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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第六章 逢魔之戦禍編
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117話「曇天を差す光」

 一方、白衣の騎士が去った後のマサハスたちの戦況。結論から言うと、先ほどよりは戦えるようになった――それだけであった。


 騎士側が二人、こちら側が三人。壮年の騎士がマサハス以外の二人を対等以上に相手どっており、マサハスは変わらず少年の騎士と一騎打ち。壮年の騎士は二人を相手にしていても余裕であり、マサハスに至っては何も戦況が変わっていない。


 しかし、全員負ける気はなかった。撤退するまで、騎士たちをここに留めようと必死に戦っている。


 戦わなければ、待つのは死。加えて、この者たちは望んでここにいる。投げ出すなんて選択肢は無い。


 ――マサハスは少年の騎士の斬撃を防ぎ、剣を弾く。そして剣を振り下ろし、少年の騎士へと斬りかかる。だが、そう簡単にはいかない。


 体勢を立て直した少年の騎士に躱され、後ろを取られる。そしてそのまま剣を振り下ろされたが、マサハスも寸でのところで躱した。マサハスは躱したのち、すぐさま少年の騎士を視界に捉える。


 視界に入った少年の騎士が剣に魔力を込め、振りぬこうとしている事を確認。マサハスも対抗するため、自身の剣に魔力を込める。そのまま横一閃の攻撃を防ぐように、斜めに斬り上げた。


 飛翔した魔力の斬撃がぶつかり合い、衝撃波となって周囲に影響を及ぼす。しかし、そんなものは気にせず戦うのが、この戦場にいる者たちだ。それは、マサハスと少年の騎士とて同じ。


 ――そして始まるは、剣の戦い。マサハスは少年の騎士の太刀筋をある程度見極められたようで、先ほどとは違い余裕があるように見える。


 しかし、少年の騎士の動きが激しくなったことで、認識に違いが生じ攻撃を食らってしまう。食らった際に感じた魔力の反応から、能力によるものだと推測。すぐさま能力を発動し、強制解除させる。


 動きが遅くなったため、追撃をかわしてカウンターを決めることができた。互いに傷が勝手に癒えながら、剣を振り続ける。


 未だ、戦いは続いている――。


 そして、壮年の騎士を相手どっている二人はというと。


(相手にならんな……そっちの小童も、苦戦している様子は見られん。処理次第、向こうの加勢に行こうか)


 赤子の手を捻るようにあしらわれており、放たれる攻撃からしぶとく生き残っている状態だった。壮年の騎士に傷は無く、疲労も感じ取れない。対して相手をしている二人は、傷こそ見えないものの魔力の大幅な消費と疲労の蓄積が見て取れる。


 傷を負っていないように見えるのは、悪魔化(デーヴィス)及び天使化(エーゼル)の力で傷が再生するからだ。それにより、魔力が切れない限り戦い続けられる。


 ――今は距離を取り、疲労を軽減しながら壮年の騎士の一挙一動を警戒していた。


 そうして数秒、壮年の騎士が動いた。右手から雷を出し、相手をしていた二人に向って放つ。雷はうねりながら二人の元へと迫る。二人は別方向に躱しながら距離を詰め、それぞれ左右から攻撃する。


 しかし、それは既に見抜かれていた。両腕に魔力の壁を展開し、正面から受け止める壮年の騎士。二人はその防御を突破しようと力を込めるが、壮年の騎士の護りが揺らぐことは無い。


 ――そして壮年の騎士は、両腕を振るう。地震を彷彿させるようなその衝撃に、二人は大きく吹き飛ばされる。止めを刺すように迫ってきた電光を躱し、それぞれ攻撃を放つ。


 壮年の騎士は動くこともせず、腕で受け止める。それにより爆発が生じ、黒煙が辺りを覆う。


 しかし、黒煙はすぐに晴れた。壮年の騎士が魔力を込め腕を振るい、攻撃と同時に風で煙を払ったからだ。


 二人は飛翔した魔力の衝撃を腕で防ぎつつ、どう攻略するか考える。それぞれ考えは違っているが、一つだけ共通点がある。


 ――壮年の騎士を、山のようだと思っている点だ。


 踏破は、難関か――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そして、"彼女"らと仮面の騎士たちの戦場。


 こちら側が七人、騎士側が四人。人数こそ上回っているが、個人の実力は騎士たちの方が上。人数差により覆せる程度であったが、疲労によりその実力の差が顕著になった。


 魔力量の差で、時間が経てばたつほど消耗していく。今もかなり時間が経ったが、まだ持つだろう。騎士たちの方が実力は上だが、彼女らの実力が劣っているわけでもない。魔力量に差があるとはいいつつも、常人の数百倍以上はある。


