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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第二章 執行科編
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25話「自主特訓」

「……ここでいいか」


 俺は今、執行科(エンフォースメント)で瞬華先輩と模擬戦をした後の帰り……ネルと戦ったときの山に来ていた。ここなら、他の人に見つかる心配も無い。仮に見つかったら……まぁ、記憶を消してからお返ししよう。


 何故、俺がここに来たというと……自主特訓だ。最近、あまりやれていなかった。オリケルスのことや執行科(エンフォースメント)のことやらなんやらあったからだ。『練習を1日休んだら取り戻すのに3日かかる』とか聞いたことあるが……俺はそんなことは無い。というかそう言うなら否定する。それは無い。


 ……話が逸れたな。まぁ、そんなことは置いておいて早速始めよう。


 今日やることは、三つ。


 まず一つ目。『死黒暴滅(ブラック・デストロイ)をもっと使いこなせるようになる』

 次に二つ目。『覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)の強化範囲、持続時間をもっと上げる』

 最後に三つ目。『悪魔の力を得て変わった体に慣れる』だ。


 一つ目は……まぁ、新しく得たこの能力をもっと使いこなせるように、だ。まだ得てから二日と半日くらいしか経っていないのに、使いこなせられる訳ないだろ。オリケルスとの特訓で感覚を掴めてきたが……それでもまだまだだ。


 二つ目は……体がより強靭になったこと、魔力が劇的に増えたことにより、もっと強化して限界を超えられると思ったからな。前は……その強化に耐えられなかっただろうしな。やろうと思えば出来たかもしれないが、怖いのでやめた。


 三つ目は……この体になってから、身体が思っていたより動くようになっていて、戸惑った。オリケルスのところで大分端正出来たと思うが……まだ身体の方が速く動く。むしろちょっと身体能力が上がった気がする。それを端正したい。


 とりあえず、始めていこう。優先順位は三つ目→一つ目→二つ目だ。順番が滅茶苦茶だが、それは気にしない。


 まずは、軽く身体を動かそう。そして、俺は走り始めた。ちなみに、魔力を纏うことに違和感は無い。自分の身体だけに違和感がある。気持ち速めにしよう。そしてこの身体に慣れていこう。


(……さて、もうちょっと走ろう。まだ汗もかいていないからな)


 少し走っただけなので、まだ汗もかいていない。もうちょっと走って、思考と身体のラグを無くしたい。まぁ、それに関してはすぐに直ると思うけど。


 さて、後五分くらい走ろう。短いが、それくらいでこのラグは直る気がする。段々、違和感も消えてきたからな。


 そうして、俺は五分くらい走り続けた。その結果、思考と身体のラグは無くなった。スイスイ動けるようになった。前よりもかなり身体が動くから、楽しい。

 今は、木から木を飛び移っている。この身体での跳躍を試しているんだ。決して遊んでいるわけじゃ無いが、なんだか忍者になった気分だ。


「……虚しくなってきた」


 山の中一人で木を飛び回っている男がいる。その光景を想像してみてほしい。なんともシュールな絵面であろうか。しかも、その男は灰髪、金色の左眼と黒色の右眼のオッドアイ。それによりもっとシュールになっている。


 俺はそんなことを考えながら、飛び移っていた木から降りる。


「……次、やるか」


 とりあえず、三つ目が終わったので一つ目の『死黒暴滅(ブラック・デストロイ)をもっと使いこなせるようになる』をする。まず、死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を一度発動させてみよう。


 俺は、両手に黒波(くろは)を集束させる。死黒暴滅(ブラック・デストロイ)により生み出した黒い何かは、黒波と呼ぶことにしたのだ。いつまでも"黒"とか"黒エネルギー"とか呼ぶより、何か名前を付けた方がいいと思ったからだ。


 そして、黒波を身体全体に巡らせる。身体全体に、黒の線が走っている。この線は黒波が身体を巡っている影響だ。学校では使わないが、自主特訓をするときは常に使っていこうと思う。というか、結構変な感覚なんだが、これ。身体を異物が巡っているような気がして。いや、実際巡っているけどさ。


 ……まぁ、そんなことは置いておいて……この状態を維持しながら死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を使ってみよう。


 手から黒波を出す。それを集束させ、放出する。放出すると言っても、周りを破壊しないように、黒波を周囲に巡回させ、より精密に操作ができるようにする。まずは、この能力のことを深く知ろうと思ったからだ。


(……黒波の負荷は、思っていたより大きいな……それに、魔力をそれなりに消費する)


 俺は黒波を操作しながら、そんなことを考える。俺が放出した黒波は、周りの環境を破壊していない。さっきも言った通り、破壊しないように巡回させているというのもあるが、威力の調整が段々効くようになってきた。


