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真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第五章 大罪編
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98話「力の説明」

 現在、來貴たちは昼食を食べている途中だ。会話はあるが、どれも來貴の"力"についての話題は出ていない。その事については、里奈たちが話し合ってじっくり話そうと考えている。食事をしていては、あまり話す事は出来ないと考えた結果だ。


 入院生活はどうだったとか、最近のファッション事情とか、学校は今こうなっているとか、新しく出来たスイーツ店がおいしそうとか。軍事機関に関わる話題から、年相応の話題で話を続けていた。


 來貴は凜と琉愛が持ち出してきた年相応の話題は、よくわからなかった。服選びの大切さやスイーツのおいしさを凜と琉愛に力説され、良いものなんだなとぼんやり思っただけである。


 全員が昼食を食べ終わるまで、二十分ほど掛かった。食べ終わった後は、食器を片付けて机の上を綺麗にする。


 ――そして、全員が席についた。配置は、いつもと変わらない。だが、昼食の時とは打って変わって重々しい雰囲気となっていた。


そんな雰囲気の中、里奈が口を開く。


「……來貴。あの事について、詳しく教えてくれるわね?」


 数秒。場が、静寂に包まれていた。その静寂は空気の重さに助長され、何倍も時を伸ばしている。たった数秒が、永遠のようにこの場にいる來貴たちは感じていた。


 かつてジェイドに「誤魔化せ」と言われたが、もうそれは無理だろうと判断している。そんな口約束より、凜たちの方が大切だったから。來貴は心の中で深呼吸をし、口を開く。


「――わかった。まずは、身長が伸びた訳から。……学校に入学してから、一週間後の事だ。その時、俺はある"選定の悪魔"と戦った」


 一瞬、里奈たちは訝しげな表情をしたが、すぐに表情を戻した。いきなり出てきた"選定の悪魔"と言う単語が予想外で、騙されているのかと考えたからである。


 しかし、話は最後まで聞いた方がいいと考えたのだ。


「その結果、俺は勝利した。その後、俺はその悪魔――ネル・ドグバーンの力を受け継いだ。それの影響で起こったのが、身長の伸びと髪色と瞳と魔力色の変化だ。髪が灰色になったのと、左目が金色になったのと、身長が10cm程伸びて、魔力色が黒になったやつだ。……そして、力を受け継いだ目的は一つ」


 來貴から繰り出された真実は、段々とスケールが大きくなっていった。悪魔の力を受け継ぎ、身体が変化した。そして、何故力を受け継いだのか。その目的は、きっと簡単なものではないだろうと、凜たちは直感した。


 そして、來貴は告げる。


「――世界の破滅を、防ぐためだ」


 あまりに単純で、漠然とした目的。


 何故、世界は破滅するのか。何故、來貴がそれを防ぐのか。誰が、世界を破滅させるのか。誰が、それを持ち出したのか。その全てが、凜たちにはわからなかった。だからこそ、凜たちは質問をする。


「來くん……どうして、そうなったの? 世界の破滅を防ぐって……本当?」


 若干、凜は動揺している。來貴が危ないことに手を出していると、わかったから。もう來貴に、傷ついてほしくないから――。


「その悪魔が来た日、いろいろ聞いた。簡単に説明する。500年前、世界に神が堕ちた。その神は世界を破滅に導く事を目的としていて、それを防ごうとした悪魔や天使と死闘を繰り広げた。死闘の末にその神は封印されたが、500年の時を経て封印が解けそうになっている。だから、その神を殺せる者として俺が選ばれた。俺も世界が滅ぶのは嫌だから、力を受け継いだ」


 嘘にしては、あまりに出来すぎている話だった。だから、凜たちは疑問に思えなかった。來貴が変な嘘を言わないのは、全員が分かっている。だが、今の話はくだらないと一蹴されてもおかしくはない。


 しかし……嘘だとは、思えない。この場にいる全員が、そう思っている。悪魔の他に、天使という知らない単語も出てきた。凜たちはどのような存在かは予測出来ているが、口にはしない。


 それよりも、來貴に聞きたいことがあったから。それを聞くために、琉愛は言う。


「お兄ちゃん……もしかして、悪魔になったの?」


 力を受け継いだと言う事は、人間じゃなくなってもおかしくは無い。そう結論づけた琉愛が、質問をしたのだ。


「――ああ。俺は悪魔だ。もう、人間じゃ無い。……力を受け継いだときはまだ人間だったが、その後にまた別の悪魔――ジェイド・フーバーンが来た。そいつが、次の選定の悪魔――オリケルス・シュタイフレスを紹介したんだ。そこで、しばらく俺は指導をされていた」


