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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第五章 大罪編
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101話「神藤」

「――――話の続きは、これの中身を見てからだ」


 桂は、その箱を開封する。そして、中に入ってい巻物を取り出す。その巻物がなんなのか、來貴と明人にはわからない。しかし、これを持って来たのは使用人の中で比謝矼の次に強い者だ。


 立場も、比謝矼に次いでナンバー2と高い。來貴が目を向けた先には、その姿がある。


 その使用人――鮮花芽威(あざかめい)は、扉の近くに控えていた。


「――來貴、明人。何度も言うが、今から言うことをしっかり聞け」


 桂の言葉に、來貴と明人は頷いて返す。その反応を見てから、桂はその箱を開封する。そして、中身を取り出した。


「來貴、明人。これは、5()0()0()()()から神藤家に伝わる巻物だ。ここに記されている内容は、日本の軍事機関の裏側が伝わっている」


 日本の軍事機関の裏側。その言葉に、來貴は息を呑む。そして、桂は巻物を開く。


 長い巻物だと、來貴は思った。そうして数秒、巻物は最後まで開かれた。内容が記されている方は桂に向いているため、來貴は内容が見えなかった。


「……來貴、明人。これを見てくれ」


 桂が、巻物に記されている内容を來貴と明人に見せた。


「――これは」


 そこに記されていたのは、筆記者『神藤泡妖(じんどうほうよう)』と言う名前。そして、軍事機関設立の真実。そして、能力と魂の関係性……そして。


「神藤家の……秘密?」


 神藤家誕生の、秘話だった。この巻物は、筆記者の名前と三つの項目が詳しく記されてある。筆記者(神藤泡妖)の名前、神藤家誕生の秘密、能力と魂の関係性、軍事機関設立の真実の順だ。


 そして神藤家誕生の秘密には、こう記されている。



神藤家は、この私『神藤泡妖』から誕生した。かつての名字を、与えられた"神藤"と言う名に変えた事、神の因子を取り込むと言う話を承諾したためだ。


私には、ある"因子"が入っている。原初神ドルナイトのものだ。私には四分の一ほど入っているが、これは私の子孫にも受け継がれる。神の因子を持つ者は、15の年にならずとも能力の本質に耐えることが出来る他、人間離れした身体能力を持つ。そして、強力な能力を得やすい。


私が何故こうなってしまったのか。その理由は、ただ一つ。


二つ目は、願いを叶えてもらうためだ。私には、妻がいる。その妻は病に侵され、死が目の前に迫っていた。だが、私にはどうする事も出来ない。神の因子を取り込めば、その妻の病を治してやるとドルナイトに言われた。そのため、私は承諾した。


神の因子を取り込めるだけ取り込めと言われ、取り込めた限界は四分の一。取り込む際に痛みが発生したが、乗り越えれば妻は助かると思えば、その痛みに耐えることが出来た。


そうして、神の因子を取り込んだ私は、妻の病をドルナイトに治してもらった。私は感謝した。最高の医者でさえ治せなかった病を、一瞬の内にして治してしまったからだ。


それから、私は"神藤泡妖"を名乗った。何故かは、今もわからない。だが、ドルナイトの影響を受けていると、私は考えている。そして、ドルナイトからいろいろ聞かされた。それが、この巻物に記されている事である。


これが、神藤家誕生の経緯だ。私は、私が培ったものを遺すためにこの巻物を書き記した。後世に役立てるようならば、ありがたい。



 ――そこで、最後だった。読み終わった來貴と明人は、驚きで口が開いたままだった。……特に、來貴は。


 自分が殺そうとしている相手の血が、身体に宿っていることに驚いているのだ。明人もそうだ。來貴から、ドルナイトを殺そうとしていると言う事を聞いた。その兄が殺そうとしている相手の血が、自分にも宿っていると言う事実に。


 桂は、巻物を少し巻く。そして、"能力と魂の関係性"の所を全面に出した。その巻物を机の上に置き、來貴と明人に見せつける。


 來貴と明人は、その"能力と魂の関係性"が題名の遺された項目を見る。


 その項目には、こう記されていた。



能力と魂には、切っても切れぬ関係性がある。魂に直接能力が宿っているのもあるが、他にも能力の全てを引き出すのにも関係があるからだろう。そして、私が思うに大抵の者は能力を無駄に使用している。


