1話「全てが初まる時」
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――ある、真夜中の事。その日の天気は雨模様で、人が誰も居ない。……だが、一つ異常な場所がある。
異常な場所とは、ビル。七階建てのそれは、四階以上が原型を留めていない。崩壊したビルの中に雨が入り込んでいる。そして、そのビルには大量の死体が転がっている。他にもビルはあるが、その全てが一部崩壊していて、死体が転がっている。
そんな死体の山の中で、一人の少年がいた。容姿端麗だが、その顔と身体には血がこびりついている。それさえも、彼を美しく仕立て上げる要素と化していた。その黒髪で黒色の瞳を持つ少年・結月來貴は電話を掛ける。数コールの後、掛けた相手は電話出る。
『もしもし、來貴君。終わりましたか?』
電話に出た相手は、透き通るような美しい声で來貴に話しかける。
來貴は、ある"依頼"を受けていた。その"依頼"が終わったので、電話を掛けたのだ。それも相手はわかっていたようで、それを早速聞いてきた。
「……はい、終わりました。ですので、もう帰って良いですか?」
來貴は、電話の相手にそう問いかける。
『貴方の元相棒さんが、無事で、そちらも終わっていたら良いですよ』
「……そうですか」
そして來貴は、自身の元相棒を探す。元……というのは、かつてタッグを組んでいたが、今はもう組んでいないからだ。今回の依頼では、一夜限りの復活という訳である。……まぁ、これからも復活するかもしれないが。
早く帰りたいという気持ちを一旦堪え、來貴は自身の元相棒を探す。探したら、すぐに見つかった。
「來貴か……こっちは終わったぞ。そっちも……終わってるか」
その少年・紫﨑兇介は後ろに来た來貴の方へ振り返りながら、來貴に向かってそう言う。それを確認した來貴は、スマホを耳に当て報告をする。
「西宮寺さん。兇介は無事で、そっちの方も終わっていました」
來貴の言葉に、西宮寺琴音は不満げな声で來貴に言う。
『前々から"琴音"で良いって言っていますのに……まぁいいです。では、もう帰還していいですよ? 後処理はこちらでやっておきます。お疲れ様でした、來貴君、兇介君』
その言葉を最後に、電話が切れる。
「來貴、あの人は帰っていいって?」
兇介の問いに、來貴は答える。
「ああ。帰るぞ」
そう言って、來貴は歩き始める。慌てて兇介もついて行く。
そうして、二人が家に帰っている中、兇介が口を開く。
「俺達、別の高校だよな。小学、中学と一緒だったのにな……まぁ、親父の都合で京都に行くことになったから仕方ねぇか。まぁ、來貴なら大丈夫だろ。凜さんもいるし」
兇介の茶化すような言葉に、來貴は冷たい目線を兇介に向けながら呟く。
「……凜姉は関係無いだろ。それに、別の高校でもどうせ会えるだろ」
そう言いながら、二人は歩いて行く。兇介は、來貴が言った言葉を聞き、少し笑みを浮かべこう言う。
「――そうだな」
そして、兇介は言葉を続ける。
「……にしても、今回の依頼は真夜中だったし面倒だったな……敵国の巨大組織を二人で壊滅させろとか、無茶にも程がある」
兇介はそう愚痴っているが、出来ないとは言っていない。現に、兇介と來貴の二人は傷一つ負っていない。
そうして歩いている中、不意に來貴は呟く。
「……ここら辺だな」
來貴が呟いた言葉を聞き、兇介は察した。
「……そうだな。じゃあまたな!」
そして、兇介は來貴とは別の道を歩いた。兇介を見送りつつ、來貴は自身の家へと足を運ぶ。その途中、あることを考える。
(……一ヶ月後、あの人が校長を務める高校に入学するのか……まぁ、凜姉もいるから大丈夫だと思うけど。……だが、面倒な事はなるべく避けたいな)
來貴は、次の一ヶ月後……四月にある高校に入学する。
そこで、どんな事が待ち受けているのか。來貴は、その事については特に何も考えず、帰宅していった――――。
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「今日、だな……」
――――今日は、四月六日。あのとき兇介と一緒に依頼へ行った時から一ヶ月経った。今日は、俺がある高校に入学する日だ。
