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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第六章 逢魔之戦禍編
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123話「久しぶりの登校」

「――いつか、私たちを信じられるようにね」


 部屋を出る來貴にそう言い残す里奈。來貴は、その言葉に首肯しながらドアを閉めた。


 ――部屋に残された里奈は、こう呟く。


「……まぁ、無理しなくてもいいけど」


 その声は、閉ざされた部屋の中に響き渡った。誰かに届くこともなく。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そうして、次の日。


(……せっかくなら、最新の機種を買うか。金は足りるだろうから)


 現在、來貴は携帯ショップにて新しいスマホを探していた。かなりの金を持ってきたため、どの機種でも購入は可能だ。そのため、最新のものを買おうと考えていた。


 來貴が使っていたものは少し前のものであり、普段の使用の際には困っていなかったが古いものである。だが最新の機種と言っても種類や色がいろいろあり、來貴はどれにしようか迷っていた。


「――來くん、どれにするか決まった?」


 一緒に来ていた凜が、來貴にそう聞く。


「いや、まだ……」


 來貴はそう言って、どれを買うか逡巡する。


「お兄ちゃんのスマホって、前は黒色だったから同じ色の同じモデルの最新のものでいいんじゃない?」


 琉愛にそう言われ、そう言えばそうだったなと思いだす。今このショップで売られている最新のスマホに目をやり、その黒色を手に取る。


 來貴のスマホ購入についてきているのは、凜と琉愛の二人だ。この二人が何故ついてきているのかというと、來貴が一人で出かけて行った先で誘拐されたからだ。一週間もいなくなっていたため、凜と琉愛はすごく不安になっていた。


 そして二回目の誘拐を防ぐため、一人で出かけようとしていた來貴に無理矢理ついていった形でこうなっている。


(……そうするか)


 ――そうして、來貴はそのスマホを購入に向かう。


 プラン等を設定し、料金を支払う。


「ありがとうございました~」


 店員の声を背に、來貴たちは店から出ていく。財布から10万円以上が消失したが、それでもいい買い物をしたと來貴は気分がよくなった。


 これからいろいろと設定をしなければならないが、すぐに終わるため來貴は気にしていない。


 そのスマホが入った袋をチラリと見ながら、來貴は軽い足取りで家に帰る。


「……いいなぁ、そののスマホ」


 琉愛が独り言のように呟く。


「そうだねぇ……私と琉愛のは古くは無いけど結構前のだし、買い替え時かな」


 凜も、独り言のように呟く。來貴はその独り言を聞き流しながら、帰路を辿る。


 ――そうして、家についた來貴たち。


 ただいまと言いながら家に入っていき、來貴は自室へと向かう。そして早速來貴はスマホの設定を始める。


 サクサクと設定を進めていき、やがて数分後に全ての設定を完了した。


 その後起動してみて、ちゃんと動くかどうかを試す。その結果、全ての動作が問題なく行われた。


 それを確認した來貴は、不測の事態に備えて保存していたバックアップデータをPCから取り出し、スマホに全て移植する。滞りなくデータ移植は完了し、前のスマホと同じように使えるようになった。


 ただ――。


(……スマホが変わったから、連絡先の電話番号が全員消えたな……元のあのスマホには、凜姉たちの着信履歴がたくさん残っているのだろうか)


 ――あいにくとそちらに関してはバックアップがないため、全部消えてしまっていた。


 いくら電話してもつながらないため、來貴の連絡先を持っている者たちも大体は気付いている。しかし、來貴はもう一度交換し直すのは躊躇いが出た。


 來貴の連絡先を持っているのは、凜、琉愛、里奈、文奈、黎、雫、それから執行科(エンフォースメント)全員、そして琴音と兇介だ。


 おそらくその全員からかなりの着信が来ているうえ、凜たち以外には会ったら何を言われるかわからない。ただ――悪い気は、しないが。來貴は頬を掻きながら、どうするかを考えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そうして夕食を食べ終わり、暇を持て余す時間となった。


 來貴は終わった課題を整理しながら、どこか見落としている所がないか探していた。やっていないところがあれば、一大事だから。


 探した結果、やっていなかったところは何処にもなかった。その事にホッとしながら課題をバッグの中に詰め、バッグのチャックを閉めた。……そして、壁に立て掛けてある"白天黒滅"が目に入った。


「……」


 ――來貴は何も言わず"白天黒滅"を手に取り、抜刀。片手で左右に振り、手への馴染み方を確認した。……不気味なほど手になじむのは、覚醒した影響だろうか。來貴は納刀し、再び壁に立て掛けた。


 それから來貴は椅子に座り、何をしようか考える。


(……交換し直しに行くか。速い方がいいだろうし)


