47話「一日の休憩」
そして数秒、彩月と青道院による睨み合いが続く。次の瞬間、二人の姿が消える。次に現れたのは――――。
ドォンッ!
――――二人が、互いの拳をぶつけ合った状態だった。拳による力の押し合いは、彩月が有利になっている。彩月が脳のリミッターを解除し、本気の力を解放した事で、青道院の力を上回ったのだ。
……それに、青道院は実はそんなに力が強くない。雷を纏って大幅に上がるのは速度であって、力ではないからだ。故に、力が倍以上に上がった彩月に力で負けたのだ。
「チッ!」
青道院が舌打ちしながら、持ち前の速度で彩月との距離を取る。距離を取る間に、黒雷を放ち彩月の接近を妨害するのも忘れない。
……だが、青道院は既に幻の世界に入っている。黒雷は彩月に当たらず、途中で雷は壁に激突する。
そして彩月は、青道院との距離を詰める。そうして、手を掲げ技を放つ。
「世界滅亡の死せる誘導!」
彩月が持つ技の中で、トップクラスに強いこの技。この技は、幻の世界を滅亡させ、構成していた魔力を爆発して相手に還元し死に誘導する恐ろしい技である。だが、今回は気絶程度に留められている。
そして青道院も、黒雷を最大限にまで高めた落雷を彩月に対し放つ。
「雷神の怒号!」
そうして、二つの技がぶつかり合う。
勝者は彩月。まず、技の規模が違った。世界の滅亡と、落雷。どっちの規模が大きいかは明らかだった。故に、彩月の技が勝ち、青道院の落雷は掻き消された。そしてその結果、彩月はほぼ無傷で青道院は魔力還元による傷を負い気絶。
「そこまで! 勝者、鳳彩月!」
怜次の判定により、彩月の勝利が確定する。その後すぐに、青道院は怜次により衣良文の所へ運ばれた。
「大将戦は、執行科二チーム側の勝利! 決勝戦への駒を進めたのは……執行科二チームです!」
刀華の司会で、観客が沸き立つ。一部、能力科一チームの方を応援していた者達は落ち込んでいるが。
そうしてしばらく騒ぎ立った後、刀華が司会をする。
「これで、今日の対戦は終わりです。皆さん、帰ってって下さい」
刀華の言葉で、観客の生徒達は第一戦闘場を出て家に帰っていった。
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……終わったか。
準決勝第二試合は、執行科二チーム側の勝利に終わった。今日の対戦はこれで全て終わりなので、刀華先生から帰れと言われている。
とりあえず、俺も帰ることにした。
そして、俺は第一戦闘場を出て学校を出る。出た後、家へ向かって帰っていく。
十数分後、家に着いたので中に入る。
「……ただいま」
俺がそう言うと、親父が出てきてこう言った。
「おう、おかえり來貴。帰ってきたか」
とりあえず、俺は親父に一言言ってから自分の部屋へ行った。自分の部屋へ行ってからは、バッグを片付けて服を着替えた。その後は、何かするわけでも無く部屋でゴロゴロしていた。
そうして、俺がゴロゴロ部屋で過ごしている内に、数時間が経った。その間、まだ昼食を食べていなかったため昼食を食べ、その後再び俺は部屋でゴロゴロしていた。現在時刻は七時半。そろそろ、夕食の時間である。
俺がそんなことを考えていると、部屋のドアが叩かれた。そして、少し不機嫌そうな顔の琉愛が入って来た。
「……お兄ちゃん、夕食出来たから下に来て」
琉愛は入って来て早々、俺の手を取った。そして、無理矢理二階の俺の部屋から、一階のリビングへと連れて行かれた。
そこには、凜姉、親父、母さんがいた。だが、特に何か話すわけでは無く、俺は夕食を食べ終わった。
その後は、風呂に入って歯磨きをしてから寝た――――。
――――そして、次の日。俺はベッドから降り、学校へ行く準備をしていた。準備する物なんて殆ど無いのですぐに準備は終わり、俺は玄関を出て学校へ行こうとした。
「……あれ? 來くん、何処行くの?」
凜姉に話しかけられ、俺は足を止める。後ろを振り返ってみると、凜姉は私服姿だった。灰色のTシャツに、青い半ズボンを着ている凜姉は……とても、学校へ行く格好だとは思えない。
俺が沈黙していると、凜姉がこう言ってきた。
