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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第三章 学科対抗戦編
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39話「特訓の成果」

 ――――現在、学科対抗戦が始まるまで後一日だ。ジェイドから受け継いだ能力は、しっかりと本質理解をした。とても強い能力で、使いこなすのに苦労した。オリケルスにも、使いこなす特訓を手伝って貰った。……まぁ、ジェイドが魂ごと消えたと言ったらちょっと哀しそうな表情をしたが。


 ……とりあえず、今日も今日とて学校なのだ。ダルいので、正直言って起きたくないし行きたく無い。


 ――でも、結局行かないといけないんだよな……。


 そんな事を考えていると、部屋のドアがノックされ、琉愛が入って来た。そして、俺の方へと来た。俺の方へ来ると、俺の身体を揺さぶり始めた。


「お兄ちゃん、起きて」


 ……正直起きたくないので、琉愛の反対方向を向いてまた寝始める。すると、琉愛が俺を無理矢理自分の方に向かせた。そして、また俺の身体を揺さぶってくる。


「……むぅ」


 その内、琉愛が俺の身体を揺さぶってくるのをやめた。これで、俺は少しゆっくり寝られると思ったが……。


「……えいっ!」


 すると、琉愛が俺に飛びついてきた。とりあえずその衝撃を受け流して受け止めたが、俺の上に琉愛が乗っている状態だ。……なんだこれは。


「……え?」


 今の状況を説明しよう。簡単に言うと……俺は琉愛の下敷きになっている。その琉愛は、俺の胸辺りに顔を埋めている。両手は俺の顔の横に置いていて、両足は俺の足の上に置いている。……というか、この体勢はいろいろとヤバいな。勘違いされることは間違いない。


 ……とりあえず、飛びつかれると痛いから衝撃を受け流して受け止めたが……そろそろ起きよう。琉愛も俺を起こすために呼んだから、とりあえず起きよう。


「……えへへ、お兄ちゃん大好き!」


 そろそろ起きようと思ったのだが、琉愛が俺に抱きついてきた。……直球で「大好き」と言われると、なんか……むず痒さがある。


「……ってそうじゃなくて! お兄ちゃん、そろそろ起きて!」


 そして数秒後、琉愛は顔を真っ赤にしながら俺をベッドから降りさせた。


 ベッドから俺を降りさせた後、琉愛は俺に引っ付きながら階段を降りていった。……とても階段が降りにくかった。


 リビングに入ると、俺に引っ付いている琉愛を見て凜姉がちょっと顔を顰めていたような気がするが、気のせいだと思う。





 ――そして、朝食を食べ終わり、俺は学校へと行った。


 教室の中には、いつも通り俺以外誰も居ない。……とりあえず、文奈達が来るまで待っておこう。


 そうして数分後、文奈と黎と雫が来た。三人は自分の席に行き、何かをし始めた。俺はと言うと、何もしていない。暇なのだ。そんな暇な俺に、文奈が話しかけて来た。


「來貴君、明日は遂に学科対抗戦ですね」


 隣の席の文奈がそう言いながら、俺の席の方によってくる。……明日か、学科対抗戦しかも、一人でも休むと人数が足りなくなるからサボれない。……はぁ、面倒だな。


「……來貴君、聞いてますか?」


 反応無しの俺に、文奈は聞いているか聞く。……聞いてはいたが、反応するのが面倒なので反応しなかっただけだ。


「聞いてる聞いてる」


 とりあえず、反応しておいた。この反応に、文奈は不満ありげだったが、文奈は気にしなかった。


 そうしている内に、HRが始まった。いつもように終わり、その数分後に授業が始まった――――。





 ――――授業が終わり、第一訓練場へと行く。今日も今日とて、特訓がある。……だが、今日は文奈の言うとおり学科対抗戦は一日後だ。何か、違う特訓をするかもしれない。


 そう考えている内に、俺は第一訓練場に着いた。第一訓練場には、俺以外の執行科(エンフォースメント)の科員が全員いた。教官もいる。……どうやら、俺が最後のようだ。


 俺が来たのを確認した教官は、口を開いた。そして、こう言った。


「……明日は、学科対抗戦です。皆さん、全力で戦ってくださいね」


 教官のその言葉に、科員全員が静かに頷く。


 そして、学科対抗戦に向けての最後の特訓が始まった。


 特訓の内容は、対人戦。主に一年生を鍛えるため、一チームと二チームに分かれてそれぞれ一年生を集中的に特訓している。これは、白凪と明城が能力の本質理解を終えたときからやっている。元々、本質理解を終えたら科員達の実力を高めるために模擬戦をやっているらしい。これは、執行科(エンフォースメント)が出来たときからやっているらしい。……これは教官から聞かされた。


