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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第六章 逢魔之戦禍編
127/234

119話「道の先にある景色」

 ――現在、來貴たちは彼女たち、仮面の騎士たちがいる場へとついた。


 ドルナイトたちはまだこの場に来ておらず、死の霧に囚われているか抜け出して追ってきているかのどちらかだ。ただどちらにせよ、ドルナイトたちが来る前にこの場を抜け出したいとイオネたちは考えている。


 仮面の騎士を"彼女"と他二人が抑え込み、数の差で若干優勢。美麗の騎士にイオネ、青年の騎士にアギエル、眼鏡の騎士に來貴が相手につく事により、そちらも優勢。


 結果的に、こちら側が優勢になっている。元々あった人数の差が、更に広がった形になったのだから。そしてそれが、結果的に個人の実力差を埋めた形となった。


 ――仮面の騎士が振るう太刀を二人が引き付け、攻撃を誘発。その後ろから彼女が熱風と刃で攻撃する。仮面の騎士は、攻撃の気配を感じ取り直前で回避した。しかし完全に躱す事はできず、所々に火傷と裂傷を負う。


 そして回避と同時に魔力を乗せた太刀を振るい、二人を斬りつける。更に彼女へと方向を変え、太刀を振るう。その一撃に、風を乗せて。


 空間を切り裂き迫る刃を、彼女は手から炎を放ち防いだ。それにより爆発と煙が生じ、一時的に仮面の騎士と彼女たちの視界を奪う。彼女は翼の羽ばたきで煙を払いながら、仮面の騎士の姿を探す。


「……!」


 ――彼女が気配を感じて後ろに目を向けた瞬間、仮面の騎士が現れた。先程の傷を全て再生した状態で。


 既に仮面の騎士は太刀を構えており、いつでも振り下ろせる体勢である。当然待ったなどあるはずもなく、彼女を殺害するため振り下ろされた。


 距離の関係で、躱す事は不可能。炎の壁を形成して防御するが、それごと腹部を斬られてしまう。


「ぐっ……」


 腹部から大量に出血し、思わず声を上げてしまう。


 ――そのまま、地面に自由落下した。しかしただ落下するだけでなく、傷を再生しながら周りの状況を見る。特に誰も死んでいないようで、彼女は一息ついた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そして、美麗の騎士を相手しているイオネたち。


 イオネが美麗の騎士よりも強いため、一方的な展開となっている。しかし、美麗の騎士の能力に惑わされ、決定打をさせずにいた。


 ただ、優勢なのは間違いない。個人的な意味でも、全体的な意味でも。こちらが騎士たちを突破しようと動いているのではなく、向こうがこちらを防ごうと動いているのだから。


 騎士たちの方が防戦に回っていて、手が出せていない。殺すまでに至る程の傷も、与えられていない。


 だが、騎士たちの実力を侮ってはいけない。個々の実力は、間違いなく自分たちに匹敵するから。故に、ドルナイトたちがこの場に到着したら、終わり。数と実力の差が覆され、來貴は再び囚われそれ以外の者は全て殺されるだろう。


 故にイオネは、一秒でも速くここを切り抜けたいと考えていた。


 ――美麗の騎士が能力を使用。その姿が揺らぎ、イオネが攻撃しても透けて当たらない。他の者が攻撃しても、イオネと同じように当たらず。


 しかし逆に、美麗の騎士の攻撃も当たっていなかった。イオネが余裕を持って躱していて、他の者が当たりそうになればカバーする。それによって、ダメージが一切ない戦闘となっていた。


 だが、それがいつまでも続いていくわけではなかった。イオネが能力を発動し、虚影を奪う。美麗の騎士の肩を掴む。それは、美麗の騎士の目論見通りすり抜け――。


「えっ!?」


 ――ない。美麗の騎士は、いつもの余裕そうな笑みが消え、驚愕を浮かべていた。


 そのままイオネは掴んでいる手から魔力を放出し、美麗の騎士に攻撃する。魔力の放射による衝撃で、美麗の騎士はボロボロになって落下する。


 そしてイオネがそのまま終わるはずもなく、魔力の剣を両手に作りだす。その後他の者に目で合図をし、美麗の騎士に追撃を仕掛けるため動く。


 イオネが、美麗の騎士を斬りつける――が。


(能力を使われたか。常に我も能力を発動するのは厳しい。そのタイミングを突かれたか)


