11話「合同実戦訓練・後編」
「いい加減にしてください!」
斬撃を飛ばし合っている途中、そんな声が辺りに響いた。
それと同時に、剣が俺の方に飛んで来た。白凪の方にも剣が飛んでいる。飛んで来た剣を躱す。だが、また剣が飛んでくる。今度は銃剣で弾いて距離を取る。白凪も、地面を隆起させて防いだようだ。
「……お前らなぁ、周りを破壊しすぎだ。最初はまだよかったが、最後のアレはダメだ。周りにも被害が及んだぞ。とりあえず、お前らは模擬戦禁止だ。そして説教だ。俺は鉤人を説教する。結月は、如月先生が説教をする」
……マジか。周りに被害が及んだのはどうでもいいが、説教は面倒すぎる。なんとか、回避できないものか。白凪の説教は伏見先生。俺の説教は刀華先生。さて、対策を考えよう。
そして、俺は第一戦闘場の時間を見る。どうやら、まだ15分しか経っていないようだった。後35分か……それまで暇だな……。というか、35分ずっと説教なのかな。それはダルいから嫌なんだけど。はぁ……面倒だ。
「來貴君、場所を変えます。第一戦闘場を出るので着いてきてください。あ、銃剣は仕舞ってください」
「鉤人。場所を変える。着いてこい。剣は仕舞え」
刀華先生の言うとおり、刃を解除しバッグの中に仕舞う。白凪も、剣を鞘の中に仕舞った。
そして、俺と白凪は第一戦闘場を出た。俺は刀華先生に連れ去られ、別の所へ行った。白凪は、まだ第一戦闘場の近くに居た。
「お前らは、引き続き模擬戦をしていてくれ!」
伏見先生の声が、俺の方に聞こえた。さて、これから説教か……。
「ここです、來貴君」
「あの、何処ですか?ここ」
俺が刀華先生に連れてこられた場所は、知らない場所だ。机が一つ、椅子が二つという、明らかに一対一での対談を目的とした場所だ。後は……周りに荷物が置かれている。これは、学校の在庫だろうか。
「生徒指導室です。生徒指導室は四つあるので、そのうちの一つを使用しました」
……この学校、生徒指導室四つもあるのかよ……中学では二つだけだったぞ。というか、俺は六限目が終わるまでずっとここで説教をされるのか?……はぁ、ダルいな……。
そして、刀華先生による説教が始まった。感想を一つ言うなら……いつもの端折りが消えて、とても耳が痛かった。後はなんか敬語が消えた。
「いい? 來貴君。模擬戦で熱くなるのは別に構わないけど、第一戦闘場を破壊するのは止めてね? ……ちゃんと聞いてる?」
「……聞いてますよ」
……長い。ここに入ってから、体感20分くらいこうやって説教されている。定期的にちゃんと聞いているか聞いてくるため、適当に返事をしている。というか、いつまで続くんだこの説教は。早く終わってくれ。
「白凪君と模擬戦して周りを破壊したから、修繕費が高いんだよ。地面を隆起させたの斬っちゃうからそこも修理しないと行けないし、それに……來貴君、魔力の斬撃で周囲が斬撃の痕だらけなんだけど。……もう、次からは気をつけてね?」
「……はい、わかりました」
他の生徒が刀華先生に説教されたら……怖いと感じるだろう。それほどの、威圧を放っている。だが、俺にとってはこれ位たいしたことでは無い。だから……その、なんだ。なんか……刀華先生は普通に可愛いから、可愛いって言う感情が先に出るんだよな……。まぁ、本人の前だから今は絶対に言えないけど。
そういや、白凪はどうしてるんだろう。伏見先生って、顔怖いから刀華先生と違って普通に怖いって言う感情が先に出るのだろうか。わからんけど。
「……これで説教は終わりです。第一戦闘場に戻りますよ。勿論、模擬戦は禁止です。ので、私の傍で皆の模擬戦を見ているだけです。わかりましたか?」
「……はい」
「では、戻りますよ」
そして、俺は刀華先生に連れられて第一戦闘場へ戻っていった。白凪がいるか周囲を見渡してみても、白凪はまだ伏見先生の説教中なのか居なかった。まぁ、伏見先生の説教は刀華先生とは違って怖そうだからな。
「……來貴君。今、何か失礼なことを考えていませんでしたか?」
「いえ、何も」
……刀華先生も、心が読めるのだろうか。それだとしたら、生徒指導室で考えたあのことも読まれているのだろうか。まぁ、あのときは殆ど表には出していないから大丈夫か。多分。
