表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第六章 逢魔之戦禍編
120/234

112話「嵐の前の静けさ」

 ――凜は、いつも通り学校に行っていた。もともとこの日は学校のある日であり、作戦の日は明日だ。凜は気休めをする感覚で通学している。そして明日は幸い土曜日であるため、不思議に思われることなく行くことができる。


 張り詰めた気持ちを抑えながら、凜は校舎の中へと入った。そして教室へ行き、いつも通りに過ごそうとした。しかし、いつもよりも周りがザワザワしているのを感じる。


 何故だろう……と思いながら過ごしていると、百々海が話しかけてきた。


「ねぇ、凜……イメチェンしたの?」

「あっ……」


 そう言えばそうだった。百々海に言われて気付いたが、今の凜は髪色が白黒になっている。若干白のほうが割合が高くなっているが、白と白の間に黒が見えてとても目立っていた。


 今後の事にとらわれていて、百々海に言われるまで気付かなかったのだ。


 さて、どうするか……本当のことを言うわけにはいかないため、凜は言い訳を考える。もし本当のことを知ってしまえば、頭の心配をされるかと思ったからだ。


 能力という存在はあるが、天使なんて存在は皆信じていない。神話上の存在だとしか、思ってないからだ。


 変な言い訳をしてもダメなので、百々海の言ったイメチェンということを通すことにした。


「うん……そんな感じ」


 少し苦笑いしながら、凜は言う。その反応に、周りの騒めきは強くなる。


 曰く、"似合ってる"だとか、"白一色に染めたほうがいい"だとか、"前のほうがいい"だとか。様々な意見が交わされている。そしてそこから更に白熱するが、凜と百々海は気にせず話をした。


 ――やがて時間が経ち、一限目が始まった。


 一限目は軍事学。前回の復習から始まり、やり損ねたところをやるようだ。その部分を凜は既に復習していたが、凜は真面目に授業を受けていた。


 そうして一限目が終わり、休み時間。次の授業が移動教室なため、凜は百々海と移動している。その途中に、百々海が凜にあることを聞いた。


「そういえば、凜……なんで、髪染めたの? 似合ってないことは無いけど、急だよね」


 確かにそうだ。何の前触れもなく、凜の見た目――というか髪の色が変わった。その唐突の行動には、何か理由があるはず。そう思って、百々海は聞いたのだろう。実際、凜の姿を見た何人もの生徒がそう思っている。


 凜は考え込む動作を見せ、数秒経ってから答えた。


 その間に考えていたのは、どういう理由をつけようかということ。凜の髪が白に変わろうとしているのは、天使へと変貌する過程で必要なことである。故に、止めることなんてできないし止められない。


 それに、百々海たちからは「染めた」と見えるのだろう。実際は染めてなんかいないのだが、そんなことを言えば百々海の頭にハテナマークが浮かぶだろう。変なことを言っても、整合性が無く不審がられる。


 最近の出来事をきっかけに、何か理由を作れないだろうか――。


 だから凜は、これを理由にした。


「――ちょっと、意識を変えたかったんだ。最近、いろいろなことがあったから」

「……そっか」


 百々海は、深くは聞かなかった。それが本当の理由ではないことを、知ってか知らずか。ただ単に、少し儚げな表情を垣間見せた凜を気遣っての事か。


 どちらにせよ、その対応に凜は心の中で感謝した。


 ――いつの間にか、凜と水月は足が止まっていた。


「行こ、水月。授業に遅れる」

「……うん」


 そして、凜と水月は教室についた。二人がついたのは、最後だった。


 ――そうして二限目が終わり、三限目。再び移動なため、教室は少し慌ただしくなっている。三限目と四限目は身体を動かすため、皆己の武器を持っていく。


 それは、凜と水月も例外ではなかった。凜は刀――蒼白(そうはく)を、水月は拳銃を持って第三戦闘場へと向かった。


 途中、凜と水月はいつものように雑談に花を咲かせていた。雑談をしながら戦闘場へ向って五分、第三戦闘場へ到着した。


 ――そして列に並んだところで休み時間が終わり、三限目が始まった。


 号令と一通りの説明を終え、それぞれの戦闘訓練が始まる。凜はもちろん、百々海とだ。


 ――始めに、凜が動く。足を振り上げ、かかと落しで水月の肩を狙う。水月は影に入って蹴りを回避し、凜の影に出る。同時に右手を振り、拳銃で凜の頭を狙う。しかし、凜に右手をつかまれて阻まれる。


 水月はなんとか振りほどこうとするが、振りほどけない。そのまま凜は、魔力を纏って左拳を放った。


「……!」


 凜にとっては、なんてことない速度だった。しかし、水月にとっては、死を感じた威力と速度であった。


 身体を捻ってなんとか躱した水月は、掴まれた腕を引き凜の肘を蹴った。そして拘束が緩んだ隙に脱出し、影に乗る。乗った勢いで後ろに後退し、三発、発砲する。


バンッ! バンッ! バンッ!


