表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落下地点は違う世界。  作者: あせろら
1章:第二の人生
2/15

原因と説明

高所からの墜落で死んだと思えば、何故か草にびっしりと覆われ、岸壁に四方を囲まれた場所で目を覚まし、絶賛パニック中な俺。


ついでに自分の生き様(モテない人生)について、がっつり凹んでいたところ...


「貴女が此度の冒険者ですか?」


背後から声が聞こえてきた。

振り返ると、真っ白な布で作られたローブのような物を着込んだ、出るところはしっかりと出て、

ひっこむ所もぬかりは無い、すっごい美人な人が立っていた。


突然何も無い草原へ現れた人物。

ここは周囲を崖に覆われていて、近くに隠れる場所なんて無い。こんな何も無い場所へ前振りも無く

出現した人物が怪しくないわけがない。

どう対応したものか? うーん...。


...て言うかこの人でっかいな! 177cmある俺よりも、頭一つ以上デカい。

いやでも、女性に対して「あなたデカいですね!」と言うのは失礼か。

ここはどう切り出すのがベストなんだろうか?


「これはまた随分と可愛らしい方ですね、私はルィと申します。」


俺がどう話しかければいいのか悩んでいると、向こうから話しかけてくれた。

名前はルィさんか。今まで見た女性の中でも、容姿も印象もトップクラスだな。


丁寧な言葉遣い...そして美人! うむ、有りだな!



ごめんなさい真面目にやります。



「ぁ、えーとですね・・・俺の名前は赤井章って言います。仕事中に高い場所から落っこちて、

 確実に死んだと思ったんですけど...何故かこの草原に居る次第でして。突然で申し訳

 無いのですか、あなたは?」


カンペキだ、うん。 状況的に俺はもっとパニックになっても可笑しく無い。 だがしかし!

こんな綺麗なお姉さんとお話できるんだ。 ここは紳士にいかなきゃね。


「まぁ!女の子が俺だなんて言っちゃいけませんよ?」


うん、紳士計画瓦解。


「えーとですね、俺は男のはずなんですけど...。」


・・・・・・・・。 


空気が凍りついた。


その一言で、ルィさんの顔がサーっと青くなっていく。

ん?俺なんか変なこと言った...いや言ったね。このナリで男って言うと、危ない人にしか見えないね。

冷静に考えればそうだ。 


でも俺男だったし? 22年間男やってきましたし? こんな姿じゃなかったし?


何がいけなかったと言うのだろうか。

いやもう、俺にはどうしようもない。だって気がついたら髪の毛やら胸やらがこんな事になってたんだから。


「あかい...あきらさんですね? ちょっと事情を調べますので、ちょっとだけ待ってくださいね!?」


今度は大慌てで話し出すルィさん。どこか焦燥に駆られている表情だ。

俺へ待てと言った後、両手を側頭部へ当てて目を瞑る。


「・・・」


無言。 THE・無言。


これは話しかけてはいけない雰囲気だな...黙って待つとしよう。



~10分後~



いまだに目を瞑ったままのルィさん。 流石に待ちくたびれて足元の草を千切って遊ぶ俺。

何やってるんだろうか?確認するとか言ってたけど、電話してるようにも見えないしなぁ。


体育座りでふわわ~っと欠伸をかきつつ、ルィさんを見ると



ぶわっ! と効果音が付きそうな勢いで、両目から涙を噴出していた。


「!?」

お、俺のせい!?  いやちょっと草むしりをしてただけだよ!? 何か悪かった!?

いやだってちょーっとばかり暇だったからでね!? ね? 


女の人を泣かせるなんて経験はもちろん無い。ガキのころから女の子と遊んだことすら無い。

つまりこの後どうフォローすればいいのかもわからん!! ど、どうしよう?


「...すいません、アキラさん。 どうやら私のミスがとんでもない事を。」


どーするどーす・・・ん? ミス?


