表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実と想いの業  作者: 神無月凍夜
第五章 大罪編
100/234

94話「小さな罪と大きな罪」

かなり熱く仕上がったと思います。

 結月來貴と、ジーレスト・オヴェイロン。あの日から続いた二人の関係。敵同士ではあるが、その強さは互いに認めていた。


 ――金属をぶつけ合う音が、辺りに響き渡る。約100mの上空で、刀と槍――そして信念を、ぶつけ合っているのだ。その戦いは最早、常人には追えぬ程激しいものとなっていた。速度は音速を超え、地を揺るがすほどに強く武器を打ち付けている。


 気を抜くことの出来ない攻防の中で、來貴に傷は無い。付けられた瞬間から、治っているのだ。……しかし、來貴が力を解放した事で、今の今まで手加減をし続けたジーレストも、遂に手加減を止めた。


 それが意味することは、ジーレストの本領が発揮されると言う事。今までは雷や風で遠くから攻撃して、隙が出来たところで一気に接近して攻撃してきた。だが、今は違う。最初から槍の間合いまで接近し、雷や風を伴う攻撃をし続けている。


 恐ろしい力と速度で繰り出されるそれは、かなりの脅威であった。しかも単純な攻撃ではなく、時折残像でのフェイク・風での錯乱を織り交ぜているため、來貴としてはかなり戦いにくい。


 そして――妙だと思っていた。


覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を使っているのに、身体能力にかなりの差があるな……奴の能力は強化系ではないはず。ならば……何故?)


 力、速さ。その両方とも、ジーレストは來貴を上回っていた。僅かにではなく、大幅に。強化系の能力でないはずなのにも関わらず、強化された身体能力を上回れていることが、腑に落ちないのだ。


 いくら魔力を注ぎ込もうとも、ジーレストを上回ることが出来ない。


 來貴は、そう感じてしまった。


「――ぐっ!?」


 槍を回し刀を弾き、ジーレストは來貴に蹴りを放つ。來貴は腕で受けたが、威力を殺しきれず大きく吹っ飛んだ。そして來貴は、吹っ飛ばされながら空中を回転し、空に浮かぶ。蹴りを受けた結果、來貴の腕は折れて"白天黒滅(はくてんこくめつ)"を落としそうになる。


 だが、そうなる前に悪魔化(デーヴィス)の力が腕を治療した。


「……チッ」


 そしてジーレストは、來貴の腕を折った代償に、足を斬られていた。"白天黒滅"の斬撃によるものではなく、黒銀の魔力刃によるものだ。しかし、それもジーレストはすぐに治してしまう。


 治ったのを横目に、ジーレストは槍を振るった。


(何……!?)


 途端、音速を超える巨大竜巻が來貴に迫る。それは雷を纏っていて、周囲を巻き込み悉く壊していく。天候も曇りとなり、不穏な空気が漂っていた。


 避けようと思えば、來貴は避けられただろう。寧ろ、その選択肢を選んだ方が負担は少なかった。しかし、來貴は避けることは出来ない。避けた先にあるのは、軍事育成機関高校。それが意味することは、中にいる者全てが死亡する事を意味していた。


 ――そして、避ければ刀華たちが……凜が死ぬことは簡単に理解できた。


 ならば、真正面から跳ね返すしかない。來貴は"白天黒滅"に魔力を込め、能力を発動する。


「――黒銀滅覇(ブラック・エンド)!」


 名を叫ぶと同時に、"白天黒滅"を振る。同時に、黒銀が渦を巻いて大きくうねる。黒銀の波動の奔流、滅亡の力を合わせた技だ。それはやがて巨大竜巻を迎え撃ち、大きな衝撃波を生む。ぶつかったことで巨大竜巻は動きを止めたが、その勢いは止まらない。


 黒銀滅覇(ブラック・エンド)を飲み込まんと、ジーレストが更に魔力を込める。紅にジーレストが包まれ、その力の大きさを誇示しているように來貴は見えた。


 ――來貴も、更に魔力を込める。黒銀を來貴が包み、力の大きさとその存在を示していた。


 そして、互いに魔力を込め続けた。來貴は、凜たちを死なせないため。ジーレストは、願いを叶えるため。持つ意思が強い方が、この競り合いに勝つことが出来る。


(魔力が心許ない……だが、ここで負けるわけにはいかない……!)