 乾いた発砲音が鳴り響き、凜の眼前へ銃弾が迫る。凜は抜刀し、迫りくる銃弾を叩き斬った。水月はその行動に冷や汗を掻きつつ、更に六発発砲する。そして、同時に影を操り死角から影の手を伸ばす。


 凜は再び叩き斬ろうとしたが、直前で迫る影に気付く。同時に空中へ跳び、魔力を使って空を駆ける。空中を走りながら刀に魔力を纏わせ、空中で体勢を変えながら銃弾と影を叩き斬った。


 水月の驚いた様子を尻目に、凜は魔力刃を放つ。その色は蒼ではなく、白と言っても差し支えなかった。


 高速で迫る魔力刃を、水月はなんとか躱した。


 しかし、避けた先には――。


「……降参よ、今のでもう私は死んだわ」


 ――凜が、刀を構えて待っていた。至近距離で、凜の攻撃を躱すことが不可能だと判断した水月は降参をした。


 それを聞き入れ、凜は蒼白を仕舞う。そのタイミングを見計らって、水月は凜に話しかけた。


「凜、あなた……いつもより強くなかった? それに、魔力色も変わってるし」


 水月の質問に、凜は焦った。天使の力の影響は、外見だけではない。強さ――身体能力や魔力色など、それらも変貌している。


 それは最早昔から一緒にいる水月には、見ただけで判別されるほどだ。


 とりあえず凜は、授業中という言い訳を武器に水月に返答する。


「水月、今は授業中だよ……私語はダメだって」


 凜はそう言ったが、水月は聞く耳を持たなかった。


「少しなら大丈夫よ。……何かあったの、凜」


 凜は周りからのイメージ通り、真面目だ。しかし水月は、少し悪い面を持っている。表向きは優等生を装っているが、実際は授業中に私語を割と多くしていた。周りにはばれていないものの、凜にはしっかりバレている。ただし、凜も少し毒されてはいるが。


 ――そして凜は、水月の言葉には答えない。素直に答えることが、できなかったから。この事は、口外するなとアギエルから言われている。


 何も答えなかった凜に、水月は咎めることはしない。ただ、独り言を呟くように話すだけだった。


「私、思ったことあるんだけど」


 ――何故だろうか……凜は、妙な悪寒を感じた。そんな凜の様子も知らず、水月は話し続ける。


「髪色と魔力色の変化、身体能力の向上――まるで、あの時の來貴君みたい」

「……!」


 水月が独り言のように語った憶測のようなものは、ほぼ合っていると言ってもいい。來貴と同じような現象が、今凜の身体に起きている。悪魔と天使という違いはあるが、教えられなければわからないようなことを考慮しなければ、水月は正解にたどり着いていた。


 故に、凜は焦った。問い詰められるのではないか……と。そうなれば、凜は言い訳が難しくなる。他に言い訳する材料がないからだ。これは突然なものであり、平日と平日の間に起こったものである。


 何かした……というには、時間が足りないしその"何か"を問いつめられるだろう。


 凜が回答に困っていると、水月が構えをとった。


「……いいわ。答えられないんでしょう? なら、授業の続きをしましょう」

「……そうね」


 ――それから凜と水月は、いつも通り戦闘の授業を続けた。


 ――そうして三限目が終わり、休み時間。四限目は適正訓練。凜と水月は別の適正であるため、ここで別れた。


 そして数分後、四限目が始まった。


 適正訓練において、やることはシンプル。適正武器の修練だ。この授業と合同訓練のみ、他のクラスと合同で行われる。


 凜は在淵と訓練をし、お互いの指導し合っていた。だが、ここで在淵に言われたことが頭に残っていた。


「前より強くなったか? いつもならば、俺が負けることは無かった」


 在淵の方が凜より強いため、この組み合わせになるときは主に在淵から凜への指導となっている。しかし、今回は逆に凜が負けなかった。昨日も適正訓練があり、同じ組み合わせでやったが、凜が勝つことは無かった。