「楓ちゃん、随分と強くなったよねぇ」


 特訓をしている中、瞬華先輩が話しかけて来た。


「……そうですね」


 確かに、明城はそれなりに強くなった。能力の本質理解をしたことで、能力の練度が上がった。能力の消費魔力も少なくなったようだし、能力で創成できるモノの幅も広がった。……それに、握力と腕力を鍛えて片手で持てるモノも多くなった。

 例えば、太刀や大剣、スナイパーライフルとかも片手で持ってそのまま片手で戦闘が出来るほどになっている。とても大きな成長だ。


「來貴君は……また見た目と魔力色が変わったのと、身体能力や能力の練度が上がったね」

「…………そうですね」


 そう、あのとき、俺は見た目の他にも魔力色が変わったのだ。


 そのおかげで、文奈達や瞬華先輩達には笑われたし驚かれた。文奈には、銀灰色に変わった髪色を見て一瞬「中二病」とか言いかけていた。それは、黎も雫も同様だった。ただでさえ、灰髪、金と黒の瞳という中二病な見た目なのに……灰髪に銀が加わり更に中二病度が増した。


 ……これは俺の自業自得なのだが、黒いジャケットに白い線の入った黒ズボンを着ているのも原因かも知れない。こんな派手な頭部に、黒ジャケットに白線黒ズボンという中二病が着る服を着ている……完全に中二病だな。自分で言うのもアレだけど。


 そして瞬華先輩も、俺の見た目を中二病とか言ってきた。……否定はしないが、直球で言われるとちょっと心に来るものがある。


「來貴君って、見た目が変わる度に他に何か変わってるよね」

「……そうですね」


 確かに、瞬華先輩が言っていることはあっているかもしれない。一回目は、種族が変わった。二回目は、魔力が変わった。……こんな風に、俺は変わっている。


 そして俺は、あのときジェイドの魂を継いで、魔力色が『黒銀色』になった。


 この事は授業で既に文奈達にバレており、これは随分と怪しまれた。……まぁ、なんとか誤魔化したけど。


「鉤人君は、ちょっと怖いくらいに強くなってるよね」


 ……次は白凪か。


「……そうですね」


 白凪も、恐ろしいほどに強くなった。能力の本質理解をし、能力の練度や規模が格段に上がった。消費魔力も少なくなったようだ。……今や、触れただけでビルを倒壊させられる。それを聞いたとき、俺は「どんなチートだよ」と思った。


 他にも、物質を体内に取り込むことが出来るらしい。体内に物質を取り込み、それを変質させて自身の身体とリンクさせる。それにより自分の身体を改造していた。……あらゆる物質を体内に取り込み、怪我もすぐに治るようになっていた。最初に白凪から聞いたときは、人間をやめようとしているのかと思っていた。


「む……來貴君、返事が適当じゃない?」


 瞬華先輩が、少し頬を膨らませながら俺に聞いてきた。


「……いえ……適当じゃないですよ」


 俺がそう言うと、瞬華先輩は溜息をつく。適当に言ったのが気付かれたのだろう。だが、瞬華先輩はその事に言及することは無かった――――。





 ――――そして今、特訓が始まってから三十分が経った。


「ねぇ、瞬華。ちょっと提案があるんだけど」


 彩月先輩が、瞬華先輩に話しかける。それぞれチームに分かれて特訓していたので、ちょっと注目されている。


「彩月、その提案っていうのは何かな?」


 瞬華先輩が、彩月先輩の提案というものを聞く。


「一チームと二チームで、模擬戦しない?」


 彩月先輩のその提案に、全員の目の色が変わる。それは、瞬華先輩も俺も同様だった。……これは丁度いいな。どれくらい強くなったか、どれくらいの加減をすればいいかを試すいい機会だ。明城達もしたそうな表情をしている。瞬華先輩も、了承するだろう。


 それに、瞬華先輩もやりたそうにしている。……瞬華先輩も、戦闘狂なのだろうか。


「……うん、いいよ。寧ろこっちからお願いしたいくらいだったから」


 瞬華先輩のその一言で、第一訓練場内が少しザワつく。そして……殺伐とした雰囲気が出ていた。


「じゃあ、ルールを決めよう。お互いのチームの先鋒と先鋒って感じで戦う。当然だけど殺しは無し。攻撃は、殺傷能力の無いもの。能力の使用は自由。これでいいかな?」


 彩月先輩が即興で考えた模擬戦のルール。そのルールに、反対の声は上がらなかった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 そして、第一訓練場の戦闘が出来る少し広い場所にて、執行科(エンフォースメント)の一チーム対二チームの模擬戦が行われることとなった。


 まずは、一チームの先鋒である來貴と、二チームの先鋒である白凪との模擬戦。互いに、武器を構え対峙している。他の科員達は、一カ所に集まって観戦している。


「それでは、始め!」


 教官の合図により、模擬戦が開始された。


 その瞬間、白凪は地面を隆起させ壁を造る。その規模は、第一訓練場の半分を覆えるほど。その地面の壁は、來貴を呑み込もうと迫ってくる。その壁を目の前にして、來貴は右手をヴァルブラドの柄の上に置き、いつでも跳躍出来るように準備をする。


