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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第四章 運命編
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62話「偶然と運命」

 夏休みも、残り一週間と四日。終わりが近くなってきた。


 だが、俺がすることは変わらない。いつも通り、オリケルスの家で修行……では無い。今日は、という言葉がつくが。今日俺は、文奈たちと三重へ行く。これは依頼という訳では無く、ただ遊びに行くだけ。文奈の他には、文奈の両親や、雫と雫の両親、黎がいる。


 凜姉たちは、家で留守番。言い方が少しアレだが、これが一番近かったのだ。


 9時に雫の家の車が迎えに来るため、それまでに準備をしておかなければならない。とは言っても、持っていく物なんて殆ど無いが。戦いに行くわけでも無いので、武器は要らない。財布に金を入れ、スマホと共にバッグへ入れて持っていく。他には無い。これだけだ。


 今は8時で、朝食を食べた後だ。後一時間ほどあるため、少し暇を潰すか。


 そして、俺はベッドに座り、手から魔力を出す。


(……見慣れた黒銀色だ。あの時に悪魔になってから、随分変わったな)


 ぼんやりとそう考えつつ、部屋に漂い始めた魔力を身体の中に抑える。その後、部屋の近くに気配が無いか確認をしてから、全身に力を入れる。


 そして発動するのは、悪魔化(デーヴィス)。能力で魔力圧が外に漏れないようにして、発動する。眼を閉じ、開けると同時に翼を広げる。……あまり広げすぎると壁に当たるので、大胆にはしていないが。俺が背中の方に目を向けると、黒銀の翼が部屋の中を満たしていた。


 ……この翼は、悪魔の翼。悪魔のみが使える、漆黒の翼。ジェイドの記憶に、そう言うものがあった。あの時にジェイドの魂を受け継いでから、ようやくジェイドの記憶の解析を終えた。とは言っても、解析が終わっただけで全ては見れていないのだが。先程のは、ジェイドの記憶の一部だ。


 ……そして、時刻が9時に近づいてきた。そろそろ、一階へ行こう。


 俺はバッグを持ち、部屋から出て階段を降りる。その後、玄関へと足を向ける。いざ玄関を出ようとしたところで、俺は後ろから凜姉に話しかけられた。


「ねぇ、來くん……何度でも言うけど、何かあったときと帰ってくるときは連絡してね?」


 本気で俺を心配している声音で、凜姉は言う。……と言うか、「何かあったとき」が増えたんだが。だが、それは俺が負けると言う意味では無い気がする。俺が前より比べ物にならない程強くなったからだろうか。では、本当の意味は――。


(――考えないでおこう。考えたら、何かが揺らぐ気がする)


 そう思い、俺は凜姉に返事をしてから玄関を出た。


「あ、來貴君。丁度良かったです。先程来たところで、今からチャイムを押そうと思ったところです」


 家の玄関の前にいた文奈が、笑顔で言う。そして、文奈の後ろに大きな黒い車が見えた。……雫の家の車だろう。……これが、銘仙家の車か。親父や母さんが持つ車より断然大きいな。


 ……まぁ、感想はこれくらいにして、車に乗り込むか。


 文奈に先導されながら、俺は雫の車の後部座席に座る。とは言っても、四つ席が並んでいる席の、三番目の席に座っている。だが、席が動くので、二席目と三席目が向き合う形に席が動かされている。俺は右側で、文奈の隣に座らされている。


 ちなみに、この高級改造車の運転は、雫直属の執事が運転している。顎髭がダンディーな、年配の執事の人だ。ただ者じゃ無い雰囲気が出ていて、雫によると三十年以上銘仙家に仕えてきたそうだ。


 そして雫と文奈の両親は、一番後ろの席に座っている。一番後ろの席はゆったりしていて、横並びで大の大人が四人で座っても大丈夫なようになっている。


 車の構造を見ていた俺は、気になることが出来た。とりあえず、一番近くに居る文奈に聞いてみることにしよう。


「文奈。そう言えば、どうして三重に行くんだ?」


 そう、何故、三重に行くのか。そして三重でどうするのか。この二つを聞きたかった。別に聞かなくても良いとも思ったのだが、一応聞いておく。


「そうですね……少し前、雫の家に行ったんですよ。その時から、私と雫の両親の仕事がしばらく休みで、折角なので何処かに連れて行ってくれるとの事になりました」


 そんな経緯があったのか。……と考えていたが、まだ話は終わっていないようだ。


「私の両親と雫の両親は、元々知らない仲でした。ですが今回の外出を通じて交流しようと言うことです。子供同士が仲良くしているので、親同士も仲良くなろうという理論です」


