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落下地点は違う世界。  作者: あせろら
1章:第二の人生
10/15

ひとりでできるもん

「暇だ。」


・・・・・。



「ひま・・・。」


・・・・・・・・・。


「ぬはあああぁぁぁ暇!!」



広さ10畳ちょっとのリビングで咆哮をあげる人物。


それはわたしだ!

「テレビもゲームもマンガもなーんにもないんじゃ、どーやって暇つぶせばいいんだ?もう眠くないから寝るのもやだし・・・」


・・・・・・。


「とにかく、何かすることないかなぁ・・・・」


仕事をしてた頃は、平日にごろごろ惰眠をむさぼって、好きなときに起きて、好きなように過ごすという

素敵なニート生活を夢見た事は確かにあった。


でも現実はそう甘くなかった。

こうやって仕事もせず、かといって娯楽の類も全くない状況というのは、仕事にいそしむ数倍の苦痛が伴うということを、今知った。


「ぐぬぬ・・・マンガよみてぇぇぇ!!!」


適わぬ願いを叫ぶことで、暇を紛れさせる。


本当は、働いていないのに衣食住が整っている現状だけで満足するべきなのだ。

でも・・・そうとわかっていても! 何かしたい!遊びたい!!


「ぅー・・・何するか考えるか・・・。」


そもそもなぜ、こんなに暇なのか・・・それは1時間前に遡る。



・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・



朝ごはんをすませた俺は、ここ数日の日課となっている食後の牛乳を飲みながら一息ついていた。


「ぁー...。朝はやっぱ牛乳だねぇ。寝ぼけたからだにしみる!」


「なんだかおばあさんみたいな事いわないの。…そうそう、言うの忘れてたんだけど、私今日は王宮に出て仕事しなくちゃいけないの。多分夕方には戻れると思うけど…。」


仕事かー、そういえば俺が着てからナリアさんが仕事に行ってる所とか、家で仕事をしている所って見たことないな。やっぱり俺のせいで仕事が滞ってるんだろうか?だとしたら申し訳ないな・・・


ここは快く送り出してあげよう!


「あ、そうなの?お仕事がんばってくださいね~。」


今日はいじられないで済むという、心のどこからか湧き出た安堵感からか、軽い口調になってしまった。でもお仕事は大切だからね!がんばってもらおう!


「やっぱりサボろうかしら♪」


「ちゃっちゃと仕事いってください」




・・・・・・・・・・・・




下らない言葉の応酬を続け、ナリアさんを仕事へ送り出した。


今日一日ナリアさんが居ないので、何かをやらされるという事が無い。

昨日買った服が、寝室に増設された新しいタンス目一杯に収納されているので、ナリアさんが仕事

じゃなかったら着せ替え人形になる所だった。…仕事でよかった。


しかし、そうなると今日は何しようかな?

ナリアさんは自由にしてていいって言ったけど、特にやりたい事も無いしな。


一応お金は置いていってくれたし、食べ物もパンとか残ってるけど...。


うーん・・・ん? お金!


ぴきーん!と頭の上で電球が光ったところで思いついた。


お金があるなら、食品街で何かしら買える!


「そうだ、今日の晩御飯は俺が作ろう!」


お仕事に行ってる人に、晩御飯を要求するのは可愛そうだし、このままじゃ俺居候というかニート・・・っ!


ニートって言葉が頭をぐるぐるしだしたところで、お仕事をする事を決意する。


今日の服装は、短いスカートにフリフリのエプロンっぽいのがついて、ヘッドドレスと言うふりふりで大きなカチューシャっぽい物もついている。

そのせいか、どこかメイドさんっぽい印象を受けるし、家事をするにはいい服装だろう!多分!


ま、実用性はないよねこの服。屈んだらパンツみえるし、スカート短いし。


細かいことは気にしないでおこう!れっつわーきんぐ!


さぁ!晩御飯つくるぞー!



