12話「不穏な気配」
「……学校、ダルいな」
今日も今日とて学校なのだ。今日は金曜日なので頑張りたいところだ。今日を乗り越えたら、二日間の休日がやってくる。だから、頑張って授業を受けよう。全部わかるから退屈だけど。
とりあえず、起床したのでリビングへ行こう。
俺はベッドから降りて、部屋を出る。そして一階へ行く。
「あ、お兄ちゃん。おはよう」
「……おはよう、琉愛」
俺より先に起きていた琉愛が、ソファにいた。凜姉も、朝食を作っているようだった。というか、俺が一番起きるの遅いな。いつものことだが、たまには早く起きれないのか、俺は。
その後、凜姉が朝食を完成させたので、三人で朝食を食べる。俺は数分で食べ終わり、学校に行く準備をする。今日は金曜日なので、一日耐えれば休みだ。さっさと準備をして行こう。
そして、俺は学校へ行く準備をして学校へ行く。玄関を出て、俺は一つ感じた。
(……なんか、嫌な予感がしたんだが……気のせいか?)
俺は、学校へ行く途中に嫌な予感を感じ取っていた。勘というのは、馬鹿にならない。大体、俺の勘は外れたことが無い。
……今日は、何も起こらなければいいんだがな。
感じた予感を頭の隅に入れつつ、学校へと足を進める。……本当に、何も起こらなければいいんだけどな。
そして、俺は学校についた。今日は、実戦訓練がある。昨日も実戦訓練があったので、若干面倒だと思っている俺がいる。
教室のドアを開けても、誰も居ない。俺はいつも朝早くに登校しているので、今の教室には俺以外誰も居ない。登校したらいつも寝ているが、嫌な予感がしたと言うこともあり、俺は自分の席で窓の外を見ていた。
「おはようございます、來貴君。今日は珍しく起きているんですね」
「……文奈か。おはよう」
教室のドアが開き、文奈が中に入ってくる。どうやら、文奈は一人で来たようだ。もうすぐで黎が来るか? とりあえず、待ってみよう。
「來貴君、いつも寝ているのになんで今日は寝ていないんですか?」
「あぁ……ちょっと、嫌な予感がな」
「嫌な予感……ですか?」
文奈は、自分の席である俺の隣に座る。そして、心配そうな声音で俺に問う。
「……ああ。俺の勘は大体当たるからな」
「……そうですか」
俺がそう言うと、文奈は自分の席で本を読み始めた。というか、今思ったけど本を読む奴多くないか?このクラスの約9割は本を読んでいるぞ。文奈も黎も9割の方に入るしな……俺は1割の方だけど。
いつもなら寝ているが、嫌な予感がいつ的中するかわからないし、眠れない。警戒するが、いつ来るかわからないからな。
「おはよう、來貴、文奈。……え!? 來貴が起きてる!?」
「……おい」
黎が言ったことは聞こえていたので、俺はちょっとだけイラッときた。まぁ、それは口に出さないけど。とりあえず、黎は後で引っぱたくとして警戒を続けよう。
「……來貴、そんなに周りを警戒してどうしたの?」
「來貴君曰く、嫌な予感がしたみたいです」
俺の代わりに、文奈が答えてくれた。このまま、文奈が俺の応えを代弁してくれたら大分楽なんだけど。集中力を阻害されないし。
「そうなんだ……というか、そんなに警戒する必要なくない?」
「……勘は大体当たるらしいです。だから警戒しているらしいです」
「……そうなんだ」
最後まで、文奈が代弁してくれた。文奈の言葉を聞いた黎は、自分の席で本を読み始めた。……1年1組は、本当に本を読む奴が多いな。俺は数十秒で読み終われるし文も全部一言一句違わず覚えられるから、そんなに本は読まないな。読み尽くした感もあるし。……あ、そうだ。
「……文奈、その本貸してくれ」
「え!? ちょっと來貴君!?」
急に読んでいた本を取り上げられたことにより、文奈は戸惑う。そんな文奈を横目で一瞥し、本を読み始める。パラパラめくり、数十秒で読み終わる。内容は……面白かったとだけ言っておく。
俺が何故文奈の本を取り上げたかの理由を言う。単純に、文奈がどんな本を読んでいるのかが気になったのと、昨日の仕返しだ。
「……私が読んでたんですけど」
文奈は、俺をジト目で睨みながら、本を取り返そうとしている。その文奈の手を躱しながら、こう言う。
「……あ~、悪かった。返すから」
「と言っても、途中で読んでたんですけど」
「大丈夫だ。文奈が読んでいたページは覚えている」
「……ならいいんですけど」