 ――しかし、そう簡単には決まらなかった。美麗の騎士がうまくタイミングを突き、イオネの視界から消えた。


「イオネ様、あそこです!」


 そう言われて向いた先に、美麗の騎士の姿。少し肩で呼吸をし、体中に傷を負っている。しかし、まだ戦える……そう言った意思を感じた。


「……おもしろい」


 イオネは幾百年ぶりに、心が沸き立つ感覚を覚えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そして、青年の騎士を相手にしているアギエルたち。


 こちらも青年の騎士よりアギエルの方が強いため、一方的とまでは言わずとも有利に駒を進められている。


 しかし、青年の騎士の『能力』がかなり強力であるため、アギエルが攻めあぐねていた。アギエルが対抗できないわけではないが、もう一人の相手をしている者が、その能力と相性が悪いために苦戦している。


 加えて青年の騎士は能力の使い方がうまく、なかなか距離を詰められない。接近したならば、アギエルが斃す事ができる。遠距離で決着をつける事は可能かもしれないが、それを行うにはリスクが高すぎる。

 

 周りの者に被害が行く可能性の方が高いうえに、余力を残せぬかもしれない。遠距離で攻撃するという事は、それ相応の魔力を消費する。攻撃力に欠ける能力を持つアギエルでは、それがより顕著なのだ。


 故に、接近して魔力刃か何かで叩いて決着をつけるのが望ましい。


 そのため、他に相手をしている者を呼んだ。そちらの者を"A"と呼称しよう。


 アギエルはAに青年の騎士を出し抜く作戦を話しながら、あらゆる方向から放たれる電撃やら空間を裂く風やらを回避する。


「――無茶苦茶ですね」

「ああ。だが、やるしかない」


 Aは作戦の意図を理解している。しているからこそ、無茶苦茶だと言った。しかし、やるしかない。アギエルの言う通りだった。


 作戦は至ってシンプル。


 青年の騎士の攻撃をAが引き付け、注目を一方向に集める。そして、その逆方向からアギエルが接近し、近接戦闘で決着をつける。それが、作戦の概要だ。もし失敗したらどうするか――なんて事は考えない。


 するはずがないし、失敗なんてできないから。


 ――そして、Aは青年の騎士に魔力の波動を放つ。同時にアギエルは気配を消し、青年の騎士の意識外へと行く。


 あらゆる方向から放たれる電撃、空間を抉り取るような風刃、核を思わせるような爆撃、自身に向って放たれるその全てを回避しつつ、Aは魔力の波動を放つ。能力は使ったら逆効果になるため、魔力をそのままの形で使用する。


 そして、青年の騎士がAに少し接近。手にエネルギーを溜めながら、それをAの周りに放出――というところで、アギエルが仕掛けた。


 後ろから魔力刃による斬撃を、青年の騎士の首目掛けて放つ。


 青年の騎士は、反応できずに首と胴体を切断された。


 ――しかし、未だその身体は動いたまま。胴体が動いて後ろを振り向き、手のエネルギーを放出した。だが、それはアギエルに致命傷を与えることは無い。何故なら、アギエルが魔力で全て包み込んだから。


 魔力でエネルギーを全て包み込み、暴発を完全に抑えた。これで、青年の騎士はなすすべ無し――で、終わらなかった。


 突如爆発と霜風が生じ、アギエルは距離を取らざるを得ない。


(やられたか……だが、確実に体力は消費しているだろう。このまま押していけば、勝ちは取れる)


 ――やがて爆発と霜風が止んだ後、青年の騎士の首と胴体は繋がっていた。その姿を見て、アギエルはこう呟いた。


「……早く終わらせようか」


 アギエルは、今後に危機感を覚えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そして、眼鏡の騎士を相手にしている來貴たち。


 來貴は凜を抱えながら戦っている故、あまり派手な動きはできない。故にもう一人の者が主に戦っていた。その者をBと呼称しよう。


 Bが主に眼鏡の騎士と近接勝負をしながら、來貴が眼鏡の騎士が出してきた広範囲高威力の攻撃を対処していた。連携もうまく取れていて、まるで隙が無い。


 ――眼鏡の騎士が能力を使ってBと距離を取るが、來貴がその後ろから「地獄門(ヘル・ゲート)死霊の地(ニヴルヘイム)」で怨霊の手を召喚し、拘束する。ただ全身を拘束できているわけではないので、力で引きちぎられそのまま距離を取られた。


