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第43章 VS ゴーレム

 このまま!体ごとゴーレムに突っ込んで!殴りぬけるッ!


 バグォォォン。


 ゴーレムの体が中心から爆ぜ、無数の破片となり、壁に向かって飛び散る。


 その質量を無視するように、俺はゴーレムを貫通、その脚部だけが残る座標から20ヤードほど後方に、転げながら着地した。


 なんだ。殴ったくらいで壊れてくれるんだな。俺は少し拍子抜けた。


 あと5体か。


 ……マッド達はどこだ?周囲に立ち上る土煙でよく見えない。


 あの二人だし、大丈夫だろ多分。いいや。暴れよう。


 ギャッ、バグァァン。


 2体目に向けて跳躍、今度は左拳の一撃で腹部から破砕。


 いざ実戦となると利き腕の右ばかり使ってしまうから、たまには左も使っておこう。




 ユニラテラル(左右独立)動作は、上半身の筋トレ種目では意外と少なかったりするし。神経系の働きが変わるから、実は片方ずつ動作するほうが強い力発揮も可能なんだよな。




 あれ、そういえば魔石は?2体とも、粉々になった胴体からは出てきていない。


 じゃあ、頭部かな。


 ギャドッ、パキュ。


 3体目、10ヤードはある高さの頭部を殴り飛ばし砕いたら、魔石の光がキラキラと見えた。やっぱり頭で正解か。


 あ、勢いがつきすぎた。


 ドゴッ。


 ジャンプした速度が落ちず、飛んでいってしまった。そのまま俺は最初にゴーレムが出てきたあたりの壁に激突、左半身がめり込んだ。痛たた。


 バギィッ、ガラララガッ。


 抜け出す時に、壁ごと多少もってきちゃったな。美麗な壁面が広範囲にわたってボロボロ崩れている。まあ魔法で元に戻るんだし、大丈夫だろ。知らんけど。




「あはははっ、マット!君が暴れすぎたら、僕達が暇になっちゃうなぁ!」

「そうだよ!土人形の一つか二つ、チャラ坊にも残しといてやりな!ひゃひゃひゃ」


 二人の声がした。ずいぶん高いところから。見上げると、マッドとイリスが青白い光で繋がれたように舞っている。


 マッドの左手には、身の丈の倍はあろうかという刀身の、これも青に煌めく魔法剣。


「行くよ、イリス!」

「やっちまいな!」


 ザガッ。


 腕を振り上げ攻撃しようとしていたゴーレムの、頭部から胴体、脚に至るまで、全てが一瞬にして両断。岩のような体は左右に折れ、ゆっくりと床に沈んだ。


 ガラララッガララ。


「うん、軽く振れるし切れ味も良い!こりゃ名刀だな、イリス!」

「そうだろ。ひゃひゃ、あたしの水魔法なんだから当たり前さ」

「でもお婆ちゃん、魔力の消費はどう?」

「このくらいならお安い御用。魔法を対象に向けて飛ばすより、よっぽど節約できてるよ」

「あっははは、ネコちゃんとのコンビも悪くないなぁ!」




 強いな、マッド。やはり動きに無駄がない。闘技場では武器を持ってなかったし、そもそも俺達は魔法も使えない。これまでに俺が見て、闘ってきたマッド・エリスビィとは違う。


 剣と魔法が支給されている今の状況なら、マッドは「勇者」ともやり合えるレベルなんじゃないだろうか?


「マッド、あと2体!どうします?」

「1体ずつ担当しようよ!僕達は、こっちの奴を!」

「了解」


 ドグァッ。


 ここの床も、全力で蹴ったらすぐ砕けるな。バランスを崩してしまったまま、俺は最後の1体に向かっていた。


 結局、俺は背中から激突。攻撃というより事故みたいなものだったが、それでも衝撃でゴーレムはバラバラになった。


 倒れ込んだ俺は、片膝を着いてから、頭を上げてゴーレムの残骸を見つめた。


「どうしても砕けますね。これも、ゴーレムのサガか……」


「何、その台詞?なんか神っぽいけど」不意にクロノが姿を現した。


「クロノ様、大丈夫でした?魔力は?」

「ずっと隠れてただけたし、このくらいなら平気。心配かけてごめんね」


 ガララッガラララッ、ゴドォン。


 轟音があって振り向くと、多重の斬撃を受けたゴーレムが、ゆっくりと崩落していくのが見えた。


「チャラ坊、動きが洗練されてるねぇ。いやー華があるわ」

「そりゃどうも。イリスちゃんにも、肉球っていう華があるよ」




 俺達は魔石を回収。今まで見たことがないほど大きいものだった。まあ俺が1個、それごと砕いてたけど。破片を拾い集めてクロノに渡した。


 仰々しいゴーレムの罠は、呆気なく片づいた。


「さっきマットが壊した壁、そこから通れそうだね。おそらく、まだ入ってない空間だ。


僕達も何度か探索してきたけどさ、壁をぶっ壊して探すっていう発想はなかったよ。はははっ」


「成り行きですけどね。クロノ様、俺かなり腹減ったんですけど」

「わかったよ、ご褒美に肉を焼こう。魔石も大量入荷したしな」

「30ポンドくらいお願いしますね」

「30ポンド!?あんた、ほんとに筋肉オバケだねぇ」

「もう僕は慣れちゃってて驚かないよ!あははは」




 みんなで食事を終え、マッドが大広間の反響を面白がって歌ったりしていた。聴き覚えはない曲だったが、懐かしいようなメロディで、美しい歌声。


 ……俺は、マッドと初めて出会った時を思い出していた。二人で闘技場の賞金を山分けして、シャオン・ライの仲介所から出たマッドは、あの時も歌っていた。


 あしたっていまさ、と。悪人面の男達を引き連れて。




「イリス、罠はどうかな?」

「うーむ……こりゃあ困ったねぇ」


「クロノ様、どうなんですかね」

「うん。罠の数が多すぎるんじゃな」


 崩れた壁の向こうに見えている空間。こちら側の部屋とはうって変わって、仄暗い。


 鎧なのか人形なのか、壁際に大群が並んでいるけど、あれ全部が罠なのか?


「見えているものは、全て罠じゃ。そして、それこそがカムフラージュってやつじゃな。


紛れさせるように、床にも天井にも大量の罠が仕掛けられておる」

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