 來貴は、更に魔力を込めた。


「――見事だ」


 勝ったのは、來貴だった。巨大竜巻を、見事に黒銀と滅亡で押さえ込むことが出来た。周辺の被害は凄まじいものであるが。しかし、その代償に魔力の殆どを失ってしまった。ジーレストも確かに魔力を失ったが、それでも來貴より魔力の残量は多い。


(クソッ……これ以上は無理か)


 來貴は仕方なく、覇壊の轟き(オーバー・ドライブ)を解除した。これ以上使ってしまえば、魔力が底を突いてしまうからだ。


 それに、代償は一つでは無い。來貴はかなり負傷していた。上半身の服は全て消し飛び、右脇腹と左腕を抉られている。木や建物が抉られ、その破片が風で飛び來貴を傷つけたのだ。普段そんなものでは傷は付かないが、それが音速で迫ってきたならば話は別だ。しかし來貴にぶつかった破片は、傷を付けると同時に粉々になるが。


 ほぼ更地と化した辺りには、学校だったものが残っている。中にいる軍人たちは、衝突を見た時点で離れた場所に避難をしていたため、全員が無事だ。


 ――ジーレストには、傷は無い。ジーレストの所にも破片は飛んだが、全て槍で弾いていた。來貴も一部弾いてはいたが、ジーレストが來貴の方に多く破片が行くように誘導していたため弾ききれなかったのだ。


「……中々、持ちこたえたものだな。しかし、もう終わりだ」


 天候が雨になる。そして、ゴロゴロと雷がなり始めた。


 ジーレストの能力は『天界の雷雲(ヘヴンズ・ストーム)/天候と風雷を支配する能力』であり、系統は現象系。本質は『雷雨』だ。これだけならば、來貴には勝てないだろう。


 ……だがジーレストと來貴の間には、壁があるのだ。


(――結月來貴……経験してないにも関わらず、この実力……オレが経験していなかったら、負けていたな)


 その"壁"を乗り越えなければ、來貴に勝ち目は無いだろう。何せ、その壁は絶対的なものであるから。


 しかし、そのような状況下に置かれても、來貴は勝ちを諦めていない。その世界最高の頭脳で、今も勝ちを探していた。


(魔力は……あまり残っていない。悪魔の翼も、もう一対になった。――だが、ひどく集中出来ている。魂の内側が、昂ぶっている?)


 心臓の部分に、來貴は妙な感覚を覚えていた。不思議と、力が湧いてくるような。


「……ここまで、お前はよく戦った。……だが、何故戦う? 後ろの奴らを見捨てれば、お前はここまで傷を負わずにいられたぞ」


 來貴が戦う理由。それは単純だ。


「……凜姉たちを、護るため――もう、哀しませないようにするためだ」


 そうだ。


 護るためだ。


 大切な人たちを、死なせたくない。その単純な想いで、來貴は戦っている。


「――そうか。ならば、理由も守れず死ね!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 凜たちは、自分の無力を嘆いていた。本気を出した來貴の背中に生えた、二対四翼の翼。それを見て、來貴たちは自分たちの届かぬ領域にいるのだと理解した。


 ――そして、巨大竜巻と黒銀の衝突で生じた衝撃波を危惧し、離れた場所にある体育館に避難している。


 凜たちは頭が回るため、理解出来た。


(……私たちじゃ、來くんの足手纏いにしかならない。……來くんもジーレストも、力を抑えていた。力を解放した状態じゃ、立つことすらままならないよ……)


 どこまでも、無力だった。


 遠くから聞こえる轟音に、血が出るほどに唇を噛み締めながら。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ジーレストが槍を突き出す。今ここで來貴が殺して、凜たちを殺す。遠回しに、そう言っているのだ。だから來貴は、編み出した策で理由を護る。


(――勝つために……いや、護るために必要なのは一つだ。戦う目的が何なのかを、見失わないように……!)


