16話「邂逅する時」
第二章は、執行科編と呼びます。
「……ん?」
俺は、目を開ける。両隣に目を向けると、まだ眠っている凜姉と琉愛の姿が見えた。この二人は、いつまで眠っているつもりなのだろうか。腕に絡まれているので起きれない。今日は休日だが、俺は早く起きたいのだ。
「……二人とも、起きろ」
足で凜姉と琉愛の体を揺さぶり、二人を起こそうとする。だが、中々起きない。むしろ、二人とも俺に抱きついてくる。
「………………」
何回揺さぶっても、二人は起きない。今の時刻は八時。そろそろ朝食を食べたい。
……後は、自分の状態を確認したい。
「んう……來くん?」
「んう……お兄ちゃん?」
どうやら、二人とも起きたようだ。それにしても……さすが姉妹、反応が似ている。いや、それはどうでもいいんだけどな。
「起きたか? 二人とも」
俺に抱きついていた手を離し、寝ぼけ眼をこすっている二人に問う。
「んんん……まだ寝てたい……」
「私も……まだ眠い……」
凜姉はまだ眠くて、琉愛はまだ寝ていたいと。
……眠いなら別に寝てていいんだが、寝るなら、自分の部屋で寝てほしい。これだと俺が起きられない。
「……俺は寝ないからな」
そう言って、俺は二人の拘束を振りほどいた。二人はもう二度寝したようで、俺がいないことには気付いていなかった。というか、こいつらが二度寝をしたのは俺を説教したせいだろう。寝るときくらいは自分の部屋に行ってほしかったがな……。
「來くん……行かないで……」
そう言った凜姉の声は、怯えているようだった。……仕方ないか。とりあえず、慰めよう。一緒に寝る、という訳にはいかないからな。
「……大丈夫、傍に居るから」
「うん……ありがとう……」
凜姉に近づいて、頭に手を乗せながら言う。すると、凜姉は安心した顔になった。……これで大丈夫か。凜姉はたまにこうなるからな……そのたびにこう言っているけど、大丈夫か……?凜姉は、俺が近づいて頭に手を乗せて言わないと、安心した顔にならないからな……これに関しては仕方ない。
「……部屋、出るか」
凜姉のケアも終わったので、俺は部屋を出る。凜姉の傍に居るって言っておいて、傍に居ないが……後で戻るから大丈夫だろ……多分。
俺は、一階への階段を降り、洗面所へ向かう。そして……鏡に映った自分の姿を見て、驚愕する。
「……なんか、瞳の色が変わっているんだが……」
そう、俺の左目が金色に変わっていた。右目の色は黒のまま変わっていない。これは……所謂オッドアイというやつになるのだろうか。さて……俺、中二病みたいだな。俺自身は中二病では無いが、見た目のせいで中二病って思われそうだ。
何せ……灰色の髪に、左目が金色で右目が黒色のオッドアイ。これを中二病と言わずなんと言うだろうか。学校に行くどころか、登校中や下校中にも沢山視線を浴びることになると思われる。それは避けたい。
というか……この見た目、文奈と黎に何があったのかを聞かれるのと……いじられるな。中二病って。まぁ、それでも見た目を変える気は無いけどな。いじられるのを覚悟で行こう。
「……部屋に戻るか」
見た目の確認も済んだので、部屋に戻ろうと思う。凜姉と琉愛がそろそろ起きそうだしな。
二階への階段を上り、自分の部屋の中に入る。
(……まだ寝てんのかよ)
現在の時刻は八時二十分。起きて部屋から出て洗面所へ行って部屋に戻るまで約二十分経った。さっき思った通り、凜姉と琉愛はまだ寝ている。このまま俺のベッドを占領するのは止めてほしい。寝るなら自分の部屋で寝ろ。
まぁ、部屋の入り口に突っ立ってないで起こしに行こう。俺は、二人が寝ているベッドへと行く。そして、二人の体を揺さぶる。
「さっさと起きろ。寝るなら自分の部屋で寝てくれ」
「……來くん?起きてたの……?」
「お兄ちゃん……起きてたんだ」
二人な目をこすりながら、起きようと上体を起こす。……やっと起きてくれるのか。そして俺の部屋から出てほしい。
「來くん、今何時?」
「……八時二十分だ」
「結構寝てたんだね」
二人はそう言って、ベッドから降りようとはしていなかった。……おい、三度寝する気か?だったら、部屋のベッドにぶち込むぞ。
「起きたのならさっさとベッドから降りて部屋から出てくれ」
「……わかったよ……來くんのいじわる」
「むう……お兄ちゃんのいけず」
俺への悪口を言いながら、二人はベッドから降りる。まぁ……別にどうってこと無いけどな。二人とも可愛いから悪口になってないしな。
……まぁ、それは置いておいて……出かけるか。急激に身長が伸びたので、服のサイズが合わない。……だが、まだ合う服は合ったはずだ。それを来て、出かけよう。