...あ、まだ朝だ。




・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・




と、こんな感じで晩御飯を作るって事は決めた。

でも流石に朝から晩御飯を作るのはどうかと思うんだ。てか早すぎるわ・・・。


行動を開始するにしても、まだ時間が早すぎるとのことでリビングのテーブルに突っ伏してうじうじしている。


こんなことしてたら時間が無駄だし、んー・・・。


・・・出かけるか、とりあえず。


椅子から立ち上がって、お金の入った袋をエプロンのポケットにすぽっと入れる。


出かける前にトイレにいって・・・と。


そういえば、トイレの事に触れてなかったけど、最初は苦労したね!うん。

もう諦めたけどね、色々と!(涙)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



準備万端ということで、いざ出陣!


玄関を出たら鍵をちゃんとしめる。 ナリアさんからスペアキーを借りていたので問題ないのだ。


さて、食品街に今から行っても仕方ないし・・・適当にぶらつこっかな?


上級区にある家から出て10分ほど歩くと、食品街を含めた様々な商店街のある中級区へと続く道と、ナリアさんが仕事で行ってる王宮へ続く道の分岐点がある。


王宮へ行く道には西洋のごっつい甲冑を装備した兵隊さんが立って、警備にいそしんでいる。

ちょっと遊びに~、っといった感じで踏み入ることは出来無そうだ。


昨日と一緒の中級区への道を進んでしばらく歩くと、最初に見えてくるのは日用品街と武具用品街だ。


この中級区はおおまかなに言うと丸い円形になっていて、円を4つに分けるように大きな道が走っている。


上級区から続く道から見ると、左の半円には日用品街と魔法用品街、右の半円には食品街と武具用品街がある。 

名前の通り、日用品街には普段の生活に使う様々な雑貨や小道具が売られていて、武具用品街は武器やら防具。魔法用品街はナリアさんのような魔術師の方々御用達のお店が立ち並び、食品街はご存知の通り、市場である。


正確には市場だけじゃなくって飲食店も大量に存在するので、お昼時や夕飯の買出し時にはとっても混雑する場所なのだそうだ。


ちなみに、それぞれの街の中を細かく道が走っていて、そこを俺のような慣れていない者が歩くとあっという間に迷子になってしまう。

でも、大通りは2つの道がクロスしているため、上級区に帰るにしても道に迷いづらいのだ。

なので、この大通りに面したお店だけを狙っていけば、迷子にはならい!という素敵な街なのだ。


ナリアさんが言うには、この中級区にはお店を構えている人しか住んでいないらしい。

お店を開いていない普通の人は下級区に住んでいるそうだ。

下級、と聞くとあんまりよくないイメージが沸くけど、別に小汚いとか治安が悪いといった場所ではなく、あくまで一般人の住居がたくさんあるベットタウンになっているようだ。

上級区に住んでる人と差をつけたかったから下級区って名前なだけ、とナリアさんが言っていた。

まぁ、まだ行ったことないから実際どうなのかは知らないけど。


さて、そんなことよりも今日の目的地だけど・・・。


日用品街の洋服関係のお店と、食品街は昨日行ったし、食品街はもうちょっと後にしたほうが

食材も痛まないだろうし、服はもう見たくないから却下する。


となると、足が向くのは自然と魔法用品街と武具用品街ってことになるけど、どっちも俺には必要無さそうな名前してるな・・・


いや、でもこっちの世界で生きていくんだし、護身用の武器とかあったほうがいいかも?初日にいきなり襲われたし、現代日本と比べれば治安も良くないと思うしね。


でもお金は銀貨が15枚。食材やら買い食いなら豪遊できるかもしれないけど、武器やら防具?を買うとなると、おそらくほとんど無くなってしまう事が予想されるので、今日は見学だけにしておこう。


ちなみに銅貨1枚で1リーブル、100枚で銀貨になり、銀貨10枚で金貨という具合らしい。

まだ金貨は見たことないけど、ちょっと大きな買い物をする時にしか金貨は使わないらしいので、俺が見ることになるのはもう少し先になるかもしれない。



上級区から入ってきた街道の右手に広がる武具用品街には、屈強な戦士が振り回していそうな剣や、甲冑に身を包んだ騎士が使うのを想像させる槍などを始め、俺のように小柄な人間にも扱えるような小ぶりの武器なども沢山並んでいる。


武器だけでも眩暈がしそうな量が並んでいるが、鎧や小手、盾などの防具を売っている店も街道沿いに所狭しと並んでいた。


ナリアさんが言うには、この国は鉱物資源が豊富らしいし、武器を作るのは十八番なんだろうな。


俺だって元男の子だ。こんな男心くすぐる場面に出くわして高揚しないわけがない!