そんなことを考えつつ、俺は部屋から出て階段を降りる。一階に着いた後、リビングへ入った。すると、
「おはよう! 來くん! 朝ごはん出来たから食べよう!」
俺の二つ年上の姉である、結月凜が来た。凜姉は、背中まで届く艶やかな長い黒髪、全てを見通すような綺麗な青い瞳を持つ。ちなみに、凜姉の瞳は母親の瞳の色と同じである。
顔も性格もスタイルも良いので、学校での告白が絶えない。だが、OKしたことは高校三年生までに一度も無いらしい。
「凜姉、おはよう」
俺は、とりあえず朝食が置いてある机の近くにある椅子に座った。めんどくさいことにならなければいいのだが、と俺は考える。
「よいしょっと」
いつものごとく凜姉が隣に座ってきてこっちに体を寄せてくる。そう、俺の姉である凜姉は、重度のブラコンなのだ。俺が十歳の時のある事件をきっかけに、ブラコンが悪化し続けた。どうしてこうなったのだろう。
え? これだけじゃそんなどうしようもないブラコンに見えない? ……まぁ、これからのことを見れば分かるよ。
「來くん、はい、あーん」
(……本当にめんどくさい)
凜姉はいつもこれをやってくる。顔良し、スタイル良し、性格も良い、めちゃくちゃ可愛い18歳の美人なのだが、ブラコンなのだ。そして、いつも俺にこういうことをしてくる。
……まぁ、もし食べなかったらめんどくさくなるので一応やるのだが。
「………………あーん」
食べたが……おいしい。本当においしいのだ。
この朝食は凜姉が作ったのだ。ブラコン以外には欠点のないほどに完璧な美人なのに、ブラコンなのだ。普通、弟に朝食を食べさせる姉がいるか? ……いや、世界は広いからいるかもしれない。と、俺は考えながら、もう一つの気配を感知する。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おはよう!」
俺の妹である結月琉愛が来た。肩ぐらいで切りそろえた黒髪に、凜姉と同じ青い瞳を持つ。凜ちなみに、琉愛もブラコンだ。スタイルはまだ中学二年生なので発展途上だが、それなりに良いとは思う。そして、今まで告白された数は多いらしい。
「お兄ちゃん、隣座るね」
(……隣に座ってきやがった。いつもの事だけど)
これで右には凜姉が、左には琉愛が座っているということになる。まぁ、いつものことなのだが。琉愛もちょっと抜けているが、とても可愛くて美少女だ。……なのに、ブラコンになった。思えば、それは琉愛が小学三年生だった時からか。
……そして、琉愛も俺が中学生の時に一悶着あったのをきっかけに悪化した。
琉愛は13歳の中学二年生。そろそろ兄から距離を取ってもおかしくない感じの年頃だ。本当かどうかは知らないが。
それに、凜姉は俺のことを"來くん"というよくわからんあだ名で呼ぶ。……俺も凜姉の事を"凜姉"って呼ばされているが。琉愛は未だに"お兄ちゃん"と呼ぶし……まぁ、お兄ちゃん呼びは琉愛の年だとまだあるかもしれないが……どうなっているのだろうか。
その後、朝食も食べ終わった。これから高校の入学式だ。琉愛も中学の始業式、凜姉は高校3年になる。そして、俺は姉の凜姉と同じ高校に入学する。
その高校の名前は、軍事育成機関高校。軍事機関という、政府と繋がっている機関が運営する学校だ。
軍事機関について詳しく説明すると、軍事学校という軍人を育てる学校を卒業した者が入る仕事場だ。俺も、軍事育成機関高等学校を卒業したら、軍事機関最強の軍に所属することになっている。何故かは知らない。
そして、軍事機関の本部は、今俺達が住んでいる東京にある。
軍事機関が主に何をしているかというと、日本……いや、世界の裏側の闇を武力で消すという事だ。例えば、能力者の集団テロのメンバーを全員殺して、それを見た者は能力で記憶を消して返すととか。その軍事機関で軍人をしている人は、大体化け物だ。俺も何回か戦ったことはあるが、勝てたことは……少ない。
そして、憲法や法律とは別に動いているため、それに縛られない。代わりに、軍事機関の決まりに縛られている。
大体これ位だろうか。
ちなみに、琉愛が通っている中学は、俺がかつて通っていた中学である、軍事育成機関中学校だ。こちらも軍事機関が運営している。