 たった一日でこれほどまでの変化に、表情に出していないが在淵は驚いているのだ。


「コツを掴んだんだよ。それで強くなったの」


 とりあえず言い訳をしたが、明らかに信じていない様子が見て取られる。コツを掴んだ程度で、自分が抜かされるとは思っていないからだろう。実際そうであるのが、少し凜は悔しいところだが。


「……まぁそういうことにしておこう」


 なんとか誤魔化せたようだ。この場合は、見逃してもらったというべきなのだろうか。どちらにせよ、凜は助かった。


 ――そうして、授業が終わった。それから学校での用事を終わらせ、家へと帰ってきた凜。


 部屋へと行き、服を着替える。そして肩の荷が下りた後、凜がベッドにぐったりと倒れこんだ。その体勢のまま、凜は考え込む。


(アギエルさんにバレないようにって言われてたのに……確実に怪しまれてるよ)


 次に会った時、どう対処しようかを考える凜。だがそれは、途中で途切れることとなった。


「――失礼する」


 凛とした声が聞こえ、凜は声が聞こえた方を向く。そこには、素足で立っているアギエルがいた。


「アギエルさん……?」


 何故そこにいるのか、いつ入ってきたのか。凜には、疑問がたくさんあった。


 その疑問を吐き出せないままでいると、アギエルが凜に話しかけた。


「今回は、前に言っていた結月來貴奪還作戦に君を加えるかどうかを伝えに来た。結論が出たからな。まぁ、先に言おう。君を連れていくことになった」

「……え?」


 凜はその結果を、ルートの一つとして予想していた。作戦に加入する……ということ自体は予想していたが、こうもあっさり加入できるとは思っていなかったのだ。


 何度かアギエルに頼み込む覚悟はしていたが、それは無用に終わった。何故あっさり採用したのか、期待しないで待っていろという言葉は嘘だったのか、そういう考えが凜の中に溢れた。


 ――そしていざ質問しようとしたところで、アギエルが口を開く。


「君を加入させる決め手となったのは……君の中にいる存在だ。ミカエル様が、君の中におられるだろう?」


 その呼びかけに、ミカエルは部屋にいる全員に聞こえるように言った。


『その声は……アギエルか。久しいな』


 突如聞こえたミカエルの声に、アギエルは驚きながらも返事をする。


「お久しぶりです……つきましては、あなたにも聞いてほしいのですが」


 ミカエルは『聞こう』とだけ言い、発言を止めた。それと凜が聞いているのを確認し、話し始めた。


「今回凜を加入させたのは、ミカエル様が宿っているからだ。ミカエル様の力が役に立つのが間違いないと判断したのと、ミカエル様に認められるほどの凜を連れて行かないのは惜しいと思ってな」


 アギエルが言ったことを纏めると、ミカエルの力と彼女に認められるほどであるため、凜を連れていく。


 ――それはつまり、凜は期待されているということ。言外にそういわれ、凜の鼓動は少し早くなる。正直に言って、凜にミカエルの力は使えない。ミカエルが力の使用の許可を出していないからだ。


 凜にミカエルの能力の使用はできるだろう。しかし、それがかつてのミカエルに匹敵するかと言われれば、否だと言わざるを得ない。……ただそれでも、アギエルたちは凜を連れていく判断をした。


 故に、緊張が押し寄せてきたのだ。


 そんな凜の様子を見てか、アギエルが凜の肩に手を置く。


「……それほど気負わなくてもよい。この作戦は、リスクとリターンを承知の上で実行するものだ。何が起きても、誰かのせいということにはならんよ」


 アギエルの言葉を聞き、凜は静かに「はい」と答えた。アギエルは凜に向って笑みを浮かべながら、別れの言葉を告げる。


「それではまたな。……早朝5時頃、作戦へ行く準備をして適当に外を歩き回ってもらえるか。私が直接迎えに行く」


 そう告げて、アギエルは何処かへ消えた。その様子を凜は見逃さなかったが、どのような原理で部屋に入って出て行っているのか全然わからなかった。


 ――凜は、明日のための準備を始めた。ミカエルは、何も言わず今後を危惧していた。


忙しくなるため、投稿が遅れる可能性があります。すみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