 一つの可能性に想いを乗せ、來貴は白天黒滅を強く握る。護るには、戦うしかない。鼓動が速くなり、心臓が熱くなる。魂の内側にある昂ぶりが、何なのかわからない。しかし、段々と力が湧いてくるのがわかる。


ギィンッ!


 ジーレストの槍を弾く。力は湧いてくるが、まだそれは本物では無い。來貴は戦い続ける。そして、内側にあるものを引っ張り出す。


 同時に、ジーレストに斬りかかる。ただ斬りかかるのでは無く、槍で防がれた瞬間に宙返りをした。そして、首へ刃を走らせる。だが、身体を捻って躱された。來貴は空中を飛んで距離を取り、カウンターを躱す。


 その後急接近し、下からフルパワーで斬り上げる。槍は音を立てて弾かれ、一瞬の隙が出来る。その隙を突き、心臓を刺突で狙う。


(弱っても尚、ここまでの強さか……!)


 ジーレストは能力を使い、全方位に風を放つ。その勢いに耐えられず、來貴の身体は宙を舞う。


 來貴が風に乗って体勢を整えた頃には、目の前には槍を振り上げたジーレストがいた。


「これで止めだ!」


 ジーレストは叫び、來貴の心臓に槍を放つ。來貴は躱せず、これで死ぬ……はずであった。


「――何だと!?」


 逆に、ジーレストが地面に叩き落とされていた。すぐさまジーレストは立ち上がり、來貴を探す。しかし、地上にはいない。


 ならば……と、ジーレストが見上げた先にいたのは、二対四翼の黒き翼を生やし、無傷で空中に佇む來貴の姿だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――琴音は、現在学校へと向かっている。軍事機関本部にはアルヴァダ兵が来ていなかったため、アルヴァダ兵が向かったと言う学校の方へ行っているのだ。


 本部から学校までは、少し距離がある。敵が強い可能性があるため、十数分ほど休んで魔力を回復してから向かっていた。


 学校にいる生徒たちが無事かどうかは、琴音にはわからない。刀華たちがしっかり守れているかも、わからない。ただ琴音は、願っている。


(私が来るまで、持ちこたえて下さい……皆!)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ――ある一定の強さ・ある"魔力"を持つ存在が、条件を満たし強き"渇望"を抱いた際に起こる現象。それを偏に……覚醒(かくせい)、と言う。今正に、來貴に起こったのはそれだった。


(まさか、この土壇場で覚醒するなんて……な。ただ、覚醒したと言っても、そんなに魔力は回復していないだろう。……ならば、行けるか……!)


 覚醒する事が出来たならば、様々な恩恵を得ることが出来る。魔力の回復、身体能力の強化もその一つだ。……しかし、來貴は覚醒時の魔力が少ないため、そこまで回復していない。


 ――決着は、時間との勝負だ。


 來貴は一気にジーレストに肉薄し、刀を振り下ろす。ジーレストは迎え撃とうとしたが、槍を振った先に來貴はいなかった。


(後ろ……!)


 來貴はジーレストの少し後ろで、左手を差し出していた。その手には、赤い陣が描かれている。ジーレストは嫌な予感がし、その場から離れようとした。だが、來貴の方が一歩速かった。


 地獄の炎が、來貴の左手から溢れ出る。それは、辺りを灼き尽くしながらジーレストを飲み込んだ。


「ぐっ……がアッ!!」


 ジーレストは声を上げ、風で炎を散らす。所々焦げているが、そんなことは気にせず來貴の姿を探す。炎を放った場所から、移動していない。だが、地面に手を付けている。


 ――何をしてくるのだろうか。警戒し、その場から離れようとしたジーレスト。しかし、その時にはもう遅い。


地獄門(じごくもん)針山地獄(はりやまじごく)……!」


 その瞬間、陣が描かれた地面から針の山が生えてきた。幾千も生えたそれはジーレストを穿ち、身動きを封じる。


(そうか、先程の炎は囮……! この針山が本命か! ならば、次は……)


