43話「第二回戦」
学科対抗戦、第二回戦。組み合わせは、第一戦闘場のモニターに映し出された。
第一試合:能力科一チームVS強襲科二チーム
第二試合:刀剣科二チームVS執行科二チーム
第三試合:執行科一チームVS強襲科一チーム
第四試合:刀剣科一チームVS能力科二チーム
その組み合わせは、こういうものだ。執行科一チームは、どうやら第三試合だ。第一試合かと思ったが、いつに試合をするかはランダムになっているようだ。トーナメント制だというのは変わっていなく、試合の順番が変わっただけらしい。瞬華先輩から聞いた。
そして、各自第三試合が始まるまで自由にして良いということなので、俺は試合を見ることにした。
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第一試合は、能力科一チームVS強襲科二チーム。
能力科一チームは、雫が先鋒を務めているチームだ。
雫は、第一戦闘場の待機場所で、大将である生徒の言葉を聞いていた。
「俺が言うことは一つだけだ。……勝つぞ」
大将の言葉に、全員が頷く。そして、司会である刀華の言葉で第二回戦第一試合が始まる。まずは、先鋒戦。能力科一チームの先鋒は雫なので、雫は行く。
「さぁ! 学科対抗戦第二回戦第一試合の始まりです! まずは先鋒戦! 各チームの先鋒は、準備をしこちらへ出てきてください」
刀華の言葉に従い、雫は武器を準備して行った。そして、相手の先鋒も来た。
「両選手の準備は出来たようですね! それでは、審判の荒川先生お願いします」
審判の怜次が出てきて、始まりの合図をする。
「それでは、始め!」
その瞬間、相手の先鋒は雫に向かって駆け出す。その両手には、拳銃を握りながら。雫は、静かにそれを見ている。その様子を見て、観客席がザワザワ騒ぎ出すが、気にせず雫は見続ける。対して、観客席の一番上で見ている來貴は冷静だ。何か策があるのだろうと考えている。
数秒後、雫と相手の先鋒との距離が約2m程度に縮まる。
そして、相手の先鋒は雫に拳銃を向け発砲する。そこで、雫は動き出した。発砲された銃弾を、自身の能力『葉脈の流力』でエネルギーの流れをゼロにし、銃弾を地面に落とす。
相手が驚いている内に、雫は後ろに回り込み後頭部に拳を食らわせる。それにより、相手の先鋒は気絶し雫の勝利となった。
「そこまで! 勝者、銘仙雫!」
怜次の終了の審判が下され、試合が終了した。この勝負は、雫の完全勝利だった。相手の銃撃を、完封したのが勝因だろう。
雫が持つその能力、葉脈の流力。その本質は『増減』。あらゆる流れを操るこの能力の本質は、流れの増減にある。それにより、運動エネルギーを停止させる事が出来るのだ。
故に、雫に遠距離系の攻撃は非常に相性が悪い。その全てを停止させ防ぐことが出来るからだ。
そうして、雫は待機場所に戻った。その後、勢いに乗った能力科一チームが第一試合を制し、準決勝へと歩を進めた。
そして第二回戦は、刀剣科二チームVS執行科二チーム。開始されるのは十分後なので、來貴は暇を持て余していた。そんな來貴に、黎が話しかけて来た。
「來貴、暇そうだね」
來貴は、その声を聞いて声が来た方を見る。そして、その声の主が黎だという事に気付き、來貴は暇を潰すため黎と話し始めた。
そして、黎は一回戦負けをしたことを知った。
「來貴のお姉さんと瑠璃君がいるチームに負けたからね……僕。負けたから暇なんだよね……」
と、言っていたのを來貴は覚えていた。まぁ、來貴は別にその事をどうとも思っていないが。
そうして会話している内に、十分が経った。第一試合終了後から十分が経ったので、今から第二回戦第二試合だ。來貴は出ないので、上で黎と一緒に観戦している。
そして、第二試合に出る白凪は、待機場所で彩月の話を聞いていた。
「皆、勝つよ」
彩月は、その一言だけを言った。その一言に、執行科二チーム全員が頷く。
「さぁ! 第二回戦第二試合の始まりです! 各チームの先鋒は、準備をして出てきてください」
司会である刀華の言葉で、互いのチームの先鋒は出て行く。白凪は、刀華の言葉を聞いて待機場所を出る。そして、相手の先鋒も待機場所を出る。二人が揃った後、刀華はマイクに向かって喋る。
「両選手の準備が出来たようですので、審判の荒川先生お願いします」
そして怜次が出てきて、先鋒戦開始の合図をする。
「それでは、始め!」
怜次の合図で、第二試合の先鋒戦が始まる。その瞬間、白凪は距離を詰める。勿論、ただ距離を詰めるのでは無い。自身の能力、物質支配を最大限に使った縮地だ。消費魔力を最小限にし、最大の効率で距離を詰める。
地面と空気を操り、音を出さないように、速攻で距離を詰めたのだ。
