表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狩人少女冒険旅行記  作者: 無風はじめ
5/54

第五話 英雄バーン

「え?ええ?ユミルちゃんのお父様がバーン様」


 ひどく混乱した様子のステラ。


「ああ、俺がそのバーンだよ、ガゼル=バーンだ」


 父上がステラをまっすぐに見つめながら答える。


「で、でも、ユミルちゃんは何も言ってませんでしたよ?」


「そりゃあそうだよ、ユミルにも言ってなかったからなぁ」


 頭をガシガシとかきながら、困ったように私をチラリと見て笑う父上。

 本当に生まれてからこんなに驚いたのは初めてじゃないだろうかっていう位に私は今ビックリした顔をしてるんだろうと思うよ。

 じゃなきゃあの父上があんな困った顔で笑うわけがない。


「あの、ユミルちゃん?だいじょうぶですかぁ?本当に知らなかったんですかぁ?」


 なんだか申し訳なさそうな顔で、私の顔を覗き込んでくるステラ。

 恐らくステラが来なければ、父上は一生私に本当の事を言わずに終わっていたのかも知れない。

 ステラは自分が来てしまったことによって、平穏だった我が家に波風を立ててしまったことを悔やんでいるんだろう、きっと。


「うん、知らなかったけどだいじょぶだよ。むしろステラちゃんが来なかったら一生知らなかったかもしれないから。父上の事をちゃんと知れたのはうれしいよ。だから、ありがとうステラちゃん」


 それを聞いたステラは少し安心したのか笑顔が戻り、そしてそんな私とステラの様子を見ていた父上も、うんうんと頷いて何かを納得したような顔になってる。

 いやいや、なんでシタリ顔してるんですか?そもそも父上がちゃんと自分の事とか教えてなかったのが原因ですからね?


 少しこめかみに青筋を立てながらも冷静に父上を問いただす。


「父上、私も今回初めて父上が英雄だと言うことを知ったのですが、何故今まで黙ってたんですか?」


 アゴに手を当てて少し考えた後、父上は答える。


「そうだなぁ、話せば長くなるけど、引退したこの身にはもう英雄だとか、バーンなんて名前は要らないと思ったんだよ。ましてやフィリアンとお前を育てていくのに、英雄もへったくれもないだろう?今の俺はただの『ガゼル』でフィリアンの夫、そしてユミルの父親でいられればそれでいいのさ」


「父上・・・」


 やばい、ちょっと泣きそうだ。最近父上の前でなんか泣いたとこ見せてないから少し気恥ずかしい。

 父上は英雄としての名声や地位なんかよりも、私と母上を優先してくれていたのだ。

 あれ?でもそうなると困った事が1つある。


 ステラの助けはどうするつもりなのだろう?


「父上、それではあの・・・ステラちゃんの言ってる海賊退治はどうなってしまうのでしょうか?」


「はっ!そうでしたそうでしたぁ!!御助力お願いしてもよろしいんですか?」


 父上は少し困った顔で頬をかきながらステラの問いに答える。


「ステラちゃん、答えから言わせてもらうと『ノー』だな、俺は君を助けることが出来ない」


 出来ない・・・?いくら引退しているとは言え父上はまだまだ強いと思うのだけどなぁ、弓の腕だって、確かに英雄の頃は知らないし、その頃からしたら落ちてるのかも知れないけれど、周りの他の狩人からしたら別格の強さを持っている。

 その強さは異常とも言えるほどで、他の狩人が80メル先の獲物を射るのが精一杯なのだが、父上は200メル先の獲物を楽々、しかも急所を的確に射ぬく。


 そんな父上が()()()()と言ったのだ。


 何か余程の理由があるのだろう。だけど今日初めて会ったステラがそんな事わかるはずもなく、断る父上にすがるように食い下がる。


「ど、どうしてですかぁ!?王様は確かに国王様に言われたのですよ?『バーン様に助けてもらえ』と。それなのに何故・・・」


「うむ、国王様も知ってたはずなんだが、恐らく15年も経ったからなぁ、忘れてしまったんだろう。俺はこの国サードレスの王様と、ある契約をしているんだ。その契約とはこのポムルの村から北に、つまり中央がある方向には決して近付かない事となっている」


 そう言えば、父上は森の方向には行くけど、反対方向には一番近くの町までしか行かない。私が大きくなって一人でお使いが出来るようになってからは、さらに行かなくなったような気がする。


「父上、何故ですか?どうして北に行ってはいけないのですか?」


「うーん、話して良いもんかな・・・そうだ!ステラちゃん、俺はここから動くことが出来ないから行けないけど、代わりにユミルを連れていきなさい。ステラもそろそろ外の世界を見に行ってもいい頃だしな。さっきの北に行けない理由は帰ってきたら話してあげよう」


 ええーそれってどのくらいかかるかわからないけど、海賊退治して帰ってくるまでお預けってことですかー。


「え・・・?でもユミルちゃんは確かに私なんかよりもよっぽど強いですけどぉ・・・女の子ですよ?危険じゃないですかぁ?」


 心配そうに私と父上を交互に見てステラが言うと、父上は少し不思議そうな顔をしてステラに言った。




「うん?ああ、心配いらんよ。ユミルはすでに俺なんかよりもよっぽど強いからな」


  あ、ステラが固まってる。そりゃそうだよねーこんな小柄な女の子が、元とは言え英雄様よりも強いって聞いちゃったらね・・・。

 

読んでくださってありがとうございます。

ついでに下にある評価ボタンをぽちっとするか、

ブクマしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。

(* ´ ▽ ` *)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