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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第三章 学科対抗戦編
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41話「神の尖兵」

 そして、俺がさっき居た場所には、槍が刺さっていた。夜の道に槍が刺さっている光景は、一般人が見たら悲鳴を上げるだろう。


(……なんだ? この槍。明らかに俺を狙った軌道だったが……)


 俺は、槍が飛んで来た方を見る。そこには……空中に浮かんでいる、美しい女性がいた。その美女は、黒い衣装を纏い、艶やかな長い白髪に、緑色の瞳をしている。……ただし、その背中からは一対二枚の純白の翼が生えている。そして、その両手には紅色の槍が握られている。


「……アレを避けますか。ドルナイト様から危険だと言われていた訳ですね」


 その美女は、空中から降りてきながら言う。……ドルナイト……という事は、こいつはドルナイトの部下だと言うことか?

 そう考えながら、俺はバッグの中から銃剣を取り出す。中身が無くなったバッグは、最小のサイズに丸めて服のポケットにしまっておいた。


「私の名前はレノルド。選定を突破した器の結月來貴。主の命により、あなたを殺しに参りました」


 レノルドはそう自己紹介をし、槍をこちらに向ける。


 そして、同時に確信を得た。レノルドは、ドルナイトが差し向けた尖兵だ。だが……いつバレた?ドルナイトはまだ活動できる段階ではないと言うことは、オリケルスから聞いている。それ故に代理を向かわせたのはわかる。……だが、腑に落ちないところがある。


(……何故、俺の存在を知っている?)


 そこだ。俺は、ドルナイトとは一度も合ったことが無い。名前は知っているが、顔は知らない。だが、それは相手も同じ事。……なら、何故知られているか。導かれる真実は二つ。


(……能力か、誰か潜り込んでいるか。はたまた両方か)


 この二つだ。……だが、この事について考えている余裕など無い。今は、目の前の者を排除する事に集中することにしよう。


 そして、俺はヴァルブラドとヴォルガンを手に持つ。勿論、魔力刃を出すことも忘れない。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 來貴が自身の得物を取り出すと同時に、レノルドは槍を投げる。そして來貴は、瞬時に槍を躱して三発発砲する。だが、その全てが擦りもしなかった。


 この一連の動作が終わった後、レノルドの手元に槍が戻る。來貴はグングニルみたいだと考えたが、その考えは戦いにおいて不要だと切り捨てた。だが、その手元に槍が戻る……というのは、何か仕組みがあるのだろうと考えた。


 そして、その事を頭に入れつつ來貴は走る。走ると同時に、覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を発動させながら。それを確認したレノルドは、両手に持つ紅の槍を來貴の方に向ける。その後、純白の翼をはためかせ低空を羽ばたく。


ギィン!


 銃剣の魔力刃と槍の先がぶつかり、甲高い金属音を鳴らす。二つの銃剣を斬り下ろした來貴と、紅の槍を突き出したレノルドにより、この音は鳴らされたのだ。そして、二人は力を込め、相手の武器を押し込み殺し合う。


 その力は拮抗している……かのように見えたが。


「ぐっ……」


 強化系の能力を持っている來貴の方が、圧倒的に有利だった。


 瞬時に不利だと判断したレノルドは、一瞬姿勢を低くしてから飛び退き、空中に飛んだ。空中だと、來貴は手出しが出来ないと判断したからだ。


 空中に来たレノルドは、幾百もの槍を取り出す。そして……その槍を、來貴に向かって発射する。


 來貴は民間に被害を出さないように、能力で槍を破壊したり操ったりしながら、槍の総放射を凌いでいく。


「……凌ぎますか。では、これはどうでしょう」


 レノルドは、二つの紅の槍を両手に持つ。そして、空中から勢いを付けて落下しながら攻撃する。來貴は、その場から飛び退き、銃剣の刃から黒波を放つ。レノルドは、黒波を躱しながら槍を放ちつつ接近する。


 來貴は、その槍を斬り伏せる。そして、刃に魔力を込めレノルドに接近する。銃剣の斬撃と、二槍の刺突がぶつかる。その力は、前の鬩ぎ合いとは違い拮抗していた。


(……拮抗している? 前は、俺の方が力は強かったはず……)