 琉愛は、困惑しつつも納得した。來貴は、人間じゃ無くなった。選定の悪魔と戦い、その力を受け継いだから。そして、ジェイド・フーバーンという"悪魔"からオリケルス・シュタイフレスという次の選定の悪魔を紹介された。そこで、指導をされていた。


 情報量が多くて困惑していたが、一個一個整理する事で理解が出来たのだ。凜と里奈も、困惑しつつも情報の整理が出来ていた。


「……來貴。受け継いだ力……いや、能力の名前は?」


 そこで、里奈が口を開く。受け継いだ力の名前。そして、受け継いだのが能力だという事も見破っていた。


「――死黒暴滅(ブラック・デストロイ)。それが、ネルから受け継いだ最高位の能力だ」


 凜たちは、驚愕で言葉が出なかった。能力を受け継いだことは、薄々分かっていた。だが、それも最高位。能力の詳細はわからないが、強力である事は間違いない。


 來貴は、淡々と喋り続ける。


「……それから、最後の指導になった。夏休みに入って、すぐの事だ。オリケルスとの殺し合い。その戦いを経て、俺は悪魔化(デーヴィス)が出来るようになった。黒い翼を生やすアレだ。アレは自身の能力を底上げするものだ。この戦いが終わった後、俺はオリケルスの力を受け継いだ。その結果、右眼が紫色に変化した」


 淡々と述べられた事実。凜たちは絶句している。……そして、今までの來貴の行動と合致し、腑に落ちたと言う表情をした。だが、凜はまだ他に能力があると思っている。訪れた戦いの跡地には、炎やら氷の残骸があった。


 ジーレストは風や雷を操っていたため、それが來貴の隠している能力によるものだと推測したのだ。


「……來くん、まだあるよね?」


 凜が言う。里奈と琉愛は、何も言わず來貴の答えを待つ。


「――あるよ。言ってないのは、地獄門(ヘル・ゲート)万物具現化の眼リアライゼーション・アイの二つだ。死黒暴滅(ブラック・デストロイ)はあらゆる黒を支配する能力。地獄門(ヘル・ゲート)は地獄を支配する能力」


 そこで、來貴は言葉を切る。凜たちは來貴が隠し持っていた強力な能力に言葉も出ないまま、最後の万物具現化の眼リアライゼーション・アイと言う能力の詳細が語られるのを待った。


「――万物具現化の眼リアライゼーション・アイは、見たり聞いたりした物を具現化・実現化する神の能力。これは世界を滅ぼそうとしている"神"の能力だ。これの説明は後にする」


 凜たちは、何も言わない。分かりづらく説明されるより、分かりやすい説明を聞きたいからだ。


地獄門(ヘル・ゲート)は、ジェイドから受け継いだ能力だ。この力を受け継いだ影響で、髪色に銀が混じって魔力色が黒銀色になった。受け継いだ順番は、ネル、ジェイド、オリケルスの順だ」


 今までの話を聞いて、凜達は大体のことを理解した。


万物具現化の眼リアライゼーション・アイは、俺が6歳の頃に得た能力だ。神が封印された後、持っていた能力が世界中に散らばった。俺が持っているのは、全部で七つある内の一つだ。……今までは、隠した方がいいと思って使っていなかった」


 大雑把に、万物具現化の眼リアライゼーション・アイの事が説明された。隠した方がいいと言うのは、凜たちも納得できる。ただ、自分たちには言っても良かったのでないか。凜たちはそう思ったのだ。


 しかし、今それを言った。來貴はあの時、万物具現化の眼リアライゼーション・アイを使っていない。


(事情は違うが、今言っておいた方が楽だからな……)


 これだけ隠すよりも、全部言ってしまった方が楽だったのだ。後で発覚し、問い詰められるよりも。


 來貴がそう考えている間、凜たちも思考を張り巡らせていた。どのような言葉を掛けるべきか。また、どのように接していくべきか。答えはもう、出ている。來貴の事を受け入れる言葉を掛け、普段と変わらない態度で接すれば良いと。


 だが、言葉が出なかった。いつの間にか出来ていた、來貴との壁を感じてしまって。


「――これで全部だ。……俺は部屋に戻る」


 來貴は席を立ち、リビングのドアの前まで歩く。しかし、凜が來貴の服の裾を掴んだ。


「……待って、來くん。これだけ聞いてから、行って」


 來貴は凜の方を向く。凜の方を向いた時、來貴は凜と目が合った。瞬間、凜は笑顔を見せる。琉愛と里奈も、凜の近くまで来ていた。


「來くんが人間じゃなくなくなっても、どんな道を行こうとも――私たちは、來くんを嫌わない。來くんが駄目な方向に行ったとしても、私たちが力ずくで引き戻す。……だから、いつでも頼ってね?」