 しかし、僅かに遅くなったためにBが追い付く。そして、拳を顔に叩き込んだ。眼鏡の騎士は手を翳して防ぐも、その勢いのまま吹き飛ばされる。


 眼鏡の騎士は空中で一回転し、勢いを殺す。その後、能力を使用し來貴とBめがけて音波攻撃を放つ。Bは回避し、來貴の近くまで後退する。


 來貴は死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を発動。黒い衝撃波を放ち、音波を止める。音に実体などないが、ルシファーの能力でなんとかしている。


 やがて衝撃波と音波は、散っていった。それと同時にBは眼鏡の騎士に接近し、近接戦闘を仕掛ける。眼鏡の騎士は距離を取る事が出来ず、Bが繰り出す殴りや蹴りに対応しきれずにいた。


 なんとか能力で次の攻撃を読んで決定的なダメージは食らわずにいられているが、それも時間の問題だろう。


 まだ、戦いは続く――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そうして、約二分後。


 來貴たちは、仮面の騎士たちがいた場所を抜け出していた。騎士たちを斃し、動けないでいるうちに全員で撤退した。


(今はまだ動けないだろうが、時期に追いかけてくるだろう。……殺すまでするのが最善だが、止めをさす時間も余力もあまりない。……追い付かれた場合、我々では対処が不可能となる。その前に――)


 イオネは額から汗を流しながら、飛行する。


 騎士たちに確かな傷を与えたが、それで死んでいるわけがない。撤退しようとした時に、追いかけようとしてきたのがその証拠だ。止めを差すにも時間がいるため、作ったのは逃れられる時間のみ。


 今イオネが想定している"最悪"はマサハスたちがいるところに神たちと騎士たちが全員終結する事。


 そうなれば、こちらの勝ち目はほぼなくなる。そうなることは避けたいため、イオネはどうしようか考えているのだ。とは言いつつも、数の差で押すしか手はないのだが。


 ――イオネがそうこう考えている途中に、戦っている音が聞こえてきた。


 全員が、もうすぐ着くといつでも戦えるように身構えながら飛行する。イオネも、一旦考えるのを止めた。


 ――チラッと、後ろを見たアギエル。


 今のところ、後ろに誰もいない。アギエルは最後尾にいるため、後ろの様子がよく見える。そのため、何回か後ろを見ていた。


 ドルナイトたちが来ている様子もなく、何か遠距離から攻撃されているわけでもない。安心してもいいのだが、アギエルは胸騒ぎがしていた。


 しかし、もうマサハスたちがいる場は近い。アギエルは、これからの戦いに集中することにした――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そして、來貴たちはマサハスたちがいる場へとついた。


 來貴は戦いがしづらいという理由で、女性の天使に守られながら空中に佇んでいた。マサハスたちが相手にしていたのは、壮年の騎士と少年の騎士の二人。


 この二人よりもアギエルとイオネの方が強く、更に人数も多いため、もはや一方的とも言っていいほどとなっていた。ただ、壮年の騎士が逃がさないための攻撃をしており、中々抜け出せるチャンスがない。


 ――しかし、それが長く続いたわけではなかった。イオネの魔力刃が、壮年の騎士の胴体を貫く。同時に魔力が広がり、胴体に大きな穴を開ける。


 そして、壮年の騎士が落下。同時にマサハスとアギエルが、少年の騎士を地面に魔力の波動を。身体も一部消し飛んでいるだろうから、すぐには来ないだろう。


 全員魔力に余裕はなく、イオネとアギエルの懸念通り日本に行くまで悪魔化(デーヴィス)天使化(エーゼル)は持たない。潜水艇を持ってきて正解だったな――とイオネは思いながらも、全員を呼ぼうとする。


 しかし、既にアギエルが呼んでいたようだ。イオネは先に潜水艇に行き、発進させるための準備をしようとする――が。


「障壁!? ……まさか」


 全員が、来た道を振り返る。


 そこには――――。


「随分足掻いたではないか。……だが、ここで終わりにしてやろう」


 ――――ドルナイト、イマジュアの姿があった。その他、壮年の騎士と少年の騎士以外の全騎士が集結している。


 来る可能性はあった。しかし、ここまで来たら、誰もが来ないと思ってしまうだろう。しかし――来てしまった。


(どうする? どう対処する?)