 そして、文奈の話が終わった。それと同時に、運転席に座っている執事が口を開いた。


「お嬢様方、もうすぐで三重に着きます。休憩を挟みますか?」


 雫の執事が、雫にそう告げる。雫は俺たちに確認を取ってから、執事に「休憩は要らないわ」と言う。執事は「かしこまりました」と頷き、車を進めた――――。




 ――――そして、三重に着いた。今から少し休憩するため、高速道路の途中にあるサービスエリアで止まった。そこで、執事は雫や雫と文奈の両親の近くに佇んでいる。


 黎は店のトイレへ行っていて、文奈は雫と話している。俺は、店の中で黎を待っていた。俺はトイレへ行っていなく、黎について行っただけ。……車周辺は女子だけで居づらかったのだ。まぁ、そう言う旨は黎たちには話していないのだが。トイレへ行くという口実を作った。


 実際にトイレには入ったが、少ししてから出た。その後、黎と一緒に車へ戻った。


 車に戻ってからは、すぐに出発した。どうやら、もう出発しようと思っていたが、俺たちが来ていなかったため待っていたらしい。今から、三重にある雫の別荘に行く。もっと性格に言うならば、三重の伊賀。何故こんな所に別荘があるのかは、おおよそ予測出来る。


 近畿付近での仕事のための、拠点だろう。親父も、東北の方に小さいが一つ別荘を持っているからな。


 ――そして、別荘へと着いた。


「さ、入って」


 雫の一言で、俺と文奈と黎は別荘の中にお邪魔する。執事と雫の両親は先に入っていて、文奈の両親は俺たちの後に入って来た。


 この別荘に入った目的は、少し休憩するためと、車を置くため。もうすぐで目的地に着くが、あの車は目立つので置いていこうと言うことだ。


 そして、休憩中はリビングで文奈たちと話していた。雫たちの両親は、両親同士で話している。執事は、リビングの扉で待機していた。


 ――十数分後、休憩が終わった。今度は別の車を使って目的地に向かう。こんな真夏の中を歩くのはさすがに御免だったため、ありがたい。俺は別に大丈夫なのだが、文奈たちはホッと胸をなで下ろしている。……文奈たちも、同じ考えだったのだろう。


 そして、再び車で走ること十数分。ようやく、目的の場所に着いた。


 その場所は――――。


「着きましたね、來貴君。伊勢神宮……初めて来ました」


 ――――伊勢神宮だ。一回も行ったことが無いので、少しワクワクしている。文奈たちがどうなのかは知らないが、俺と同じでワクワクしているように見える。雫たちの両親は自分の子供と話している。


(……そう言えば、あの執事は何処に行った……?)


 俺がそんなことを考えていると、後ろから気配がした。


「――結月様」


 雫の執事が、俺に話しかけて来た。俺は首だけ執事の方を向け、執事に話を聞く。


 俺は、用件を聞き、執事と話し始める――。


「――では、お嬢様は浦坂様と一番仲が良く、学校でも一人では無いと?」

「そうです」


 話していたのは、雫の事。雫が学校でどうしているか、誰と仲が良いのか。それを聞かれた。……過保護な執事である。それは良いとして、何故俺に聞いたかの理由は、一つだけ。……俺が一番、強いから。だったらしい。


 執事はそれだけ聞いた後、雫たちの両親の元へ行った。そして、それと入れ替わるように、文奈たちが俺の元に来た。


「執事さんと何を話してたんですか? 來貴君」

「……少し、な」


 文奈の質問に、俺は答えを少しぼかして返す。……文奈たちから怪訝の目を向けられたが、気にせず先を歩く。そして、文奈たちも慌てながら俺について行く。……だが、勝手に行動しても面倒な事になるだけなので、途中で文奈たちに歩を合わせる。


 その後、文奈たちと話し合い何処へ行くかを決めた。そして、その場所へ全員で向かって行った――――。




 ――――そうして、数十分後。真夏の暑い道を歩き、休憩を何回か挟んだ後についた。


 ――伊勢神宮の、外宮。参拝に行きたいという意見がほぼ満場一致で決まったため、ここに来た。ちなみに、この後に内宮へ行くつもりだ。


「……人が多いですね、來貴君」

「……そうだな」


 文奈の言葉に適当に相槌を返しながら、道を歩く。夏休みの終わりが近いのにも関わらず、人が多い。今は列に並んでいて、順番を待っている。この辺りの事はあまり知らないので、多いのか少ないのかわからないが、多い方だと俺は思う。