そして、相手の近くに来た白凪は、掌底を食らわせる。それにより、相手の先鋒は気絶する。白凪の勝利だ。
「そこまで! 勝者、白凪鉤人!」
怜次の判定が下され、白凪の勝利が確定する。白凪の一方的な完全勝利で、この先鋒戦は幕を閉じた。
その次の次鋒戦、中堅戦も勝利し、ストレート勝ちで執行科二チームは勝利した。
それを見て、來貴は歩き始める。
「ん? 何処行くの?」
何処かへ行き始めた來貴を見て、黎が問いかける。それに対し、來貴はこう答える。
「次、試合がある」
第三試合は、執行科一チームVS強襲科一チーム。來貴は、執行科一チームの先鋒なので、試合に出なければならない。故に、十分後にある第二回戦第三試合へ出るため待機場所へ行くのだ。
來貴の一言を聞いて、黎は「がんばってね」と言葉を返した。來貴は、返事をすることなく待機場所へと行った。
待機場所には、既に來貴以外の執行科一チームメンバーが集まっていた。來貴の姿を見た瞬華は頬を膨らませながら來貴にこう言った。
「む、やっと来たか來貴君。遅いじゃないか」
「……すみません」
來貴は、少し腑に落ちなかったが謝罪をした。それにより、瞬華は満足そうな顔になり、全員を集めて話始める。
「……強襲科一チームのメンバーは全員強い。だけど皆、私から言うことは一つ。……勝つよ」
瞬華が言ったことは、それだけだった。なんだか他の学科と同じような気もするが、それは気にしてはいけない。
その後、刀華が第三試合の始まりを告げる。まずは先鋒戦なので、來貴が最初に行く。
そして相手の先鋒が出て、双方の準備が整った。今は、怜次の合図により第二回戦第三試合先鋒戦が始まろうとしている所だ。
「それでは、始め!」
怜次の合図により、始まった。相手の先鋒は、走り出そうとした。だが。
「ガフッ!?」
腹部を思いっ切り蹴られ、吹っ飛ばされた。
これは、來貴が開始と同時に一瞬で距離を詰め、その勢いを乗せた蹴りを相手の腹部に浴びせたからだ。それにより、相手は吹っ飛び十数メートル飛んだ後何回か跳ねて寝転んでいる。
気絶していることは、間違いないだろうが。
「そこまで! 勝者、結月來貴!」
そして、戦闘が終了した。経過した時間は、一秒もない。文字通りの完全勝利で、一瞬で決着がついた試合だった。
來貴は自身が蹴り飛ばした相手を一瞥すると、待機場所に戻った。
そして、次鋒戦では明城が敗北してしまい、中堅戦では亜宮が相手と引き分けた。引き分けの勝負は、無かったことになる。三回勝てば準決勝に駒を進めるので、執行科側は後二回勝てば良い。それは、相手側も同じ事だ。ちなみに、五回の勝負の中でどちらとも三回勝たなければ、次の一回で勝った方が勝つ。それは、誰でも良い。
……故に、今まで出番のなかった副将の天上と、大将の瞬華の出番だ。まずは、副将戦。二年生最強とも言われる天上司の出番だ。
「さあ! 副将戦! 双方の準備は出来ているようですので、審判の荒川先生お願いします」
刀華の言葉で、怜次が出てきて合図を行う。
「それでは、副将戦を始める。始め!」
それにより、副将戦が始まった。天上の相手は、強襲科の副科長である柊樹翔一。短く切られた白髪に、薄紫色の瞳を持っている。その強さは、天上とほぼ同格だ。だが、天上と違って三年生である。
その二人は、怜次の合図と同時に飛び出し、自らの武器である直剣を抜き、魔力を纏わせ斬りかかる。天上も柊樹も武器は直剣であり、戦闘スタイルがほぼ同じなので、必然的に近接戦になっている。それに、二人の能力が似通っているというのもあるだろう。
戦いが始まって数分。二人は、しばらく剣で打ち合っていた。二人の剣の腕はわずかに柊樹が植え、身体能力はわずかに天上が上。二人の実力はほぼ拮抗していたのだ。それを悟った天上は、能力の使用を決意した。元々、天上は使用するつもりではあったが。
「ぐおっ!?」
それにより、均衡が崩れた。天上が力と速度に物を言わせ、剣を振りかざしている。柊樹は技巧で受け流したが、段々と不利になっている。天上の激しい動きについて行けていないのだ。
天上の能力である速力強化。その本質は『激化』。速度と力を強化するこの能力は、要するに身体強化である。その原理は、魔力を用いて身体を酷使する、という点にある。故に、長時間使用すると身体がボロボロになるため、天上は使用を少し躊躇していたのだ。
そして、その強化系でも上位に位置する能力を開放した天上は、強かった。自分より経験が一歩上である柊樹を圧倒している。
……だが、柊樹はただやられているだけでは無かった。柊樹は、自身の能力を発動させる。
それにより、天上の剣を躱し柊樹は後ろから剣を振り下ろす。
ギィンッ!
