19話「実戦訓練」
ほとんどのクラスメイトは武器を取りに行ったが、俺はこの銃剣の中に非致死性のゴム弾を込めている。当たったらめっちゃ痛いが、作っておいて良かった。刃に関しては、魔力で無理矢理刃を潰すことにした。試してみたが、普通に潰れていた。
そして、俺はそれを腰のベルトに二つとも差した。
装弾数は13発、ストックは130発、魔力量はマックス、コンディションは最高だ。
「來貴、何その武器?」
武器庫からスナイパーライフルと拳銃を取ってきたらしい黎が聞いてくる。まぁ、銃身が異様に長い拳銃みたいな銃だからな、これ。実際、これデザートイーグルに改造に改造を重ねたやつだからな。
「銃身が長いデザートイーグル」
「……そんなデザートイーグルどこで見つけたの?」
「見つかるわけ無いだろ、俺が改造したんだし」
「……え!? 改造!?」
黎が驚いたながら声を上げる。その声に、何人かのクラスメイトが反応している。だが、聞かれてはいないようだ。
「しっ! 声がデカい」
俺は黎の口を手で塞ぐ。黎が何かしているがどうでもいい。聞かれなかったからいいが……聞かれていたらどうするんだ。……まぁ、俺のせいだけど。
「このことは秘密だ。いいな?」
「う、うん。わかったよ」
「皆さん、準備は出来ましたか?」
その言葉に、他の奴らは頷いた。俺も頷く。
「それでは……掛かってきなさい!」
そう言って、刀華先生は俺達から離れた場所で構えた。俺以外の生徒は、刀華先生を囲むように構えている。だが、俺はその包囲網の外の離れた場所にいる。
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刀華がそう言った瞬間、銃を発砲する者、剣で斬りかかる者、後ろから能力で攻撃する者、いろいろいた。だが、その全てが。
ヒュンッ!
何かが走った。來貴はその正体を見抜いている。剣だ。剣が宙を舞って、クラスの三分の一の生徒がダウンした。この程度で気絶したのはクラスで弱い方の奴だけだ。來貴、文奈、黎は気絶していない。気絶した生徒は、すぐに意識を取り戻した者により端っこに運ばれた。
來貴は相変わらず、最初の場所から動かず、刀華と生徒達の戦いを見ていた。たまに剣が來貴の方へ飛んでくるが、來貴はそれを全て躱している。それを見て、刀華は頬を膨らませているが……。
バンッ! バンッ! バンッ!
発砲音だ。最初に発砲された順に、スナイパーライフル、拳銃、アサルトライフルであると思われる。だが、それは。
キィンッ!
「それくらいじゃ、私は倒せませんよ?」
その全てが刀華の持っていた剣によって弾かれていた。弾かれていた方向は……
「うわ!?」「おわっ!?」「ひゃあ!?」
それを撃った生徒の方向へと返った。三人の生徒は、それを何とか避けられたが、その隙に、
「……終わりです」
宙を舞う剣の餌食となった。ちなみに、スナイパーライフルを撃ったのは黎だ。だから、黎は脱落だ。……残るは、10人。來貴、文奈は残っている。ほぼ全員能力者だ。だが、一人だけ能力を持っていなかった。
「……ねぇ、アンタも少しは協力しなさいよ」
「……あ?」
來貴に声を掛けてきたのは、クラスでも上位の強さを誇る能力者、銘仙雫。雫の見た目は、青色の腰まで届く、凜姉より長い髪。それと、両目が水色の瞳をしている。スタイルが良く、美人顔だ。ただ、胸は琉愛より小さい。
雫の能力は現象系の葉脈の流力。あらゆる流れを操る能力だ。時の流れとか、攻撃の流れとかを操れる。めっちゃ強い。
「……アンタ、ずっとそこに立ってるだけじゃない。最後に一対一で戦うって言ってたけど、その前に戦っちゃいけないなんて言われて無いわよね」
「……確かにな。んじゃ、俺はここから銃弾撃っとくわ」
「……まぁ、それでいいわ。ありがと」
そう言って、雫は刀華のところへ行った。雫の戦闘スタイルは、來貴が見ていたところ、銃に能力を使い加速させ戦うという感じだろう。実に効率的だが、それだけじゃまだ弱い。
(さ~て、俺はここから狙い撃とう)
來貴は左腰に差していたヴァルブラドを取り出し、刀華の剣を狙い撃つ。
ビュンッ!
