37話「特訓の経過」
――――現在、本質理解の特訓が始まってから一週間経った。
明城は、まだ能力の本質理解は出来ていない。……だが、コツは掴んできたようでもうすぐで本質理解出来るだろう。
そう考えつつ、第一訓練場へ向かう。基本、特訓は第一訓練場で行うらしいので、そこ以外の訓練場は見たことはあるが入ったことは無い。
第一訓練場へついた後、訓練が始まった。白凪は能力を伸ばすための特訓。明城は本質理解の特訓。俺は先輩達と模擬戦をさせられている。
チラッと白凪の方を見てみると、これまた凄いことをしていた。
「土隆壁!」
白凪が地面に手をつくと、広範囲の地面が隆起した。その規模はまるで壁で、第一戦闘場を軽く覆えるんじゃないかという規模だ。能力の本質理解をしたことで、威力や規模が格段に上がったのだろう。白凪はそれを確認すると、その壁を床に戻した。そして、近くに来た教官に「やりすぎないように」と釘を刺されていた。
……その後、空気を集束させて放出して前方を抉ってそれを見た教官に怒られたけどな。あれは……ヤバいな。そんなことを考えつつ、俺は白凪から目を離す。
そして、次に明城の方を見る。
さて、今日で本質理解出来るか……?
side ~明城楓~
どうしようか……。私は考える。結月君と白凪君はもう能力の本質理解をしている。していないのは、私だけ。結月君は最初から本質理解をしていて、白凪君は、始めて三日で本質理解をした。
それに、もう本質理解の特訓を始めて一週間経つ。それなのに、私はまだ本質理解が出来ていない。東道先輩が言うには、本質理解は大体一週間半掛かるから、そんなに焦らなくていいらしい。……だけど。
私の能力は、片手創成。片手に収まり片手で持てる物を創成する能力。この能力は、生成系の能力。消費魔力も激しく、そんなにポンポン使えない。
そんな私は今、東道先輩と能力を使いながら模擬戦をしている。
戦況は防戦一方で、私から攻撃はほぼ出来ていない。東道先輩の攻撃は、大きなダメージになる攻撃はなんとか防げているものの、それ以外の攻撃は防いでいない。というか……それまで防いでいたら体力が持たない。
その後、私は自らの能力について考えながら東道先輩の攻撃を防いでいく。
(……この能力は、意外と自由な能力。片手に収まる……と言っても、片手で一瞬でも持つことが出来たならどんな形のモノでも創成出来る。……ただ、大きくなればなる程消費魔力が多くなる。片手で持てさえすれば、どんなモノも魔力で形を作って創成することが出来る……)
私は、そこで一つ違和感を覚えた。
(私の能力の原理は、魔力を作りたいモノの形に変える。そして、顕現させる。それが片手創成の原理。……あれ? 魔力で形を作ってるなら……)
魔力で、形を作る……それこそが、能力の原理。この能力の本質って、何……?
「――考え事?」
いつの間にか、東道先輩が接近してきて持っている刀を振り下ろしてきた。
その攻撃速度はとても速く、まるで東道先輩だけ時が速く流れているかのようだった。刃が潰れているため、当たっても致命傷にはならないが……当たったらかなり痛いだろう。
とりあえず、手のひらに盾を創成して防いだ。東道先輩の一撃を防いだ盾はもうヒビが入っていて、後一撃でも食らえば壊れそうだ。
攻撃を防がれて一瞬だけ怯んだ東道先輩の隙を突き、距離を取った。そして、思案する。
(結月君が言っていたコツは、知る事……それは、能力の本来の使い方、生かし方を知ると言うことだと思う。……この能力は、片手に収まり片手で持てさえすればどんな形のモノでも作ることが出来る。魔力を消費して、だけど。これは……片手で一瞬持てるならスナイパーライフルをも作ることさえ出来る。それと同時に銃弾も作ってるから、消費魔力が多いけど。……なら、この能力の本質は)
先程の考えから、考えられる片手創成の本質は――。
「……楓ちゃん、どうしたの? さっきから動きが遅いよ?」
考えながら東道先輩の攻撃を躱していたが、とうとう躱しきれず攻撃を食らった。まだ残っていた盾で攻撃を防いだので、そんなにダメージは無い。
その後、東道先輩が瞬時に後ろに回り込んで刀を振り下ろす。躱す時間も防ぐ時間も無いので、どうすることも出来ない。だが、手を後ろに回して能力を使う時間ならある。
そして、私の身体の中で何かを感じた。多分、これが白凪君が感じたと言っていた能力だと思う。……凄いわね、これ。前とは比べ物にならないくらい、能力が強くなってるわ。
ギィンッ!