というか、座って見てるだけでは途轍もなく暇なんだが。刀華先生は後ろで俺の事を監視しているし、白凪はまだ居ないし……文奈と黎が何処に居るか探してみよう。能力で視力を強化もして探そう。この第一戦闘場は無駄に広いからな。
俺は能力を使い視力を強化する。そして、無駄に広い第一戦闘場を見回す。さて、文奈と黎は何処に居るのやら……。
探し始めて数分、文奈と黎を見つけた。二人とも、案外近くに居たので文奈を見つけたらすぐに黎を見つけられた。二人の様子でも解説しよう。
文奈は、ペアの女子と戦っているが、苦戦しているようすだ。ペアの女子は、両手に拳銃を持っていて、能力を使っている。その能力は、どうやら文奈の能力とは相性が良く、善戦しているようだ。
文奈は能力に頼り切っている傾向があるので、素の身体能力を上げたり、武器を使ったりしたらもうちょっと戦えると思う。感想はこんな感じだ。
黎は、スナイパーライフルを物理で使っていた。あのような使い方は見たことが無い。そして、ペアの男子相手に一方的な勝負をしている。スナイパーライフルで攻撃を防ぎ、スナイパーライフルの銃口を腹部にぶち当てついでに発砲……中々にヤベぇ攻撃だな。
黎は、スナイパーライフルを巧みに扱っている。だが、蹴りなどの体術を組み合わせたらもっと良くなると思う。感想はこんな感じだ。
「……はぁ、酷い目に遭った」
「お、帰ってきたか」
白凪が帰ってきた。白凪は、俺の隣に座る。その顔は、凄くげんなりしていた。
「……何があったんだ?」
「……修哉先生の説教はヤベぇ。あれはもう二度と受けたくねぇ」
「……そうか」
近くに伏見先生がいるのに、よくこんなことが言えるなと最初に思った俺だった。伏見先生の方を見てみると、笑顔だったが目が笑っていなかった。恐らく聞こえていたのだろう。これは……白凪は後で伏見先生に連れて行かれそうだ。
「……結月、お前はどうだったんだよ。如月先生の説教」
「俺は別に……なんともねぇよ。別に怖いとかもないし」
小さな声で言ったので、聞こえていないと思う。多分。刀華先生の方を見てみると……聞こえていたようだ。笑顔だが目が笑っていない。こりゃあ俺も連れて行かれるか?まぁ、怖くないし戦っても勝てると思うからなんとかなるか。
というか、早く終わんねえかな、六限目。暇で暇で仕方ないんだけど。文奈と黎の観察も飽きてきたし、なんだか眠くなってきた。これは白凪との模擬戦の影響だろうか。無駄に魔力を使ったせいかもな。
「……暇だ。眠い」
「……それな」
思わず暇なことと眠いことを呟いてしまったが、それを聞いていた白凪が共感してくれた。やっぱり、白凪も暇で眠いのか。
……寝ようかな。六限目は後10分位あるし、寝る前に視力の強化を解除するか。俺は、視力の強化を解除する。暇だなぁ……眠いなぁ……でも、寝たらバレるよなぁ……そして再び説教だよな……それは面倒だし……耐えるか。今はもう六限目だし、帰ったら寝られる。
「……結月、お前の能力ってなんなんだ?」
「……どうした急に」
「いやさ、気になったから」
俺の能力、か。本当のことは言えないからとりあえず嘘の能力を言うか。
「俺の能力は、覇壊の轟き。脳のリミッターを解除する能力だ」
「そうか……俺は、物質支配。物質を支配する能力だ」
白凪は、俺が聞いてもいないのに能力を言ってくれた。まぁ、聞くつもりではあったが、まさか自分から言うとは思ってもいなかった。というか、能力チートだな……これは使えそうだ。脳内に記憶しておこう。
キーンコーンカーンコーン
そうしている内に、チャイムが鳴った。やっと六限目が終わった。白凪と会話をしていたから暇がちょっとは紛れたが、やはり暇だった。
「チャイムが鳴ったので、模擬戦を終了して帰ってください。号令はありません」
どうやら、号令無しにもう帰っていいようだ。よし、帰ろう。そう思って、俺は立ち上がる。そして、第一戦闘場を後にしようとする。
「來貴君、話があるから一緒に来て」
「……わかりました」
刀華先生から何か話があるようで、俺は刀華先生について行った先が……六限目に来たときの生徒指導室だ。何故、また俺はここに連れてこられたのだろうか。そう考えながら、俺は生徒指導室に入らされる。
というか、俺は何かやらかしたか? 白凪との会話で言った「刀華先生の説教は大して怖くない」というのが原因か? いや、白凪は伏見先生の説教は怖いと言ったが、伏見先生に連れて行かれなかった。どういうことだ?