 口から血痰を吐き捨て、瞬時に行動を推測するジーレスト。次に来るであろう攻撃を回避するため、天から紅の雷を落とし、自分ごと針山を破壊する。自身は紅の魔力を纏っていたため、ダメージは無い。


 そして、即座に飛び上がり攻撃を回避する。下から聞こえたのは、凍結と吹雪と斬撃の音。見下ろしてみると、学校のグラウンドが凍り付いていた。來貴が放った、黒銀冷死凍柩斬ブラックアウトフローズンレイだ。


 串刺しにされた所を、凍結の斬撃で殺してしまおうという策だったが、不発に終わった。針山で与えた傷も、治ろうとしている。


(……魔力はまだあるが……無くなるのも時間の問題だ。それに、針山の傷も治りかけてきている。ならば、残っているのはこれしかない……!)


 來貴は翼をはためかせ、空中に飛び上がる。"白天黒滅"を両手で握り、身体全体に黒銀を纏う。そして、一閃。ジーレストも身体全体に紅を纏い、槍を振り下ろした。


ドゴォン!


 魔力を乗せた攻撃同士がぶつかり合い、轟音と衝撃波を生んだ。両者の力は拮抗していて、先程まであった力の差は無くなっていた。


(……力の押し合いにも、対抗出来ている……これも、湧き上がる力の影響か)


 魂から出る力を感じながら、來貴は更に力を込める。能力は使わずに、純粋に昇華された身体能力で。


 対してジーレストも、風の推進力を使って勢いを増加させる。しかしそれでも、均衡が変わることは無かった。このままでは永遠に終わらないと判断した來貴は、槍を受け流して空中で回転し、ジーレストの上を取る。


 そして"白天黒滅"を翳し、振り下ろす。ただ速さだけを求め、殺す事を目的とした攻撃。それはジーレストの槍に防がれた。咄嗟に反応し、空中回転をして槍で防いだのだ。今度は押し合いなどはせず、刀を弾いて來貴を蹴り飛ばした。


 來貴は"白天黒滅"で受けたため、ダメージはあまりない。しかし、吹き飛ばされるほどの勢いはあった。空中で威力を分散しつつ、來貴は校舎の壁を足場に使って勢いよく飛ぶ。


 少し離れた場所からの接近のため、躱される可能性が高い。そう判断した來貴は、地獄門(ヘル・ゲート)を発動する。この能力の本質は『環境』。周りの環境を巻き込み変化させる事が、この能力の神髄である。


 だからこそ來貴は、地獄を開く。ジーレストを殺す"地獄"を。ジーレストの上空に紫の九芒星の陣を作り出す。ジーレストが避ける間もなく、術を紡ぐ。


「――地獄門(ヘル・ゲート)死霊の地(ニヴルヘイム)!」


 そこは、死者の怨霊が蠢く場所。行き場の無い怨みを孕んだ悪霊たちが、日々肉体を求め彷徨う場所だ。……そして、その場にジーレストは招かれた。ジーレストは逃げようとするが、怨霊は素早い。


 あらゆる怨霊の魔の手が、ジーレストの行く手を阻む。振り払おうとしても、数が多く弱くは無いため、簡単には払えなかった。


 ――そして、來貴はジーレストに近づく。


(そうか! これはオレを逃げさせないためのものか……!)


 今更気付いたところで、もう遅いのだ。來貴は、"白天黒滅"に魔力を込める。


(凜姉に涙を流させたこと。……それが、俺の一つ目の罪だ。二つ目と比べたら、まぁ小さな方だ。だが、確かな"罪"として俺の中に積み重なっている――)


