10話「合同実戦訓練・前編」
六限目は、第一戦闘場で行われる。武器を持って来いと刀華先生に言われたので、銃剣をバッグに入れたまま持って行く。銃剣以外の物は、机の中に置いてきた。
「來貴君、早く行きましょう。そうしないと間に合いませんよ?」
「……文奈か。行こう」
「はい」
そして、俺は文奈と一緒に第一戦闘場へ行った。ちなみに黎は、一人で行っていった。というか、文奈は武器を持たないのか。俺は銃剣、黎はスナイパーライフルと武器を持っていたが……文奈は能力でゴリ押しするけいか。
そんなことを考えている内に、第一戦闘場についた。
見回してみると、1年1組のクラスメイトはほぼ全員いる。どうやらまだ来ていないクラスメイトもいるようだ。
そのクラスメイトの殆どが、武器を持っている。
六限目は合同で実戦訓練。なら、誰と合同なのかというと……。
そして、俺は1年1組が集まっている方とは反対の方を見る。そこには、武器を持っている生徒が沢山いる。そう、1年2組だ。六限目は、1年2組と合同実戦訓練をする。何をするかは知らないが。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、六限目が始まる。この第一戦闘場には、刀華先生と、1年2組の担任……伏見修哉先生と先生が二人いる。それと、1年1組の生徒と1年2組の生徒が全員いる。まぁ、1年1組は何人か欠席しているのだが。1年2組の欠席事情は知らんが。
「では、授業を始めます。來貴君、号令お願いします」
「……起立、気をつけ、礼」
「「「「「「お願いします」」」」」」
「着席」
「「「「「「失礼します」」」」」」
というか、実戦訓練でも号令はあるのかよ。しかも俺だし。まぁ、授業終わりの号令は1年2組の誰かがすると思うし、別にいいか。
「今回の実戦訓練は、1年2組と合同です。何をするかは、伏見先生が説明してくれます」
刀華先生のその言葉を聞いて、全員が伏見先生の方を見る。伏見先生の表情は、溜息でもつきたいような表情だ。説明を押しつけられて、疲れているのだろう。まぁ、刀華先生の端折った説明よりも、伏見先生の説明の方がいいと思ったからか。大変だな、伏見先生も。
「今回は、二人一組のペアを組んでもらう。それから、何をするか説明する」
なん……だと?それは、俺みたいなぼっちににとっては悪魔の一言だぞ、伏見先生。俺がそんなことを考えている内に、周りはどんどんペアを組み始める。俺は焦り、誰か余っている人が居ないか周りを見る。文奈は、もう別の女子生徒と組んでいた。黎も、もう別の男子生徒と組んでいた。……ヤバい、これはピンチだ。早く組まないと。
1年1組の方を見てみるが、もう俺以外は組み終わっていた。……あれ、これ詰んだか?だが、まだ1年2組の生徒がいるはず……そう思い、俺は1年2組の方を見る。1年2組は、俺と同じように余っていた生徒が一人だけ居た。
「ん? 鉤人、余っているのか?」
「あれ? 來貴君、余っているのですか?」
余っているという事実を、刀華先生に気付かれた。どうやら、1年2組も生徒が一人余っているらしい。というか、一人だけ余るのはなんか嫌な気分だ。
「その二人で、ペアを組んでくれ」
そして、俺はその余った生徒と組むこととなった。後、刀華先生はいつか仕返しをしてやる。さっきの発言のせいで俺はこの場にいる全生徒に注目される羽目になったんだ。まぁ、それは向こうの生徒も同じようだけど。
「……俺は白凪鉤人。よろしく」
「……俺は結月來貴。よろしく」
互いに、名前以外全く同じの自己紹介をした。俺が最初に見た白凪の顔は、怒りが籠もっているような気がした。多分、伏見先生への怒りだろうけど。とりあえず、今は伏見先生からの説明を聞こう。
「全員ペアを組めたようなので、何をするか説明する。今回は、ペアで各自模擬戦をやってもらう。ここで模擬戦のルールを説明する。当たり前だが殺すのはなしだ。後は、実弾の使用禁止、致命傷を与えるのも禁止。能力や剣は真剣を使ってもいいが、ルールは守れ。以上だ。早速、各自で模擬戦をやってくれ」
伏見先生がそう言い終わった後、周りの生徒は、模擬戦をする場所を探し始めた。この第一戦闘場はとても広い。直径約500m以上ある。とりあえず、俺達も模擬戦をしないとな。
「結月、俺達も模擬戦をするぞ」
「ああ。で、場所はどこにするんだ?」
「ここでいいだろ。周りに人は居ないし」
白凪の言葉に、俺は周りを見渡す。俺達に一番近い生徒のペアは、俺の計算では約30mは離れている。これなら、大丈夫か。周囲の人に俺が放った流れ弾が当たるかもしれないが。まぁ、当たったら謝罪はするけど。
「じゃあ、早速やろうぜ」
俺の返事を待たず、白凪は持っていた剣で俺に斬りかかる。咄嗟に俺は銃剣を出し、防ぐ。俺と白凪の力は大体同じなようで、そのまま硬直状態になった。こいつ、思っていた以上に強いな。俺と同じくらい強いんじゃ無いか?