俺の身体よりも大きな盾や、俺の背丈の倍はあるだろう槍を眺めつつ街道をゆっくり歩く。


いいなー・・・。こんなことなら、キャラクター製作の時にむきむきマッチョな男にしとけばよかったかな?

今更悩んでも仕様が無いけどね。


頭の片隅で下らない事を考えつつ、剣を眺めている俺へ武器屋のおじさんが話しかけてきた。


「どうしたんだい?そんなに難しい表情をして。」


なんだか視線が優しい。具体的に形容するならペットを見るような優しい目だ。


「いえ、かっこいい武器だなーっと思ってみてただけです。私には使えそうもないですけどね。」


「そうだなぁ・・・お嬢ちゃんに使えそうなのって言えば、このへんのショートソードあたりだろうが・・・お嬢ちゃん、剣なんか買って何に使うんだい?」


「あ、いえ。買いにきたわけじゃないんです。ちょっと暇だったので見て回ってただけで。」


お店の人に堂々と冷やかし宣言はマズいかな?まぁ本当の事なんだから仕方ないよね。


「そうかい! いやー、こんなかわいいお嬢ちゃんが剣を持って暴れるってのは、似合わないと思ってね!。もし買いたいのなら止めようかと思ってたところさ!ガハハ!」


なんか微妙に傷つくけど、どこからどう見ても女の子だし、こんな小娘に武器を売るのは普通の大人なら躊躇うものだろう。


いい人だなぁ・・・。

どうも最初にこの世界で最初に出会ったおっさんが、ちょっと嫌な人だったせいで男に対してあんまりいいイメージが沸いてこない。


元男なのに何言ってるんだか。


遠い目をして考え事をしていると、どうやら武器が欲しいけど悩んでいるとでも見られたようで、おじさんに再び話しかけられた。


「街の外を旅するってんなら、剣の一本は最低限必要だろうが・・・まぁ、この街の中なら要らないさ!そのへんを騎士団が巡回してるから、ゴロツキが居ればすぐ引っ張って行かれるからよ!」


やっぱり外では怪物とか、盗賊とか、危ない奴がうようよしてるんだろうか?


旅に出る前にはやっぱり一本ぐらい剣を買っておくことにしようかな?

使いこなせるかは別として、いざって時に何も無いよりはいい気がする。


「私、そのうち旅に出る予定なんですよ。その時は私でも使えそうな武器とか売ってくださいね!」


「おう、そうなのかい? 旅に出る前に必ずうちに来な!サービスたっぷりしてやるぞ?お嬢ちゃんに免じてなぁ!ガハハ!」


うん、こんな豪快なおじさん悪くないな。

特に笑い声がいいね!何も考えてなさそうで!


・・・別に失礼なことは考えて無いよ?


「それじゃ、またきますねー!」


「おう!いつでも来いよ!」


とことこ歩いてそのお店の前を後にする。


旅に出る前にはあのお店に寄ることにしよう。

買うにしても、ナリアさんから借金することになるから、ちょっと気が引けるけど...。


そうだ、そのうち稼ぐことも考えないとな。

このまんまナリアさんに養ってもらうのも悪いし、22にもなるのに自立出来ないとか情けないしね?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



