53話「地獄の宿題」
そして、朝になった。俺は、結局一時半ぐらいまで眠れなく、そこから約三時間半ほど寝てから起きた。現在時刻は、五時である。二度寝したいが、眠気が欠片も無いので出来ない。
……さて、どうしようか。俺の両隣で俺に引っ付いている凜姉と琉愛はまだ寝ている。……ついでに、それのせいで身動きは取れない。腕だけで無く足も絡められているのも主な理由の一つだ。そんなことを考えつつ、俺は上半身を上げようとする。
だが――――。
「ん……來くん、離れちゃ嫌」
「あ……や、離れないで、お兄ちゃん」
――――という寝言が聞こえたと同時に、締め付けが強くなり抜け出せなくなった。……いや、本気でやれば抜け出せるかも知れないが、それだと二人に怪我をさせてしまう可能性があるため出来ない。
そして、俺は考えるのを止めた。考えるのが、面倒になったのだ。同時に、寝言だが離れないでと言っている二人から離れるのはちょっと気が引けたからだ。
そんなことを考えつつ、俺は目を閉じる。……やはり、眠れない。だが、俺はそのまま目を瞑り続けた。
……つくづく、俺は凜姉と琉愛に甘いな――――。
――――気付けば俺は二時間ほど寝ていて、もう時刻は七時になっていた。……だがそれでも、二人は起きる様子が無い。……そろそろ起こすか。俺は、二人に声を掛ける。
「凜姉、琉愛、起きろ」
と、それと同時に身体も揺らしてみるが、全然起きない。……まぁ、こうなったらいつもこうなんだけど。……それはいいとして、さっさと起こそう。
俺は、凜姉と琉愛の身体の隙間から腕を抜き取る。その時、俺の両手が二人のいろいろな部分に当り、二人が変な声を上げたが、俺は気にしないで二人の身体を再び揺らす。それにより、凜姉が眼をすりながら起き始めた。だが、琉愛はまだ寝たままだ。
「ん……あ、來くん、おはよう」
「……おはよう、凜姉」
そして凜姉が起き、俺に挨拶をした。ついでに、一回抱きついてきた。それからベッドから降り、一階へ行った。朝食を作りに行ったのだろう。俺も挨拶を返し、琉愛を起こす。
「起きろ、琉愛」
そう言いながら、俺に抱きついて寝ている琉愛を揺さぶる。すると、琉愛は目を擦りながら起き始めた。
「んんん……あ、おはよう、お兄ちゃん」
「……おはよう、琉愛」
そして琉愛が起き、俺に挨拶をした。その後、ベッドから降り、俺を連れて一階のリビングへと行った。
リビングへ行った後は、凜姉が作った朝食を食べた。その後は、皿洗いを手伝った後、部屋に戻って宿題の続きを始めた。
だが、しようとしたところである音が聞こえた。
それは――――。
ピンポーン
――――玄関の、チャイムの音である。……誰かが来たのだろう。まぁ、その誰かが誰なのかは大体予想は付いているが。
俺は自分の部屋を出て、階段を降り一階の玄関へ向かう。そこで俺は、覗き見を始める。そこには凜姉と、予想通りの人物と予想外の人物がいた。
予想通りの人物というのは、兇介。こいつは、夏休みの最初に必ず俺の家に来て宿題をする。予想外という人物というのは、文奈だ。……こいつ、なんで来たんだ? 前に教えた記憶はあるが……。
「あ、いらっしゃい、兇介くん。文奈さんも……いらっしゃい」
そして聞こえたのは、凜姉の声だ。何か会話しているようだ。……戻って良いかな、面倒なことになりそうだ。だが、戻れなかった。途中で、三人全員に見つかってしまったからだ。凜姉も兇介も文奈も、ジッと俺の方を見続けている。
仕方ないので、俺はそっちの方へ行った。そして、二人は口を開き――。
「お、來貴じゃねぇか。今年も来てやったぜ!」
「……お、お邪魔してます……來貴君」
――と、二人は言った。兇介は図々しいが、文奈は遠慮しがちの態度。……まぁ、単に慣れの問題だろうが、兇介は人の家に来てその態度はなんなのか。……いや、良いんだけどな。一応、親友だし。
文奈は、俺の家に来るの初めてだから……いや、今思ったがそんな簡単に男の家に行っても良い物なのか。まぁ、この家にはいる男は俺だけだし。親父も居るけど、仕事でいないからな……とりあえず、今はそれを考えるのは止めておくか。