 そうも簡単に、負けるはずがない。


 ――"彼女"が炎の剣を作り、仮面の騎士に振るう。対して太刀で防ごうとしたが、剣先の炎が三つに分かれ仮面の騎士へと迫る。


 仮面の騎士はそれを視認はできたが、躱す行動に移すことは遅れた。仮面に、剣先の炎が掠りそうになる。当たれば、割れるのは間違いないだろう。


 当たる――という前に、青年の騎士が炎を打ち消した。同時に雷を放ち、彼女に距離を取らせる。


「……助かった」

「珍しいですね、あなたがそんなことを言うなんて」


 グチグチ言い合いながら、相手の位置を確認して溜息をつく騎士たち。人数差と、しぶとさが面倒なのだ。


 命令で相手をしているとはいえ、これは少し億劫になる。ただ、投げ出すことは絶対にしないが。


 仮面の位置を整え、仮面の騎士は太刀を振るう。その太刀筋に、想いを込めて。


 ――彼女は炎を鳥の形で複数飛翔させ、軌道を複雑にして仮面の騎士へと向かわせる。仮面の騎士は鳥を躱しながら、一羽一羽を斬り落とす。しかし、それは最後の一羽で止まった。


 最後の一羽が竜巻へと変貌し、仮面の騎士を飲み込まんとする。だが、仮面の騎士はその竜巻から簡単に抜け出した。そして、一回転して魔力を乗せた斬撃を放つ。


 対して彼女は、激しく燃え盛る炎の剣を振るう。数秒の時間を経て、その二つは衝突する。数秒間激しい均衡を見せるが、炎の剣が制した。威力こそ少し落ちたものの、火力を維持したまま仮面の騎士へ迫る。


 仮面の騎士は身体を逸らし、炎の斬撃を躱した。しかし、命中しなかったわけではない。騎士の左肩を切り裂き、深い傷を負わせる。血こそ出ているが、痛みを感じている様子は無い。すぐ直るからだろう。


 ――追い詰めるため、彼女は再生する暇も与えず接近して炎を放つ。仮面の騎士は後退しながら炎を裂き、放出が終わったタイミングで太刀を振る。魔力の斬撃が飛翔し、接近していた彼女は躱すのが遅くなってしまう。


 首と顔に大きな傷を負い、治るまで炎の散弾を打って牽制するしかできなくなる。


 ――そして互いに傷が治ったタイミングで、再び接近した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――少女の騎士と、相手をしている二人の戦場。


 こちら側が二人、騎士側が一人。人数差はあり、こちら側が有利だ。


(……弱すぎるね、あの子たち)


 少女の騎士が優勢であり、傷一つなく疲労もない。対して二人は、所々に多く傷があり、疲れているのがわかる。加えて魔力消費が多く、能力の発動さえ厳しくなるほど。


 撤退のために余力を残しておかなければならないため、それが厳しさを助長していた。


 ただ、この二人が最初から本気を出していたとしても、少女の騎士には勝てなかっただろう。この二人が弱いわけではなく、少女の騎士が強すぎるのだ。


 二人とて手を抜いているわけではないが、少女の騎士の圧倒的な強さに全ての策が通じていない。


 逃げられない程度に距離を取って防御に回り、撤退までの余力を残しつつ時間を稼ぐ。


 攻撃に回れば、防がれカウンターを食らってこちらがダメージを負う。いつまでもこれを続けていれば、先にくたばるのはこっちだ。故に、防御に回るしかなかった。


 ――少女の騎士が、無数の鋭利な花弁を召喚。そして、少し距離のある二人に向って放つ。花吹雪を彷彿とさせる攻撃だが、それとはまるで違って凶悪なものだ。


 音速を超える速度で無数の花弁が飛び、躱す事が難しい。加えて鋭利なため、当たれば致命傷になりえる。少女の騎士の"能力"で、花弁が燃えないようになっているため、燃やして処理することはできない。


 二人は別々に動いて躱しながら、花弁を魔力刃と風で集めて斬って処理した。


 少女の騎士は、薔薇を三つ召喚する。また花弁が来るのか……と身構えた二人だが、今度は違った。


 薔薇の蔓が伸び、幾つにも分裂して迫る。今度は花弁のように飛ばないし、斬ろうにも硬すぎる。飛んで躱し続けている所に、薔薇の花弁が舞う。舞うごとに分裂して増え続け、それは二人の逃げ場を奪う。


(これで終わりかなぁ……まぁ、楽しめた方かな)


