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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第四章 運命編
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56話「最期のオリケルス」

「……来たか、來貴よ」


 家の外では、オリケルスが静かに佇んでいた。そして、俺が来たとわかった瞬間、閉じていた眼を見開き、腰に差していた曲刀に手を掛ける。


 対して俺は、オリケルスから約20m離れた場所で構え、腰の銃剣に手を掛ける。


 ――そして、一陣の風が吹く。それが、俺とオリケルスの髪を揺らす。そんな中、俺は集中してオリケルスの動きを見ていた。これは、オリケルスの動きを見逃さないためだ。対するオリケルスも、俺の動きを監察して動かない。


 ……そうして数秒経ち、風が吹き終わった後に俺とオリケルスは動き出した。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 動き出した來貴は、走りながら地を蹴り低空を跳ぶ。それを見て、オリケルスも低空に跳んだ。二人は、得物を抜き斬りかかる。來貴は銃剣二つを、オリケルスは曲刀二つ。これらの武器がぶつかり合い、空中に火花を散らす。


 金属音を立ててぶつかり合ったこの鬩ぎ合いを制したのは、來貴だった。その理由は、元々の力は來貴の方が上であるからだ。勿論、それはオリケルスも知っている。


 では何故、オリケルスは力勝負を仕掛けたのか……それは、來貴と真っ向から向き合うため。 


 オリケルスが來貴に力で勝つためには、來貴に見せていないアレを使うしか無い。……それでも、來貴が覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を使われたら厳しいが。


(……やはり、厳しいか。……だが、これで終わりでは無いぞ……!)


 そしてオリケルスは、地面に着地しながら來貴に向かって魔力斬を放つ。來貴は、その魔力斬を銃剣の魔力斬で防ぎ、地面に着地する。


 着地後、來貴は死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を発動し、黒波を銃剣に纏わせる。それにより、黒銀の魔力刃はより色濃く輝いた。來貴は、銃剣の柄をより力強く握りしめ、地を蹴る。


 その反動で來貴がいた場所の地面は崩れているが、來貴は気にしていない。そしてオリケルスに近づくと、二つの銃剣をクロスして斬り下ろす。対してオリケルスは、二つの曲刀で防御し防ぐ。


 その後、オリケルスが能力を使いながら來貴の剣筋を逸らす。そして、來貴の腹部を蹴り上げる。來貴はその蹴りを受けてしまい、大きく後ろへ飛んだ。だが、地面に転がると言うことは無く、空中で姿勢を直し、安全に着地した。


(……強い、な。力が弱くなっているのは今ので確信したが……やはり、技術の練度が違う)


 來貴は着地しながら、そう考えていた。來貴は、速さや力、能力という面ではオリケルスに勝っている。だが、技術という面では百戦錬磨のオリケルスの方が一枚上手である。それ故、有利な状況でも不利な状況に持って行かれる可能性が高い。実際、さっきも來貴が有利だった状況が不利に持って行かれた。


 來貴はそこを警戒しながら戦うつもりで、攻撃をしながら作戦を考えている。


 ……そして数秒で、作戦を思いついた。ただそれは、作戦と呼べるものでは無いが。


 來貴が思いついた作戦は、技術の面を圧倒的な身体能力で補うこと。即ち、能力を使って身体能力を底上げすると言うことだ。その他にも、あらゆる能力を使ってオリケルスを翻弄するという事も出来る。


 能力の数はとても多いので、多彩な技を使う事が出来るのだ。……だがそれは、()()()()がある故に満足には出来ないが。


 そして來貴は、覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を使用し、一気にオリケルスに接近する。だがオリケルスはそれを予測していた。來貴が振り下ろしている左の銃剣を受け止めようとしたが……。


(――何ッ!?)


 受け止められた時点で、來貴はそれを力場に、空中で一回転した。それにより、オリケルスの後ろを取った。オリケルスの後ろを取った來貴は、オリケルスの方に向き銃剣の銃口を向ける。そして、引き金を引き全ての銃弾を発砲する。


 オリケルスは、全弾を弾くことで防いだが、少し違和感を感じていた。その違和感とは……銃弾の感触。銃弾にしては重く、分厚かったのだ。オリケルスが違和感を感じていると、悪寒を感じ大きく後ろに飛んだ。


 そしてオリケルスが居た場所には、黒銀の網が張り巡らされていた。それを見て……オリケルスは、冷や汗をかいた。


 ――もし、そのままあの場所にいたら、串刺しになっていただろう……。


 ……そう、オリケルスは思っていた。そして、オリケルスの予想は当たっている。あの網は、來貴の魔力の結晶。高密度の魔力の刃なのだ。触れでもすれば、その部分は切れているだろう。オリケルスの判断は、正解だった。


 そして、自身の攻撃を躱された來貴は――――。


(……この程度じゃ躱されるか。わかってはいたが、小手先の攻撃は通用しないな)