 そんなことを考えていると、徐々にレノルドの力が上がっていく。そして段々と、來貴が押されていく。


 数秒後、レノルドが來貴の銃剣を弾き、左手に持つ槍で突く。來貴は咄嗟に体を捻り、槍を躱した。が、右腕が少し抉れている。來貴は、黒波を左足に纏わせレノルドを蹴り上げて距離を取る。


 レノルドは、來貴の蹴りを躱しながら槍を投げる。その槍は、來貴に簡単にいなされる。


 そして、來貴は死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を発動させる。それによる黒波を、身体中に纏わせる。右腕の傷が少し治り、再び來貴はレノルドに接近する。銃剣と槍での打ち合いが始まった。


ギィンッ! ギィンッ!


 そうして数合ほど打ち合った後、レノルドは空中に飛び上がる。それを見て、來貴も空中に跳躍する。レノルドはそれに気付いていたようで、上空に槍を出現させ來貴に向かって放射する。


 來貴は槍を躱しながら、銃口をレノルドに向け発砲する。


バァンッ!


 乾いた発砲音が鳴り響く。黒い銃弾は、レノルドの足に掠り傷を付ける。直前で、レノルドが回避をしたため擦っただけに留まったのだ。


 そして、來貴がレノルドと同じ高さの場所に着くと、銃剣を振った。その刃に、黒雷を纏わせて。


 レノルドは、長い槍を出現させその斬撃を受け止める。その後、來貴はそれを見越していたかのように、槍を使って空中へ更に跳躍した。

 その後、レノルドの上の位置に来たとき、銃剣を腰に仕舞う。そして、両手を突き出しある技の名前を口にする。


「――暗黒雷天波動嵐ブラックボルトストーム


 來貴の両手から、黒雷の波が出て、嵐のように吹き荒れる。それは、レノルドを呑み込まんと荒れ狂う。そんな中、レノルドはこの状況をどう打開するか考えていた。


(……マズいですね……)


 レノルドは考える。來貴の暗黒雷天波動嵐ブラックボルトストームに巻き込まれれば、確実に死亡する。それは、レノルドとしては避けたいことだった。レノルドは、ドルナイトの命を受けて、來貴を殺しに来た。いずれ自身に匹敵するかもしれない芽を、ここで摘むのだ。


 それ故に、來貴を殺しに来たのだ。だが、逆に殺されてはドルナイトの命に逆らう事になる。それは自身が許せない。頭を回転させ、この状況を打開する術を探す。


(……まず、躱すのは……無理ですね。逃げ切れません。……なら、答えは一つですね)


 思考が纏まり、一つの答えを見出したレノルド。その答えは――。


「――飛翔せし幾兆の雷槍フライ・ザ・トリニティ・スピア


 レノルドは、自身の能力である無限魔増殖アンリミテッド・インクリースにより、槍を増殖させる。そして、()()()()により槍を飛翔させる。ただ、それだけでは嵐で散らされるだけなので、これもある技術により雷を添える。


 黒雷の嵐と、飛翔する雷槍はぶつかり合い、周囲に激しい衝撃波をまき散らす。來貴とレノルドに取っては、ただの微風程度でしかないが。そしてそれは、來貴の能力により限定空間内に留められていた。


 だが、互いの攻撃は互いを傷つかせた。レノルドは、來貴の暗黒雷天波動嵐ブラックボルトストームを打ち消しきれなかったようで、所々に傷を負っている。來貴も、何本かの槍が命中し傷を負っている。だが、お互い戦えない傷ではないので、來貴とレノルドは傷を治しながら戦闘を続行する。


(……危ないな。俺にとっては微風に過ぎないが、周囲の家に当たったら……一家団欒中の家族を皆殺しみたなことになりそうだ。さすがにそれは避けたい。民間への被害を出さないように、衝撃波の方向を操ったが……集中力と魔力をとても消費する。それに、傷を治すのにも魔力を使うな……。速めに決着を付けないと、魔力切れと反動で殺られる……!)