「えっ!?」
……今、東道先輩の振り下ろした刀を、盾で防いだ。それにより、刀が真っ二つに折れた。……ただ、手のひらから伸びている盾だ。手のひらに持ち手があり、盾の部分が青色の金属で出来た盾だけどね。……今までなら多分、こんなことは出来なかっただろう。ましてや、金属を創成するなど、私には出来なかった。だけど……『本質』を、理解したからね。
――私の能力……片手創成の本質は『造形』。形を作り上げる事こそが、この能力の本質だった。
(……ん? 何かしら……?)
頭の中に、文字が浮かんできた。その文字は……片手創成と示していた。名前が二つに分かれた……と言うことは、私も、能力の本質を理解したってことになるのかな。
そんなことを考えていると、教官が近づいてきた。そして、私にこう聞いてくる。
「楓さん、本質理解は出来ましたか?」
教官のその質問に、私はこう答える。
「はい、出来ました」
私の答えを聞いた教官は、嬉しそうに微笑みながら「休んでいていいですよ」と言う。その後、刀が折れてションボリしている様子の東道先輩に声を掛けた。
「……瞬華さん、刀が折れていますけど……大丈夫ですか?」
東道先輩は折れた刀の破片を持ちながら、教官の質問に答える。その様子は、哀愁が漂っていた。
「……大丈夫じゃないです。お気に入りの刀だったのに、折れちゃいました」
涙目になりながら、東道先輩は言う。その様子を見ると、なんだか申し訳なくなってくる。
「あの、東道先輩……ごめんなさい」
私がそう謝罪をすると、東道先輩は顔だけこちらに向けてから言う。
「謝らなくていいよ……」
東道先輩はそう言いながら、折れた刀とその破片を持って立ち上がる。そして、鳳先輩の元へと行った。その後、教官から休んでもいいと言われたのでしばらくの間休憩をした。
side out
……本質理解を、したか。掛かった時間は、一週間か。瞬華先輩よりちょっと遅くて、彩月先輩と同じくらいか。……これで、執行科の科員の一年生全員が本質理解出来たな。
二人の本質理解が終わったから……これからは、戦闘訓練か。だがまぁ、瞬華先輩がなんか刀が折れて落ち込んでいたから、瞬華先輩の機嫌が直ったら戦闘訓練が始まるのだろうか。
そんなことを考える俺だったのだ――――。
――――そして、明城が能力の本質理解をしてから一日経った。今は、教室にてHRの途中だ。
「――これで、HRは終わりです」
そう言って、刀華先生は教室から出て行った。俺はやることがないのでボーッとしていようと思ったが、文奈に話しかけられた。
「來貴君、來貴君は本質理解出来ましたか?」
その内容は、本質理解の事であった。俺も文奈も能力を持っているので、能力の本質理解を所属する学科でさせられている。……まぁ、俺は元々本質理解をしていたからあまり関係無かったような気がするけど。
……だが、文奈は能力の本質理解をしていないはずなので、所属する学科で強制的に本質理解をさせられる。文奈は……現在所属している学科で風流操作の本質理解をされていることだろう。……まぁ、それにより本質理解が出来たかはわからないが。
「俺はまぁ……出来た。文奈はどうだ?」
嘘は言っていない。俺は、能力の本質理解をしている。……まぁ、軍事学校に来る前から本質理解していたから……事実を全て伝えていないだけだ。
「私は……まだ出来ていません。ていうか、來貴君もう本質理解出来たんですね」
文奈は、ちょっと不服そうに言った。どうやら、文奈はまだ本質理解は出来ていないようだった。文奈は才能のある方だが、白凪や明城と比べると数段劣る。故に、こんな短時間で本質理解は出来なかったのだろう。……雫は別かもしれないけどな。
その後、一限目が始まった――。
――そして、一限目は何事もなく終わり、そのまま四限目まで終わり昼休みになった。
昼休みになった現在、俺は凜姉から貰った弁当を食べている。文奈と黎と雫も一緒だ。
文奈と黎と雫と俺の四人で、昼食を食べながら会話をしている。その内容は、能力の本質理解のことだ。どうやら、雫はもう能力の本質理解をしたらしい。名前が二つに分かれ、能力の名前が葉脈の流力になったそうだ。
「……雫に先を越されました」