そう言って、俺は文奈が俺に本を取り上げられる前に読んでいたページを開く。ちなみに、そのページは44ページだ。文奈の本を読む速度は結構遅い。それこそ、黎よりも遅い。嫌な予感を警戒している間、ちらりと文奈と黎の本を読む速度を見ていたからな。
……というか、さっきのやり取りを見ていたクラスメイトからの視線が痛い。いつの間にか、クラスメイトはほぼ全員来ていたので、さっき俺が文奈の本を取り上げたところはほぼ全員が見ていた。
文奈は10人中10人が美少女だという容姿をしているので、その美少女の席の隣なのと、それなりに仲がいい。そしてその美少女の本を強引に取った。それがこの視線の理由なのだろう。まぁ、俺にとってはそんなの知ったこっちゃいけど。
それを見かねてか、黎が本を閉じてこっちに来た。その表情は、呆れたような表情だった。
「……朝から何イチャイチャしてるのさ、二人とも」
「い、イチャイチャなんてしてませんっ!」
そう言ったこと文奈の顔は、少し赤くなっていた。……なんで文奈は顔を赤くしているんだ?というか、文奈が顔を赤くした様子を見て、男子は俺を射殺すような視線を俺に向けているのだが。別にどうとでも無いけど、ウザい。女子は、ほっこりしている視線が大半で、一部は興味ないとこちらを向いていない。
「……なぁ、黎。なんで文奈は顔を赤くしているんだ?」
「……はぁ」
「おい……答えてくれよ」
俺の問いに、黎は溜息を漏らすだけで答えてはくれなかった。
「……來貴、それはないよ」
「それはないよって、なんだよ」
「……もういいや」
最後にそう言って、黎は自分の席へ戻っていった。というか、まだ周囲からの痛い視線が俺を突き刺すのだが。鬱陶しいから止めてくれないかな。
その後、HRをするために刀華先生が教室に入って来た。HRは、特に連絡事項は無くすぐ終わった。いつもの如くHRが終わったらすぐに教室を出て行った。
そして、HR後の休憩時間が終わり一限目が始まる。
今日の授業は、五限目に実戦訓練がある以外普通の授業だ。……いや、二つだけ嘘をついた。一限目は武器学で、三限目は戦闘理論だ。
武器学とはなんぞやという人がいるかもしれないが、銃や刀などの部位や使い方や構え方などの授業だ。
戦闘理論についてもなんぞやという人がいるかもしれないが、そのまんまだ。戦闘でどうすればいい動きが出来るのかとかだ。後は……あらゆる状況での戦闘の対応とかだ。
一限目は、無事に終わった。俺が感じた嫌な予感というのも、もうちょっと後に的中するかもしれない。例えば……下校中、とか。登校中には的中しなかったので、まぁそれは良かったと思う。
「……來貴君、どうかしましたか?」
「……文奈か。……いや、何でも無い」
「ならいいんですが……」
一限目と二限目の間の休憩時間、若干黄昏れていた俺に文奈が話しかけて来た。まぁ、何でも無いのでそう返した。
その後二限目、三限目と四限目が終わり、今は昼休みだ。凜姉から渡された弁当はもう食べ終わった。五限目は実戦訓練。刀華先生が「五限目の実戦訓練は第一戦闘場で行います」と言っていたので、今から第一戦闘場へ行く。
また第一戦闘場かって思う人も居るかもしれないが、一年生は基本第一戦闘場だ。ちなみに、第二、第三の戦闘場もある。第二が二年生用で、第三が三年生用だ。基本はな。
「來貴君、早く第一戦闘場へ行きましょう」
「……そうだな」
そして、俺は文奈と一緒に第一戦闘場へ行った。
その後、第一戦闘場についた。第一戦闘場について数分位した後、チャイムが鳴り五限目が始まった。ちなみに、今日の実戦訓練は合同では無い。1年1組だけだ。
「今から、五限目の実戦訓練を始めます。來貴君、号令お願いします」
「……起立、気をつけ、礼」
「「「「「「お願いします」」」」」
「着席」
「「「「「「失礼します」」」」」
毎度の如く、俺が号令なのか。そう言えば、あの一週間号令の奴も今日までか。六限目の号令で俺の号令は見納めだな。まぁ、俺の号令に需要なんて無いだろうしな。
「今日の実戦訓練は、二人から四人のグループを組んで普通に戦います」
……またグループを組むのか。いい加減、グループを組めない人への配慮を考えてほしい。刀華先生には。まぁ、そんなことを言ってもどうしようも無いので、素直に従うけど。
「では、グループを組んでください」
そして、クラス中からグループが組まれ始めた。当然の如く、俺の方には誰も来な……いや、文奈と黎が来た。これは……救いが俺に来たというのだろうか。
「來貴は誰も居なさそうだから、僕が組んで上げるよ」
「私も、來貴君と組んで上げます」