その瞬間、秒速五キロメートルの凶悪な弾……ではなく、來貴が黒雷と黒炎を調整して秒速一キロに加減した弾が刀華の剣を貫き、
バリィン!
「え!?」
ほぼ全ての剣が砕け散った。さすがに、この事には刀華も驚いているようだ。
「……思ってたよりやるじゃない」
雫は、剣が無く隙が出来た刀華に向かって発砲しながら、そんなことを考えていた。雫は、來貴のことをが弱いと思っていた。能力に頼っているだけだと思っていた。だが、來貴は能力を使った様子もない。
そして、発砲していた弾がちょっとかすった。かすっただけだが、始めて刀華に当たった攻撃だ。來貴は、刀華に敢えて攻撃を当てていないので、これが初だ。
「く……思ってたよりもやるようね」
そう言った刀華は、剣を数十本だし、周りにいるまだ残っていたクラスメイトに向けて発射した。雫は何とか躱したようだが、人数が半分減った。ちなみに、文奈はまだ残っている。
(……しぶといな。速く脱落すればいいのに)
「……今、何を考えてたんですか?」
「……え?」
いきなり文奈が話しかけてきた。來貴は剣を銃弾で砕いて粉々にしながら、文奈にこう言った。
「お前、何でここにいるんだよ。ここ、先生から100メートル離れてるぞ」
そう、來貴が今いる位置は、刀華から100メートル離れている。來貴はそこから、剣に向かって狙撃をしていたのだ。普通なら、当てるのは難しいはずなのだが。そこは、來貴の狙撃スキルが異常ということだろう。その様子を見て、もう脱落している黎がふてくされた様子で居たが。
「とりあえず、さっさと行って脱落してこい」
「……は~い」
ふてくされた様子の文奈は、風を纏って刀華との距離を詰めていった。そして、風で刀華を少し吹き飛ばした。その隙を、残った強者達は見逃さなかった。その隙に來貴以外は銃弾を発砲、剣で斬りかかり、能力をぶつける。だが……それは、剣によって防がれていた。
「……まさかここまでやるとは思いませんでしたよ。ここであなたたちを倒した後、來貴君だけです。彼はおそらくこのクラスで一番強い。あなたたちは、気絶して貰いましょう」
そう言った刀華は、剣を発射した。先生の近くにいた生徒は、持っていた模擬刀で斬っている。
……残るは、來貴だけとなった。
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「さて……残るは俺だけか」
俺は、周りで様子を見ている生徒達を見ながら言う。文奈含む周りの生徒は、俺だけ残っている様を見て、「終わったな……」とか言っている。俺に聞こえないように言っているようだが、残念。聞こえてるぞ。悪魔の力を得て聴力が上がったからな。
「來貴君……これでようやくボコボコに出来ますね」
刀華先生が俺を見ながら言う。その声には、何かの怨念が籠もっているような声だった。俺は何かしたか?と思ったが、その間に、俺はリロードをする。
「……殺るか」
俺の周りに、黒い魔力が立ち上る。ガチでは殺らないけどな。そうしたらいろいろとマズいし。それにしても……ふむ、いい感じだ。
「刀華先生……あいにくと、俺は手加減が苦手なんですよ。だから」
俺は、一瞬で刀華先生の背後を取った。能力は……使っていない。魔力を纏って上がった身体能力で、ここまでの速度を出せたのだ。悪魔すげぇな。
「「「「「「んな!?」」」」
刀華先生と他の生徒は驚いた表情をしている。まぁ、100メートル離れてたのに、いきなり後ろに現れたんだからな。音を立てないように移動したというのもあると思うけど。
「うっかり殺してしまうかもしれません」
その瞬間、刀華先生は直感で危険を察知したのか、こっちに向いて剣を発射しようとする。だが、遅い。俺は回し蹴りを放った。
「うぐ……」
刀華先生の体はピンボールのように吹き飛び、第一戦闘場の壁に思いっきりぶつかった。刀華先生と壁の距離も近かったし、できるだけ加減はしたので生きているとは思うが。まぁ、うっかり殺してしまうかもしれない……とは言ったが、やらかさないつもりだ。
「かは……」
刀華先生が少し血を吐きながら立ち上がる。とっさに紺色の魔力を纏ったようで、怪我はしていないだろう。……人間ってこんなに脆いのか。半分が悪魔になったから模擬刀で斬っても模擬刀の方が折れそうだけど。というか……自分でやっておいてアレだけど、刀華先生大丈夫かな?後で保健室に連れて行ってあげよう。
そう考える俺に、剣が発射された。どうやら、刀華先生は近づくのが危険だと判断したようだ。まぁ、関係ないが。発射された剣は、俺に当たった。だが。
ボキッ!