 そう思い、來貴はスマホを片手に部屋を出た。


 ――それから凜、琉愛、里奈の部屋へ行き、連絡先を交換し直した。その際に「今度は無くさないように」とかいろいろ言われたため、來貴は忘れないようにその言葉を胸に刻んだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そうして、夜が明ける。


 來貴は学校に行く準備を終え、いざ学校へ行かんとする。ただ一人で行くわけではないため、そのもう一人を待っている状況だ。


「お待たせ、來くん。行こ!」

「……ああ」


 來貴は、先を行く凜についていく。玄関から出て、二人並んで登校する。天気は晴れで、凜の気分はとてもいい。しかし対照的に、來貴の気分はあまり優れていなかった。


 重い足取りで歩いている來貴を見て、凜はくるりと來貴の前に出て声を掛ける。


「來くんどうしたの? 気分がよくなさそうだけど」


 凜の問いかけに、來貴は目を閉じながら答える。


「……教室についたとき、何を言われるか考えてゲンナリしてた」


 來貴はそう言いながら、溜息をつきながら肩を竦ませる。それを見て、凜は來貴の額にデコピンをした。來貴は痛がる様子もなく、デコピンされた額をさすっていた。


 その様子を見ながら、凜は言う。


「そんなこと言っちゃだめだよ? ……私たちがどれだけ心配してたと思ってるの? その気持ちはわからなくもないけど……少なくとも今は、彼らに向き合わなきゃ」


 その言葉に、來貴はこう言った。


「……そうだな」


 來貴の返事に対して、凜は嬉しそうに頷いた。


 ――それからしばらく通学路を歩いていき、やがて学校の近くまでつく。今は朝早いため、登校している生徒は少ない。だが、來貴の姿をチラチラ見ている生徒は多かった。


 來貴の姿は目立つうえ、かつて学校に襲撃してきたアルヴァダ兵を破った存在。その名前は学校の全員が知っているため、目立たないわけがなかった。


 その視線を受けながら、來貴は歩いていく。


「來くん、すごく注目されてるね」

「……別に」

「そっか。手、繋ぐ?」

「繋がない」

「残念」


 唐突に言われて戸惑ったが、手は繋がなかった。


 ――それから來貴は凜と別れて一年の玄関に入っていく。足取りはいつもよりも重いが、進んでいないわけではない。そのまま教室へと向かい、そしてドアの前に立つ。


 來貴は深呼吸をし、ドアを開いた。そして目にしたのは、文奈たちがいる教室。


 ドアが開く音を聞き、そちらを向いた文奈たちは、來貴の姿に驚愕しながらも駆け寄ってきた。その表情は三者三様であるが、だが來貴を心配している事には変わりない。


 ――最初に、文奈が言う。


「來貴君……! もう、心配したんですからね! 一週間も音信不通で、学校も来ずに……もう。……でも、来てくれてよかったです」


 涙をにじませながら言う文奈。來貴はどんな言葉をかければいいかわからなかったが、それを言う前に黎が口を開く。


「そうだよ! ……でも、今日来て安心したよ。……今度からは消えてほしくないかな」


 次に、黎が文奈に同調するように言う。文奈と同じくかなり心配していて、來貴の姿を見てホッとしている。そして來貴は、黎が言った「消えてほしくない」という言葉が頭に残っていた。


「そうね……みんな心配してたわよ? 刀華先生も、他のクラスのお友達も――私たちも」


 最後に、雫が言った。一見あまり心配していないように見えるが、かなり心配していた。その証拠に、語尾に「私たち」という言葉がついているだろう。


 それから來貴は、文奈たちに聞こえるように呟いた。


「……ごめん」


 ――その呟きは、文奈たちに聞こえる範囲で響く。


「……それじゃあ、久しぶりに話しましょうよ」


 文奈のその言葉に、來貴は頷いた。それから、文奈たちは來貴がいなかった時間を埋めるように話しあった――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――いつも通りに授業が始まり、いつも通りに授業が終わる。現在は昼休みであり、弁当は食べ終わって四人で雑談をしているところだ。