そのまま街道を30分ほど冷やかししつつ歩くと、魔法用品街が左手に見えてきた。


お店の店頭には、棒きれのような物が沢山置いてあったり、ビー玉のような物がカゴに沢山入って

いたりと、魔法の知識ゼロな俺が見てもさっぱりわからない物ばかりが置いてあるお店ばかりだ。


頭の上に5つぐらい?マークを浮かべてお店を見ながら歩いていると、不意に後ろから衝撃が走った。


ドン!と、思い切りタックルされたかの様な衝撃だ。


どうやら誰かに勢いよくぶつかられたようで、耐え切れずに転んでしまう。


「あわわわ!」


びたん! と石畳の街道に綺麗に転ぶ。


ぅ・・・すっごく痛い。石に全身をぶつける痛みってこんなにもすごいものなのか。


「いったいなぁもう、誰?ぶつかったの!...あれ?」


しかし、後ろを見ても誰も居ない。


「? 確かにぶつかられたんだけどな...ん、あれ? 無い? 無い!?」


エプロンの前掛け部分に入れていた硬貨の重みが消失していた事に気がついて確認するも、

ポケットは空っぽになっていた。


「は、ぇ? 落とした? ・・・・・・落ちてない。」


ど、どうしよう?え?


もしかして・・・


考えたくないけど、スリ?


その場にへなへなと座り込んでしまうと、ちょうど目の前にあったお店の中から、赤いローブを身に纏った女の人が出てきた。


「どうしたの?そんなところに座り込んじゃって。」


ぅ・・・お店の人かな? そうだったらスリの現場を見てるかも!?

淡い期待を抱いて、ローブの女性に聞いてみる。


「その・・・お金をとられちゃったみたいで、今さっき!」

「え!? ここで? いくらとられちゃったの?」

「えと・・・銀貨15枚です。」


「大金じゃないの...。かわいそうにね。」


しょんぼりして下を向いている俺の頭をなでなでしてくるお姉さん。

なんか情けないなぁ俺。


「この街は治安のいい方だけど、たまにスリや強盗も出るのよ。気をつけて歩くのよ?」


まさか自分がスリに狙われるとは思っても居なかった・・・。

こんな人目の多い中で堂々とやられるとは思っていなかった自分の油断が招いた結果だ。


てか、ついさっき武器屋のおっちゃんが大丈夫!ガハハ!とか言ってたじゃん!!!


そんな事言っても仕方ないのはわかっても、なぜかいらいらして気持ちがしぼんでいく。



「はい・・・ありがとです。」




・・・帰ろう。


無一文になっては晩御飯の買出しすらろくに出来ない。

自分の不甲斐なさに泣きそうになりながら、とぼとぼと歩き出す。

何か言いたそうにしていたお姉さんだったが、所詮他人事だ。


今度外出する時はしっかり気をつけないと・・・。

てかナリアさんに何て言おう? おこられるだろーな。


はぁ・・・。



とぼとぼと歩きつつ、横目に食品街を眺めながら帰路に着く。


本当は何か簡単なものを作って、ちょっとでも仕事しようと思ってたのになぁ。

結果、無駄な消費をして終わり。


なんとも情けない。


なんだかんだ言って、どこの馬の骨かもわからない俺の面倒を見てくれるナリアさんに、ちょっとだけど、恩返し的な事をしたかっただけなんだけどな。


悶々としながら歩いていると、いい匂いを漂わせるお店に目が行く。

木造の建物から大きな屋根が突き出しており、オープンテラスに席が複数あるレストランのようだ。


そう言えば、今はちょうどお昼時だ。

どこのお店も活気付く時間帯なせいか、ウェイトレスさんが手際よくお客さんの間を駆け抜けている。


おなかすいたな・・・。

しょんぼりしながら眺めていると、大量の料理を一心不乱に食べる人に目がいく。

スパゲッティにグラタンにシチューにステーキにサンドイッチに・・・・

あんなに一気に食べるとは、相当な大食漢に違いない。


でもそれを食べている人は、言っちゃいけないんだろうけど、あんまり裕福そうには見えない。


煤けたローブを着ていて、身体はやせている。ちょっと頭の薄くなってきている中年のおじさんだ。

まるでここ数日食べていなかった反動かのように、猛然と料理を消費していく様は圧巻だ。


裕福じゃないけど、ここで食べるだけの臨時収入でもあった、ってところだろうか?