凜姉達結月一家は代々何かの能力を持っている。だいたい一つつだ。二つ以上持っているやつはめずらしい。能力を持っている者は、能力者と呼ばれる。
……そして、俺が生まれ持っている能力は、一つだけだ。この能力は……所謂チート能力である。
凜姉と琉愛も一つ、生まれ持った能力を持っている。
そう考えている内に、朝食を食べ終わった。そして、俺は学校へ行く準備をする。……制服なんてものは無いので、準備するものなんて殆ど無いが。
そうして準備を終え、俺は学校へ行こうとする。すると、凜姉から声を掛けられた。
「來くん、もう行くの? 行くなら一緒に行こうよ!」
「……いいぞ」
「やったぁ!」
そして、俺は凜姉と一緒に学校へ行くこととなった。今日は入学式なので、上級生の出番は無いんじゃないかと思ったが、どうやら入学式にも授業が一限だけあるそうだ。
そして、家を出て学校へ向かう。
その間、凜姉からいろいろ学校の事を聞かされた――――。
――――そうして、学校に着いた。
「……それじゃあ、一年生のところ行ってくるから」
「うん、またね!」
凜姉はそう言い、三年生の玄関の方へ行く。さて、俺は一年何組なのだろうか。そう考えながら、俺はクラスの表を見る。
結果、俺は一組だった。この学年は四クラスあり、クラス順はその人に合ったクラスになるらしい。
そして、一組の俺の席は窓側の一番後ろだった。俺はその席に歓喜した。
(やったぜ。これで寝放題だ)
俺はその事に歓喜しながらも、まだ来ていない隣の席の人について考える。まだ来てはいないが、普通の人だといいな、と思っている俺がいる。
「あなたが、隣の人ですか?」
どうやら、誰かが来たようだ。その声は、透き通るような高い声だった。そして、俺はその声がした方を見る。すると、美少女がいた。
「……ああ、多分そうだ」
俺がそう言うと、その美少女は困ったようにこう言った。困っているような仕草だけでも、男を何人も落とせそうだ。
「多分って……そこは言い切ってくださいよ……」
そして、俺は最初に聞くことを聞いていなかったことを思い出し、その美少女に名前を聞く。
「というか、誰だよ」
すると、その美少女がハッと思い出したような顔をして、自分の名前を言った。
「そういえば、まだ名前を言ってませんでしたね。私は、稲垣文奈です。あなたは?」
稲垣文奈の見た目は、茶色い髪に緑色の目をした、スタイルと顔が良い美少女だ。髪は、肩よりちょっと長い感じだ。普通にモテそうだ。
「……結月來貴」
「結月來貴君……ですか。よろしくお願いします。來貴君」
こいつはいきなり下の名前で呼ぶのかと、最初に俺は思った。だが、美少女なので気にする奴はいないだろう。
「……よろしく」
とりあえず、俺もよろしくと言っておく。すると、稲垣は俺の隣に座りこう言ってきた。
「文奈と呼んで下さい」
文奈でいい……と、言われたので、もう一度よろしくと言っておくことにしよう。
「……わかった。……よろしく、文奈」
……俺も下の名前で良いのか。そう心の中で考えながら、文奈の方から目を逸らす。
そして、窓の外を見る。だが、窓の外は校門しか見えなかった。景色が全然良く無かった。
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「……これで、全ての準備は整った」
「はい……仰せのままに」
そして、この暗い場所を眩い光が辺りを包んでいく。その光は、思わず見惚れてしまうほどの綺麗な光だった。その光が収まったときに、誰かが出てきた。
出てきたのは、髪がボサボサの男だった。
「……くふふ……はは……遂に、目的の達成に動けるな……イマジュア」
「そうですね……では、私はそろそろ行って参ります」
「わかった……行って参れ」
イマジュアと呼ばれた者は、暗い場所から跳躍し、数秒で何処かへ消えていった。そして、残る男は何かを考えるような仕草をする。
「まだ……暗号は解けていない。探さないとな」
そして、男は何処かへ裸足のまま何処かへ行っていった。
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