 死黒暴滅(ブラック・デストロイ)は、ネルから託された悪魔の力。俺は悪魔のことについては詳しく知らない。同じ悪魔であるオリケルスの方がよく知っているだろうな。俺のこの力について、オリケルスは……「時期が来ればわかる」と言っていたが、なんなのだろうか。


 まぁ……その「時期」という奴が来るまで俺は待つことにしているんだけどな。オリケルスがそうしろとも言っているからな。


 ……とりあえずそれはいいとして、黒波の感覚にも大分慣れてきた。この黒波が身体を巡る感覚も違和感が無くなってきた。……というか、これが身体に馴染んだらどうなるんだ?感覚だと身体能力とかが上がっているような感じがする。でも、身体中に黒い線が走っているのは……ダメだな。


 このまま家や学校へ行くと、確実になんなのか問いただされる。それは面倒だ。黒い線を消せられればいいんだがな……黒波を身体の一部として出来たら、もっと死黒暴滅(ブラック・デストロイ)の能力の練度も上がるだろうし、何よりもっと強くなれる。


「……やるか」


 俺は、黒波を魔力路と融合させる。こうすることで、黒波と魔力が混ざり合い身体の黒い線も無くなると思ったからだ。方法は簡単。黒波が通る道を、魔力路と合わせる。魔力路の方にな。


「……ぐ」


 ……これは、思っていたより身体の負担が大きいな。それに、かなりの苦痛を伴う。()()も使うか。俺は、アレを使用し、黒波と自らの魔力路を融合させる。


「がっ……」


 更に、苦痛が増す。だが、これを乗り越えた先は更に強くなった俺がいる。だから、これは必要な儀式だ。だから、俺はする。そうしないと……。


 俺はそう考えながら、黒波と魔力路の融合を続ける。


 融合した時の利点は……死黒暴滅(ブラック・デストロイ)の発動時間が劇的に短くなるだろう。0.01秒のラグも無くなる。

 後は、発動に使用する魔力も少なくなるだろうな。身体を巡回する黒波によって魔力消費が抑えられるからな。

 身体能力や脳内処理速度が上がるというのもある。これは常にだ。黒波が身体を強化している影響だろうな。

 最後に、魔力の質と総量が上がる。黒波が魔力と融合するからな。しかも、俺の魔力色は黒。黒波と同じ色だ。魔力色もより濃くなるだろうな。色が濃くなるって事は、魔力の質が上がるって事だ。


 ……まぁこれくらいか。そろそろ黒波と魔力路の融合が終わりそうだ。アレを使ったからか。


「……ぐ……があっ」


 俺は地面に手をつき、苦痛に耐える。もうちょっとで、黒波と魔力路の融合が終わる。


「……終わったか」


 立ち上がり、俺は自分の身体を確認する。今さっき、黒波と魔力路の融合が終わった。感覚は……何一つ違和感は無い。身体がとても快調だ。軽く走ってみよう。……俺は、地面を軽く蹴る。


(……軽く蹴ったつもりなんだが……結構跳んだな)


 俺は地面を蹴って前方に跳んだだけで、10メートルは跳べた。黒波と融合する前は7メートルだったが……3メートル伸びた。やはり、身体能力が上がっている。それに……身体の黒い線が消えている。魔力路に、黒波の力を感じる。無事、成功しているな。


 次は……魔力を放出させてみよう。魔力色にも、何か変化があるかもしれないからな。


 そして、左手で魔力を放出する。その色は……前見たときよりも、濃い黒色になっていた。魔力圧も、前より圧力が増している。まぁ、これに関しては調整可能だが。とりあえずまぁ、これも成功か。


 そう言えば、今何時だ……? ふと気になったので、魔力を抑えスマホを取り出して確認する。


(……まだ大丈夫か?)


 今の時刻は、五時。普段自主特訓は、夜中に抜け出すか土日にしている。学校から帰った後もたまにやっているのだが、その時はすぐに帰っている。黒波と魔力路の融合に時間が掛かったからだろうか。とりあえず、二つ目をやろう。


 最後にするのは、『覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)の強化範囲、持続時間をもっと上げる』をする。まず、耐えられるまで強化しよう。"耐えられる"というのは身体に怪我が出るギリギリだ。それ以上やると死ぬ。


 ……そして、俺は覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を発動させた。ギリギリまで、リミッターを覇壊し強化する。だが、まだ強化出来る。このくらいの強化は、普段と同じくらいだ。


 まだまだ強化出来るので、俺は強化を続ける。悪魔の身体となったことで、普段なら骨が軋むような強化でも、まだ身体に異常は無い。とりあえず、続けよう。俺は、強化をし続ける。……そろそろ、限界だな。限界部分まで行ったら、それを維持しながら動く。かなり身体に負担が掛かると思うけど。