 來貴は、現在の状況を冷静に分析していた。それに、來貴は暗黒雷天波動嵐ブラックボルトストームみたいな大技をそう何回も使えない。覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)の反動もあるので、長時間戦うと反動が来てしまう。そう考え、來貴は「次の一撃で決める」と決心した。


 そして、レノルドは重力に従い落下する來貴を仕留めようと、槍を構える。來貴も、腰から銃剣を抜き黒銀の魔力刃を煌めかせる。レノルドは、槍に炎を。來貴は、刃に氷を纏わせる。


 数秒後、互いの武器がぶつかる。


 辺りには火と水が舞い、それは昇華と凍結を繰り返す。だが、周囲に被害は無い。これも、來貴の能力によるものだ。


 そして、この鬩ぎ合いは來貴が制した。力は來貴の方が上だったためだ。レノルドも、ある技術で力を強化していたみたいだが、覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)の限界突破には及ばなかった。


「くっ……」


 それを悟ったレノルドは、別方向から槍を放射し來貴と距離を取る。そして、再び槍を放射し來貴に近づかれないようにする。來貴は、攻撃手段の約80%が近接攻撃なので、その選択は合っていると言えるだろう。だが、残りの約20%。來貴の大規模破壊攻撃を防ぐ手段を考えていないと、その作戦は無意味なものと化すが。


 來貴は、槍を躱しながら次の一手を考える。そのついでに銃弾を発砲し、レノルドの足止めもしていた。そして、思案する。來貴は、最悪周囲の被害と民間の目撃は国へ対応させて、自分はレノルドを殺す事に集中しようと考えたのだ。


 レノルドは、銃弾を躱しながら次の一手を準備する。両手に持つ二つの紅の槍に、魔力を込める。技術を使い、魔力を圧縮し炎を込める。自身にも、魔力を纏わせ少しでも身体能力を向上させる。そして、一対二翼の翼をはためかせ、上空へ飛び上がる。その後、勢いを付け発砲された銃弾を避けながら來貴へと接近する。


 その後、技の名前を口にした。


「――紅炎爆魔斬突撃ノヴァフレア・スラッシュ


 レノルドの持つ紅の槍から、紅色の炎が溢れ出る。この攻撃は、レノルドが扱う技の中でトップクラスに威力の強い技だ。レノルドがこの技を使ったと言うことは、この一撃で終わらせるという決意の表れだ。その炎は、魔力の爆弾を抱え來貴へ迫り、斬撃と刺突を同時に行えるような形状になった。


 その後、それを纏った槍が來貴へ当たろうとする数秒前――。

 來貴は、技を返す。そして、銃剣を強く握り、刃に魔力を集中させる。先程、この一撃で決めると決心したためだ。


「――黒銀凝集斬(ダークネスブレイヴ)


 來貴の持つ銃剣から、今までとは比べ物にならないほど濃い黒銀が溢れ出る。それは、魔力刃へと凝集され、刃の長さが約2m程へと伸びていく。


 そして、來貴は銃剣を振るう。数秒後、レノルドの、紅炎を纏った槍とぶつかったその瞬間。


ドゴォーンッ!!


 高密度に凝集された黒銀と、魔力の爆弾を抱えた紅炎が一気に膨張し爆発する。


 黒銀の波と高密度の魔力の紅炎が吹き荒れ、周囲を破壊し尽くそうと荒れていたが、來貴の能力によって方向はレノルドとレノルドの攻撃の方だけに変えられていた。そんな中、來貴は約2m程の魔力刃でレノルドの紅炎を纏った槍を受け止めていた。


(……この能力が無かったら、今頃ここは更地になっていただろうな……。それに、上手く黒銀凝集斬(ダークネスブレイヴ)を防がれたな。だが、消耗しているのは間違いないだろうし、そろそろ決着を付けたいところではある……それに、俺も消耗してきた。能力の反動もそろそろ来そうだ)


 來貴は、周囲の黒波を吸収しつつ、思案する。


(……奥の手を、使ってしまおうか? だが、あれは()()()に周囲への被害が大きすぎる。……いや、もうこの時点で、周りへの被害なんて考えていないようなものか)