天上は、ギリギリ反応出来たようで、剣を後ろに向け防いだ。力では勝っているため、その途中に柊樹の方を向くことが出来た。
柊樹は、天上が自身の方を向いた瞬間に能力を使い、別の方へと行った。
柊樹の能力は、不可視なる加速衝動。あらゆるものを加速させる能力である。そして、この能力の本質は『遅速』。これは、周りを遅くすることで自身を加速させているのだ。故に、不可視。速度に特化した、強化系の中でも上位に位置する能力である。
そして、二人は互いに能力を使って剣で打ち合う。天上は、黄色の魔力を、柊樹は、薄青の魔力を剣に纏わせながら。時間が経っていく内に、両者の身体には掠り傷が出来ていった。
十数合打ち合った後、柊樹は加速し剣を打ち付ける。天上はなんとか反応し、剣で防ぐ。だが、それにより両者の剣が壊れた。
それを見た天上と柊樹は、能力を全力で使用し拳で殴りつける。
倒れたのは――――。
「そこまで! 勝者、天上司!」
――――柊樹だった。
勝因は、速度と力を強化する天上の能力と、加速に特化した柊樹の能力。天上は速度と力を強化した拳で殴り、柊樹は加速させた拳で殴った。拳の速度としては、柊樹の方が上だった。だが、天上の拳の方が、威力が上だったというだけ。付け加えるなら、力を強化出来る天上の踏ん張りが強かったというのもあった。加速に特化した柊樹では、踏ん張りがきかないのだ。
そして、天上は待機場所に戻った。柊樹は、怜次に待機場所に運ばれ衣良文の治療を受けた。
「さぁ! 今回の学科対抗戦で、初の大将戦です! 両者の準備が出来たようですので、審判の荒川先生お願いします」
大将である瞬華は、既に待機場所から出ている。強襲科一チームの大将で、強襲科の科長でもあるこの男。男にしては長い灰色の髪に、藍色の瞳を持つ夜霧乃日向も、待機場所から出てもう戦える状態だ。
「それでは、大将戦を始める。始め!」
怜次の合図と同時に、二人の大将は走る。走り出しながら、二人は武器を抜く。瞬華は、軽く反りの入った刀を。夜霧乃は太刀を。
――そして、二人は刀で打ち合う。結果は、夜霧乃の方が力は強く、瞬華は押される。そこで、瞬華は夜霧乃の刀を受け流し斬りかかる。だが、夜霧乃が飛び退くことで躱される。
(待っていたわ、日向……!)
