景気の悪い占い師
私は夜の街角で商売をしている占い師。結構長い間占い業をやっているが、あまり景気は良くない。
そんな私の前に、沈んだ様子の男が現れた。
不景気そうな顔をしているのに、景気の良さがにじみ出てくるような不思議な雰囲気をしていた。
「ちょっとそこのあなた」
「は、はい?」
「何かお悩みの様子で」
「え、ええ…」
「仕事がうまく行かないとかですかね?」
「よくわかりますね…」
長年商売をしているとそういう系統の大体の事は察知できる。
この男の場合、おそらく収入は大きいが性格的に合わない仕事をしているのであろう。
「おそらく今の仕事があなたに合わないのでしょう。思い切って転職してみてはいかがでしょうか」
「そうですか…昔からのあこがれの仕事で、苦労に苦労を重ねてやっと就けた仕事なんですが…」
「とはいえ性格的に向いてない仕事を続けると、精神的にも健康的にも辛くなってきますし」
「わかりました、考えてみます…」
男は少し元気になったような様子で夜の街へと消えていった。
それから数年後、その占い師はひょんな事から人気が出て、雑誌やTVに引っ張りだこな状態になった。
そんなある日、以前より豪華なマンションの自室でくつろいでいた時だった。
「しかし最近は忙しいな…悪い事では無いとはいえ」
そう言って伸びをした時、押入れの方から音がした。
「泥棒でも入ったのかな」
と押入れを開けてみると、そこにはいつか占ってやった男が居た。
「おや、君は以前占ってあげた…」
「はい、いつぞやはお世話になりました」
「しかし、どうしてこんな所に…泥棒にでも転職したのかい?」
「いいえ、信じてもらえるかどうかわかりませんが、僕は福の神なんです」
「本当かね」
「ええ、福の神になってまずあなたに付かせてもらいました」
どうやら景気が良くなったのはこの福の神を名乗る男のおかげらしい。
そこで思い浮かんだ疑問を口にした。
「…ところで、福の神になる前は何をしていたんだ?」
「元々は貧乏神をしていたんですが、思い切って福の神に転職したんです」
「またなんで貧乏神なんか…」
すると福の神は困ったような顔で笑いながら答えた。
「これも信じてもらえないかも知れないんですが…実は僕らの世界では、貧乏神はものすごいエリート職なんですよ」
「本当かね」
「はい、エリート中のエリートしかなれない、憧れの職ナンバー1なんです」