「もしかして、学校? だったら、今日は休みだよ?」
「……え?」
凜姉が言った言葉に、俺は思わずそんな声を出してしまう。……今日が、学科対抗戦の決勝戦の日じゃないのか? ……俺は、学科対抗戦についての説明が書いてある紙を全く読んでいない。故に、俺が見落としている可能性がある。
俺がそんなことを考えていると、凜姉が更に追い打ちを掛けてきた。
「学科対抗戦についての紙に書いてあったけど……來くん、見てなかったの?」
凜姉は、ジト目で俺を見ながら聞いてくる。……凜姉にそんな目を向けられ、俺は――。
「……はい」
――そう、正直に答えるしか無かった。答えた後、俺は凜姉に手を握られた。
「じゃあ來くん、今日は学校が無いから、私の部屋に来て」
俺が突然の事に戸惑っている間に、凜姉は俺の腕を取る。そして凜姉は、階段を上って行く。それに合わせ、俺も階段を上り二階に着く。二階に着いた後、俺は無理矢理凜姉の部屋に入れられた。その後凜姉も部屋に入った。
……そして、凜姉は俺に詰め寄ってくる。その後、俺の胸に顔を埋め……こう聞いてきた。
「ねぇ、來くん……あのとき、なんで嘘ついたの?」
凜姉のその質問に……俺は、こう答える。
「……さぁ、な」
俺の答えに満足していないのか、凜姉は頬をふくらませ俺の方を見る。……俺は、凜姉のその顔を直視することが出来ず、目を逸らす。
……ただ、俺が何故嘘をつくのか、一つ理由を言おう。俺は、俺が不利になるようなら、嘘でも何でもする。……この世界では、人は簡単に殺される。故に、嘘も必要なのである。
「……言わないんだね、來くん。……でも、いつかは言ってくれるよね?」
凜姉の言葉は、俺の胸に突き刺さる。……だが、凜姉の方を俺は見れなかった。そんな中、俺は――。
「……いつかは、な」
――俺は、そう言うことしか出来なかった。その後、凜姉が少し離れたので、とりあえずもう部屋に戻ろうかなと思い、部屋を出ようとしたが……。
(……ん?)
凜姉が、後ろから俺の服を掴んでいた。俺は、後ろを振り返ると……下を向いて俺の背中に顔を預けていた。俺はどうすればいいかわからず、その場で固まっている。
そんな状況の中、凜姉が口を開く。
「來くん……行かないで。ここにいて……ね、お願い」
凜姉は顔を上げながら、俺に向かって言う。……とりあえず俺は、了承して凜姉の部屋に留まる。
その後俺は、凜姉の部屋のベッドに座らされた。ちなみに凜姉は、俺の隣に座っている。
そんな状況になり数分ぐらい経った後、凜姉が俺の方に寄りかかって来て、口を開く。
「……來くん……あのこと、覚えてる?」
――凜姉は、そう聞いてきた。凜姉が言ってきたあのこと……というのは、覚えている。少し曖昧だが、一番大事な部分は忘れていない。
「……ああ」
俺がそう言った後、凜姉は俺の手を握る。そして、俺の方を見てきた。俺の身長は186cmで、凜姉の170cm。身長差は15cm以上。故に……上目遣いになっているのだ。
「だったら……私をずっと、守ってね? 私も、ずっと來くんのお姉ちゃんだから……何かあったら、私達を頼って良いんだよ?」
――凜姉の言葉は、俺の心に響いた。
(何かあったら、頼って良い……か。……だが、頼ることは決してしてはいけない。俺のエゴに、凜姉を巻き込むわけにはいかないんだ)
その後、俺が何も喋らないでいる。何を話せば良いか、わからないのだ。そんな空気を察してか、凜姉が明るい声で言う。
「ともかく、この話は終わり! だからさ……ねぇ、來くん。ちょっと、こっちに来て?」
俺は有無を言わされず、凜姉の方に抱き寄せられる。俺の顔は凜姉の胸に埋まっており、少し呼吸がしにくい。……だが、俺の頭は凜姉が抱えているため、抜け出そうにも抜け出せない。まぁ……悪い気はしないけど。
それに、凜姉がこうしてくることは何度かあった。そして、凜姉がこうしてくると言うことは……何かあったと言うことだ。とりあえず、凜姉の話を聞くか。
「私ね……最近、夢を見るの。……來くんが、何処かに行っちゃう夢なんだけど……」
そこで凜姉は言葉を切り、俺の顔を上げ凜姉と目を合わせられる。