「……來貴君。単刀直入に聞くよ。なんで、能力を隠すの?」
「……ッ!?」
その言葉を聞いて、俺は刀華先生の方を見る。……何故、刀華先生がそのことを知っているのか。校長には伝えたが、隠しておくよう言ったはず……いや、先生に隠せとは俺は言っていなかった。盲点だった。
……だが、刀華先生に聞かれたことを言う気は一切無い。だから、ここは適当に流してさっさと帰ろう。そう思い、俺は口を開く。
「……隠したいからです。では」
「ちょ、ちょっと待って! ……あ」
刀華先生の制止の言葉も聞かず、俺は生徒指導室を出る。刀華先生がまだ何か言っていたが、そんなのお構いなしに俺は行く。
そして、俺は一年生の玄関につく。その場所には、見知った顔の人が二人居た。
「來貴君、今回はこっぴどく怒られたようですね」
「……第一戦闘場を破壊して説教っていうのは、どうかと思うよ」
文奈と黎が、俺が来るまで待ち構えていたかのように玄関にいた。こいつら、なんで帰ってねぇんだ?俺を待っていたっていっても……刀華先生に連れられて……あ、俺が強制的に話を終わらせたからそんなに時間は経ってないか。
「……何しに来た、お前ら」
「來貴君を煽りに来ました」
「右に同じく」
二人とも、どうやら俺を煽りに来たようだ。そんなことするよりさっさと家に帰れよ。というか、煽る要素全然無いだろ。
「……お前ら、帰らないのか?」
玄関を出ながら、未だ学校の玄関にいる二人に問いかける。
「……なら、來貴君と一緒に帰って煽ります」
「……僕も」
二人とも、俺と一緒に帰りながら俺を煽るようだ。というか、帰りながら俺を煽るなよ。絶対ウザい奴じゃねぇか。……はぁ、二人の煽りを適当に流しながら帰るか。俺はさっさと帰って寝たいんだよ。
そして、俺は文奈と黎と一緒に帰ることとなった。まぁ、それは別にいいんだけど。あと、凜姉からメールが来た。その内容は『先に帰ってるよ』だ。校門にいなかったのも、このためだろうか。
「來貴、刀華先生に説教された気分はどう?」
「模擬戦で熱くなりすぎましたね、來貴君」
「……うるせぇ」
二人とも、帰りながら見事に俺を煽ってくる。別に煽りは効いていないが、ここまで煽られるとウザいな。
「いいから答えてよ。刀華先生に説教された気分は?」
「……別になんともない」
「そっか」
なんか、黎の反応が素っ気なかったな。いや、そんなことは別にどうでもいいんだけど。というか、こいつら俺を煽るんじゃ無かったのか?煽りが弱くなってきたぞ。
「……黎君、残念ながら私達は來貴君とは帰る道が違うので、ここで煽りは終了です」
「……そうだね。じゃあね、來貴」
そして、俺は文奈と黎と別れた。それなりに煽りはウザかったので、これで終わって良かったと思う。まぁ、それは置いておいてさっさと帰るか。俺は家に向かって歩き始めた。家はもうすぐなので、すぐ着くだろうけど。
「……ただいま」
家に着いたので、玄関を開けて家の中に入る。とりあえず、自分の部屋へ行こう。俺は、二階への階段を上る。
そして、自分の部屋の前に着いたので部屋の中に入る。その後すぐにベッドに寝転がる。
(……なんで能力を隠すの……か。理由なんざいくらでもあるが……言えるわけ無いな)
部屋のベッドに寝転がりながら、俺は刀華先生に言われたことを考える。……いや、これはもう気にしなくていいか。寝よう。
そして、俺は眠りについた。その後約一時間寝てから琉愛に起こされ、夕飯を食べて風呂に入ってからすぐに寝た。