能力の力は、全て魂にある。その力を魂を通じて身体に流し込み、魔力を使う事で行使を可能とする。能力とは、独自に創られた法則だ。魔力は法則を操れる性質を持つ。能力により創られた法則を、魔力を使って操る。これにより、能力による現象が起こる。


だからこそ、魔力が無ければ能力を行使出来ないのだ。魔力は世界から生み出される無限のエネルギーの結晶であり、法則を操れる性質を持つ。これはいいだろう。


魂にあるのは、"能力"・"意思"・"記憶"・"生命"の四つである。その四つを中核に、魔力が外殻を成している。そのため、魂は能力の全てに耐えることが出来る。しかし、身体は別だ。人間は、能力の全てに15の年にならなければ耐えられない。


だが神の因子を持つ私たちや、人間より上位の存在である悪魔や天使たちは別ではあるが。


能力の本質を理解したならば、能力の力が全て身体に流れる。そうすれば、本質を理解する前よりもかなりの出力を期待出来る。だが、それでも無駄は生じる。これは本質を理解するしないの問題ではなく、能力と身体の間に無駄があるのだ。


これを無くすには、能力の本質を理解するだけでなく、必要な時に必要な力だけを取り出せるように、魂に能力の力を押し留めるのだ。


そうすれば、身体に余分な力を残すこと無く行使出来る。胸の辺りに溢れる力を流し込むようにするのだ。全体から出すのでは無く、一点から絞り出すように。


こうすれば、能力を無駄無く使える。その他にも、能力に使用する魔力を少なく出来るのだ。


そのため、能力と魂には切っても切れぬ関係性があると私は考えている。



 ――そこで最後だった。能力と魂の関係性、その全てを事細かく書き記していた。來貴と明人は、ただ何も言わずその内容を見続けるばかりである。桂は、來貴と明人が内容を全て見たと確認したら、再び巻物を手に取る。


 そして巻物を巻き、別の項目を表示する。最後に來貴と明人に見せるのは、"軍事機関設立の真実"だ。


 桂はその項目を前面に出し、机の上に置いた。來貴と明人は、再び巻物の内容を見始める。


 その――"軍事機関設立の真実"を……。



軍事機関設立の真実。軍事機関は、私たちが神の因子を取り込んだとほぼ同時期に設立された。設立したのは、神の因子を取り込んだ私たちでは無い。


赤真七祖嵐(しゃくましちそらん)と言う名の男だ。その男は、能力によって治安を失った日本をまとめ上げようと、軍事機関を設立した。各地から、我々や他の強き者を収集して。


そして、自身がその軍事機関の長として君臨した。しかし、東京にある一つの機関だけでは抑えきれなかったため、京都と蝦夷にも支部を創った。そこに、私と同じ神の因子を入れられた者を配置した。そうして、統治の体制は整った。


まず赤真七祖嵐は、人々から能力や魔力と言ったものの記憶を消した。ただし、軍事機関に所属する能力者は別だが。それにより、人々は落ち着きを取り戻した。だが、軍事機関の仕事はこれで終わりでは無い。


赤真七祖嵐は、軍事機関に所属する軍人を育てるための学校を建設した。後世はどうなっているかはわからないが、この時は全学年合わせて150人ほどだった。しかし、その中には能力を持っていないものもいる。役割別に分けて、その役割で活躍できるように育成していた。


それは合理的であり、我々の後の代の軍人も豊富にいた。


しかし、不可解な事がある。赤真七祖嵐がどうやって、民衆の記憶を消去したか。赤真七祖嵐が何故、私たちが神の因子を取り込んだと知っているかだ。そのような能力を持っていると言われればそれでおしまいなのだが、別の何かがあるような気がする。


敵国であるアルヴァダ帝国も、我々の知らない技術を使っているのだから、そのような技術があってもおかしくはない。



 ――そこで、最後だった。明人は目を見開いていたが、対して來貴は目を細めていた。神藤泡妖の見解が、おおよそ合っていると考えられたからだ。


 來貴と明人が全部見たと確認した桂は、巻物を箱の中にしまった。


「……この巻物に書かれている内容は真実だ。……そして、この場にいる者はその内容を既に知っている」


 その言葉に含まれる意味を、來貴と明人は理解出来た。桂が口にした「この場にいる者はその内容を既に知っている」という言葉。それは、神藤の血筋でない陽子、琴音、比謝矼、鮮花もその巻物の内容を知っていると言う事と同義である。


