第九話 ステラ=マイヨール
ステラ視点のお話です。
私は騎士見習いのステラ=マイヨール 17才。
なんで女の子が騎士になろうとしてるかって言うと、まあ簡単に言ってしまえばお父さんの影響ですかねぇ。
私のお父さんは国の騎士団の中でも、武力は一番と言われてた第二騎士団の団長をしてたんですよねぇ。
子供ながらに煌めく鎧を着てる第一騎士団よりも、艶消しの黒い鎧を着てたお父さんのが格好いいと思ってました。
そんなお父さんも私が子供の頃、北の魔の山から攻めてきた魔族との戦いで、相手の将軍と呼ばれてた魔族と相討ちになって死んでしまいました。
お母さんはお父さんが死んでしまってとても悲しみました。もう生きる気力がなくなってしまうほどに。
だから私、お母さんを笑ってほしくて言ったんです。
『私、騎士になる!!それでお父さんの仇討つんだ!!』って
お母さんは一瞬驚いたような顔をしましたけど、その後に私をぎゅっと抱き締めて、泣いて謝ってました。
多分ですけど、私の言葉で自分もいつまでも悲しんでちゃいけないって思ったみたいです。
まあ、私もその後はスクスク大きくなって去年16才になったのを期に、騎士団に入団した訳なんですが、いきなり騎士になれるわけもなく、見習いとして第5騎士団の副団長のエルザ様のお付きとなったわけです。
エルザ様は数少ない女性の騎士で、訓練の時は厳しいんですけど、それ以外の時は本当の姉の様に接してくれる、憧れの女性なんですよね。
一般の市民にも人気があって、特に若い女の子が『エルザ御姉様親衛隊』なんてものを作ってるらしく、国の式典なんかでエルザ様が銀のライトメイルを着て行進に加われば、黄色い声が飛び交うほどです。
そんなエルザ様が私に親しげに話し掛けるものですから、すっごい嫉妬の目で見られるんです。
まあ、直接何かされたりはしないんでいいですけど、それでも女の子達の気持ちもわからないでも無いもんですから、一度エルザ様に「あんまりみんなが見てる前では私に話し掛けないほうがいいのでは?」と言ってみたんです。
そしたらエルザ様ってば「ステラは私のことが嫌いなのか?私が仲良くしたら迷惑なのか?」と今にも泣き出しちゃいそうな顔で言うもんですから、結局今でも私は嫉妬の視線にさらされてる訳なんですけどね。
まあ小さい頃から仲がいい友達なんかに言わせれば「死ぬほど贅沢な悩みだねぇ」なんて言われたりするんでいいですけど。
まあ、そんな風に騎士団見習いとして、毎日頑張ってたんですけどある日のこと、私たちの国に面した海に海賊が現れたんです。そりゃもう今までどこに隠れてたの?って言うくらいたくさんの海賊船が。
私たちの国は海に面してると言うこともあって、漁業と他の大陸との交易なんかが主な仕事なんですよね。
そんなとこに来て海賊が出ちゃったもんですから仕事になるはずがありません。漁業は引き網漁くらいは出来るので全く出来ないってことはなかったんですけど、でもやっぱり他の国に卸すだけの量が確保出来るはずもなく、途方に暮れてたんですよね。
そこで王様は海軍を動かすことにしたんですよ。
海軍は騎士団と違って式典や魔族討伐には出てきませんが、交易船の護衛なんかしたりする軍隊みたいものなんですよね。
海のことは海のエキスパートに任せろって感じですかね?
でもって海軍が海賊船に威嚇攻撃を仕掛けたんですよね。
そしたらなんと!海賊のやつら海獣までテイムしてるじゃありませんか!!