「次元を超えてこちらへいらっしゃる方には、以前の世界と同じ外見の体を与えられます。ですが・・・」


・・・・・・・・


「実は、以前の体とは別に、自分の好きな体のイメージを持っていれば、そちらの姿が優先されて新たな体が再構築されます。 それがまさか異性であったなんて・・・」


・・・マテ。薄々感じてたけど、ここやっぱり地球じゃないの?


どこか幻想的な景色に始まり、突然の性転換。

日本で生きてきて、突然男性が女性になったという話は聞いたことがない。

そんな夢物語がありえるわけないじゃーん!...だが現実として、ここに存在してしまっている。

考えられるとすれば、ここが地球じゃなく、どこか違う星か違う世界。

何らかの原因によって、俺はそこに連れて行かれて、こんな身体にされたと考えるとスマートなんじゃ

ないか?と推測していたのだ。

まさか、本当に次元とか世界の話をされるとは思わなかったので、ストンッと音がするように思考が繋がった。


てことは...ここは地球じゃない。 そんでもって、ここへ来る過程で俺はこんな姿になったと。

さっきの話だと、この身体が俺の望んだ物だと? いつ俺が女になりたいって言ったんだよ...。


ん? そういえば柱から落っこちる時に、なんか考えてたような・・・。



・・・



あ! そうそう...つい昨日の夜始めたPCオンラインゲーム「レジスタントスター」の事考えてたような?


このゲームは、とある地球とはかけ離れた場所にある惑星、「オーフィズ」が舞台で、その惑星を支配している奴ら...通称「政府」がとんでもない重税をかけたり、見せしめに人を処刑するような...殺伐とした世界。


で、その「政府」から国を取り返すレジスタンスとして、プレイヤーは協力し合って敵と戦っていく。

簡単に言えば、そんな内容のゲームだった。

そのゲームの売りが、超精密なキャラクターアバターを自分でデザインして作ることができる!といったもので、

同じ顔のキャラクターは居ないと運営会社が豪語していた。

何せ、全プレイヤーは顔の輪郭だけあるマネキン状態のアバターから、すべてを作っていかなければいけないのだ。

製作が面倒な人向けに、プリセットとして100種類ほど完成系があるので、そのプリセットアバターから

好きな物を選んで、自分好みにカスタマイズする....という方法が最もポピュラーだ。


だが俺は、せっかく作れるのなら自分の限界に挑戦だぜ! と鼻息荒く....5時間も掛けてオリジナルアバターを

作り上げた。折角ゲームするんなら、野郎の尻みながらやるよりも、可愛い子を見ながらやったほうがいいよね!

ということで、自分なりに可愛らしいキャラを作ったんだ。

今日帰ったら早速プレイしようと思っていたのに・・・と、死ぬ間際に自信作のアバターが走馬灯のごとく

走り抜けたのを、今更思い出した。


そういえば、あのキャラの名前は本名をもじって「アキ」にして、見た目は身長140cm。 胸は巨乳よりも

美乳派なので、平均的な女性よりも、少しだけ盛った美乳に設定。

髪の毛は漆黒のロングヘアー。長さはお尻にかかるぐらいだったかな?

身長からロリチックな匂いを漂わせているが、くびれる腰がエロスを感じさせる!

ロリコンじゃないけど、身長が小さい女の子ってかわいいと思うんです。

作成したアバターを眺めて「俺天才かも!」と、賃貸アパートで一人叫んだ事は...いまだに覚えている。




はっ!



「ま、まさか!?」


思わず叫んで自分の顔をぺたぺた触りだす。


もしかして、自分で作ったキャラに自分でなってしまったオチ?


そりゃあ確かにプレイできなくて残念だったよ? でもさ、自分があのキャラになりたいと思って

作ったわけじゃなく、せっかくゲームするならかわいい女の子見ながらやりたかったから作ったキャラ

なのに...。何もそのキャラに「生まれ変わる」こたぁないだろう!?