 イオネは、必死に頭を回す。アギエルも、この状況をどう切り抜けるか考えている。しかし、浮かぶ事は無い。


 そうしているうちに、いつの間にか眼鏡の騎士が壮年の騎士と少年の騎士の傷を回復させたようだ。これで、神衛騎士団(ゴッドクルセイダース)は全員揃った。こちらも、全員揃っている。人数差こそ逆転していないが、実力差は完全に逆転した。


 それに加えて、人数差もそれほどあるわけではない。こちら側が凜と來貴を含め十四人、向こうがドルナイトとイマジュアを含めて十一人だ。


 ――だが、戦うしかない。そうして、先の見えない戦いは始まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――ドルナイトが放った白黒の波動が向かってきた者たちを襲い、身体の大部分を損傷させる。イマジュアの拳が周囲を薙ぎ、有象無象を蹴散らす。


 金髪の騎士が放った金の槍を、イオネが受け止める。だが勢いは殺しきれないようで、そのまま勢いよく下がっていく。その後十字に爆発し、イオネの姿は黒煙の中に消えた。


 しかし、イオネはそれ程では死なない。黒煙の中から飛び出し、金髪の騎士に急接近。そのまま魔力刃による斬撃を浴びせるが、傷は浅かった。


 少女の騎士が持つ花の剣による斬撃を、アギエルは魔力刃で捌く。単純な剣術では少女の騎士が上回っているため、アギエルの身体には切り傷が多くなっている。距離を取っても、花弁と蔓が襲ってくるため、技を放つ隙があまりない。


 ――そして"彼女"は仮面の騎士による斬撃を、炎の剣で防いでいた。しかし、長時間の戦闘による疲労で、何度も攻撃を食らっている。


 白衣の騎士は、來貴への妨害を妨害してきた男性の天使を相手にしている。こちらは、障壁に翻弄されてうまく戦えていない。加えて消耗もあるため、一方的に攻撃を食らっているのみだった。


 ――残る壮年の騎士・少年の騎士・眼鏡の騎士・青年の騎士・美麗の騎士は、全員で來貴たちを相手にしていた。


 近くにいた女性の天使は、美麗の騎士の幻惑により來貴と離されていた。そして來貴は、次々と来る斬撃や音波や雷撃や爆発を躱し続けている。反撃の暇などなく、段々と息が上がっていっている。


(來くん……)


 凜も、この場がどれほど過酷かわかっている。だが、來貴の無事を祈らずにはいられなかった。


 そして遂に、來貴の翼を少年の騎士の剣が切り裂く。すぐさま黒を放って距離を取るも、その先には青年の騎士がいた。右左と放たれた拳を躱し、空中へと逃げながら翼を再生する。


 ――そんな中、女性の天使が美麗の騎士の幻惑を突破した。そして不意を突く形で來貴たちをかこっていた騎士たちを蹴散らし、來貴にまだ動けるかと聞く。來貴は動けると答えたものの、いつ倒れてもおかしくは無い程消耗している。


 來貴は、どうすれば生きて帰れるかを考えていた。だが、浮かばなかった。力の差という事実は、簡易で絶対だったのだから。


『――変われ、來貴。抱えている女を隣の奴に預けろ。……オレが出る』


 ルシファーの声が、來貴の脳内に響く。


(……わかった)


 來貴が簡単に頷いたのは、この時が「一時的に身体を預ける」時だと考えているから。そして凜を預けるように言ったのは、はっきり言って邪魔だったからだろう。


「あの、凜姉を預かっていてくれませんか?」


 來貴は女性の天使に言う。


「なんで急に……わかった、そうしよう」


 その人は最初戸惑ったが、來貴の目を見て預かることを決めた。そして、來貴の手から女性の天使の手に凜が抱えられる。空中での移動に、凜は落ちないかヒヤヒヤしていたようだ。


 ――來貴の意識は、眠るように落ちる。その代わりに、ルシファーの意識が現れた。


「あれ、君が本気で戦うの?」


 その直後、少年の騎士が剣を振り上げながら接近。独り言を呟きながら、來貴に剣を振り下ろした。


 ――だが、それはルシファーに当たる事は無い。躱したと同時に拳を叩き込まれ、地面へと派手に激突した。


 その後流れるように青年の騎士を魔力刃で切り裂き、眼鏡の騎士を魔力の槍を投げつけ近くの木に拘束する。壮年の騎士は最初ルシファーの拳を躱したが、その後に放たれた蹴りは躱せず頭を吹き飛ばされる。そして、墜落した。


「久しぶりに現世で戦ったが……本当の身体でないとはいえ、衰えたか?」


 原初の悪魔(オリジン・デーモン)、『傲慢』のルシファー降臨。

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