逃走失敗
ここに来て1か月が過ぎた。
物凄く不自由な生活が待っていると思ったが、案外そうでも無かった。
部屋は広いし、遊び道具もある。ご飯もおいしいし、飲み物も飲みたい時、飲みたいだけ飲める。 あぁ。でも、父や母、それと妹に会いたい。いつまで、続くのだろうか?
夜中の2時頃、僕はその日、どうしても寝付けず、部屋の中をぐるぐると歩きまわっていた。
「…003番…感じです」扉の外から聞こえたその声に僕は、必死に耳を傾けた。
「002番。生体反応が徐々に薄くなっています。」
「そうか。なら、実験を月1に減らせ。死なれたら困る。」
「分かりました。」
殺される。いつ帰る、とかじゃなくて、殺されてしまう。ここから逃げないと。
それには、仲間が必要だよな。さっきの話だと、僕のほかにもいるはずだ。
実験体になっている人が。
僕が、005番。少なくとも、僕の他に4人はいるはず。
行動を起こさなければ。こんなところで、死ぬわけには、いかないんだ。
「すいません。朝からちょっと体調が悪くて、見てもらえませんか?」
「上に問い合わせてみる。まってろ」
よし。これでいい。あとはこの部屋から出されるのを待つだけだ。
「005番。出ていいぞ。」
僕は、研究員を押しのけ、走った。走って、走って。
たどり着いた、部屋の扉を勢いよく開けた。
管、包帯、訳の分からない器具で覆われたそれは、遠くからでは一体何なのか分からなかった。
「0…02番。こ…これは、人間…。」
やばい。足がすくむ。手が動かない。汗が止まらない。
これは、僕の未来。この施設にいる限り、これ、からは逃げられない。
逃げなきゃ、逃げなきゃ。僕は、人げ…。
ピ。ピ。ピ。
ここは、?
ピ。ピ。
実験室!?何で!?僕は、確か、逃げたはず。
あ。背中に何か刺さって、意識を失ったんだっけ。
「005番。研究員を突き飛ばし、逃げ出すとは。まだ、そんな力があるなら、少々実験の回数を増やしてもいいよな?」
嫌だ。いやだ、いや、やだ。僕は、あんな風にはなりたくない。
ピ。ピ。ピ。ピ。
誰か、助けて。
ピ。ピ。ピ。