 少女の騎士は心の中でそう呟いているが、油断などは一切していない。手を緩めることなく、二人を追い詰めている。


 ――まだ、戦禍は終わらない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――そして、レガリアでは。


 凜が穴に飛び込んだ後、力を解放したアギエルとイオネが、イマジュア・ドルナイト・金髪の騎士・白衣の騎士の四人を相手に奮闘していた。


 しかし、人数と実力の差から長くは続かないだろう。アギエルとイオネが戦えているように見えるのは、戦術のおかげだ。


 動く範囲を凜が飛び込んだ穴の周囲に限定し、そこから攻撃を捌いている。


 ――金髪の騎士が、無数の矢を放つ。アギエルは竜巻を作り矢を巻き込む。そしてその中で切り刻み、防ぐ。白衣の騎士が障壁を展開し、アギエルとイオネの移動を妨害。


 ドルナイトがそこに白黒の魔力を叩きこもうとするが、アギエルとイオネが障壁を吹き飛ばして回避した。


 アギエルとイオネが穴から離れたが、すぐさま持ち場に戻る。金髪の騎士がイオネに接近し、金色の剣を作って斬りかかった。イオネは逃げず、正面から打ち合う。自身の相手であるイマジュアも意識しながら、先に進ませないように金髪の騎士の剣を弾いた。


 大きく怯んだところに、横一閃を放つ。しかし、イマジュアが庇ったため命中せず。そのまま後ろに下がり、イオネの出方をうかがった。


 イオネは怯むことなく接近し、金髪の騎士とイマジュアを巻き込む一閃を放つ。しかし、二人は飛んで回避した。そして上から金髪の騎士が接近し、剣を振り下ろす。イマジュアは、上から魔力の弾丸を撃った。


 イオネは弾丸を回避しながら、金髪の騎士と剣戟を振るう。あの弾丸は金髪の騎士には命中しない軌道となっていて、イマジュアの技量の高さを思わせる。


 それを感じたイオネは、厄介だと思った。故に、引くことはできない。


(結月來貴……"傲慢"の次期保有者。お前が戦うことになるであろう相手が、どれほど強大なのか知ってもらわなければならない。――我が今、戦っている相手をな)


 イオネは、フッと笑った。


 ――ドルナイトと白衣の騎士を視界に抑えながら、アギエルは思案する。


 どうするか……下手に突っ込めば、負けるのはこちら。そうなれば、すぐに突破されて凜が追われてしまう。誰を行かせても、凜が勝てる未来は無い。覚醒している者と、覚醒していない者。神と神でない者。


 その差は、絶対だ。


 しかしその前に結月來貴が解放されれば、來貴自身が戦闘して凜を守れるだろう。最低でも、それまでは行かせてはならない。


(頑張らないとね。凜が、勇気と結果を示したのだから)


 アギエルは自分を奮起させ、向かってきたドルナイトに拳を放った。対するドルナイトも、白黒の魔力を込めた拳で対抗する。


 拳と拳がぶつかり合い、衝撃波が生じる。それを気にせず、アギエルとドルナイトは力を込め続ける。


 ドルナイトの力の喪失から、アギエルが押している――と思われたが、だんだんとドルナイトが押し始めた。白黒の魔力は、アギエルと相性が悪い。それによって力が弱まり、ドルナイトが優勢となっているのだ。


 アギエルは拳から力を抜き、身体を逸らす。ドルナイトは勢い余って前へとのけぞり、隙をさらす。瞬時にアギエルはドルナイトの上を取り、拳を振り落とそうとする。


 しかし、後ろから攻撃を感じた。瞬時に更に飛び上がり、攻撃とその方向を見る。その正体は、白衣の騎士が放った氷の槍。


 まずは白衣の騎士から抑えるか……と身構えたところで、白衣の騎士が言う。


「今です! ドルナイト様!」


 ドルナイトは、すぐさま凜が入った穴に向かう。イオネはすぐに食い止めようとしたが、金髪の騎士に妨害され向かえない。


 ――結果、ドルナイトが穴の中に入ってしまった。


(クソ、行かれたか……)


 ――これまで経った時間は、四十五秒であった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――凜が穴に入ってから、十七秒。もうすぐで地面に着地するため、魔力を使って減速する。


 無事に着地した。そこから周りを走り回って探索し、急いで來貴を探す。青白い壁と道をたどり、探す。この近くに、來貴がいると分かっているから。しかし、それに夢中になることは無い。見えないだけで、アルヴァダ兵がいるかもしれない。


 その可能性を考えているため、声を上げず魔力を辿る。


 ――凜が穴に入ってから、三十秒。周りに誰もいないことが判明したため、声を上げてみることにした。


「來くん、助けに来たよ! いるなら返事して!」


 その声はあたりに木霊するが、返事は無い。魔力の反応はこの辺り。しかし、いない……何故だろうか。そう考えていた凜だが、答えは向こうから帰ってきた。


 ドン――ドン――という音が聞こえる。まるで、何かを殴っているような音。


 凜の近くにあった壁に罅が入り、その向こう側に誰かがいる事が推測できた。敵兵かもしれないのに、凜はひどく冷静だった。


 三秒ほどその音は響き、一瞬音がしなくなったと思ったら、ドガンと今までで一番大きな音がした。それと同時に、凜の両脇にある壁の音がした方の壁が、音を立てて崩れた。そして積み重なった残骸を踏み、誰かが姿を現した。


 凜がそちらへと視線を向けると――。


「來くん!」


 ――來貴が、そこに立っていた。

七月はこれで最後です。

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