「そうだよ……いつでも甘えて良いからね、お兄ちゃん」


 來貴は、少し口が開いたままだった。凜たちの対応に、驚いているのだ。……誰にも止められず、この場を抜けるだけだと思っていたから。


 來貴は口を閉じ、微笑を浮かべながら言う。


「――ありがとう」


 そう言い残して、來貴は部屋へ戻った――――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 軍事機関本部、最上階。その階層にある三つの部屋の、左の部屋。その部屋は、日軍第零課(にちぐんだいれいか)の軍人が集う場所だ。


 そこで桂と琴音は、資料と書類を纏めている。アルヴァダ帝国から盗んだ資料や、被害状況や記憶を消す予定の国民などの軍事に関わる書類。


 それを分けていき、間違いが無いかを確認してから処理をしていく。


 機械的にそれを続けていき、数十分。あらかたの書類の処理が終わった。そのため、桂はアルヴァダ帝国の資料に目を通す。


(魂、か。日本が、アルヴァダ帝国の内側に行く日も遠くない……そうなれば、真実が知れ渡るのも時間の問題だな)


 魂と言う存在は、桂と琴音は知っている。何故なら、真実を知っているから。神藤家に遺っている書物に、アルヴァダ帝国の事が記されていた。その中に、魂の事も書いてあったのだ。


 だからこそ、この資料の内容が軍人たちに知れ渡る事の意味をわかっていた。軍人たちの混乱。それが、迎える結末だろう。だが、上手く指導が出来れば劇的に強くなれる。桂も琴音も、そうであるように、この資料に記録されている事を、桂と琴音は身につけているからだ。



『魂について』


全ての存在に宿っている、命の源。存在によって、魂の格が違っているが、全体の容量は全て等しい。


魂には、"能力"・"記憶"・"生命"・"意思"が宿っている。その四つが中核を成し、外殻は魔力で覆われている。その四つで構成された魂は、球体を成す。魂の色は、宿主の魔力色と一致する。


"能力"は、言わずもがな。法則を作り出す力だ。


"記憶"は、存在の出生から死まで見たり聞いたりした全てをインプットしている。魂にあるのはその全てで、脳器官にあるのは意識して記憶しているもののみだ。


"生命"は、臓器を動かすためのエネルギーだ。寿命とともに減っていき、それが尽きると死ぬ。病気や怪我等、何らかの要因で減ることもある。


"意思"は、その存在の性格や人格を作り出す元。これは個人個人で違っているが、似通う場合がある。


"人間・"悪魔、天使"・"神"。左から右へ行くごとに、魂の格が上がっていく。悪魔と天使は同格である。魂の格が上がるごとに、導かれる能力の強さや生まれ持つ才覚が変動する。上がっていくごとに、導かれる能力は強くなり生まれ持つ才覚は大きくなるのだ。


しかし、それを覆す現象がある。埋もれた才能ロストアプティテュードだ。この「埋もれた才能ロストアプティテュード」が発生する原因はわかっていない。才能が無い存在に、その身に余る能力が導かれる現象。そのような存在を何例か確認出来たが、規則性は少なくとも発見できなかった。


これからも、研究を続けていこうと思う。



 ――ここで、資料は終わりだ。絵も使って、二枚の紙に満遍なく書かれていた。そして、まだ資料はある。それには既に目を通していて、魂と能力の関係性について記されていた。


 桂は、資料を琴音に渡す。琴音は資料を受け取り、十数秒間目を通した。その後、机に音も無く資料を置く。


「……ここに記されている内容は、私たちが知っている内容とほぼ同じですね。……差異があるとすれば、埋もれた才能ロストアプティテュードでしょうか」


 今までは、アルヴァダ帝国の対策や事務処理で忙しくその資料に深く目を通せなかった。桂と琴音以外が見るわけにもいかないため、ずっとそのままだったのだ。


 だが今は、落ち着いている。アルヴァダ帝国とは、冷戦状態だ。そのため余裕があり、資料に目を通すことが出来た。


 そしてこの二つの資料を軍事機関の中で公表した時、どんな混乱がもたらされるかを危惧していた。桂は、アルヴァダ帝国と全面衝突するとき、同盟国を巻き込んで公表しようと考えている。


 しかし、どうしたものか――。そう考えながら、桂は琴音と共に部屋を出た。



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