「何処にも……行かないよね、來くん」
――そう言って、凜姉は俺の胸に顔を埋めてくる。凜姉の顔は見えないが、声音は少し震えている。俺は凜姉を安心させるように、凜姉の背中に触れる。
「……あぁ」
俺はそう言って、凜姉の背中を撫でる。それにより、凜姉が変な声を出したが、気にしない。その後、凜姉は吹っ切れた顔で俺を見る。そして、俺に飛びついてきた。突然の行動に、俺は驚いてそのまま凜姉に抱きつかれてしまった。
「來くん、大好き!」
凜姉は、俺の胸に頬ずりしながら言う。その後、凜姉は「……今日、琉愛が帰ってくるまで一緒に居よ?」と言ってきた。今の俺の状態は、凜姉に抱きつかれベッドに押し倒されている。……故に、凜姉から離れることが出来ない。
俺は頷き、それからずっと凜姉に抱きつかれていた――――。
――――あれから、数時間。一度昼食を食べた後、俺と凜姉は部屋に戻った。ちなみに、いるのは俺の部屋である。
今は何かしているわけでも無い。
……いや、かなり語弊があったか。俺は、銃剣のメンテナンスをしている。最近、酷似しすぎて壊れていないか心配になったのだ。それに、最近していなかったので、丁度良いかと思ったのだ。そして、俺がそうしている様子を、凜姉が後ろからずっと見ている。
少し作業がやりづらいし、死黒暴滅や万物具現化の眼と再現した能力は、見られているので使えない。
……それにより、メンテナンスの効率がとても下がっている。いつもは、能力を使用してやっているので、結構すぐに終わる。だが、今回はかれこれ一時間以上やっている。……能力に頼りすぎたかも知れない。そろそろ終わるので、別に良いのだが。
――そうして、数分。
「……終わった」
銃剣のメンテナンスが終わった。結論から言うと、一部壊れかけていた。その壊れかけていた部分というのは、柄と銃口と魔力刃が出る部分である。
柄は、強く握りすぎて少しヒビが入っていた。これは直すのが楽だったので、すぐに終わった。
銃口は、撃ちすぎで少しすり切れている。それに、あまり見ていなかったのと、銃弾が強いのも要因の一つでもある。
魔力刃が出る部分――魔力刃放出部とでも言うか。魔力刃放出部は、言うまでも無いだろう。幾度のオリケルスとの模擬戦や、レノルドとの殺し合い。その過程で、何回も巨大な魔力刃を出し、高密度で過度な魔力を込めてきた。故に……壊れるのは必然だろう。寧ろ、よくここまで持ったくらいだ。
三つとも、直すと同時に補強したので、前みたいに使っても長く持つだろう。……今日の夜、凜姉達が見ていないところで、能力を使い更に改造をする予定でもある。
その後銃剣を仕舞い、ベッドに寝転がる。それと同時に、凜姉もこっちへ来た。
「ねぇ來くん……琉愛とは、どうするつもりなの?」
琉愛とはどうするか……か。凜姉は、琉愛とはどう仲直りをするのかと言うことだろ。凜姉とはもう仲直りをした……ので、していないのは琉愛だけ。親父と母さんは、別に普通なので問題ない。
「……するつもりだ」
俺はそう言い、凜姉の方から目を逸らす。凜姉は、俺の回答に満足したのか頷いている。
その後、俺は凜姉と一緒に居させられた――――。
――――そして、学校から琉愛が帰ってきた。その後凜姉は、部屋に戻り寝始めた。少し寝てから夕飯を作るそうで、今は仮眠を取っている。俺は、琉愛に話をする事にした。ちなみに、話す場所は俺の部屋である。
「で、話って何? お兄ちゃん」
琉愛がそう言ってくる。そんな琉愛に、俺はこう言った。
「――あのときのことだ」
俺はそう言い、少し驚いている琉愛を無視し話し始めた――――。
――――そして、話終わった。琉愛は、俺の説明に、少し不満ありげだが納得してくれた。
「――お兄ちゃん、いつかは言ってね?」
琉愛はそう言いながら、俺の方に寄ってくる。
「……あぁ」
俺はそう言い、少し琉愛から離れる。その後、琉愛が接近してきて抱きついてきた。そして、こう言ってきた。
「ねぇお兄ちゃん、ちょっと一緒に居ようよ」
琉愛に抱きつかれているので、断ろうにも断れず、俺はそのまま琉愛と一緒に居ることになった――――。