さすがに海中から攻撃されて船底に穴を開けられてはどうしようもありません。
さすがの海軍もみるみるうちに数を減らし20隻も出た船は半分以下の8隻しか帰ってこれませんでした。
困った王様は、オードレス王国を束ねる国王様に英雄を動かして欲しいと使者を出したんだそうです。
あ、英雄っていうのは中央のオードレス王国に7人いる人たちの事で、一人一人が一騎当千と言われるくらいの武力や、魔法の使い手で、ものすっごく強い人たちなんですよ。
まあそんな英雄様が誰か一人でも来てくれたら、海賊なんてあっという間に蹴散らしてくれたんでしょうけど、国王様からのお返事は、「今現在、魔の山ビルノースから魔族の大群が押し寄せてきてて、それに対して抑止力として配置に就いてるので無理」とのことでした。
でもさすが国王様、見捨てたわけじゃ無かったです。
「南の国サードレス国の辺境にあるポムルの村に、昔英雄だった男が引退して住んでる。まだそんなに年寄りじゃないから、助けになるかも知れない。訪ねてみてはどうだろうか?」
それを聞いた王様は早速使者を出すことにしたんだけど、辺境だけあって普通の使者ではそれこそ途中で死んでしまう、ある程度戦えるものでないと、と言うことになり騎士団の中から選ばれることになったんですよね。
騎士団もこんな状況ですからあんまり上の人間が行くわけにはいかず、かといって弱かったら普通の使者と変わらないし・・・と言うことで私に白羽の矢が立ったんですよねぇ。
見習いだけどエルザ様に鍛えられて多少の荒事にも耐えられて、尚且つ女性だからいざ居なくなったとしても、騎士団的にはあまり被害が無いという酷い理由で。
エルザ様は必死に取り消そうとしてくれましたけど、でも結局誰かが行かなければならないんですよね。
だから私行くことに決めたんです、あの大きなお父さんの背中に追い付くにはこれ位のこと出来なくてどうするのって思いまして。
エルザ様は最後まで行かないで欲しいとすがり付いてきましたが、それを何とか言いくるめて私は旅立ちました。
まあ、途中で盗賊に襲われかけたりなんだったりもしましたけど、無事にポムルの村に着こうかというときでした。
多分もうすぐ村に着くという油断もあったのかもしれません。
目の前を綺麗なチョウチョが横切って、それに誘われるようにフラフラ~と、街道から外れて森のなかに入ってしまったんですよねぇ。
そしたら目の前に綺麗な泉が出てきたと思ったら、身の丈4メルもある熊と目が合っちゃいまして。
思わず悲鳴を上げたら、熊もビックリしたのか臨戦態勢になっちゃって、それ見た私も腰の剣を抜き放って威嚇しちゃって、もうお互い収まりつかなくなっちゃいましてにらみ合いになってた時でした。
なんか一瞬熊の気が逸れたかと思うと、グルグル回りだしたじゃありませんか!
もう私もそんな奇行見せられたら、ナニナニ!?どうしたの!?ってなっちゃいますよ。
そんな私のことはもう目に入ってないのか熊は今度はしゃがんでお尻を地面に擦り付け始めたかと思ったら、びくんって跳ねた後走り去っちゃいました。
なんだかよくわかんないけど助かった~って思ってたら、目の前に現れたんです。
白馬の王子様ならぬ、銀髪の美少女が。
その紅い綺麗な目で私を覗き込んできて「だいじょぶ?怪我は無い?」って聞かれた瞬間、私のなかに何だか今まで感じたことの無い感覚が走り抜けたんですよね。
それが『恋』だってことに気がついたのは、その少女としばらく行動を共にしてからでした。
素直にその気持ちを話したら「アマゾネスなの?」って聞かれてちょっとショックでしたけど・・・。
まあ、色々あって彼女のお父様が英雄バーン様だってことがわかって、結局動けないからその少女『ユミルちゃん』を連れて国に帰ることになったんですけど、私的には嬉しいんですよ?まだ一緒にいられるわけですし。
でも彼女はそんなに強そうに見えないし、どちらかと言えば可憐ですし、ぎゅぅーっとして寝ちゃいたいですし、ウフフフフフ・・・・おっと話がそれました。
そんな可憐な少女が海賊をどうにか出来るのかって考えたら、無理じゃない?って10人中9人は答えると思うんですよねぇ。あ、残り一人はバーン様ですけどね、自分より強いって言ってましたから。
でもそんな彼女は、本当にとんでもなかった・・・
騎士団でも10人がかりでないと倒せないような魔獣の熊をあっという間に無傷で倒しちゃうんですよ?
そのうえ教わってもいない錬金術を使ってとんでもないアイテム作ったりしちゃってるんですよ?
もうなんか、このまま一人で大きな街とかに行ったら絶対えらいことになってしまうと、私確信しましたよ。
この子の事は私が守らないとって、ついでにぎゅーってさせてくれたらいいのですけども・・・まぁやり過ぎて嫌われては元も子もないので、じっくり攻めることにします。
なんだか、本気で心配したときに、少し壁が無くなった気もしますしね。
ウフフフフフ、時間はたっぷりありますから慌てない慌てない。
読んでくださってありがとうございます。
ついでに下にある評価ボタンをぽちっとするか、
ブクマしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。
(* ´ ▽ ` *)