「……着替えるから、二人ともさっさと部屋から出てくれ」
「……わかったよ」
「……わかった」
二人とも似たような反応を見せ、部屋から出て行く。ちなみに、「よ」がついている方が凜姉だ。「よ」がついていない方が琉愛だ。
「……これか」
クローゼットの中を探し、今の自分の身長に合う服を見つけた。これに着替えて、部屋を出る。持ち物は、財布とバッグだ。中には銃剣が入っている。誰かを殺しに行くという訳では無い。あのときの声が言っていたオリケルスという悪魔を探しに行く。まぁ、見つかるかはわからないが。
そして、俺は一階へ降りて玄関の前に行く。
「あれ? お兄ちゃん、朝食は食べないの?」
「ん? ……ああ、食べる」
だが、探しに行く前に朝食を食べることにした。そう言えば、まだ食べてないしな。
「「「いただきます」」」
リビングへ行き、朝食が置いてある机の近くにある椅子に座る。
「來くん、何処か出かけるの?」
朝食を食べている途中、凜姉が着替えた俺に対してそう聞いてきた。
「あぁ、ちょっとな」
「……連絡してね?」
「…………わかってるよ」
「……ホント?」
「…………ああ」
凜姉から、帰る時間を連絡しろと言われた。帰るときにも連絡しろとも言われた。まぁ……これに関しては今まで連絡しなかった俺が悪いか。スマホも、内ポケットの中に入れてある。充電も100%あるし、電池切れになることはほぼ無いだろう。
「ごちそうさま」
数分後、俺は朝食を食べ終わった。皿を片付けて、玄関へと向かう。さすがに、行く前に歯は洗ったけどな。
「……いってきます」
この家に居る凜姉と琉愛には聞こえてないだろうけど、一応言う。返事はまぁ……帰ってこないと思うけど。
「「いってらっしゃい」」
返事……してくれたな。しかも、俺に聞こえるように。というか、小さい声で言ったと思うんだけど、あれ、聞こえていたのか?まぁ、いいか。とりあえず、行こう。
俺は家を出て、ドアの鍵を閉める。そして、何処かに向かって歩き出す。さて……見つかるのかね。まずは……ネルを殺したあの場所に行ってみよう。何かあるかもしれない。
そして、俺はあの場所に向かって歩き出した。
そうして、歩き始めること数十分。あの場所に着いた。とりあえず、進もう。俺は、辺り一面何も無い場所に入り歩き出した。
(それにしても……本当に何も無いな)
歩きながら、辺りを見回すが何も無い。強いて言うなら、木と岩がある。それ以外は何も無いって感じだ。というか……ネルの死体が無いな。誰かに回収されたか?それとも……消えたか?前者なら……その回収した者が誰だよって感じだし、回収して何になるんだよ。後者なら……どやって消えたんだ?
「……ここか」
今、俺とネルが戦った場所に着いた。この辺りには破壊痕があるので、ここで戦ったことは間違いないだろう。というか……まだ周囲に魔力があるな。あの時に上に向かって放った魔力の斬撃の残留がまだ残っているのだろう。とりあえず、ここには何も無い。別の場所へ行こう。
そして、俺はその場を後にする。さて……何処へ行こうか。
俺は、一旦誰も居ないような場所へ行った。この場所は、辺り一面何も無い場所の中で最も高い場所だ。住宅街を見下ろせるような場所だ。まぁ……ここも見下ろせるだけで何にも無いけどな。
さて……これだと当初の目的を忘れているな。オリケルスという悪魔を探すという目的が。とりあえず、ここから出よう。そして住宅街の方に戻ろう……と思ったが、ここでちょっといろいろ実験することにした。
俺は適当な場所で、能力の実験をする。何も無いので、ここら一帯を更地にするようなことをしなければ大丈夫だろう。
「……この死黒暴滅は、あらゆる黒を支配する能力。……なら、黒に関することはなんでも出来るのか……?」
手のひらから黒を出しながら、俺は独り言を呟く。
ネルは、この黒を操って腕に纏わせたり、黒い炎を出したりしていた。だとすれば……黒い雷や、黒い氷などを出したりすることも出来るのだろうか。ネルはそんなことやっていなかったが、俺ならば出来るかもしれない。
まずは、黒い雷……黒雷と名付けよう。安直だけどな。まぁ、ネルの黒炎も安直なネーミングだから別にいいだろう。
「……黒雷」
ドゴォンッ!
狙った場所は、近くの岩。その岩が、粉々になった。結構な威力だな。まぁ、学校で使うことは無いだろうけど。こんなの学校で使ったら何言われるかわからない。それに、俺の覇壊の轟きじゃこんなことは出来ない。
……じゃ、次は……黒い氷か。名付けるなら、黒氷だな。
「……黒氷」
カチンッ!