「そういえば來貴君、何故電話が繋がらなかったんですか?」


 ――ふと、文奈がそう問いかける。その言葉に、黎が同調して言った。


「確かに、いくら電話しても繋がらなかったよね」


 黎は、ジト目で來貴を見ている。


「そうだよね。みんな連絡してたのに」


 文奈と黎の言葉を受け、來貴は気まずそうに目を逸らした。


「……スマホを失くしたんだよ。だから電話が来てもわからなかった」


 その理由を聞いて文奈たちは納得したが、次の疑問が浮かび上がった。それを、文奈が來貴に問いかける。


「じゃあ、今スマホはあるんですか?」

「あるけど」


  來貴はそう言いながら、新しく購入したスマホを取り出した。


 そのスマホを見て、文奈たちは違和感を感じた。最後に見た來貴のスマホと、色は同じ。しかし、どこか大きさが違うように見えた。


 そこで文奈は、無言でスマホを取り出して來貴のスマホに電話を掛けた。


「……」


 しばらくしても、何もない。文奈のスマホは数回音を鳴らしたが、やがて電話は繋がらないと表記が出た。


「……あれ、繋がりませんけど」

「どうしたの? 文奈」


 思わずそう呟いた文奈に、雫が何をしたのか問う。


「今來貴君に電話を掛けたんですけど、繋がらないんですよね。……電話番号変えましたか? 來貴君」


 笑顔で、來貴に問いかける文奈。そこで黎と雫も來貴に電話が繋がるか試し、どちらも來貴のスマホと繋がらないことがわかった。そのことで、黎と雫からの視線も強くなり來貴は答えざるを得なくなった。


 まぁ來貴は元々言うつもりであったため、口を開いた。


「ああ、スマホを変えたんだ。それに伴って電話番号も変わってな。……もう一回交換するか?」


 來貴がそう言いながら、スマホを差し出す。


「……はい。そういうことは早く言ってください」


 文奈がそう言いながらスマホを出して、連絡先を交換する。かつての來貴の残骸は捨て、そちらの電話番号を食い入るように見つめていた。


 それから黎と雫とも連絡先を交換し、それが終わった後は雑談を再開した。


「――ねぇ來貴、そのスマホ最新のやつじゃない?」


 來貴のスマホを見ていた黎が、その事に気付いて質問する。


「ああ。金はあるから、どうせなら最新のものを買おうと思ってな……」


 そう言って見せびらかす來貴を横目に、文奈は呟く。


「私も買い換えたいですね……結構前のものですし」


 そして、その呟きを聞いた來貴が文奈に言う。


「買ったらどうだ? 買える金ならあるだろ」

「確かにありますけど、買ったら貯金が少なくなります……」


 文奈はそう言ってため息をついた。


 軍事機関の依頼では、危険度によりそれ相応の報酬金があるのだ。強ければ強いほど与えられる依頼の危険度が上がり、報酬金が多くなる。


 來貴はかなり強いため、かなりの報酬金をもらっている。対して文奈も弱くは無いため、それなりの報酬金をもらっている。軍事高校生の平均報酬金は40万ほどであるが、文奈もそれくらいだ。


「……貯金が少なくなるって言っても、そんなに少なくならないでしょ」


 嘆息した文奈に、雫はそう言った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そして、放課後。


「よく来てくれました、來貴君」


 來貴は、校長室に呼び出されていた。目の前にいる校長――西宮寺琴音は、一見冷静であるがどこか安心した表情を浮かべているように見えた。


「……何か用ですか?」


 今は「琴音姉さん」と「神藤一羽」ではないため、一人の生徒として要件を聞く來貴。


「今回呼んだのは、あなたがアルヴァダ帝国に何かされていないかを確認するためです。それと……まぁ、それは後で言いましょうか」


 そう言いながら琴音は席から立ち、少し速足な感じで來貴の元へ行く。


 やがて來貴の目の前まで来ると――。


「來貴、何もされてない!? 何故狙ったのかはわからないけど……無事!? どこかおかしいところはない!? もし何かされてたら言って!」


 ――そして過保護な感じを出しながら、來貴の身体を揺さぶったり周りを歩いてどこか以上が無いかみていた。


 いきなりの事に來貴は気圧されたが、とりあえず口を開く。


「何もされてない……というか、されたが大丈夫だったよ」


 來貴の言葉を聞き、安堵する琴音。そして、深呼吸した後來貴に聞いた。


「……ごめんね、少し取り乱してしまったわ。されたけど大丈夫だった……ということは、何かあったのね?」

「ああ……能力――万物具現化の眼リアライゼーション・アイを取られそうになったけど、取られなかった」


 ――來貴の言葉を聞いた琴音は驚いたが、すぐに冷静になる。そして慈しむように優しく言った。


「……そうなの……なら、よかった。じゃあ、アルヴァダ帝国に誘拐されてた時の事を話してくれる?

あそこの席で、紅茶でも飲みながら」

「……うん、わかった」


 琴音が校長室の近くにあるソファを指差し、微笑む。來貴もそれに同意し、少し笑った。


 ――それから、來貴はアルヴァダ帝国にいたときのことを話し始めた。

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