 桂の妻である陽子だけならば、まだわかる。ならば、何故琴音たちもこの巻物の内容を知っているのかが、來貴には不透明だった。


 だが、おおよその予想は付く。琴音は、その"神の因子"が入れられた一族の一人であるから。比謝矼と鮮花は……強いから。一見ふざけたように聞こえる理由だが、來貴はそれであると考えている。


 比謝矼と鮮花は強い。どれ程なのかはわからないが、來貴の10年前の記憶からすると軍事機関の幹部に匹敵するほどだ。しかし、必ず合っていると言う保証は無い。だから來貴は、口を開かず桂の言葉を待った。


 そして桂は、來貴と明人の顔を確認してから口を開く。


「先程の言葉の意味は、わかっているだろう。それは何故か、説明する」


 桂が、説明を始めた。


 曰く琴音に関しては、神藤家と同じで神の因子を取り込んだ家系の一つだからなのだと。それをどうやって知ったのかというと、琴音が能力の本質を15歳より前に理解したと言う事を聞いたからである。


 15歳になる前に能力の全てに耐えられるのは、人間以上の存在もしくはその存在の遺伝子を持った人間のみ。琴音が人間であるため、神の因子を持っていると推測した。そして、琴音はそれを父親に聞くと「そうだ」と返ってきた。西宮寺家にも、そう言った旨の遺し物があるらしい。


 そのため、神藤家が持つ内容も知らせているのだ。


 曰く比謝矼と鮮花については、これからの事に関して知ってほしかったからである。比謝矼と鮮花は、神藤家に仕える使用人の中でトップの強さを持つ。


 桂が計画している事は、500年前の事を知らないでは立ち入ることは出来ない。そのため、比謝矼と鮮花には伝えたのだ。……恐らく神藤家は、巻き込まれることになるだろうから。


「俺は、赤真七透咢(しゃくましちとうがく)から真実を問いただしたいと思っている。民衆の記憶を消す手段、神の因子を取り込んだ家系を創った真意を。まぁ、後者は知っているかわからないが。赤真七透咢は恐らく、ドルナイトと繋がっている。……だから、放っておくと世界は危ない」


 桂の言葉で、部屋の中が緊迫した雰囲気で満たされる。赤真七透咢――今の軍事機関の長だ。赤真七家が、軍事機関本部を管理しているため、現当主である透咢が長を務めている。


 ――そして誰も何も言わない中で、來貴が口を開いた。


「真実を問いただして……どうするつもりだ?」


 來貴のその質問に、桂はすぐに答える。


「赤真七透咢の疑いを晴らす。ドルナイトがアルヴァダ帝国にいる……と、お前は言った。もし繋がっているならば……どうなっていると思う?」


 逆に繰り出された問いに、來貴は答える。


「日本は、裏から支配されていると言う事になる。なんなら、全ての情報がアルヴァダ帝国に行っていてもおかしくない。それに、アルヴァダ兵もある程度自由に手引き出来る」

「――そうだ」


 來貴の完璧すぎる答えに、桂は苦笑しながら答える。明人たちは見ているだけだったが、話は聞いていた。そして、その繰り出された憶測と情報の数々に圧倒されていた。


「まぁ、だからといって今すぐどうこう出来るわけではないが。今のところは、赤真七透咢は何もしていない。ただ真面目に軍事機関の長としての仕事をしているだけだ。……しかし、裏がありそうな所は否めないがな」


 ――それから、誰も言葉を発しなかった。一分、二分と時間が経過していく中で、大きな音が響いた。


「……時計か?」


 明人の腹の音だった。しかも、それを絶妙に下手な嘘で誤魔化そうとしていた。部屋の張り詰めた雰囲気が溶けていく中で、陽子が口を開いた。


「お昼にしよう。もう13時よ。私も小腹が空いてきたところですし、いいわよね?」


 その問いは、桂に向けられたもの。桂は、その問いにこう答える。


「……俺と來貴は腹が減らないんだがな。まぁ、このまま黙っていても変わらない。息抜きは必要だな」


 その言葉を聞き、鮮花が「失礼します」と言いながら巻物の入った箱を持つ。比謝矼は、扉を開けて桂たちが部屋を出るのを待つ。


 全員が出たところで、比謝矼が先頭を歩き昼食へ歩を進めた。

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