1/19
000
魔物は何故、人間に対して牙を剥けるのか。
人間にその問いの答えが分からないように、人間が何故魔物に対して剣を向けるのか――と言う問いの答えを魔物は分からない。
どちらが悪であり、そのどちらが正義なのかさえも。
もしかすると、その問いの答えが分からないからこそ、戦っているのかもしれない。
戦うことでその先に、その答えがあると信じているのかもしれない。
自分が正義であると信じているからこそ、戦っているのかもしれない。
その答えのどれかが答えなのかもしれなければ、そのうちのどれもが答えでは無いのかもしれない。
勝者が正義なのか、敗者が悪なのか――それさえも分からない。
それなら、誰かが目隠し、右手に剣を、左手に天秤を持てば良い。
剣なき秤は無力であり、秤なき剣は暴力だ。
そして、求められるは――顧慮しない公正さなのだ。