「強いな、お前」
「お前もな」
そう言った白凪の顔は、笑っている。心なしか、俺も笑っているような気がした。俺は銃剣の刃を形成して、白凪の剣を押し返す。押し返して白凪に隙が出来た瞬間、俺は白凪に斬りかかる。だが、俺の斬撃は……。
「……能力か」
隆起した地面によって防がれた。これは……能力でやっているだろう。かなり強そうな能力だ。警戒して戦おう。
そして、俺は土の壁を斬って飛び越え攻撃を仕掛ける。白凪は、俺が土の壁を斬って飛び越えるとは思っていなかったようで、驚愕して反応が遅れた。だが、寸での所で反応して剣で攻撃を防いだ。なかなかの反応速度だ。
まぁ、そんなことは気にせずに攻撃を仕掛けよう。多分、身体能力は俺の方が上だし。
次々と、俺はあらゆる方向から攻撃を仕掛ける。白凪は、それを全て剣で防いだ。俺は二刀、白凪は一刀だけ。手数は俺の方が上なのに的確に攻撃を防がれる。これは、一筋縄では行かなさそうだ。
「ぐっ……」
俺の猛攻で、白凪は攻撃出来ないで居るようだ。攻撃は最大の防御とも言うし、このまま攻撃し続けていよう。
攻撃し続けようと、白凪の腹部を蹴ろうとした瞬間……。
「がはっ!」
白凪が剣を伸ばし、俺の腹をつく。だが、剣の先端は鋭くなかった。これは能力でやったことだろう。魔力を纏うのは間に合わなかったが、特別痛いというわけでも無いし、ダメージにはなっていない。俺から距離を取るためにやったからだろう。
そして、白凪はまた地面を伸ばして俺に攻撃する。その場から跳躍して俺は攻撃を躱すも、地面が俺を追ってくる。
追ってきた地面を踏み台に、俺は白凪の数メートル上へ行く。俺が上に行ったことで、白凪は驚きながらも俺の方を見ている。
俺は持っている銃剣を白凪の方に向けて、発砲する。発砲したのは勿論、ゴム弾だ。伏見先生から実弾の使用は禁止と言われているからな。だが、発砲した銃弾は剣で弾かれたようだ。これは俺の想定内なので、迫り来る地面を斬りながらまた発砲する。
が、それも防がれる。まぁ、これも想定内だ。もうすぐで白凪の真上に降下する。そのときに、仕掛ける。
数秒後、俺は白凪の真上で、逆立ちの態勢でいた。俺は、白凪の真上に来る寸前で体を反転させたのだ。
周りから迫る地面を斬りながら、俺は白凪に攻撃を仕掛けていく。だが、俺に伸びてくる地面は3つ。故に、白凪の方が手数が多いのだ。
とりあえず、一旦距離を取ろう。俺は体を反転させ、白凪の顔面を蹴り距離を取る。白凪は結構イケメンなので、蹴ったときは結構爽快だった。
「……結月、お前も能力使えよ」
「……使ってないこと、気付いていたのか。白凪」
確かに、俺はまだ能力を使っていない。だが、白凪はまだ能力を使っている。白凪だけ能力を使って、俺が能力を使わないというのはフェアでは無いだろう。
そして、俺は能力を使用する。まずは、脳のリミッターの覇壊。あまり意味は無いが、まぁ最初なのでこれ位だろう。脳のリミッターを覇壊したことで、迫り来る地面の動きが遅く見える。俺は地面を回避して、一気に白凪に接近する。
「何!?」
一瞬で白凪に接近し、蹴り飛ばす。白凪は反応出来なかったようで、そのまま吹っ飛んでいった。まぁ、まだ来るだろうな。というか、あいつ別のペアが模擬戦している場所に吹っ飛んでいったな。大丈夫だろうか。いや、大丈夫か。
「……すんませんでした。蹴り飛ばされてここまで来たんです」
約数十メートル先で、白凪が謝罪をしている声が聞こえた。とりあえず、白凪が戻ってくるまで気長に待つか。
俺が気長に待とうと思った直後、剣先がこちらへ伸びてきた。どうやら、もう終わったようだ。近づいてこないのは、接近戦は分が悪いと思ったのだろう。
伸びてきた剣先を銃剣で防ぐ。そして、白凪の剣を上に弾き接近する。だが、地面を隆起させて俺を阻む。だが、阻むなら斬ればいいだけだ。
ザンッ!