「……キツいな、これ」


 制御を間違えると、多分動けなくなるほどの怪我をするだろう。故に、とても集中力がいる。これは、とてもいい特訓になりそうだ。今までは怖くて出来なかったが、ある程度無茶しても黒波で身体を補強できる。


 そして、俺はこの状態で約20分くらいいただろうか。なんだか、身体の負担が段々無くなってきた。これは、もっと強化出来るのでは?と思い、やってみることにした。


「――――ッ」


 骨に少しヒビが入った気がする。だが、能力を使えばすぐ治るので関係ない。実際、もう治った。治ったら、もうヒビは入らなくなった。続けよう……と、思ったが、今の時間を確認することにした。もし、六時を過ぎていたなら……ヤバい。


 凜姉に説教される。昔、自主特訓のし過ぎで十時に帰ったことがあるから……平日に遅く帰ると無茶苦茶怒られる。完全に俺が悪いので、とりあえず六時を過ぎていたら連絡をしてこのまま帰る。


 そして、俺はスマホを取り出し時刻を確認する。現在の時刻は、六時を優に超えている。正確に言うと、六時二十分だ。……さて。


「…………帰るか」


 俺はスマホで、凜姉に『今から帰る』と連絡をする。すると、『わかった! なるべく早く帰ってきてね?』と返事が来た。とりあえずスマホを仕舞って、山を下りることにした。


 そして、俺は能力を維持しながら山を下りていく。音も気配も絶って、通行人に気付かれないようにする。屋根を跳躍して伝いながら、家に向かって走って行く。能力を使っているので、すぐに着くだろう。まぁ、バレたら怒られること間違い無しだが、バレる心配は無い。何故なら、誰も見ていないからだ。……要するに、バレなきゃ犯罪じゃ無いんですよ、だ。


 ……とりあえず、それは置いておいて……家が見えてきた。上空からだけどな。さっさと帰るか。黒波と魔力路の融合、覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)の限界突破で集中力を使い過ぎたのか腹が減ってきた。


「――――っと」


 俺は今、地面に着地をした。音と気配は絶ち、周りの人に気付かれないように。着地したのは、俺の家の前。帰ってきた。能力を解除してから入ろう。そして、俺は覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を解除する。すると……どっと、倦怠感が襲ってくる。集中力を使い過ぎたせいだろう。


 とりあえず……家に入ろう。凜姉に怒られたくないしな。家のチャイムを鳴らし、凜姉が来るのを待つ。そして数秒後、玄関のドアが開く。


「おかえり、來くん」

「……ただいま」


 そう言って、凜姉は俺を家の中に入れた。嗅覚が上がったのか、リビングからいい匂いがする。夕飯が出来たのだろか。というか、凜姉が俺の手を握ってモジモジしているんだが。……怒られるか?


「……今回はちゃんと連絡したから……大丈夫だよ? でも、心配したから。あの時みたいになるんじゃないかって……」


 あの時……というのは、俺が特訓のしすぎで身体を壊した時のことだろうな。その時は、凜姉と琉愛、親父と母さんに本気で怒られた。覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)のおかげですぐに治ったけど……「二度とこんな真似はするな」って親父に言われたな……それ以来、特訓を少し自重したんだっけ。アイツにも、「少し自重しろ」って言われたからな……。


 そして、俺は凜姉に連れられ、リビングに入る。リビングでは、琉愛が椅子に座って、俺と凜姉の帰りを待つような様子だった。琉愛は、扉を開ける音に気付いたのかこっちの方を向いた。


「あ、お帰り! お兄ちゃん」


 そう言って、無邪気な笑顔を浮かべている。とりあえず、俺も何か返そう。


「……ただいま」


 俺が言い終わるのを確認して、凜姉は俺を夕飯が乗っている机の方に連れて行く。そして、凜姉と琉愛と間に俺は座らされた。


「もう夕飯出来てるから、食べよう!」

「わかった」


 凜姉がそう言ったので夕飯を食べることにした。


「「「いただきます」」」


 その後、俺が夕飯をいつもの席順で食べていると、凜姉と琉愛に「食べさせて」とか、「食べさせてあげる」とかいろいろ言われたが、気にしないことにした。


 ……まぁ、その結果俺は凜姉と琉愛と食べさせ合いをすることになったのは別のお話――――。


「今日は、無駄に疲れたな……」


 風呂に入り終わり、今は自分の部屋にいる。そして、今日のことを振り返っていた。まぁ、振り返る事なんてほんの一部分だけなんだがな……。まぁ、それはいいとして。いろいろあったな。


 ……話は変わるが、くっそ眠みぃ。正直、もう寝たい。そう言えば、今日は月曜日か……金曜日はまだか。ダルいな、学校。

少し投稿ペースが落ちるかもしれません。

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