 ――そして、白凪の能力により隆起した地面の壁が、來貴を呑み込まんと覆い尽くす。來貴は後ろ斜め上へと跳躍し、壁の上に出る。そこで來貴は空中で前転をし、壁の真上へと来る。


 すると、白凪が壁を操作し來貴を呑み込もうとする。來貴は、ヴァルブラドを抜き、黒銀色の魔力刃を顕現させる。柄を両手で持ち、迫ってくる壁を一刀両断する。それにより、崩れた壁が白凪へと迫るが、白凪は回避をしなかった。


 そして……崩壊した壁が白凪の居た場所を雪崩れる。それを見て、明城は表情が変わった。だが、來貴は油断せず、目を閉じた。


「白凪君!」


 明城が、白凪の名を叫ぶ。白凪の元に行こうとするが、瞬華に抑えられた。


(……白凪が潰されるなんてヘマをするわけがない。恐らく、何処かに……)


 來貴は、白凪が何処へ居るのかを考察していた。そして、一つの可能性を考えついた。來貴は、すぐさまその場から飛び退いて離れた。


 飛び退いた直後、來貴の居た場所から巨大な手が伸びてきた。そして、來貴を掴もうとする。だが、來貴が指を切った事で掴むことは出来なくなった。


 そして、手に斬った痕ができ、白凪が出てくる。だが、能力で地面を動かす等の小細工はしない。ただ、持つ剣を來貴に向けるだけだ。來貴も、持つ銃剣を白凪の方に向ける。


 睨み合うこと数秒、二人は駆け出した。來貴は、黒銀の刃を白凪の首に当て、白凪は持つ剣の先を來貴の目の先に突きつける。


「……そこまでです。この勝負、引き分けとします」


 教官の合図により、模擬戦が終了した。來貴は、ヴァルブラドを仕舞い科員達が観戦している場所へ行った。白凪は、明城に心配されていた。その時の明城の表情は、少し涙目になっていた。


 ……そうして、次鋒戦。一チーム次鋒の明城と、二チーム次鋒の日鏡の模擬戦。二人は、ある程度距離を取って対峙する。


「それでは、始め!」


 教官の合図により、二回目の模擬戦が始まった。


 まずは、明城が左手に銃と右手に刀を創成する。日鏡は、両手に光を纏わせる。そうして数秒間睨み合った後、明城と日鏡は動く。


 明城は右手の刀を日鏡に振りかざす。日鏡も左手の光を明城に向けて放射する。明城はその光を躱しながら距離を取る。日鏡は、明城の刀を躱し光の放射の準備をする。


 そして、日鏡が明城に向かって光を放射する。明城は横っ飛びでギリギリ躱せたが、それを見た日鏡がすぐに明城へ距離を詰める。日鏡は、薄黄色の魔力を纏った貫手を明城へを突きつけて止めを刺そうとしていた。その事に気付いた明城は、銃を発砲し牽制するが躱され接近される。


(これじゃあ、近づかれて貫手で止めを刺される……なら)


 明城は右手に持つ刀に、薄緑色の魔力を纏わせる。その後銃を捨て、刀を両手で持つ。もっとも、銃は捨てた瞬間に魔素となって霧散したが。


 ……そして、明城と日鏡は接近し己の武器を振りかざす。


「……そこまでです。この勝負、楓さんの勝利です」


 今の状況は、明城の刀が日鏡の首を捕らえていた。日鏡の貫手は、明城には届いていない。それ故の、明城の勝利だ。


(……これは、ただの運勝ちね。刀と貫手のリーチが違うから、もし光先輩が何か武器を持っていたら、負けていたのは私の方ね)


 その後も、中堅戦、副将戦、大将戦と三連戦。

 結論から言うと、引き分けだ。中堅戦は二チームが勝利し、副将戦は一チームが勝利し、大将戦は引き分け。それぞれのチームが二回勝ち、一回負け、二回引き分け。なんとも、締まらない終わり方だった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「……引き分けかぁ」


 瞬華先輩が、そう不満げに呟く。この『引き分け』という結果に納得がいっていないのだろう。もう一回やりたそうにしている。他にも、彩月先輩や竜二先輩もそう見える。それに、俺や白凪もそうだ。……まぁ、もう一回やりたいとまではいかないが、やるからには白黒はっきり付けたかった。


 お互い本気でやっていないので、学科対抗戦でやることになったらどうなるかわからないが……その時は、俺の見せている力でそれなりに本気で戦う――――。





 ――――そして、特訓が終わり家へと帰った。


 今は、部屋のベッドの上に寝っ転がっている。夕飯と風呂は終え、現在時刻は十二時だ。


(……明日は、学科対抗戦か……面倒だが、少し楽しみだな……)


 そんなことを考えつつ、明日に備え眠るのだった。

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