俺よりは遙かに多かった。


 ……俺は五人しかいない。凜姉と琉愛と父さんと母さんと兇介だ。……まぁ、ほとんど使わないのでいいのだが。


 俺がそう考えている最中、凜姉はメール帳の百々海先輩の欄を押した。そして、凜姉と百々海先輩のメールのやり取りが表示される。その内容は……要約すると、百々海先輩から凜姉に「皆と海に行かない?」というお誘いの声と、それに凜姉が了承して俺たちを連れて行くという事だった。


「……いいぞ」

「ありがと、來くん。琉愛は了承してるから」


 別に予定は無いので、了承しておいた。琉愛は了承しているようで、先に聞いたらしかった。


「海に行くのは二日後だから、準備しておいてね!」

「ん、わかった」


 最後にそう言って、俺は凜姉の部屋を出た。


 そして、部屋に戻って準備を始めた――――。




 ――――二日後。


 俺は、二日前に準備した物をバッグに入れて持って来ていた。凜姉と琉愛はもう準備し終えている。後は、俺だけだ。


「來くん、速く!」


 凜姉にそう言われ、俺は少し急ぐ。家から出て、家の前に来ているリムジンへと乗る。……ちなみに、これは。


「遅かったわね、來貴君」


 助手席に座っている瞬華先輩の声が聞こえた。これは、瞬華先輩のところのリムジンだ。瞬華先輩のところも、雫のところほどでは無いが金持ちだ。それ故、リムジンなどの高級車がある。


 そして、俺たちが乗り込んで全員が揃ったため、リムジンが出発した。運転は、瞬華先輩のところの執事がやっている。これまた年配の執事で、瞬華先輩の護衛をしているらしい。


 そんなことを凜姉から聞きつつ、海へと到着するまで待つ。ちなみに、俺は前から五つ並んでいる席の内の三つ目の席順に座っている。そして、その隣には当然の如く凜姉と琉愛がいる。何故その場所に座るのかは知らないが。


 一番後ろの席には、この車に乗っている執事以外の人――瞬華先輩、彩月先輩、竜二先輩、百々海先輩、日鏡先輩、亜宮先輩、夜霧乃先輩、青道院先輩、枯木先輩、柊樹先輩、凜姉、琉愛、そして俺――の荷物が詰め込んである。


 だが、十二人もの荷物を詰め込んでいるためキツキツである。一人一人の荷物が比較的少ないため、席を倒して詰めてギリギリ。……大丈夫なのだろうか。執事の人も一応荷物は持っているが、それは運転席に置いてある。……入らなかったからだろうか。それとも、見られてはいけないものなのだろうか。


 どちらにせよ、シュールである。


 ――そして。


「着いたよ、來くん」


 海へと、着いた。この辺りの海は一般客もいるが、あまり多くは無い。だが、結構な数はいる。リムジンをバレないような場所へ執事は駐め、そこから各自荷物を持って海へと行った。水着に着替えられる場所は、近くに設けられてある。勿論、男女分かれてある。


 結構大きく、男女合わせて300人以上が入れそうな場所だ。男子陣は男性用の場所へ、女子陣は女子用の場所へと分かれた。


 俺は数分で着替え終わり、その着替え場所から出た。男子は脱いで下を着るだけなので、比較的速く終わり、ぞろぞろを出てくる。女子陣の着替えは遅く、出てきたのは十分後だった。


「お待たせ~」


 そう言って、最初に出てきたのは瞬華先輩。そして、夜霧乃先輩がいる方へと向かって行った。


 それから、彩月先輩、百々海先輩と続々と出てきた。彩月先輩は一番近くにいた柊樹先輩の方に、百々海先輩は竜二先輩の方へと行った。そして、次は日鏡先輩たち。正確に言えば、日鏡先輩と枯木先輩だ。


 ……遅いな、凜姉たち。何をしているのだろうか。まだ着替えている途中なのか、それとも何かしているのか。まぁ、俺には待つことしか出来ないのだが。


 そうして、待つこと数分。


「お待たせ、來くん!」

「お待たせ、お兄ちゃん!」


 声が聞こえた方を向くと、水着を着てきた凜姉と琉愛がいた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――來貴は、凜と琉愛が着ている水着を見ていた。