その全てが曲がった。
「え……? 曲がった……?」
刀華先生は剣が俺の体に当たったら曲がったことに驚いている。それは他のクラスメイトも同じだが。まぁ……案外痛かった。遠目でもわかる程の魔力を纏ったから、それのおかげかとクラスメイト達や先生は思っているようだな。まぁ、これ見た目だけだけど。
バンッ!
俺は秒速1キロの銃弾を発砲する。だが、それは剣に当たる。まぁ、わざとだが。
それからしばらく、剣による射的ゲームが始まっていた。当たっても剣が壊れるだけだが。そして、ちょっと傷がつきそうになった。能力で強化したから、俺の体は鋼並みの強度になっているが。
「…………さて、そろそろ終わらせましょうか」
俺は、ヴァルブラドの魔力刃を出した。ちゃんと潰してあるから大丈夫だよな?
「ッ!?」
また剣が発射された。今度は防ごう。何回も当たると結構痛いし、能力を疑われそうだ。
キィン!
俺は剣を弾いて落とした。そして、俺は走って刀華先生に近づく。刀華先生は、離れようにも近くが壁なので、覚悟を決めて迎え撃つようだ。両手持ちで剣を持っている。
そして、俺が近づいた瞬間、剣を振ってくる。その攻撃を俺は、銃身で受け流した。
「これで終わりですね」
刀華先生を俺は斬った。そして、刀華先生は倒れた。……思っていたよりあっけなかったな。刀華先生が本気を出していたかは知らないけど、少なくとも俺も本気じゃ無かったからな。
「……本当に一方的でしたね」
文奈が話しかけてきた。なんかこっちを睨んでいる気がするが。自分の作戦が上手くいかなかったから怒っているのだろうか。
「……まるで黒い閃光ね」
いつの間にかいた雫が何か言ってくる。黒い閃光?中二病みたいだな。というか……こいつ、こんなことを言う奴だったっけ?雫とは、文奈に紹介されて仲がいい。黎も雫と交流があり、いつも雫の方を見ている気がする。
「……何だよ黒い閃光って」
それに俺は聞き返す。そんな中二病みたいな名前出されても困る。ただでさえ、俺には『覇壊の先駆者』とか言う二つ名があるから変な二つ名を付けるのは止めてほしい。
「ほら、アンタ黒い魔力出して一瞬で移動してたじゃない。だからよ」
そういやそうだったな。……だからと言って、変な名前を言うのはやめてほしい。というか、これは無自覚なのか、悪意があるのか?どっちなんだ?いや……どちらにせよ止めてほしいんだがな。
「……というか、刀華先生どうするんだ? 気絶しているが」
気絶させた俺が言うのもアレだが。
「とりあえず、保健室に持って行ったらどうですか?」
しばらく会話に入ってこられなかった文奈が言う。確かに……そうした方がいいかもな。すぐ起きそうにも無いからな。だったら……誰が運ぶかだ。まぁ、俺がやるけど。やったの俺だし。それに、もし気絶したらそうするつもりだったからな。
「それもそうか」
キーンコーンカーコーン
「あ、授業終わった」
とりあえず、保健室持って行こう。俺は刀華先生を担いで、保健室へ行った。他のクラスメイトは放っておこう。どうせ教室戻るだろ。
「さて……保健室に着いたか」
俺は、気絶した刀華先生を抱えて、保健室前まで来た。一応ノックしておこう。
コンコン
「失礼します」
俺は刀華先生を抱えていない方の手でドアを開けた。中には保健室の先生らしき人がいた。
「あら、あなたは……結月來貴君? それに、何で如月先生を抱えているのかしら」
「気絶させたからです」
「……え?もう一回言ってくれるかしら」
保健室の先生は驚いた様子で俺を見ている。めんどくさいな。まぁいいや。
「気絶させたからです」
「……まぁいいわ。私は衣良文麗菜よ。ここ、保健室の先生よ」
そう言って、衣良文先生は抱えていた刀華先生をベッドの上に乗せた。
「傷は深くないわね……模擬戦してたのかしら。まぁ、怪我は魔法で治しておくから、時期に起きると思うわよ」
そうして、俺は保健室を出て、教室へ向かった。もうすぐでチャイムが鳴りそうだったので、少し急いだ。
side ~???~
「…………凄い」
私は、思わずそう呟いた。