いいなぁ。こっちは臨時出費したばっかりだと言うのに...。


ぼーっとそのおじさんを見ていると、あることに気がつく。



そのおじさんの腰にくくりつけられている布製の袋。


それに刺繍されたコスモスのようなお花のマーク。



はて?どこかで見たことが。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「あー!!!」



思わず叫んでしまった。



その叫び声を聞いた周囲の人と、お食事中のおっさんがこっちを見る。

カチンっとフォークを握ったまま固まるおっさんと、指を刺しながら固まった俺。



そしておじさんは椅子を蹴り飛ばすように立ち上がり、猛スピードで逃げ出した。


「あ、まてぇー!!!」



・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・




あれから10分ほど。


おっさんを追いかけているうちに、食品街に面した大通りを外れ、来た事の無い狭い路地へ突入していた。


「はぁ、はぁ、はふぅ....見失っちゃった。」


この体は体力も無いようで、あの中年のおっさんよりも先にダウンしてしまったのだ。


「ちくしょー・・・前の俺だったら絶対に逃がさないのに!むきー!!!」


誰も居ない路地でだんだん!と地面を踏む。


すると、背後に人の気配がする。


さっと振り向くと、3人の男が道をふさいでいた。


「お嬢ちゃん、こんなところで何してんだい?よかったらお兄さん達とあそばねーか?カカカ!」

「なーに、悪いようにはしねーよ。上玉だから遊んでから売ることにするからよ!」

「おい、最初は俺からでいいか!お前らは後から遊べよな!ギャハハハ!!!」


何この悪党・オブ・悪党。


俺はこんな阿呆にかまってる場合じゃない。体力が回復したらあのおっさんを捕まえて、ぼこぼこにしてお金を取り返すんだ!


再び振り返り逃げようとすると、その先にも二人の男が。


片方はさっきのおっさん。


「ケッ。金だけよこしておきゃ手出しはしなかったのによ。おかげで食い逃げまでさせやがって!」



・・・? 何言ってるんだこのクソオヤジ。圧倒的に盗んだお前が悪いだろ!

だんだんとイライラゲージがMAXに近づいていく。


「何さ!あんたが俺から金とったのが悪いんじゃないか!!とっとと金かえせこのハゲ!!!」

俺の罵声に少なからず怒りを感じたのか、猛然と言い返してくる。


「な、んだと?このクソガキ・・・・!言わせておきゃ言いたい放題言いやがって!!」

「とーぜんでしょ!こっちは被害者なんだから!警察に突き出すからな!!」


こっちに警察ってあるんだろうか? まぁ近い物はあるでしょ。 そこでお縄をかけてもらうまで!



・・・だが、頭に血が上って肝心な事を考えていなかった。


「おら!お前らとっととかかれ!」


「ま、銀貨2枚もらえてこんな上玉で遊べるんだ。言われなくてもやるぜ!」



...あ、もしかしてヤバイ?


顔から血の気がさーっと引いていく。


俺のLvは1。MPは先日の一件で急上昇したが、魔法の使い方なんて知らない。

体力もないし、幼少から○○拳を修行していたわけでもない。


やばい...どうする!?


ちょっと気づくの遅いよ俺・・・女の子1人でこんなおっさん5人も倒せる訳ないだろ。


冷や汗を頬に伝わせながら、おっさんににっこりと微笑む。

「い、今見逃してくれたら、後でごはんぐらいおごるよ!」



土壇場で口から出た言葉は、相手にはなんの効果も無かったらしい。


「やれ。」


一斉にあのおっさん以外の4人が、俺へ向かってゆっくりと歩いて近づいてきた。


「暴れなけりゃ、お痛はしねぇよ!ヒャハハハハハ!!!!」


........こわいこわいこわいこわい。


何?なんなの? どーすればいいの?


体の内側から伝わっていく恐怖に、ぴくりとも動き出せなくなっていた。


終わったな、これ。 



そう思って目をつぶると、近づいていた男の一人が大声を上げた。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアァァァ・・・・・・・・」


その男の断末魔が、狭い路地へ響き渡る。

同時に、恐怖から目をつぶって震えていた俺の頭へぽんっと何かがのっかる。


「おい、大丈夫か?君。」


「・・・ふぇ?」


恐る恐る目を開けると、一人の男が俺の頭を軽くなでていた。




改稿12/11

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