 凜が着ている水着は、白を基調としたシンプルなフリルのついた水着。それは、凜の艶やかな黒髪と対照的になっていて、とても似合っている。

 琉愛が着ている水着は、緑を基調とした凜よりも少し派手な水着。だが、琉愛の明るい雰囲気にとてもマッチしている。


「……似合う? 來くん」


 そして、來貴の視線に気付いた凜がいたずらっぽく言う。と同時に、自身の水着を來貴に見せつける。


「……むぅ、お姉ちゃん、抜け駆けしないでよ。……ねぇ、お兄ちゃん。私の水着、似合ってる?」


 琉愛も、凜と同じように來貴に水着を見せつける。


 姉と妹のその行動に、來貴は表情一つ変えずこう言った。


「……似合っているよ、二人とも」


 來貴の一言を聞き、凜と琉愛は顔を明るくして來貴の方を見る。そして、來貴の手を引き海へと連れて行く。來貴はそれに抗わずされるがままにし、凜、琉愛と一緒に海へと入る。


 海へと入った來貴は、凜たちと一緒に水遊びをする。だが、それは凜や琉愛が一方的に來貴に水を掛けているように見えるものだった。


「……來くん、大丈夫?」


 そんな來貴を心配したのか、凜がそう声を掛ける。近くにいる琉愛も、心配そうにしている。


「……人が多いと思ってな。大丈夫だ」

「そうなんだ……」


 來貴の言葉を、違う風に解釈した凜。その後、來貴へと飛びついていった。


「凜姉!?」


 その行動に驚いた來貴だが、凜を避けることはせず身体で受け止めた。


「あっ、お姉ちゃん!」


 負けじと、琉愛も來貴に飛びつく。


 海は碧く染まり、はしゃぐ人々で溢れていた。


 ――そして、瞬華たちは。


「瞬華、競争しよう!」


 ……現在、瞬華、彩月、夜霧乃、柊樹、百々海、竜二の三年生メンバーではしゃいでいた。


「いいよ、何処まで泳ぐ?」


 瞬華と彩月は、能力無しで泳ぎの競争を。夜霧乃と柊樹は、海上でのんびりしている。そして、百々海と竜二は。


「竜二、こっち見て」

「……なんだ?」


 百々海が、竜二を自分の方を向けさせる。……そして。


「えいっ!」


 両手で海の水をすくい、竜二の顔めがけて放つ。咄嗟に、竜二は腕で顔を覆い防ぐ。その後、百々海に向かってこう言い放つ。


「水月っ、いきなりなんだ?」

「……いたずらしたくなった。それに、何か考えてたの?」


 百々海の言葉に溜息をつきつつ、竜二は質問に答える。


「あぁ。司と存淵のヤツも、来れば良かったのにって思ってな」

「……なんで?」


 竜二の言葉に、再び百々海が質問をする。


「海ではしゃぐのって、意外と楽しいもんだからな」


 そう言った竜二の顔は……明るかったが、別の何かを含んでいるように百々海は見えた。そして、その意味を百々海は察してしまっていた。


「そう……ね。二人とも、面倒だから行かないって断ったから」


 天上と存淵の二人にも、誘いのメールは瞬華から来ていた。だが、二人とも海に行くのを面倒がって断った。それに、泳ぎの特訓なら学校にあるプールでいくらでも出来るからだ。


 学校のプールは、そこらのプールよりも断然広い。学校の職員から許可を貰わないと使えないが、真っ当な理由があればいくらでも使える。だが、壊れたら弁償。……そこらは全て、自己責任という訳だ。それ故、案外真面目な司と存淵はそこで鍛えているのだろうと竜二と百々海は予測していた。


「――ねぇ、水月、竜二! 二人も一緒に泳ごうよ!」


 二人が声をした方に顔を向けると、彩月と瞬華がいた。ついでに、その二人に連れてこられたであろう夜霧乃と柊樹。そして、彩月が百々海と竜二の二人の手を引き、横一列に並べさせる。