雫が能力の本質理解をした話をすると、文奈が雫にそう言っていた。
そのついでに聞いた話だが、文奈と雫は同じ学科らしい。……だから、文奈は雫が本質理解をしたことを知っていたらしい。なんだか、文奈と雫の仲がより一層深くなっている気がする。……そんな俺達の話を聞いて、能力を持っていない黎が羨ましがっていた。
……能力があっても、決して楽な事だけでは無いんだけどな。
――――そして、昼休みが終わって授業が終わった。その後はいつも通り、特訓のため第一訓練場へ行った。
――――そうして、執行科の訓練も終わり、家に帰ってきた。
「……ただいま」
「あ、おかえり。お兄ちゃん」
俺が家に帰ると、琉愛が出迎えてくれた。琉愛に聞くと、どうやら凜姉はまだ帰ってきていないようだ。忙しいのだろうか。
そんなことを考えつつ、俺は自分の部屋へと行ったのだった。
まぁ、部屋にいてもやることが無いんだけどな。
そして、夕飯と風呂を終えて、俺は凜姉と話していた。俺の部屋で話していて、その内容は能力の本質についてだ。……まぁ、俺の部屋に一方的に押しかけられて、話しているんだけどな。
「來くんは……小学校の時に能力の本質理解をしてたから……他の一年生の子が能力の本質理解の特訓をしてる間、暇だったんじゃない?」
凜姉と話している途中、こう聞かれた。……まぁ、暇だったと言えば暇だったのだが……。
「……暇だったが、一週間で俺以外の二人が本質理解を終えたからすぐに特訓が始まった」
何せ、白凪と明城が俺の予想より速く本質理解をしたため、あまり暇な気分では無かった。それに、俺もいろいろと本質理解のための手伝いをしたため、そんなに暇していない。……まぁそれでも、ちょっとは暇だったけど。
「そうなんだ……刀剣科では、まだ本質理解をしてない能力者がほとんどなのにね……」
どうやら、凜姉が科長を務めているらしい刀剣科では、能力者は結構いるらしい。だが、そのほとんどがまだ能力の本質理解が出来ていないようだ。……まぁ、そんな簡単に本質理解をされたらそれはそれでヤバい。小学校の時に苦労して本質理解をした俺の身にもなってほしい。
……実際、苦労したかと聞かれると……苦労したかしていないかはわからない。もっと強くなろうとして能力と身体を鍛えようと思い、この能力がなんなのかを考えてこの能力の本質を自覚すると本質理解が出来たからな。
そんな事を考えつつ、俺は凜姉の雰囲気が変わったことに気付く。そして、凜姉は口を開いた。
「――琉愛には、能力の本質はバレないようにね?」
凜姉の言葉に、俺は頷く。そして、言葉を返す。
「――わかっている」
琉愛は、まだ13歳だ。15歳未満なので、本質理解をした能力に身体が耐えられない。故に、琉愛にこの事を知られるわけにはいかないのだ。俺や兇介みたいな例外でなければ、本質理解をした能力に身体が耐えられない。……15歳になった暁には、その事を教えるというのが凜姉と親父と母さんとの約束だ。
……琉愛も、強力な能力を持っている。本質理解をした際には、その能力はとても強く成長するだろうな。
そんな事を考えつつ、俺はまた凜姉との会話を続ける。
そして、寝る頃合いの時間になったので、凜姉に部屋に戻るように言ったのだが……。
「來くん、一緒に寝よう?」
……そう言って、俺の部屋から出て行かない。俺は、凜姉を自分の部屋へ戻るようにまた言ったのだが、戻らない。そして、部屋に戻そうとする俺と、部屋に戻らない……というか、最悪俺を連れて行こうとした凜姉の戦いが始まった。
――結局、俺が根負けして凜姉と一緒に寝ることとなった。……だが、こうなったときはいつも俺が根負けしているため、一緒に寝ても俺は凜姉のことをあまり気にせず寝れる。
まぁ、この状況に慣れているからだ。
「おやすみ、來くん」
俺の部屋のベッドで、凜姉が俺の方によりながら言う。言い終えた後、凜姉はすぐに目を閉じた。寝ているかどうかはわからないが、目を閉じる前に俺に抱きついていると言うことだけはわかる。
「……おやすみ、凜姉」
そして、俺も目を閉じる。
そうして、俺は寝始めた。
これから知る事になる、"真実"を知らずに――――。