 ――――なんて事を考えていた。來貴にとって今の攻撃は、小手先程度でしか無い。それは即ち、來貴はもっと強い技を持っていると言うことになる。普通にわかることだが、オリケルスはこれを改めて実感していた。


 そして來貴は、黒銀の網をオリケルスに向かって伸ばす。幾千の刃となり向かって行ったそれを、オリケルスは躱し始めた。段々と、オリケルスに余裕が無くなり始めていくが、來貴は油断無く攻撃を続ける。


 ――オリケルスは、來貴の刃を全て切り裂いた。能力により、自身の曲刀の切れ味を上げ、來貴の刃の速度を遅くしたのだ。ちなみに、貫通力で切れ味を上げ、重力で來貴の刃を遅くしている。


 自身の攻撃を防がれた來貴は、地獄門(ヘル・ゲート)を使用し超高熱の炎をオリケルスに向かわせる。それと同時に、地面から炎柱を立てて攻撃する。オリケルスはそれを躱し続けながらも、來貴に魔力弾を飛ばす。……が、一閃の元に斬り伏せられた。


 強くなったな……。と、オリケルスは感慨深く思っていたが、そんな余裕は無い。空中を飛び交う炎により、数瞬後にそびえ立つ炎柱の方に誘導されている。オリケルスは、それを躱しているだけで精一杯だった。


 対して來貴は、少し余裕が出来たので考え事をしている。勿論、オリケルスには注意を払っているが。


(……俺が有利な状況だな。……だが、油断は出来無い。何か、隠し球を持っている可能性も十分にあるからな)


 ――と、來貴がそんなことを考えていると……。


「ッ!?」


 急に、魔力斬が飛んで来た。いつの間にか、オリケルスの周りに來貴の出した炎は無くなっていた。來貴は、持ち前の反射神経でそれを躱した。と同時に、後ろに飛びながらお返しの魔力斬を放った。だが、全てを弾かれ防がれた。


 そして、辺りに黒煙が立ち上る。


 お互いの姿がはっきりと見えるようになった時、オリケルスは來貴に接近し曲刀を振り下ろす。來貴は、銃剣を交差させ防ぐ。その後曲刀を弾き、空いた腹部に前蹴りを入れる。オリケルスは、重力を掛け動きを鈍らせることで、躱す事に成功した。


 そしてすかさず、蹴りを躱され隙が出来た來貴に斬撃を叩き込む。だが、來貴の回避行動により擦っただけに終わった。しかし、擦っただけだと言っても、腹から血が垂れている。來貴はそれも気にせず、オリケルスに魔力斬を放つ。だが、簡単に弾かれた。


 その後、弾かれた後に出来た一瞬の隙をついて、オリケルスに接近しながら技を放つ。


「――黒銀凝集斬(ダークネスブレイヴ)


 黒銀の刃が魔素を凝集し、より大きく、そして濃く輝く。その刃を以て、來貴は、斬撃を交差させ斬りかかる。斬りかかると言っても、斬撃が音速に匹敵する速度で飛翔しているが。音速で飛来する濃く銀の斬撃。常人には見えないし、防ぐどころか躱すことも出来ない。


 その斬撃を、オリケルスは――。


「――重刃閃々(じゅうはせんせん)!」


 ――重く鋭くなった曲刀の一閃により、斬り伏せた。……だが、全ては防げなかったようで、所々に切り傷が刻まれている。


 口から出た血を手で無造作に拭い、オリケルスは喋り始めた。


「……來貴よ、今から、お前に()()の技を伝授する。この技の原理は、お前には教えん。儂が今から使う。しかと見て、理解せよ」


 そう言って、オリケルスは眼を閉じて集中し始める。それと同時に、オリケルスの周りを紫と黒が覆い始めた。來貴は、隙だらけに見えるオリケルスを攻撃しようとしたが……止めた。自身の勘が、あることを察知したのだ。


(……今から、オリケルスが本気を出してくる)


 來貴は、オリケルスが切り札を切って本気を出してくると確信していた。そして、それは理論上自分にも出来ることだろうとも考えていた。


(――!)


 そして、オリケルスの様子をじっと見ていた來貴だったが、大きく後ろに飛び退いた。飛び退いたのは、黒が若干混じった紫の刃が飛んで来たからだ。その刃は來貴を追尾したので、全て斬って落としている。


「……來貴よ。これが、我々悪魔の秘術・『悪魔化(デーヴィス)』だ。これは、悪魔ならば誰でも出来る可能性はある。悪魔化(デーヴィス)を使用した悪魔は、全ての基礎能力が劇的に上昇する。……來貴よ、お主も出来る筈だ」


 來貴はそう言われたが、出来る筈も無い。原理を見抜ければ出来るかも知れないが、少なくとも、それは万物具現化の眼リアライゼーション・アイやそれで再現した能力を使用しない限りは無理だった。