「來くん、この二人は來くんに用があるみたいだから、相手してね」
最後にそれだけ言って、凜姉は去って行った。……それを確認した後、俺は二人に要件を聞く。
兇介は予想通り、俺に宿題を教えてもらいに……もとい遊びに来たと言うことだった。文奈はと言うと……どうやら、わからない所があるから教えてほしいとのことだ。兇介はクソみたいな理由だが、対して文奈はとても真面目な理由だ。
……それは良いとして、俺の部屋に行くか。兇介との宿題はいつもここでやっていたからな。今年は文奈も居るが、まぁ良いだろう。
そして、俺は兇介と文奈を連れて自分の部屋へ行った。
「こ、ここが來貴君の部屋ですか……」
連れて行った後、文奈は俺の部屋を観察している。対して兇介は、文奈に聞かれないように俺にこう言ってきた。
「來貴……お前、凜さん以外に新しい女を捕まえたのか? しかも、めっちゃかわいいじゃねぇか。それだと、凜さんが悲しむぞ?」
……こいつは、何を言っているのだろうか。女を捕まえたとか……俺が友達居ないのを知って居ての発言なのか? それに、凜姉がなんだというのだ。悲しむとか言っていたが、あの人は俺の姉だぞ。少し関係は複雑だが、それまでの関係だ。……そこに、やましいものなど何も無い。
「……捕まえた、という表現は止めろ。それに、文奈はただの友達……だ。お前が期待しているようなものは無い」
俺がそう言うと、兇介は「まぁ、そうだろうな」と言って、持って来ていた鞄から何か――恐らく宿題を取り出し始めた。それを見た文奈も、宿題を取り出してページを開き始める。
そして、文奈は部屋のもう一つの机の近くに座る。同時に、文奈が来ている緑色のワンピースがふわりと舞い上がる。が、俺は気にせず文奈の対談に座る。兇介は、持っていた鞄をドカッと置き横の方に座る。どうやら、傍観するようだ。
「えっと、來貴君。戦闘理論のここが、答えを見てもわからなくて……」
文奈がわからないと言ったのは、今習っている戦闘理論の中でもトップクラスに難しいところ。理論の構築である。これは、俺でも苦戦するほどの難易度であり、まともに出来るのは俺や白凪ぐらいしか居ない程だ。
だがこれは、基本がしっかり出来ていれば構築は失敗しない。そして、理論の本質を理解していればより良いものとなる。この二つが、戦闘理論のコツだ。
「そこはだな――」
俺は、文奈にその部分を教え始めた。相変わらず、兇介は傍観しているだけだったが、途中で宿題の続きをしていた。
そして十数分後、文奈はその部分を完全に理解した。
「――ありがとうございます、來貴君。來貴君のお陰で、理解が出来ました」
文奈は、純粋な笑顔でお礼を述べた。その横で、兇介が俺と文奈を交互に見ている。
「……ん、どういたしまして」
素直に感謝されたことが滅多に無かったので、どう返せば良いかわからなかった。兇介が俺の反応を見て笑いを堪えそうになっているので、後でシバこうかなと思う。
その後、文奈は帰らずここで宿題の続きをし、兇介も宿題を真面目に始めた。そして俺も、宿題の続きをする。と言っても、殆ど終わっているのだが。残っているのは、魔法能力の宿題だけだった。それだけやれば、もうほぼ自由だ。楽しい夏休みになる。
さて……頑張るか――――。
――――そして、数時間経ち、現在の時刻は十二時半。昼食の時間となった。俺は、凜姉に呼ばれたので一階のリビングへと行った。兇介と文奈も連れてこいと言われたので、一緒に連れて行った。
二人を連れてリビングへ入ると、凜姉と琉愛がキッチンでいろいろ準備をしていた。同時に、凜姉で目で「手伝え」と言われたので、キッチンに言って手伝いに行く。同時に、兇介も引っ張り手伝わせる。兇介が驚き離れようとしたが、力を強め離れさせないようにする。
そして、無理矢理手伝わせた。文奈は硬直していようだるが、少し待ってもらう。
数分経ち、準備が終わった。その準備というのは、昼食だ。これは、兇介と文奈の分も用意してある。
「私も食べて良いんですか……?」
文奈がそう言いながら、遠慮がちの態度を取る。だが、凜姉が「大丈夫だよ」と言って文奈を椅子に座らせる。兇介は、そういった態度も無しに椅子に座るが、若干遠慮しているように見えた。