迫ってきた地面全てをぶった切り、前方に跳躍する。そして、両手に持っている銃剣を白凪に向かって交差するように斬り下ろす。だが、白凪が持っている剣で防がれる。空中姿勢のまま攻撃を仕掛けたので、踏ん張りがきかない。それはちょっとヤバいな。
……これも防ぐか。まぁ、気にせず攻撃を仕掛けよう。
俺は、白凪の剣を弾く。その後、地面に着地して再び跳躍する。そして、白凪の後ろに回り後ろから蹴りを食らわせる。とりあえず、今は優勢だが油断しないようにしよう。このままだと攻撃を食らいそうなので、体勢を反転させる。いつでも攻撃が来てもいいようにしよう。
「……マジで強ぇな、あいつ」
白凪の声が聞こえたと同時に、後ろから地面が迫ってくる。後ろから迫る地面を切り裂き、白凪の方を見据える。白凪の体からは、純白の魔力が溢れ出ていた。あいつが魔力を使うなら……俺も魔力を使おう。そして、俺の体からも金色の魔力が溢れ出す。
俺は銃剣を握り直し、刃の方に魔力を込める。
そして、俺と白凪は走り出した。互いに、持っている得物に魔力を込めているようだ。俺は、一気に接近して銃剣で突く。だが、躱されて後ろに回られる。
その後、白凪が持っている剣を振り下ろす。それを、もう片方の銃剣で防ぐ。
が、両手持ちと片手持ちでは力が不利だ。能力で強化するということも出来るが、それはしない。とりあえず、回避して回り込もう。俺は剣を受け流し、白凪の後ろに回る。そして、左手に持つ銃剣で並行に斬る。だが、それは白凪が体を前に倒すことで躱される。
そして、白凪は右足で俺の腹部を蹴ろうとする。右手の銃剣でそれを防ぎ、左足で脇腹を蹴る。白凪は腕で防いだが、分が悪いと思ったのか距離を取った。
俺は、銃剣に魔力を集中させる。白凪も、剣に魔力を集中させているようだ。互いに、やろうとしていることは同じ。魔力の斬撃を飛ばす。魔力の斬撃を飛ばすのは、案外簡単だ。だから、白凪も出来るのだろう。まぁ、刀や剣を扱う者は大体誰でも出来るけどな。
金色の魔力と純白の魔力が、輝き出す。
俺の持つ銃剣には金色の魔力が、白凪の持つ剣には純白の魔力が纏われる。白凪が放つ魔力圧は、とても大きなものだ。同時に、俺の放つ魔力圧も大きなものになっているだろう。
そして……俺は、白凪に向かって駆け出す。白凪も、俺に向かって走り出しているようだ。
「うおおおおおお!!」
「うおおおおおお!」
互いに声を上げながら、持っている得物を振り下ろす。俺はクロスに、白凪は、斜めに。そして、互いの魔力が斬撃となって飛翔する。数秒して、二つの斬撃は衝突した。
衝突した瞬間、衝撃波が周囲を襲った。思わず、吹き飛ばされそうになった程に強い衝撃波だった。二つの斬撃は、地面を削りながらせめぎ合う。だが、斬撃の数が多い俺の方が有利だ。
そして、俺は再び魔力の斬撃を飛ばす。それを見て、白凪も再び魔力の斬撃を飛ばす。
そこからは、魔力の斬撃の飛ばし合いになった。無数の金色の斬撃と純白の斬撃が、周囲を破壊しながら相手に迫る。
だが、次第に金色の斬撃が白凪に届くようになった。俺の方が手数が多いので、白凪は捌ききれないのだろう。
「いい加減にしてください!」
斬撃を飛ばし合っている途中、そんな声が辺りに響いた。