「來貴。……お主にも悪魔化(デーヴィス)が出来ぬ限り、決して儂には勝てぬぞ!」


 オリケルスがそう言ったと同時に、紫と黒の魔力斬が吹き荒れる。比率は若干紫が多かったが、來貴は気にせず全て文奈の能力を使い撃ち落とした。


 しばらくして、來貴はオリケルスの姿を確認出来た。……だが、全てが悪魔化(デーヴィス)をする前とは違っていたオリケルスに、來貴は驚いた。


(眼球が、黒く染まっている……いやそれよりも、翼が生えているぞ……)


 オリケルスの姿は、変貌していた。瞳の赤の周りの眼球が黒く染まり、背中から二対四翼の黒紫の翼が生えていた。そして――オリケルスの左頬から首筋にかけて、月ような形をした紫と黒の紋様が浮き出ていた。


 ――そこから、オリケルスの猛反撃が始まった。


 悪魔化(デーヴィス)は、悪魔にしか使えぬ技。だが、全ての悪魔に使える可能性がある技でもある。それは、後天的に悪魔に変貌した來貴も同様だ。その恩恵は絶大なるもので、主に身体能力の強化や、手足の欠損や身体の部位すら再生する再生力を得て、浮き出た紋様により能力が強化され、本来の実力を発揮出来る。……これが、悪魔化(デーヴィス)の力であった。


 これを使用したオリケルスの強さは、凄まじいものだった。身体能力や能力の強さで來貴を上回った。技の多彩さでは來貴の方が上だが、それでも身体能力の差が大きく、來貴は防御に徹することしか出来なかった。


 ……だが、段々傷が増えていく來貴。状況は來貴が圧倒的に不利だが、來貴はとても冷静だった。


(……ヤバいな。打つ手が無い。覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)で強化をしているものの、強化をしすぎると魔力刃の方に回す魔力が無くなるし、他の能力も使えなくなる。……いくら俺の魔力量が多いからと言っても、あまり使い過ぎるのは良くないからな……)


 そこで來貴は一旦思考を止め、冷静に斬撃の対処をする。……だが、刃が重くて少し体勢が崩れた。來貴はすぐさま後ろに飛び退いたが、その隙をオリケルスは見逃さない。


牙天重穿波(がてんじゅうせんは)!」


 オリケルスは空中に飛び上がり、上から來貴に技を浴びせる。空中から重さを上乗せされた魔力の風の波は、鋭さも併せ持っている。オリケルスの能力により貫通力を操られ、人の身体を容易に貫けるようになっているのだ。


 ……当たったら、ほぼ確実に死亡するだろう。來貴は、そう考えていた。躱すことは出来るが、それでは駄目だ。そうでないと、オリケルスは満足しない。それではどうするか。來貴は……。


(……思いついた。万物具現化の眼リアライゼーション・アイをフルに使う。オリケルスの言った悪魔化(デーヴィス)だが……お手本は、近くにある。"再現"は十分に可能だ。他の身体能力は……いや、要らないか。全て、万物具現化の眼リアライゼーション・アイでまかなえる)


 そして來貴は、万物具現化の眼リアライゼーション・アイを発動した。その時点で來貴の他の能力は発動されていなかったが、それでも、身体能力は何ら変わっていなかった。


 ――來貴の姿が、黒銀に包まれる。その黒銀は、黒の方がより濃い色となっていた。オリケルスの牙天重穿波(がてんじゅうせんは)は既に消えていて、オリケルスは嬉しそうに來貴の方を見ていた。


 数瞬――來貴を覆っていた黒銀の繭から、黒銀の刃が四方八方を劈く。それはオリケルスを狙っていたものだったが、周囲にも被害は出ていた。オリケルスは曲刀で刃を弾いたが、一部は防げていなかった。


 ……そして、オリケルスは來貴の姿を確認出来た。


 左眼の金の瞳の眼球は、黒に染まっていた。同じく右眼の黒の瞳の眼球も、黒に染まっていた。……ただ、右眼の瞳の黒は少し薄かったが。そして、背中には三対六翼の黒銀色をした翼が生えている。だが、オリケルスの眼を何よりも引くのは――――。


(……これが、來貴の悪魔化(デーヴィス)か。……見事な力だ。儂を遙かに上回っている。だが……紋様が歪だ)


 ――――そう、來貴に浮き出た紋様である。


 額の全体に広がっている渦巻き型で所々に何かを誇示するような羽のあるの黒銀の紋様から、両眼を下って顎の下まで達している。下まで達する段階で、左眼は左に、右眼は右に枝分かれもしている。その形はまるで……何かを示しているようだった。


 オリケルスはそれを警戒したが、同時に可能性を感じた。


 その紋様が秘めた力。


 悪魔化(デーヴィス)が出す紋様は、悪魔の根本的な力を底上げする。底上げさせた力は、悪魔化(デーヴィス)をする前とは比較にならない。それに加え、身体や魂も強くなり、強い負荷にも耐えられるようになる。故に、悪魔化(デーヴィス)が使える悪魔はとても強いのだ。


 その域にまで達した來貴を見て、オリケルスは構える。


「……お主もその域に達したか。……来い、來貴。この攻防で儂に勝てば、もう教えることは何も無い」

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