がっくりと膝を付き、うなだれる。


・・・・


まぁ落ち込んでもしゃーない。 元の体に未練はあるか?と言われると対して無いし。

別に恋人がいるわけでもなかったんだから、男でも女でもいいわ。


あぁ、別にどっちでもいいわ。


別にズボンにシャツとか、普通の恰好すりゃいいし。 女装しなけりゃ自分では違和感なんてないし。

何より前向きに行こうかね。

そもそも悪いのは、死の間際にゲームの事なんぞ考えてた俺だしね!(涙)



俺の中で整理が付くまで、じっと見守っていてくれたルィさん。


ルィさんが大きかったのでは無く、俺がちっこかったのね。納得だよ...。


「すいません、なんとか自分の中で整理が付きました。 後、これ俺がゲームで作ったキャラの外見でした。 自分で作っちまったもんは仕方ないです・・・。貴女は悪くないさ。」



まだ申し訳なさそうにしているルィさんに、大丈夫だと伝える。

俺のせいで美人さんが暗い表情をしている、というのは非常に背徳感があるからね。

出来れば笑顔でいてほしいものです!


「いえ、ほ、本当に申し訳ありませんでした。構成魔法の途中で確認していればこんなことには...!」

ぺこぺこと連続お辞儀をしつつ、申し訳なさそうにこっちを見てくるルィさん。


かわいいなぁ。俺が男のままだったら放っておかないというのに!


はい、調子に乗りました!ごめんなさい。

「さて、体のことはもうどうでもいいですから。 それよりもここの事とか教えてくれませんか?」


そう、これが重要だ。


俺は通信工。 格闘家ではない。

もしどっかのライトノベルであるように、生活の糧を得るのに自給自足!とか、フィールドを蔓延る

モンスターと激闘を繰り広げ、勝利を勝ち取らなければいけない。


なーんてお決まりな世界に吹っ飛ばされたとかだと、まず死亡フラグびんびんである。

それに、お世辞にも今の俺は強そうには見えない。実際弱いだろうな...。


「はい!では・・・気を取り直してご説明させて頂きますね?」


うんうん。美女に謝られるのはなんだか精神衛生上よろしくないし!

気を取り直して説明してくれるならありがたい。



「まず最初に・・・この世界の成り立ちからご説明しますね。」

「この世界は強さこそが己を証明する世界。 名をフィーリアと言います。」


強さ....だと? 


「このフィーリアは一つの大陸で出来上がっていて、周囲は公海で覆われています。

 数々の国が存在しますが、現在は複数の国を纏めた連合という集団が二つあります。」


「まずここ、来訪者の草原がある小国オレアノラを含め12の国家群が集う連合、ヴァレム。」

「この連合は近隣同士の国々が争うことを辞め、お互いに助け合って生きていこうという考えの

 もとに誕生した組織です。 治安もよく、国民も健やかに生活しています。」


「次に・・・大国エニグラと中国3つが集った連合、クィリム。」

「こちらの連合の実質は大国エニグラが実権を握った形で、民への課税も重く、みなピリピリと

 した生活をしています。」


「今まさに、この二つの連合がぶつかり合おうとしているのです・・・」



「・・・ここまでで質問はありませんか?」



・・・・


待って待って!?すらすらと話し出したと思えば、オープニングからクライマックス全開だね?

ま、まぁ・・・きっとぼくにはかんけーない。 きっとそーだね。


「質問ですが、俺ってその戦争に引っ張り出されたりしま・・・せんよね? あはは。」


「次元を超えてきた冒険者は、類稀な才能を持っているといわれています。 そのために貴女は呼ばれた

 のですよ。」

「つまり、参加して頂くことになるかと...思います。」


ルィさんがえへへっといった感じではにかむ。



えへへ。 死亡フラグ。

主人公は能天気です。


改稿11/28

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