「……なんだその上から目線は……」
まぁ、上から目線でいじられるのは結構やられているので、もうこの際気にしない。それより、グループを組められた。その事実が大事だ。刀華先生は、二人から四人のグループと言っていた。ということは、三人のグループでもいいということだ。
「全員組み終わりましたか? では、生徒同士で戦ってお互いを高め合ってください」
そう言って、刀華先生は見物をし始めた。各グループは、大体二人か四人のグループだ。三人のグループはここだけだ。ここ以外のグループ全てが、タイマンで戦っている。まぁ……俺が文奈と黎の二人を相手にすれば問題ないか。
「あの……どうします? ここは三人ですけど……」
「問題ない。俺が二人同時に相手をする」
「それ、大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない。俺は負けんよ」
俺がそう言うと、二人は少しムカッとしたのか、それを了承して作戦を立て始めた。まぁ、どんな作戦を立てようと俺に通じないと思うけど。
「……來貴君、行きますよ」
「御託はいい。さっさとかかってこい」
「……ッ!」
そして、文奈と黎は二人がかりで俺を倒しに来た。結構いい動きをしているが……それでは、俺には届かない。
ちょうど二人が接近してきたので、互いの攻撃を互いに食らわせた。
「わっ!?」
「きゃっ!?」
黎のスナイパーライフルでの突きは文奈の腹部に当たり、文奈の風の拳は風だけ黎の顔に当たった。
「……黎、お前はもうちょっと周りを見ろ。それは槍みたいなものだ。味方に当てないように気をつけろ。文奈、お前は能力の無駄が多い。それが減らせるようにしたらもっと能力が使えるようになる」
一応、さっきの攻撃で俺が気になった部分を改善できるようなアドバイスをしておいた。
「「…………」」
二人とも、一応心当たりはあるのだろう。顔をうつむかせていた。
その後、ずっと文奈と黎の二人を相手にしていた。だが、二人の攻撃が当たることは一度も無かった。そして、授業が終わるまで、俺は殆ど動いていなかった。二人の攻撃を捌ききれないときに上空に跳躍したことだけが大きな動きだった。
授業が終わったら二人とも汗だくで、呼吸も荒かった。二人はタオルで汗を拭いていたが、文奈の汗をかく様子をクラス中の約半数の男子が見ており、それを女子が耳を引っ張って連れて行っていた。というか、俺も思いっ切り見てたのに連れて行かれなかったな……。
そして今は、六限目の途中だ。六限目は、至って普通の理科だ。
「……來貴君のせいで汗をたくさんかきました」
「……悪かったって」
その授業を、俺は隣の席の住人である文奈にジト目で睨まれながら受けていた。しかも、文奈の甘い匂いがする。まぁ、汗の匂いも混じっているんだけどな。
その瞬間、隣から鋭い眼光が俺を貫いた。勿論、その正体は文奈。見なくてもわかる。
恐る恐る、隣を向いてみる。すると、文奈がこちらに少し席を寄せていた。
「……今何か変な事考えませんでしたか?」
「……いえ、何も」
咄嗟に誤魔化したが、多分これはバレていると思う。気持ちを切り替え、授業を真面目に受ける。
……というか、視線を感じる。文奈の視線では無い。これは、学校の外から感じる。俺は、学校の外を見る。
……そこには、口を三日月状にして微笑んでいる一人の女性がいた。なんとか見える距離にいるため、俺はその女性がいる方向を見る。
何か口パクをしているが、遠すぎて見えない。
「ッ!?」
思わず、俺は立ち上がる。一瞬、あの女性の視線が変わった。何か、試すような視線だ。俺は警戒し、その視線のお返しと言わんばかりに睨む。
「來貴君? どうかしましたか?」
刀華先生が、急に立ち上がった俺に対してそう聞く。
「……いえ、なんでもありません」
そう言って、俺は座る。周りからの視線が凄かったが、俺は気にしない。文奈からも視線があるが、気にしないことにする。
そして、六限目が終わった。
side ~???~
「あの子……持っているわね。あの子を試そうかしら……アレを持っているなら乗り越えられそうだしね」
私は、ビルの屋上から一人の少年を見下ろしていた。あの子なら……果たせるかもしれない。私達の宿願を。……それに、彼は上から貰った資料の少年と酷似している。……なら、試しましょう。果たせるかどうかを。
……とても、押しつけがましい事だけどね――――。
side out