 それはいいとして、そろそろ参拝が出来そうだ。


 そして十数分経ち、ようやく参拝が出来る状態になった。賽銭箱に金を入れて、お参りをする。文奈たちも、同じように参拝をした。数秒経った後、終了する。そして、文奈たちと一緒に内宮へと行った。


 ――そして、内宮についた。ここは皇大神宮と呼ばれていて、天照大御神を祀っている場所らしい。


「……かなり人が多いね」

「……そうだな」


 黎が言った通り、ここはかなり人が多い。先程行った場所よりも、人が多い。


 はぐれないようにして移動し、参拝が出来るようになるまで待つ。


 数十分経った後、参拝が出来るようになった。適当に五円玉を入れて、手を叩きお参りをする。目を閉じて、心の中で()()()()()()を浮かべる――。


「――これも、運命なのでしょうか。それとも、偶然か」


 ――女性と思われる声が聞こえて、俺は目を開ける。周りの状況を視認し、俺は驚いた。


(なんだ……!? この場所、周りに何も無い。白で埋め尽くされている。それに、あの女性は……)


 俺が思考を巡らせていると、女性の声が聞こえてきた。


「……落ち着いてください。結月來貴さん。……私と、話をしましょう?」


 その言葉で俺は落ち着き、警戒を始める。……参拝したと思っていたらこんな場所にいたというのもそうだが、何よりこの女は普通じゃ無い。俺の勘がそう言っている。


「そんなに警戒しなくとも良いですよ。私は、天照大御神と呼ばれている"神"です」


 ……一瞬、思考が止まった気がした。目の前の女は、何を言っているのだろう。そう、思った。


「……本当ですよ。でなければ、あなたに気付かれずに一瞬で連れ去るなんて出来ないでしょう?」


 そして、天照大御神と思われる女性の言葉で納得した。同時に、心を読まれたのか身構えたりもしたが、止めた。


「話をしましょう、結月來貴さん。そのために、私はあなたをここに呼びました」


 いつの間にか、天照大御神はポツンと置いてあった机の近くの座布団に座っていた。天照大御神が座っている座布団の正面に、机を介してもう一つ座布団が置いてある。そこに座れと、目線で天照大御神は言っている。


 ……俺は、天照大御神の言うとおりにする。それ以外に出来ることも無ければ、天照大御神に俺を攻撃する意思を感じない。


「私の事は、天照と呼んで構いません」


 ……もしかして、心を読まれているのだろうか。天照の言動から、そうなっているようにしか見えない。俺が心の中で思っていたことを、的確についてくる。


「心は読めます。ここに来ている者限定ですが」


 ……天照の発言に、俺は一つ、違和感を覚える。ここに来ている者……というフレーズだ。それだと、この白い空間は天照が作り出したものだと思えるが。


「それも含めて、今からいろいろ話しましょう」


 ――そして、天照は話し始めた。


「ここは、神である()()が唯一、地上に干渉出来る場所です。詳しくはまだ話せませんので、ご了承を。……そして、あなたを呼んだ理由を言います」


 天照がその言葉を発した瞬間、緊張が高まった気がした。


「――あなたが、史上初の選定突破者……で、あるからです」


 天照が言った、選定……と言う言葉に、俺は警戒が高くなった。天照が少し言い淀んだのも気になる。だが、天照の次の言葉でそれは霧散する事となった。


「悪魔たちから聞きました。第二まで突破していることまでは知っています。わざわざ並んで参拝をして、報告をしに来てくれました。……來貴さん、そこまで突破したならば、あの神を殺す覚悟が、あるという事ですね?」

「……ああ」


 真剣な顔つきで、天照が言う。……「あの神」、というのは、ドルナイトの事で間違いないだろう。俺は頷きつつ、何故それを聞いたのかを問う。


「……それは、あなたがあの神に勝てる可能性が、唯一あるからです。私達神は、諸事情で動けない。悪魔や天使たちは、神を殺すに足りない。……ですが、貴方ならば可能です。()()()()()あなたならば、対抗できる可能性があるのです」

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