 來貴は、奥の手を使うことを決意した。この力は、本質的に周りを大きく変える。だが、全部国に任せればいいだろうと考えたのだ。


 そして……來貴は、発動させた。その、力を。


「――地獄門(じごくもん)焦熱地獄(しょうねつじごく)


 來貴がそう呟くと……地面に、赤黒い九芒星の陣が浮かび上がる。レノルドは、怪しげにその陣を見ていたが……。


「ッ!?」


 突如、空中へ飛び上がり後方へと後退し、陣の外へ出る。


 直後、陣から灼熱の炎柱が上がる。それは、周囲を焦がし数秒で消えた。


「……当たらなかったか」


 來貴はそう呟き、銃剣の魔力刃に陣を浮かばせる。これは、來貴がジェイドから受け継いだ能力・地獄門(ヘル・ゲート)。地獄を支配する能力だ。それにより、地面に陣を浮かべて地獄の炎を呼び寄せたのだ。それを來貴は、魔力刃という一点に集中させ、一気に決着を付けようという作戦だ。その代わり、消費魔力が多いので長時間使えないという弱点はあるが。


 來貴は銃剣の刃を約1.5m程に伸ばす。そして、決着を付けるための言葉を紡ぐ。


「――地獄武装(ヘルズウェポン)凍柩霊獄剣(コキュートス)


 黒銀の魔力刃は、地獄の冷気に包まれる。それは、全てを凍てつかせる最強の地獄の冷気による武装。それは、使用者さえも凍てつかせる程だ。現に、來貴の手は少し霜が降りている。だが來貴は、魔力路の活性化で無理矢理体温を上げ、霜を溶かしている。


 そして、來貴は地を蹴り、レノルドへ迫る。


(アレは……マズいですね)


 レノルドも、直感で凍柩霊獄剣(コキュートス)がヤバいと判断し、最後の技の準備をする。二つの紅の槍を持ち、來貴の氷に対抗するため紅の炎を出す。


 そうして数秒。互いが互いの射程圏内に入った。それと同時に、來貴とレノルドは技を出す。


「――黒銀冷死凍柩斬ブラックアウトフローズンレイ!」


 來貴の、今出せる力を全て込めた一撃。

 自身の魔力色である『黒銀』と自身の能力である『覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)』による『限界突破』、そしてネルから継いだ能力である『死黒暴滅(ブラック・デストロイ)』による『黒波』とジェイドから継いだ能力『地獄門(ヘル・ゲート)』による『凍柩霊獄剣(コキュートス)』を合わせた、來貴の中で最強に近い攻撃だ。


「――無限爆炎刺突撃アンリミテッドフレイムスピア!」


 レノルドの、数ある技の中で最強の、全身全霊を込めた一撃。

 紅の槍を、自身の能力である『無限魔増殖アンリミテッド・インクリース』で魔力を消費し増殖させ、紅の炎を『ある技術』によって纏わせる。その炎は、高密度に圧縮し任意のタイミングで膨張させられるように。その槍を、能力で増殖させ來貴の一撃を打ち消そうとしたのだ。


 ――そして、二つの絶技がぶつかった。


 周囲は氷と炎に包まれ、低温と高温の衝撃波が何回も吹き荒れる。


 勝者は來貴。地獄の冷気で、レノルドの紅炎の槍を凍てつかせたのだ。その代償に、自身の体温が著しく下がっている。息が凍てついていて、來貴の周囲はとても六月とは思えないほどの気温の低さになっている。


 レノルドは、來貴の攻撃をまともに受け、右半身が無くなっている。もう動けない状態だ。

 

(……かなりヤバいな、これ)


 來貴は、周囲の被害等今更考えておらず、レノルドを殺すことだけに集中していた。レノルドは、そんなこと知ったこっちゃ無いので気にしていない。故に、來貴が創った限定空間内の中は、何も無くなっている。二人の攻撃の余波で消し飛んだのだ。


 だが、民間には被害が出ていない。多少は出ているが、それでもここまで被害を抑えられた來貴の技量を賞賛すべきだろう。


 來貴はそれを置いておくことにして、油断なくレノルドの方へと行った。

技名を考えるのに時間を費やしました。

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