 ――軍事育成機関高校の三年生。その中の、精鋭ら。そのメンバーたちは、海を楽しんでいた。


 ……そして、日鏡と亜宮は。


「……水、冷たいね……蓮」

「そ、そうだね……光」


 二人で海に入り、海水の感触を味わっていた。味わっているだけで、あまり泳いでいない。泳げないわけでは無いが、二人はのんびりしたい気分なのだ。


 波に揺られつつ、二人はいろいろと話し合う。学校の事や、個人的な事などいろいろ。


 ――そうして十数分経った頃、亜宮は近くに来た夜霧乃に「話がある」と呼び出された。


「……亜宮。もうすぐだ。わかっているだろうな?」

「……はい、わかっています。アレの後ですよね?」

「……ならいい。しくじるなよ」


 ――最後にそう言い、夜霧乃は瞬華たちが居る場所へ戻っていった。それを見届けた後、亜宮も日鏡がいる場所へ戻っていった。


 そして、海を満喫していった。


 ……その頃、來貴は。


(……ここ、深いな)


 海の中を泳いでいた。海中に潜り、泳ぎ回っていた。そこで、深い場所を見つけたのだ。ちなみに、凜や琉愛は百々海たちの所に行っている。そのため、來貴は一人で自由にしているのだ。


 來貴は海の中にいる魚に目を向ける。……だが、近くにいた魚は全て目を向けると同時に逃げてしまった。


 ……來貴はその場から去り、別の場所へと泳いでいく。


 泳いで行く場所は、凜や百々海たちが居た場所だ――――。




 ――――そして、來貴は凜たちがいる場所についた。その場所には、來貴以外の全員が集合していた。


「あ、來くん。そろそろ呼びに行こうかなと思ってた頃だけど……自分から来るなんて珍しいね」


 凜が意外そうに言いながら、來貴の傍に行く。


「……暇だったからな」


 來貴はそう言いつつ、凜から目を逸らす。凜から「むぅ」という不満の声が聞こえたが、無視することにした。


 現在の時刻は1時。全員まだ昼食を取っていない。そろそろ、昼食を取ろうと言うことになったのだ。昼食の場所は、瞬華の所の執事が既に取ってあるので、そこへ行く手筈になっている。


 ――そうして十数分後、その場所へと着いた。


 その場所は、高級レストラン。東道家の金と権力で貸し切りにしてあるので、しばらくは満足に食べられる。


 ……そして、各々食事を注文し食べ始める。來貴は凜と琉愛と一緒の席で適当に注文して食べている。


 そうして食べ終わり、來貴たちは海に戻った。


 海へ戻った直後は、各自食べ過ぎたこともありあまり動いていなかったが、回復した後はアグレッシブに動き回っていた。


 そんな中、來貴は岩陰で休んでいた。単純に動くのが面倒になったので、日の当たらない場所で休憩をしている。後ろの辺りで他の面々が遊んでいる様子を見ながら、海水を手で掬う。そして、手の力を使い前方に投げる。


 前方には人がいなく、何も無い。多少風が吹いている程度である。海水は十数メートル飛び、飛散する。


(かなり飛んだな……)


 何故このような事をしたのか。それは、ただこの身体に眠る力を全力で使ったらどうなるかを試してみたかったというだけ。その結果、海水を投げたら十数メートル飛んで飛散した。


 この結果を記憶しつつ、來貴は凜たちが居るところへ戻っていった――――。




 ――――そうして、5時になった。海にいる人たちは帰り始め、だんだん少なくなってきている。瞬華たちも、そろそろ帰ろうとしていた。


 水着に着替えた場所で服に着替え、リムジンが駐まっている所に向かって歩く。そして、荷物を最後尾の座席に詰め込み席に乗り込んだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「楽しかったね、來くん」

「……ああ」


 凜姉にそう言われ、俺は返事を返す。


 ご機嫌な凜姉の方を見てみると、全然日焼けしていない。海であんなにはしゃいでいたのに。……まぁ、俺もだが。竜二先輩は元々なので無視するが、全員日焼けの日の字も無い程日焼けしていない。


 ……何かしていたのだろう。日焼け止めを塗ったか、それとも魔力か能力で何かしたか。……気にしたら沼にはまりそうなので、もう止めておくか。


 ――その後、全員近い方から家に送ってもらった。俺たちの所が一番近かったため、最初に家に戻ることが出来た。

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