それと同時に、瞬華は時間支配を発動させ時間を止める。時間が止まった世界を、瞬華は“停止世界”と呼んでいる。停止世界の中では、時間に関する能力を持つ瞬華のみが動くことが可能。他の者は、認識すら許されないのだ。だが、その停止世界にはいろいろと制約がある。これは瞬華が、『努力と実験の果てに見つけた』停止世界の法則だ。
一つ目。停止世界の中では、あらゆるものの動きが停止され、色と音が失われる。
二つ目。停止世界の中では、時間に関する能力を持つ者、認識することや動くことが可能。
三つ目。停止世界の中では、あらゆることに魔力を消費する。
四つ目。停止世界の中では、動くことのない存在は確立される。
一つ目は、停止世界には光や音なども停止しているため、色彩という概念が無い。故に、瞬華は周囲に魔力を放ち、それを情報化し周囲の状況の情報を得ているのだ。
二つ目は、瞬華の下位互換の能力を持った者がいるため、発見が出来た。
三つ目は、停止世界を維持するのにも魔力を使用し、動くのにも魔力を使用するためだ。故に、停止世界は長く持たない。瞬華が全ての魔力を使って停止世界を維持するなら、持って二分である。
そして、瞬華は時間が止まっている内に、瞬華は懐から拳銃を取り出し夜霧乃の周囲に銃弾を放つ。その銃弾は、当たる寸前で止めておく。何故瞬華が止まっている内に銃弾を当てないのか。理由は単純。当たっても意味が無いからだ。
これが、四つ目の法則だ。動くことのないありとあらゆる存在は、停止世界の一部となり確立される。故に、当たっても効かない。逆に、自分が弾かれる。だから、寸前で止めるのだ。
瞬華は、停止世界を解除する。一回一回に大きく魔力を消費するため、瞬華はあまり使いたくないと思っているため、瞬華としては早く決着を付けたいと思っている。
「……危ないね」
夜霧乃はそう言いながら、目の前に迫る弾丸の嵐を躱す。その表情には余裕が残っている。
(小手先の攻撃は通用しない、か)
瞬華は心の中で舌打ちをする。先程の発言は、夜霧乃にとって、さっきの攻撃を凌ぐことは造作もないと言うことを意味する。
どうしたものかと、瞬華は考える。瞬華の能力である『時間支配』。操作系にして能力階位の中で最上位に位置する。そして、時間を支配するこの能力の本質は『法則』。停止世界の法則や、時間を操作する際の法則。それを理解することが、時間支配の本質なのだ。
そして、瞬華は、自身の時間を加速させる。それにより、瞬華の動きは格段に速くなる。夜霧乃は、少し苦悶の表情を浮かべながら瞬華の攻撃を受ける。
(……そろそろ使わないとヤバいね)
夜霧乃は、自身も能力を発動させる。それと同時に、持っている太刀に深い青色の魔力を纏わせる。夜霧乃が能力を発動させた途端、夜霧乃の動きが良くなる。そして、瞬華に攻撃を当て始める。
夜霧乃の能力は、『最適の答え』。最適化された行動をする能力だ。この能力は強化系の能力で、能力階位の中でも最上位の能力とされている。それ程、強い能力なのだ。その本質は『効率』。
この能力を発動させた夜霧乃の全ての行動には、無駄が一切無い。消費魔力の効率もいいので、夜霧乃は連続で三週間もの間能力を発動させ続けられる。
この能力の恐ろしい点は、ただ一つ。無駄が無いこと。それは、思考や脳の使い方にも現れる。夜霧乃は、能力を使い脳のリミッターを解除することが出来るのだ。それは、夜霧乃の身体能力の向上を意味する。
――そして、勝負は段々と夜霧乃が優勢になる。能力序列の格としては同じなのだが、何せ能力の相性が悪い。それに、瞬華の方が消費魔力が多いため、段々と夜霧乃が優勢になるのは明白だった。
だが、それで諦める瞬華では無い。瞬華は、もう一度時間を止める。そしてすぐに、瞬華は刀身に魔力を纏わせ夜霧乃の後ろに回る。回った後時間を解除し、夜霧乃の真後ろから橙色の魔力を纏った刀で斬りかかる。
それは、その事を予想していた夜霧乃に防がれる。瞬華は、これも読んでいたため想定内。
そして、瞬華は足蹴りで夜霧乃の体勢を崩す。それにより、夜霧乃に一瞬の隙が出来る。瞬華は、夜霧乃の時間を遅らせ、隙を伸ばす。
夜霧乃の隙がある内に、瞬華は夜霧乃の首に刀を突きつける。夜霧乃の持つ太刀は、瞬華に踏まれているため動かせない。
夜霧乃は、この状況の最適の答えを出す。
「……降参、だよ」
「そこまで! 勝者、東道瞬華」
夜霧乃の降参により、怜次が判定を下す。瞬華の勝利だ。相性が悪いとはいえ、生徒の中で最強と謳われる瞬華の実力は伊達じゃなかった。
そして、二人は待機場所に戻った。
「第二回戦第三試合! 準決勝への切符を勝ち取ったのは、執行科一チームです!」
刀華のその司会により、第三試合は終了した。來貴達執行科一チームは、第四試合を見るため観客席へと行った。
少し書くのに時間が掛かりました。強襲科の副将と大将の能力の名前の頭文字が一緒になったのは、偶然です。……能力系統も一緒だからなぁ。