 それは、來貴の戦う理由。凜の涙には、確かな哀しみがあった。自分たちのために、一人で戦う來貴への哀しみだ。


 これまで、來貴は多くの罪を重ねてきた。法律的な罪も、自戒と言う意味での罪も。だからこそ、それを償わなければならない。自身の強さと、心を以て。


「――うおおオオオッ!!」

「――何ッ!?」


 ジーレストは、風雷を操って怨霊の魔の手を消し飛ばした。同時に、迫っていた來貴も吹き飛び、地面に激突してしまう。來貴はすぐに立ち上がったが、上にいるジーレストの様子を見て目を見開く。だが、すぐに冷静になった。


(……アレが奴の全てか。……恐らく、次の攻防で決着は付く。だが、込められている魔力量は俺の魔力残量より上……ぶつかり合うしか無いが、押し負けるかもしれない……)


 ジーレストは、紅の嵐となっていた。雷雲を纏い、強くその場に存在している。存在しているだけで、周囲に甚大な被害をもたらしている災害となっていた。


『――仕方あるまい。俺の力を貸してやろう。……あくまで魔力だけだが、それで十分だろう』


 その"声"が聞こえてくると同時に、來貴の身体に魔力が溢れ出す。……しかしそれは他人の魔力のようで、來貴は少し違和感があった。來貴は死黒暴滅(ブラック・デストロイ)を使い、その魔力を身体に馴染ませる。


(これならば、勝てる……!)


 "白天黒滅"に魔力を込め、能力を最大限に使う。


「ウラアアァァァ!! 天滅の嵐(てんめつのあらし)!!」


 雄叫びを上げながら、來貴へと迫るジーレスト。嵐は、更に勢いを増していた。


「……神武(しんぶ)黒龍刃(こくりゅうじん)!」


 天へと飛び立ちながら、"白天黒滅"を振るう。


 ――それは、覚醒により身についた技。來貴は何故か、使えるような気がしたのだ。ただ、通常のものでは威力が足りないため、來貴の力でアレンジを加えているのだ。


ウルアアアァァァァ!!!


 黒銀の龍が、咆哮を上げながら刃となって空を征く。下から這い上がってきた黒き龍の刃が、天を滅ぼす嵐を噛み砕かんと迫る。天を滅ぼす嵐も、それに呼応して勢いを増していく。


ドゴォンッ!!


 ――耳を劈くような轟音を上げながら、衝突した。黒銀の龍が開いた口に、天を滅ぼす嵐が突き刺さっている。そのまま貫いてしまうような勢いがあり、出力もそちらの方が上だった。その勢いに、思わず來貴は怯んでしまう。


 だが深呼吸をし、もう一つの罪を心に浮かべる。


(――二つ目の罪。……柚那を、護れなかったこと。これが、俺の中に大きく遺っている。……だけど、決めたんだ。刀華先生たちを……俺と柚那が大好きな、凜姉を護ることを!)


 その瞬間、黒銀の龍は大きく畝った。同時に來貴が更に魔力を込め、その龍の身体を巨大化させる。嵐も負けじと対抗するが、黒銀の龍が……來貴が持つ意思の方が強かった。


 大きく咆哮を上げた龍は、やがて嵐を噛み砕く。それによって空は晴れ、晴天となる。


 数秒後、黒銀の龍は姿を消す。その中から現れたのは、生身の來貴だった。悪魔化(デーヴィス)も解除されていて、魔力はもう底を突いていた。


 ――ジーレストは、黒銀の龍が殺した。それを確認した來貴は、静かに空中から落下した。


 度重なる無茶をしたせいで、身体がもう限界なのだ。いくら悪魔だったとしても、覚醒に他人からの魔力回復は、さすがにキツい。ジーレストが死ぬまでは、尋常じゃ無い意思で意識を保っていたようだが、終わったことで安心したのか意識が落ちたようだ。


 このままでは、さすがに來貴でもマズいだろう。來貴は天滅の嵐(てんめつのあらし)を迎え撃つとき、30m浮かんでいた。そのまま落ちても無事だろうが、怪我はするだろう。


 そこで、ある人影が現れた。


「――お疲れ様です、來貴君。よく頑張りましたね」


 琴音だ。優しい声音で、來貴に言葉を送っている。そして空中から落ちてくる來貴を、優しく受け止めた。


 ――來貴の、勝利だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