そして全員で合掌し、昼食を食べ始める。
昼食を食べている間は、とても会話が弾み、凜姉達はいろいろと話していたが、俺はあまり話していなかった。時々話す事はあったが、すぐに俺のターンは終了した。
食べ終わった後は、食器を片付けてから皿洗いを始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
文奈は、昼食を食べ終わった後、暇そうにしている兇介に話しかけた。
「紫﨑君。來貴君って……中学の頃はどんな人だったんですか?」
來貴から、小学校時代からの親友だと言うことは聞いているので、その親友である兇介に來貴の事を聞いたのだ。……その理由がなんなのかは、誰も知らないが。
「ん? アイツの事か。中学の頃のアイツは……まぁ、今はマシになったが、前はかなりヤバかったな。……それに、中学だと対等だって言われていたが、アイツの方が強い。アイツは天才だよ。……それも、世界でもトップクラスな程に完璧だ。……だがな、稲垣さんにこれだけ言っておくぜ」
真剣な目をしている兇介の方を向いて、文奈は耳を傾ける。それを確認した兇介は、その言葉を言う。
「……何があっても、來貴の事を信じてくれ」
――文奈はその言葉の意味がわからなかったが、ある理由のため信じているため、兇介の言葉に頷いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全員の使った皿の皿洗いを終えた後、俺は再び自分の部屋に戻り、兇介達と宿題の続きを始めた。ただ、昼食前よりかは会話の量は減った。
俺が宿題を始めてから数十分で終わったからだ。他にもプリントもあったが、簡単すぎてすぐに終わったのだ。それから、とても暇になった。たまにわからなくなった兇介や文奈に教えているが、それだけだ。
何もしていないときは暇なので、少しゲームをしていた。文奈から少し白い目で見られたが、俺は気にせずゲームを続けた。だが、教えてほしいと言った時には教えたので、文句は無かった。……「人が勉強している中でゲームをするな」と言う声はあったが……。俺は気にせずゲームを続けた。
だが、途中で止めた。兇介と文奈が身体を動かす宿題をするらしい。する場所は、勿論家の敷地だ。逆に、そこじゃ無いとできない。……オリケルスがいる場所なら行けるかもしれないが。まぁそれは置いておいて、始めるか。
俺も、自分の分をやるからな。さっさとやって終わらせよう。そして、俺は自分の宿題をやり始める。兇介と文奈も、自分の宿題をやり始めた――――。
――――そして、数十分後。宿題が終わり、部屋に戻ってきた。部屋へ戻ったときには三時になっていた。まぁ、三時になったからって何かあるわけでも無いんだけど。ただ、もう宿題が終わったから暇なんだよ。
それに、兇介と文奈も持って来ていた宿題が終わったみたいだし、やることが無くなったんだ。今現在、部屋の文奈達が居ない方の机の上に足を掛けながら椅子に座っている。あまりに暇で、何をすれば良いかわからないのだ。
それは兇介も文奈も同様だが、こいつらは帰らないのか? 宿題も終わったみたいだから、ここに居る意味は無いと思うのだが。しかも、人の部屋にさも当然のように入り浸ってやがる……兇介は元々だが、文奈も段々そうなってきている気がする。
俺はそんな兇介と文奈の様子を横目で見ながら、宿題の整理をする。一カ所に纏めておいて、持って行きやすいようにするのだ。こうすると、速くバッグに詰め込める。
――そうして、二時間が経ち五時になった。
その間はあまりにも暇だったので、ゲームをして時間を潰した。兇介も文奈も混じってやったので、結構楽しかった。その兇介と文奈は、五時になったので家に帰るそうだ。これ以上居たら家族に心配されるかもしれないかららしい。
「じゃあな、來貴」
「さよなら、來貴君」
最後にそう言って、兇介と文奈は帰って行った。
兇介と文奈が帰った後、約一時間経った後に夕飯を食べ、風呂に入ってから寝た。今日は宿題をしたのと兇介と文奈の二人が来て少し疲れたので、いつもより少し速く眠りについた。