今度は、俺の周りが黒く凍った。これも結構な威力だな。まぁ、学校では使わないけど。とりあえず、今の状態で覇壊の轟きを使ったらどうなるのかも試してみよう。
その後約数時間、俺は能力の実験をこの場所でしていた。目的を完全に見失っているが、確認をしないと手加減が上手く出来ないからな。オリケルスという悪魔相手なら問題ないかもしれないが、学校だと問題になる。加減をしないと怪我をさせそうだ。それは避けたい。
俺が今の状態で覇壊の轟きを使うと、前の状態以上に強化される。前の感覚で使うと、その1.3倍は強化される。気をつけよう。というか……腹減ったな。
スマホを取り出して時刻を確認してみた所、今の時刻は十二時半。そろそろ昼飯が食べたくなってきた。後……悪魔って、人間が食べるもの食べられるか不安だったが、朝に凜姉が作った朝食を食べられたと言うことは、食べられると言うことだろう。とりあえず、適当な店へ行こう。
この場所を後にし、住宅街の方へ行く。
「いらっしゃいませ~」
俺は昼飯を食べに、某カレー店に来ていた。それから來貴は、店員に案内され、指定された席に座った。
そして、メニューを見てどれを食べるか選ぶ。
「ご注文は決まりましたか?」
「はい、この牛肉カレーでお願いします」
俺は、結構人気らしいこのメニューを頼むことにした。他に居る客を見てみても、頼んでいる人が居るからな。
「かしこまりました」
それから数分して、カレーがやってきた。
「お待たせしました。こちらが、牛肉カレーになります。ご注文はこれだけでよろしかったでしょうか?」
「はい」
俺は注文した牛肉カレーを食べることにした。
「いただきます」
俺は牛肉カレーを食べた。感想はこうだ。めっちゃ美味かった。さすがココ○チだ。昼飯食いそびれたときここに来ようかな。とも思った。そして、俺はカレーを十数分で食い終わり、代金450円を払った。
「ありがとうございました~」
店の人の声を聞いた後、店を出る。
「……君が、結月來貴か?」
「!?」
急に後ろから声を掛けられ、俺は後ろを振り返る。そこには、めっちゃ厳つい爺さんがいた。俺より身長が高い。そしてとても筋骨隆々だ。しかも、オールバックにした白髪と赤目でより厳つさが際立っている。というか、接近に気付かなかったんだが。何者だよ、この爺さん。
「…………ああ、俺が、結月來貴だ」
「そうか……儂の名はオリケルス。お主のことはだいたいあいつから聞いておる。ここで話すのもアレだ。儂の家に行こうか」
どうやら、いつの間にか後ろにいた爺さんがオリケルスだったようだ。
「……ああ」
そうして俺は、このヤバい爺さんの家に行くことになった。オリケルスの家は、和式の家だった。それなりに広く、オリケルスは一人暮らしらしいが、俺が入っても十分広い家だった。そして、周りには本当に何も無い。違う国に来たんじゃ無いか?という程に何も無い。
そして、俺はオリケルスの家の和室に座る。オリケルスは、俺の対面に座っている。
「して……來貴よ……力は体になじむか?」
「……?」
どういうことだ?俺はそう考える。力、というのは……死黒暴滅だろうか。それとも……悪魔の身体能力だろうか。
「ほっほっほ。わからんでもいい。あいつから聞いておるじゃろ? どれ、一回儂と戦ってみるか?」
「…………わかった」
家の外に出て、オリケルスと戦うことになった。
……正直、俺はオリケルスに勝てる気がしなかった。オリケルスが纏っている覇気は、強いどころじゃない。圧倒的強者のそれだ。今まで見てきた強者とは比じゃ無い。
「さぁ、どこからでも掛かってくるが良い」
「ハァ!」
ギィンッ!
俺の銃剣による攻撃は、いつの間にか取り出された曲刀によって防がれた。
この後、俺は攻撃をし続けた。その攻撃はかすりもしなかった。そして突然、
「よし、今から儂は攻撃する。その攻撃をしっかり見ていろ」
オリケルスがそう言った瞬間、俺の視界は反転した。
「え……?」
「……見れんかったか。今、お主を転ばせたのだが」
「……全く見えなかった」
俺にはその攻撃が全く見えなかった。仮に、覇王の威光を使ったとしても、見えないだろう。その位、オリケルスの攻撃は早かった。
「そういえば、來貴よ」
「何だ?」
「お主、どれくらい能力を使いこなしている?」
能力をどれくらい使いこなしているか?その質問に対し、俺は「大体これ位か」と答えた。
「覇壊の轟きは、大体のリミッターは壊せる程度だ。死黒暴滅は、黒いやつなら大体は操れる感じだ」
「ほう……覇壊の轟きは結構使いこなしておるのじゃな。ただ、もっと覇壊出来るリミッターはあるはずじゃぞ。例えば、加速度とか、魔法の威力とか……な」
「そういうことも出来たのか……」
オリケルスは、自分が思っているより頭が柔らかいのか?と、俺は考える。見た目、完全に年寄りで厳つい爺さんなのにな。
とりあえずまぁ……その後は、いろいろ実験をしたな。能力とかの実験をな。




